就活生が話しがちな志望動機「グローバルに働きたい」その理由や実情を考える

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最終更新日:2024年01月18日

就活生が話しがちな志望動機「グローバルに働きたい」その理由や実情を考える

本記事を通して、まず、就活生が面接で語りがちな「グローバル」などの抽象的な言葉が何故好ましくないのかを理解していただき、その上で皆さん自身が抽象的な言葉である「グローバル」に具体性を付け加えていっていただけたらと思います。

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就活生が陥りがちなグローバルに働きたい

・グローバル【global】
世界的な規模であるさま。国境を超えて、地球全体にかかわるさま。
出展:三省堂 大辞林

自分自身の海外生活経験や留学経験などから「グローバルに働きたい」という企業選びの軸を持つ学生は少なくありません。一方で、「グローバルに働く」ということについて、しっかりと定義まで考えている学生は少なく、何となくグローバルという言葉はかっこいいぐらいに使っているのではないかと思うことも多くあります。
参考:就活生が話しがちな志望動機「グローバルに働きたい」の3つの分類

こんにちは、20卒の内定者です。さて、最近24卒の皆さんのESの添削や相談を受けるようになりましたが、ある共通する疑問点が浮かぶようになりました。

「御社ならグローバルに働けると思い志望しました」「グローバルに働けるので〇〇業界を志望しています」

「主体性」「リーダーシップ」などの言葉と同じく「グローバル」という言葉は抽象度が非常に高い言葉です。「グローバル」という言葉を使うこと自体は悪いことではありませんが、「グローバル」を具体的な形にまで落とし込めている学生は非常に少ない印象です。

以前参加したとある企業の面接で次のようなやりとりがありました。

学生:「御社ではグローバルに活躍できる機会が若手からありますか?」
社員:「〇〇さんが考えるグローバルに働くとは何ですか?」
学生:「外国人の方と働くことです」
社員:「それはつまり…?」
学生:「英語を使えたらいいなと考えてます」
社員:「それなら毎日です(苦笑)」

この学生にとって「グローバル=英語を使うこと」だったようです。人によってグローバルの定義は異なると思うので彼女の考えが短絡的であるとは否定しませんが、それでも彼女とその後の選考や懇親会で会うことはありませんでした。

もっとも、「グローバルに働ける(英語を使いたい)から御社を志望します」では、企業側も納得はしないでしょう。彼女はガクチカでも語学の学習をしてきたこと、自分が英語を話せることをアピールし会社で役立てたいと語っていました。もし英語を使うことが本当に重要であるならば、語学学校などで英語の先生になるのがベターなのでは?と解釈しかねません。

彼女もまた極端な例であったと思いますが、「グローバルに働く」という言葉をどこかマジックワードのように考えている就活生は少なくありません。

マジックワードとは、
人をあたかも魔法のように思うように動かすことができるキーワード

主に意味が曖昧で、使う側の思想によって便利に扱うことが出来る言葉や幅広い意味を持つ呼称(特に蔑称)を指して呼ばれている。
参考:Hatena Keyword マジックワードとは

なお、自分が求める「グローバル」とは何なのかを言語化できない人や、自分の求めるグローバルな環境がある企業を知りたいという就活生には、就職エージェントneoの利用を検討してみるのも良いでしょう。

エージェントを利用することでアドバイザーから、就職活動において自分が求める「グローバル」とは何なのか、客観的にアドバイスがもらえる上、志向に合う企業を紹介してもらえる可能性もあります。

少しでも興味があるという方は、下記の画像をクリックしてサービスを利用してみてください。就職エージェントneo

就活で抽象的な言葉を使うということ

「主体的に取り組み…」「リーダーシップを発揮して周りを巻き込み…」「グローバルに働きたい…」「相手の立場に立って考える…」などの抽象的な言葉を就活生は好んで用いてる印象です。

テニスサークルの練習長として主体的に働きかけることで周りのメンバーを巻き込み校内戦まで導きました。この経験から主体的に働きかけることが私の強みであり、・・・
塾講師で、生徒の成績を向上させるために生徒目線に立つことを心がけました。結果、生徒の成績を向上させることができました。

よくあるESの解答例を元に作成してみました。一見、よく書けているとも考えられます。

ですが、「主体的に働きかけるって具体的には何をしたの?」「生徒目線に立つって具体的には何をしていたの?」といった疑問が残ります。もちろん、これらのESが選考を突破したとしても面接で上記のような質問がされるのは避けがたいでしょう。

こうした抽象的な言葉は一見説明できているように見えますが、実は何も説明できていないことと同義とも言えます。

ESを読んだり、面接をする社員のほとんどが学生に会ったことがない人たちです。そうした人たちにわかりやすく伝える為にも抽象的な言葉はなるべく避け、なるべく具体性を持ったESを書くことが好ましいでしょう。

