キヤノンのES対策!求める人材を理解して採用レベルの志望動機・ガクチカへ
23,416 views
最終更新日:2024年05月22日
キヤノンと聞いて皆さんはどのような製品を思い浮かべるでしょうか?
多くの方はカメラ・フィルムといった伝統ある事業を挙げるかもしれません。近年ではそういった古くからの強みにとらわれることなく、3Dプリンター・クラウドサービスなど、現代社会の情勢・ニーズに対応しながら多くの製品を開発・提供している大手電機メーカーとして成長しています。
既存商品に対しても以下の記事にあるような工夫を凝らしたプロモーションを行っており、製品の観点から言えばバランスのとれた戦略がなされている企業と言えるでしょう。
また、市場の観点で見ても、キヤノンは売上高の8割以上を海外が占めており、グローバルに目を向けた販売網を構築している企業であると言えるでしょう。経営・商学部系統の学生であればご存知であろうアンゾフの成長マトリックスに当てはめると、新規の市場☓新規の製品に分類される「多角化」を中心に、4つのマトリックスのそれぞれで成長を考えている企業であるとまとめることできるのではないでしょうか。
なお、多角化方針についてはキヤノンの「中長期経営計画」でも明確に示されていますのでこちらも是非参考にしてください。
そんなキヤノンですが、就活市場の場においては以前に説明会の予約画面が学歴差別ではないかと指摘されたことが話題になりました。では、キヤノンが求める人材というのは学歴の高い人材ということになるのでしょうか?
この点も踏まえ、今回はキヤノンのESと採用HPからキヤノンの求める人材について考察していきたいと思います。
参考:70枚の楽譜を完璧なタイミングで出力!キヤノンによる“プリンターを使ったコンサート”
→キヤノンがアメリカで、自社のプリンター「imageCLASS」の“スムーズさ”と“信頼性の高さ”を実証するために、特別なコンサートを開催しました。
キヤノンの求める人材
現在の業務は、キヤノングループ全体で使用している「汎用電子部品」を安く、かつ安定的に調達するための「調達戦略」を策定・実践することです。
その際に意識しているのは、キヤノングループ全体の購買量をスケールメリットとして生かすこと、そして天災に代表されるさまざまなリスクを考慮することです。そのようにして練り上げた「調達戦略」を関連部門と連携し、全社で一丸となることで、安く、かつ安定的に部品調達が進められるようにしています。
参考:事務系社員紹介 調達
赴任からしばらく経ったあるとき、長い付き合いのある代理店との販売交渉がうまくいかず、大量の受注をキャンセルされそうになりました。発端はキヤノンの販売戦略、価格のロードマップを丁寧に説明できておらず、そこから先々の戦略に対する認識、理解に差が生じ、この先キヤノンとはビジネスできない、という不安感を与え、関係が険悪になってしまったのです。
(中略)。
そこで私は、代理店との関係修復のために急いで現地に飛び、会談の設定を申し込みました。
最初は取り付くすきもない素っ気ない対応をされましたが、会談ではこちらの戦略、考え方を改めて一から説明し、互いの認識がずれていないこと、今後もWin-Winの関係を続けるためにこういう戦略を描いている、ということを理解してもらうよう努めました。
そのうち、だんだんと互いに歩み寄ることができ、最後にはこれまでどおり良好な関係を続けていくということを確認できました。
今回はグローバルに事業を展開するキヤノンということで、それぞれ国内・海外で活躍する社員の働き方を見て求める人材を導いていきましょう。
文系の働き方というと多くの方が真っ先に営業をイメージするかと思いますが、キヤノンでは営業以外でも様々な活躍のフィールドが用意されています。
1人目の社員は調達部門として、製品をつくり出すうえで必要な部品の最適な調達戦略について意思決定をしていくことが主な業務となります。メーカーでは多くの企業で共通して、複数の部門や職種の間で連携を取り、企業全体として成果を上げるためにはどう行動していくべきかを常に考えて行動していく必要があります。
