日用品・消費財メーカーとは-種類や業界の動向を解説-
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最終更新日:2022年08月04日
生活していくうえで欠かせない商材を扱っており、就活生にとっても馴染み深い日用品・消費財メーカー。
しかし、実際の事業内容や種類まで理解できている就活生は少ないのではないでしょうか。
本記事では日用品・消費財メーカーについて、そもそもどのような企業なのか、業界内の種類、そして現在の業界における動向の視点から解説していきます。
日用品・消費財メーカーについて興味があるものの、理解が漠然としている方は、この記事を通じて日用品・消費財メーカーへの理解を深めましょう。
- 本記事の構成
- 日用品・消費財メーカーとは
- 日用品・消費財メーカーの扱う商材
┗日用品・消費財メーカーの扱う商材(1)家庭日用品
┗日用品・消費財メーカーの扱う商材(2)ビューティーケア
┗日用品・消費財メーカーの扱う商材(3)ビューティー - 日用品・消費財メーカーの最新動向
┗日用品・消費財メーカーの最新動向(1)業界規模はほぼ横ばいに推移
┗日用品・消費財メーカーの最新動向(2)海外進出が活発化
┗日用品・消費財メーカーの最新動向(3)大手企業の競争激化
┗日用品・消費財メーカーの最新動向(4)マーケティングに注力
┗日用品・消費財メーカーの最新動向(5)高付加価値商品 - さいごに
日用品・消費財メーカーとは
日用品・消費財メーカーとはそもそもどのような企業のことを指すのでしょうか。まずは事業内容について確認していきます。
消費財とは生活の中で消費するもの全般を指し、その中で洗剤やティッシュ、トイレットペーパー、シャンプーなど、食料品や衣料を含まない生活に用いられる品物を日用品と一般的に指します。
日用品・消費財メーカーは上記のような商材を開発、販売して利益を得ている企業のことをいいます。
他の化学メーカーなどと比較した時に、私たち生活者の手に直接届く商品=最終製品を扱っているのが最大の特徴といえるでしょう。
買い手が私たち生活者であることから、世の中の流れを意識したマーケティングが大切であり、広告などで目にすることのある企業も多いと思います。
生活に欠かせない商品を扱っているという安定性や、CMで見たことのある企業が多いことから毎年就活生から人気な業界でもありますので、志望する就活生はミーハーと思われないだけの企業研究が必要不可欠です。
日用品・消費財メーカーの扱う商材
ここでは日用品・消費財メーカーを扱っている商材の種類で分類します。企業によって力を入れている種類が異なるため、自分が関わりたい分野を考える際の参考にしてください。
また、分類の仕方は企業や文献によって様々なので、今回の便宜上の分類であることをご理解ください。
日用品・消費財メーカーの扱う商材(1)家庭日用品
- 洗剤(洗濯用、住宅用、台所用、風呂用、トイレ用)
- 台所用品(スポンジ、ラップフィルム、食器など)
- 風呂用品(ボディタオル、風呂マットなど)
- トイレ用品(トイレブラシ、トイレットペーパーなど)
- 洗濯用品(物干し竿、洗濯用ネットなど)
- 掃除用品(ゴミ袋、ダスターなど)
洗剤や掃除の際の用品など、家庭内のケアをする際に使用するものです。家回りの消耗品全般に近い認識で問題ないと思われます。
日用品・消費財メーカーの扱う商材(2)ビューティーケア
- ボディケア用品(ハンドソープ、ボディソープなど)
- スキンケア用品(ハンドクリーム、制汗剤など)
- ヘアケア用品(シャンプー、ヘアワックスなど)
- フェイスケア用品(洗顔フォーム、メイク落としなど)
- シェービング用品(剃刀、シェービングフォームなど)
- 入浴剤
- アロマ用品
身だしなみのために身体をケアする商品を指します。
日用品・消費財メーカーの扱う商材(3)ビューティー
- 化粧品(頭髪用化粧品、皮膚用化粧品、仕上用化粧品及び特殊用途化粧品)
- 香水・オーデコロン
- 化粧小物(化粧コットン、手鏡など)
化粧をするための道具や皮膚などに塗布するものを指します。 低価格帯から高価格帯まで幅広い商品がありますが、大幅な差別化が難しい商品群なので広告費への出費が高く、ブランディングに力を入れていることが特徴です。
日用品・消費財メーカーの最新動向
ここからは日用品・消費財メーカーの市場規模や動向について解説します。なお、化粧品は単独で市場が展開されていることから、今回は化粧品を除くトイレタリー商品について紹介します。
日用品・消費財メーカーの最新動向(1)業界規模はほぼ横ばいに推移
2020年-2021年のトイレタリー業界の業界規模(主要対象企業11社の売上高の合計)は2兆9,762億円となっています(※1)。
市場規模は増税前の駆け込み需要などによる増減はあるものの、近年はほぼ横ばいに推移しています。
生活に欠かせない商品を扱う業界なので今後も急激な落ち込みのない安定性がありますが、国内市場は飽和状態になっており、今後は少子高齢化に伴う市場の縮小が見込まれることから各企業は海外進出や高付加価値商品の開発などで新たなマーケットの開発を模索しています。
また、酷暑によって蚊の発生が抑えられた年は蚊取り線香の売り上げが落ちたように、年によって需要が細かく変化する商品を扱っているため、生活者の動向を踏まえた商品開発と幅広い商品領域を持っていることが安定した経営に必要な要素といえるでしょう。
日用品・消費財メーカーの最新動向(2)海外進出が活発化
先述の市場飽和を踏まえて各企業が強化しているのが海外マーケットの開発です。
2022年現在、コロナウイルスによって海外からの渡航者が減少しており、インバウンド需要は大幅減少しています。
また、中国では2019年に施行された「EC法」によって転売業者に納税義務が課せられるようになったこともあり、インバウンド向けの販売が今後も以前のような勢いが戻るかどうかは分からないでしょう。