海外勤務の形態

抽象的な言葉が就職活動では好ましくない点は理解いていただけたかと思います。ここからは本題である「グローバルに働く」に具体性を付け加えていきます。

3種類のグローバルに働く

一口にグローバルに働くといっても大きく3種類に分類できるとunistyleは考えています。その3種類は次のように分類されます。

海外出張

拠点を日本に置きながら、短期間の間海外の事業所で仕事をしたり、海外の顧客先に出向するケースが海外出張になります。

拠点を日本に置いている点が後述する海外駐在との大きな違いになります。海外駐在と異なり、短期間での仕事がメインのため、先週はアメリカ、来月はシンガポールと多国に行ける可能性も広がります。総合商社や各種メーカーでこのような働き方をしている社員が多いように思われます。

海外駐在がメイン

海外駐在の場合は拠点を海外の事業所に置くことになります。数年単位で海外に駐在し、親会社の現地法人で働くのが一般的なケースになります。一口に駐在と言っても、現地のチームをまとめる国際色豊かな場合もあれば、現地まで出向いて日本人と働くといったケースもあるようです。

日本で働くのではなく、海外に住みながら働くことになるのでいい意味でも悪い意味でもカルチャーギャップを経験することが多いようです。

チームのメンバーがグローバル

外資系企業の日本法人に多い特徴で、チームメンバーが多国籍であるという働き方があります。場合によっては日本人がチームの少数である場合もあるようで、チームの共通言語である英語をメインに使うことがあるようです。

例えば英語を社内公用語に設定している楽天では、そのチームでもっとも母国語にしている言語をチームの共通言語として用いています。

他にも、全世界のブレインが集まるMcKinsey & Companyでは英語について次のように言及しています。

採用の際に英語力が問われることはありませんので、留学や海外居住などの経験は必須ではありません。採用面接もすべて日本語で行います。但し、マッキンゼーでは、英語での高いビジネスコミュニケーション力を身に着けることが、今後ビジネスパーソンとしてキャリアを積んでいく上では欠かせないと考えております。例年、多くの新卒入社の社員の英会話力がまだビジネスレベルに達していない為、入社前個別英語レッスン、入社後の数ヵ月から半年程度の海外語学留学などの支援制度を提供しています。
参考:McKinsey & Company 採用情報

海外出張・駐在、多国籍なメンバーと仕事がしたいなら、どれを選択したとしても英語力は必要不可欠な様です。

自分はどの形態で働きたいのか

海外出張が多いのか、海外駐在が多いのか、海外に行くことは少ないが多国籍チームで日本で働く方がいいのか…etc、企業ごとにその形態も異なっています。

特に海外駐在となると、全ての業界・企業が行けるのかというとそうではなく、金融・総合商社・メーカーなど海外とビジネスをしている一部の業界に限られます。

日本を軸足にグローバルに働きたいのであるならば、海外出張・多国籍な人が集まる企業を志望するべきでしょうし、海外に完全に軸足を置きたいのならば海外駐在がメインの企業を受けてチャンスを増やすべきでしょう。

海外で働きたいから外資系・総合商社はどうなのか

ここまでで「グローバルに働く」ことへの入り口である、働き方の3形態への理解を深めていただけたと思います。ここでは、より具体的な例を提示しながらより「グローバルに働く」ことへのイメージを深めていただきたいと思います。

海外で働きたいから外資系・総合商社は合っているのか?

海外に行けるなら総合商社や外資系企業だとなんとなく考えてしまいがちですが、実際のところはどうでしょうか。次の図を参照してください(参考:東洋経済ONLINE)。

人数で見ると、トヨタ自動車・ソニー・デンソーなどのメーカーが多いことがわかります。ただ人数比の視点で見ると、総合商社4社での海外勤務の割合が20%を超えていて、5人に1人が海外勤務を経験していることがわかります。

割合に着目した場合、総合商社であれば海外勤務の機会は広がるといった考えは間違いではないと言えます。とはいえ、メーカーを志望する学生と総合商社を志望する学生ではそもそもの層が異なります。総合商社では、あらかじめ海外駐在を志望する数多くの社員達の中から選ばれなければいけないという観点を忘れてはいけません。

商社が海外勤務が多いことがわかりましたが、上位10社の中には外資系企業の名前は入っていませんでした。

外資系企業だと海外に行けないのか

総合商社や大手メーカーが海外勤務者の人数・比率が高いことには納得できる一方で、外資系企業も海外勤務者数が多いようにも思われます。それでも、先程の上位10社には外資系企業はランクインしていませんでした。このロジックを解くには、まず外資系企業とは何であるか、その根本を理解する必要があるでしょう。

外資系企業とは、外国法人又は外国人が一定程度以上の出資をする日本の企業をいう。
引用:Wikipedia外資系企業

もっと簡単に表現するのであるならば、外国企業が日本でビジネスをするために立てた(買収した)会社です。

より深く読み解くと、外資系企業は外国の企業が日本を含めたアジア圏でのビジネスチャンスを拡大するために設立されているとも言えます。

海外出張・赴任は企業にとっても費用の面で大きく負担がかかります。そのため、外資系企業は日本法人を設立することで現地の日本人を雇いコストを削減しているとも考えられます。可能性は0ではないと思われますが、海外展開を狙う日系企業と比較すると海外出張・赴任は少ないことは否めません。しかし外資系の場合、一部の優秀な人が本社に逆スカウトされる形で海外勤務になることもあるようです。