こちらの社員のように調達戦略を策定していくうえでも、実際にその製品を使用することになる現場、生産活動に携わる生産管理部門といった他部門との連携を進めていく中で、企業にとってより良い判断をしていくことが求められるでしょう。
以上より、「人気企業内定者に共通する、企業に伝えるべき5つの強み」のうち「4.価値観や立場の異なる人と協力して成果をあげることができる」人材が求められていると導くことができます。
一方、海外で活躍する2人目の社員は、得意先との販売交渉が決裂しそうになった状況を乗り越えた経験について述べています。一般に、このようにBtoBで法人向けに商品を販売するうえでは論理性が重要であり、それを的確に伝えることができずに顧客からの信頼を喪失してしまったようです。
このような状況下で、顧客は何を必要としているのか・それに対してどう提案していくかについて正しい判断をしていくことが重要になってくることが読み取れるでしょう。
以上の点から、先ほどの5つの強みのうち「2.関係者と信頼関係を構築し、課題やニーズを引き出し、解決のための提案から実行まで行うことができる」素質を持った人材もキヤノンは求めていると結論づけることができます。
キヤノンのES設問
(1)あなたが学生生活で最も力を入れて取り組んだことを2つ教えて下さい。
(1)-1学業について、あなたの大学での研究テーマまたは特に力を入れている学問は何ですか。また、その研究テーマ、学問にどのように向き合っているか、具体的に述べてください(その学問の魅力、取り組み事例、そこから得たことなど)(400文字以下)
(1)-2学業以外について、困難だったこと、またその困難にどのようなアプローチで挑み、どのように克服したか、そしてその経験から得たことを具体的に記載してください(400文字以下)
(2)あなたがキヤノンで成し遂げたい夢(実現したいこと)を、第一希望職種を選択した理由を含めて教えてください。(200文字以下)
→志望企業で成し遂げたいことを具体的に述べるための方法を提示します。
設問(1)-1「学業について、あなたの大学での研究テーマまたは特に力を入れている学問は何ですか。また、その研究テーマ、学問にどのように向き合っているか、具体的に述べてください。」について
学生時代頑張ったことについて学業と項目が指定された質問です。
学業に関する設問ではいかに学術的な専門性を持っているかというよりも、その内容を専攻分野についての知識がない面接官に対してもわかりやすく伝えることができるかを通して就活生の地頭の良さが問われていると考えられます。
面接の場においても文理問わず学業については問われるようですので、自身の研究内容について一度振り返ってみることは必要となるでしょう。特に文系学部の学生は以下の記事が参考になると思います。
参考:「学業への取り組みについて教えてください」という設問に対する内定者の回答事例集
→学業への取り組みに関する内定者回答を提示します。
参考:文系学部廃止論?阪大学部長の言葉から考える内定獲得のための学業の"使い方"
→学生の本分である学業伝え方を提示します。
設問(1)-2「学業以外について、困難だったこと、またその困難にどのようなアプローチで挑み、どのように克服したか、そしてその経験から得たことを具体的に記載してください。」について
こちらがいわゆる学生時代頑張ったことについての設問となります。
学生時代頑張ったことはその経験から導かれる学びや強みが当該企業の求める人材と合致しているかどうかが重要となります。
「ガクチカの書き方とは-6ステップで書けるESテンプレを基に解説-」に当てはめてみると、「困難だったこと」は③困難と目標に、「その困難にどのようなアプローチで挑み、どのように克服したか」は④取組・工夫に、「その経験から得たこと」は⑥学びにそれぞれ該当します。
このことから、記入する内容についての要求が多く一見難易度の高い設問に見えますが、フレームワークに沿った基本的な型が身につくよい練習材料になるとも言える設問の要求となっています。
