新卒に1000万円、急激な人材市場の変化に就活生はどう向きあえばいいのか。
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最終更新日:2024年10月23日
NECは、新卒であっても学生時代に著名な学会での論文発表などの実績があれば1000万円を超える報酬を支給する報酬制度を発表しました。
その背景としてNEC社長の新野隆氏はこう語っています。
「グローバルでの競争を戦うには、国内の制度を変えていく必要がある」
この発言は、人工知能(AI)などに精通した優秀な人材の獲得を巡る世界的な競争に対する危機感を表しています。
世界的に加熱する人材の獲得競争の波は日本にも波及し、NECをはじめとした日本企業の給与体制に大きな影響を与えています。
そこで本記事では、NECのように給与水準の引き上げを行なった日本企業の年収や求められるスキルなどを具体的に紹介していきます。
また米国など海外との比較を通じて、日本の給与制度や雇用制度の問題点を解説するとともに、このような環境の変化に対して就活生がどう向き合っていけば良いのかを考察します。
新卒年収1000万円の背景
新卒年収1000万円の背景として、既存の人事制度への問題意識をNEC社長の新野隆氏は指摘してます。
世界との競争に勝ち抜くためには優秀な人材の確保が欠かせません。しかしながら、日本社会の根底にある「終身雇用と年功序列」の制度では、十分に優秀な人材を確保ができない現状があります。
海外では一般社員に対して給与の上限は設けられておらず、本人のスキルや実力によって給与が上下する実力主義の給与体制が一般的です。
そのため優秀であればあるほどその人材は日本企業よりもいい待遇を海外企業で得ることできます。こうした背景から、優秀な人材が国外に流出してしまうと考えられます。
NECは、「研究者を除く社員には既存の制度を続けるが、ゆくゆくは世界の制度に寄っていくだろう」との考えを示しました。
トヨタ自動車の豊田章男社長が「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べたように、日本の労働環境は変革期に入ってきているのではないでしょうか。
その変革の1つとして、特にIT人材の不足からこの分野での給与水準が引き上げられたと考えられます。
新卒年収引き上げを発表した企業例
それでは、NEC以外に新卒の給与水準を引き上げた企業を紹介していきたいと思います。
またそれぞれの企業は、どのような人材を求めているのでしょうか。
ソニー
ソニーは、人工知能などの領域で高い能力を持つ新卒社員の給与を引き上げ最高で730万円と、現在の約560万円から3割程度給与を上げることを発表しました。
デジタル分野での人材の獲得競争が世界的に激しくなっていることが背景にあるとしています。
ヤフー
ヤフーは、エンジニアとして優れた実績を持つ人に、初年度から年収650万円以上を提示しています。
入社時に18歳以上30歳以下で就業経験のない人が対象で、初年度の年収が650万円以上となるのは「エンジニアスペシャリストコース」で、以下のいずれかの条件を満たすと応募することができます。
- エンジニアリングに付随する起業経験
- 技術書の執筆経験
- 自身が開発したアプリのDL数100万以上
- Kaggleにおいて、単独参加でコンテストTOP10%入賞経験
- 競技プログラミングレート保持者
- トップカンファレンスでの論文発表経験
これらの条件を満たすのは難しく、逆にこのレベルの条件を満たし年収650万円は少ないという声もあるようです。
ファーストリテイリング
「ユニクロ(UNIQLO)」などを展開するファーストリテイリングが、一部の職種の初任給を4万5千円引き上げると発表しました。
対象となるのは国内外の転勤が含まれるグローバルリーダー職のみで、変更後の初任給は現在の21万円から25万5,000円となります。
また優秀な若手を確保するために、入社後最短3年で子会社の幹部などに抜てきし、年収は1000万円を超え、欧米勤務では最大3000万円程度とする人事制度を発表しました。
くら寿司
くら寿司は2020年春の新卒採用で、入社1年目から年収1000万円の幹部候補生を募集しました。
条件としては、26歳以下(就業経験者、卒業後に1年以上ブランクがある者は対象外)という年齢制限に加え、TOEIC800点以上、簿記3級以上といった資格が必要で募集人数は10名でした。
実例を踏まえた考察
上記の改革を踏まえて考察してみると、市場価値が向上している人材はIT関連の専門知識を備えた人材と語学力やマネジメント力に優れ、将来は管理職として期待されている人材の2つタイプに分けられると考えられます。