このような影響を受け、業界各社は人口増加が進むアジアを中心とした海外進出を進めています。
業界大手の花王では海外展開によって1990年比で約2.6倍の売り上げを記録しており、現在は売り上げの42%を支える主力マーケットとなっています(※2)。
しかし、日本企業の進出によって現地企業も開発を強化しているため、海外でもニーズをくみ取った独自性のある商品開発が必須でしょう。
日用品・消費財メーカーの最新動向(3)大手企業の競争激化
日用品・消費財の大きな特徴として市場のコモディティ化が挙げられます。
大手企業はどこも開発力が高く、1社が新たな商品を開発したとしても、研究によって同様の商品はすぐに作られてしまいます。
消費者にとって個々の違いはあれど品質の差を判別しにくいため、日用品・消費財の市場はコモディティ化しています。
コモディティ化した市場は価格弾力性が高く、価格が安くなると需要が高くなりやすいです。
以上のような背景から日用品・消費財業界は高い商品開発力と価格競争に耐えられる資金力がある大手企業による競争が特に激しく、中小企業による参入が難しいことが特徴です。
日用品・消費財メーカーの最新動向(4)マーケティングに注力
日用品・消費財メーカーに興味がある就活生の中には、メーカーならではのマーケティング職に関心があるという方もいるのではないでしょうか。
最終商材を扱う企業にとって消費者の動向を分析するマーケティングは欠かせない要素です。とりわけ、日用品・消費財メーカーはコモディティ化した市場において他社と差別化を図る重要な要素となっています。
商品を届けたいターゲットの選定とターゲットが他社の商品ではなく自社の商品を購入してもらえるように、各企業は広報や商品開発など多種多様な手段によって差別化を図ります。
例えば、今では当たり前となっている洗剤やシャンプーなどの詰め替え用ですが、これはかつて環境負荷を減らすという目的を打ち出した企業によって開発されたものです。
ボトルよりも低価格で買えるというだけでなく、一度ボトルを購入するともったいなさから他の商品に代えにくくなるという利点にもつながっています。
また、かつてはテレビCMによる広域への広報が主流でしたが、現在はデータの活用やメディアの多様化に伴い、よりパーソナライズした広報が可能になったことから、マーケティングの重要性は更に高まっているでしょう。
日用品・消費財メーカーの最新動向(5)高付加価値商品
近年の動向として、各社が高付加価値商品を開発していることが挙げられます。
高付加価値商品とは既存商品に付加価値をつけ、既存商品よりも高い値段で販売する商品を指します。就活生の皆さんも日常生活で「プレミアム○○」のような名のついた高付加価値商品を目にしたことはあるのではないでしょうか。
この背景には消費者の消費スタイルの変化があります。
NRIが世の中の消費スタイルの動向を調査した「生活者1万人アンケート調査」によると、2000年では商品にこだわりがない人が約8割、その中でも半数が安さを求めるという結果となっていました。
しかし近年は商品にこだわりがなく安さを求める「安さ納得消費」の割合が減少、反対に高くても気に入った付加価値にお金を払う「プレミアム消費」が2000年と比べると10%上昇しています。
この変化をうけ、日用品・消費財業界もプレミアム消費に対応した商品の開発が進んでいます。
生活用品を扱うエステーは高付加価値商品の開発とブランディングにより、2013年から2018年で営業利益率を約2倍に伸ばしています。
高付加価値商品は高単価で売り上げの高い商品ともいえます。価格競争になりがちな日用品・消費財において消費者に選ばれる高付加価値商品を開発することは売り上げ上昇において重要な要素になっているといえます。
日用品・消費財メーカーの最新動向(6)コロナに伴う変化
コロナ禍による近年の変化があるのがヘルスケア領域です。
日々生活していても、消毒液やハンドソープを使うシーンは2019年までと比べると増えた人がほとんどでしょう。
実際に衛生剤(手指消毒液やハンドソープ、除菌シート等)の市場は急速に拡大しています。以下は2019年から2020年の花王の衛生剤売り上げを比較したグラフです。
※全国小売店パネル調査からの花王推定値を参考にunistyleが独自作成
また、トイレタリー市場全体(85 品目計)でも前年比 107%(2兆 2500 億円)で市場が拡大しています(SCI:全国消費者パネル調査データ推計値、インバウンド消費除く)。
まだ先の見通しが立たないコロナ禍においてヘルスケア領域の需要は続くでしょう。
また、コロナ禍はデジタル化を中心とした働き方改革に伴う在宅勤務の普及など、社会変化に拍車をかけました。
「巣ごもり時間」が増えた現在、自宅は働く場でもあり、自由な時間を過ごす場ともなっており、自宅で過ごす時間の質を上げたいというニーズが高まっています。
こうした消費の意識から、生活必需品や日用品などへのこだわりが高まっており、高付加価値商品など、消費者が自宅の質を高める商品を求めています。
さいごに
ここまで、日用品・消費財メーカーについて紹介しました。
生活に密着しているからこそ、世の中の変化に対応した商品開発やマーケティングが欠かせない業界であるということはおわかりいただけたのではないでしょうか。
日用品・消費財メーカーに興味のある就活生は、今回紹介した業界の動向を踏まえ、自宅周辺のスーパーやドラッグストアなどで商品を眺めて商品に込められた狙いなどを考察してみてください。業界や企業研究につながると思います。
Unistyleでは以下にも日用品・消費財メーカーに関する記事を掲載しております。こちらも参考にし今後の就職活動にお役立てください。
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