特に④についてはアプローチ・克服と2段階に分けて詳しく聞きたいという意図が窺われますので、その問題の本質は何か・なぜそのアプローチをとったのか(他の方法は無かったのか)という段階まで自分なりに深掘りを加えておく必要があるでしょう。P&Gの以下の設問はこういった「なぜ」について考えるうえで参考になるかもしれません。
参考:取組・工夫→結果の評価ポイントと回答例
→「どのように取り組んだのか」という質問における面接官の意図と、評価される回答例について詳しく説明したいと思います。
あなたが、解決したい課題や問題について、重要な関連性のある情報(データや事実など)を見出し、その課題や問題の根源をつきとめ、解決策を提案した結果、望ましい成果を挙げた経験について述べてください。(全角半角問わず500字から700字程度)
この設問では、実際の内定者の回答を解説していきましょう。
私は化粧品会社とのコラボ企画でメイク教室を主催したが、立場の異なる各関係者の説得が非常に困難であった。
私は同大学の女子がメイクに消極的である現状に疑問を感じ、その美意識を高めようと考えた。私の役割は各関係者との交渉であり、化粧品企業には協賛、大学には構内での宣伝許可を求めたが、前者には企画による企業への利益を、後者には学生が企業に利用されることを疑問視され、交渉は困難を極めた。
そこで私は各関係者に合わせた動機づけが必要だと考え、前者には「課題としている若年層にブランドをアピールできる」、後者には「学生が社会人としてふさわしい身だしなみを学ぶことができる」と熱心に説明した。
その結果、双方から許可を得ることができ、参加者は50人を超える大盛況となった。この経験から、立場が異なる関係者を巻き込むには、熱意に加えて、各関係者のメリットを模索し論理的に伝えることの大切さを学んだ。
参考:【内定】エントリーシート
この内定者は学内でメイク教室を主催しようした中で、関係者との協議で困難を感じそれを乗り越えた経験について述べています。まず、「立場の異なる各関係者の説得」という取り組みの内容自体が、「4.価値観や立場の異なる人と協力して成果をあげることができる」人材であることのアピールに繋がっています。
その「異なり方」についても、化粧品会社・大学という学生の内輪に留まらない多様な価値観を持った内容であることから、取り組みの困難のレベルが高いことについても評価項目となります。実際、最終的には双方から許可を得ており、「成果を上げる」という点についてもしっかりと示すことができています。
設問(2)「あなたがキヤノンで成し遂げたい夢(実現したいこと)を、第一希望職種を選択した理由を含めて教えてください。」について
志望動機についての質問です。
志望動機は成し遂げたいことが自身の経験に根付いているものかどうか、その内容が志望企業のビジネスモデルを実現する上で妥当性があるかどうかが重要となります。
この設問でも「成し遂げたいこと」と書いてほしい内容を明確にしていることから就活生に対して親切であると言えます。「ガクチカの書き方とは-6ステップで書けるESテンプレを基に解説-」では最初に成し遂げたいを述べて大枠から整理していくことが書かれていますが、この設問ではよりそれが有効であると言えるでしょう。
今回は「第一希望職種を選択した理由を含めて」と指定がありますので、その職種で成し遂げたいことについて述べる必要があり、仕事理解も同時に問われている質問であると言えるでしょう。
参考:興味のある部門と職種内容から仕事理解を示す
→興味のある部門と職種内容から仕事理解を示す方法について簡単に説明したいと思います。
最後に
以上のことからもわかるように、キヤノンは学歴フィルターをかけて低学歴の学生にチャンスを与えないという企業ではなく、学業を始めとした学生時代の取り組みを通して信頼関係構築力や周囲と連携して成果を上げることができる人材かを見極めようとしているようです。
自身のスペックに過度に卑屈になったり自信を持ち過ぎるということなく、幅広い企業に目を向けるということが重要なのではないでしょうか。その上で、本記事がキヤノンの選考に臨む就活生の参考になれば幸いです。
photo by MIKI Yoshihito