就活生の立場から考えると、自身の市場価値を上げるためにこれらのスキルを身につけることが出来る環境で働く、という考え方も企業選択における1つの基準になり得ると思います。
しかし、市場価値を高めて何がしたいのか・自分が成し遂げたいことは何か、まで掘り下げて企業を選択することができれば、心から納得のいく就職活動にすることができるのではないでしょうか。
IT人材の年収、日本はアメリカの半分以下
それでは、こうした日本企業の取り組みは海外企業と比べてどうなのでしょうか。
日本企業の給与水準では、特にIT人材の評価がグローバルスタンダードに達していないとされています。
経済産業省によると、IT人材とはAI、IoT、ビッグデータ等に携わる人材や情報セキュリティに精通した人材を指すようです。
以下の表は経済産業省が発表した各国のIT人材の年収分布を示した表です。
上記の表から、IT人材の年収が日本はアメリカの半分以下の水準であることがわかります。
経産省によると、日本のIT人材は年収500万円前後が多いですが、米国では1000万円~2000万円が多いとされています。
また、産業界で続く大型のIT関連投資や、情報セキュリティ等へのニーズ増大により、IT人材の不足が深刻な問題になっていくでしょう。
人材不足は今後さらに深刻化し、2020年にはIT人材が29.3万人(うちAI人材は約4.7万人不足)する見込みです。さらに2030年には、約59万人程度まで人材が不足すると推計されています。
以上のような背景から、日本企業はより優秀な人材や人手不足となるIT人材を確保することが困難になるでしょう。
そしてその困難を乗り越えるためには、既存の「年功序列・終身雇用制度」の見直しが必要であり、優秀な人材に対する待遇の改善が進んでいくと思われます。
就活生はどう向き合うべきか
本記事を読んで就活生の皆さんはどう感じたでしょうか。年収1000万円を稼ぐために必要なスキルを身に付けようと奮起したでしょうか。はたまた、年収に重きを置くのではなく自分がやりがいを感じる仕事をしたいと思ったでしょうか。
仕事は人生において大きな時間を占める重要な要素です。そして就活生の皆さんはその仕事を通じて、金銭、達成感、人間関係など得ることで人生を豊かにし「幸せになりたい」と考えていると思います。
幸せとはなにか
それでは「幸せ」とはなんでしょうか。この問いに対する1つの答えを示す著書として「幸福の資本論」という著書があります。
そしてその著書において、幸せとは「金融資産」「人的資本」「社会資本」の3つの条件から成り立っているとあります。
簡単に説明すると「お金・自己実現・人とのつながり」の3つから幸せは成り立っているという解釈です。
もちろん、この3つ全ての要素を高いレベルで実現することが理想ですが、それぞれが絶妙なバランスで成り立っており、全てを高いレベルで実現することは相当難しいでしょう。
ここで、私が皆さんに伝えたいことは「働いている自分をどれだけ具体的にイメージできているか」ということです。
「自分のやりたいことで、年収1000万を稼ぎ、友人や家族との時間も大切にする。」
このような理想をイメージしたのならば、なぜ年収1000万円必要なのか、その職種はプライベートの時間をしっかり確保出来るのか、どのように自分の成し遂げたいことにつながっているのか、をしっかり説明できるようになりましょう。
また、現実的に年収1000万円を稼ぎつつプライベートの時間を確保することが難しいのであれば、理想年収を下げる、プライベートの時間を減らすなどの選択が必要です。
年収は欠かせない要素の1つですが、逆に言えば1つの要素でしかありません。
要はバランスが重要で、自分自身が理想とするバランスをどれだけ具体的にイメージすることができるかが重要です。
そしてその理想は人それぞれ異なってあたりまえです。他者のわかりやすい理想に安易に迎合するのではなく、自分自身が考え抜いて理想の状態をイメージしましょう。
そうすれば、面接で深掘りされた際にも筋道を立てて面接官が納得する回答をすることができるでしょう。
また、より具体的に年収1000万円の生活水準を知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
さらに、より自分自身のことを知り、理想の状況をどの企業で実現することができるのかを把握することが大切です。
以下に自己分析や業界研究に関する関連記事を紹介していますのでぜひ活用し、この変化の時代を乗り越えていって欲しいと願っています。