ここまでで、
・海外出張・赴任→総合商社・メーカー(が多い)
・外資系企業≠海外勤務のチャンスが増える

と情報をもとに確認することができました。間違えてはいけないのが、100%全ての企業がこのケースに当てはまるのではなく、平均値を取った場合にこのような結果になると予想ができると言えるということです。

就活生の考える海外と働く海外

もう1点就活生と話をしていて気になった点がありました。「海外勤務と聞いてどこで働いているイメージがある?」と聞くとNY、ロンドン、シンガポール…etcとどうも有名都市の名前が上がり、海外旅行と同じ感覚で捉えている様に思われました。

仕事(ビジネス)であって旅行(遊び)ではない

至極まっとうな話ですが、海外勤務・駐在は仕事の一環であって旅行ではありません。「何を当たり前のことを?」と疑問を持つかと思いますが、この前提を落として考えている人が多い印象です。

例えば総合商社の勤務地と聞いてイメージが湧くでしょうか。総合商社勤務50人をランダムにピックアップし、勤務地の割合を出しているデータがあったので紹介します(参考:世界の常識に宣戦布告)。

サンプル数が50人と少ないために信頼性が高いとは一概には言えませんが、上記の様な結果になっています。50%近くがアジア圏に赴任していることが伺えます。

ロンドン・NYといった所謂人気都市が属する北米・ヨーロッパは10%にも達しません

このロジックはとても単純で、先程の海外勤務者が多いメーカー系の場合、工場をアジアに持っています。海外駐在する場合、工場の生産管理や現地での原材料調達などに出ることが多いようです。総合商社も同様で、エネルギー事業や食品事業などの場合は、商品を扱っているタイやインドなどアジア圏中心の赴任になるようです。

Facebookで見かける商社マンやメーカーで海外駐在している社員の近況報告も、どちらかといえばキラキラ海外主要都市で働いている様子よりかは、海外の地方都市で泥臭く働いている様子を多く見かけます。

とはいえ主要都市で働きたい

金融街と聞いて頭に浮かぶのはNYのウォール・ストリート、ロンドンのシティなどでしょうか。就活生が憧れる海外勤務地はおおよそこれらの地域に当てはまるのではないでしょうか。

これら主要都市には各国の企業の支社が集まる傾向があります。そうした支社は外国での本社機能も果たしているため、集まる人材も優秀層が多いようです。そのため、若手から積極的に配属される機会はあまり多くないと思われます。

金融業界のトレーダーや投資部門に就職することができれば早い段階からそのような主要都市に配属される可能性はあるかもしれませんが、決して多くはないでしょう。

まず、配属リスクです。

メーカーの場合、全国各地に工場がある場合がほとんどです。そのほとんどが、都会から離れた田舎にあると思います。

仮に海外勤務になったとしても、田舎の可能性はあります。
参考:大手メーカーのリアル〜メーカーの抱える問題点いついて僕が思うこと〜

狙った海外都市で働きたいという就活軸をお持ちの方ならば、わざわざ日本企業を通さずとも海外の現地法人を受検することが一番確実で早い方法とも言えます。

で、なんで日本じゃだめなの?

次に大前提になりますが、グローバル、グローバルって言うけど「なぜ日本ではダメなのか?」といった部分にフォーカスします。

海外で新規ビジネスを創造していきたいです
海外の教育関連分野に携わりたいです。ミャンマーの教育格差をなくしていきたいです!

上記は一例ですが、このような志望動機をよく目にします。志高く素晴らしい志望動機ですが、ひねくれ者の私や一部の面接官は「それ海外でやる必要ある?」と疑問を持ってしまいます。

新規ビジネスをなぜ海外でする必要があるのか、日本でビジネスを作ってはいけないのか?日本にも教育格差の問題はある。それなのになぜ日本よりも先に海外の教育格差なのか?

実際に海外でインターン経験があったり、海外教育関係のNPO法人に務めた経験がある人であるならば、自身の具体的な経験から志望動機を語ることができています。何も経験がないまま、いきなり「ミャンマーのビジネスを推進したい!」と語っても面接官はびっくりするだけです。

ガンジー就活生とは「世界平和に貢献したい」「皆の笑顔が私の原動力」などなど、聞いてる面接官も思わずうわっとなってしまいそうな綺麗事を話してしまう就活生のことです。企業理念にも敏感で、企業理念の素晴らしさを面接で語ってしまったりします。

参考:就活になると急増する「ガンジー就活生」からの脱却が内定への第一歩

なぜ「グローバル」なのかに限らず志望動機を語るさいなどにも自身の経験に紐つけることで説得力を増すことができるでしょう。

手段と目的

最後に手段と目的の部分に着目します。手段と目的が入れ替わってしまうことは多々あります。

こちらは元日本代表の陸上選手の言葉です。早く走る(目的)為にフォームの改善(手段)や筋力アップ(手段)が必要なのであって、気がついたらフォームの改善、筋力アップなどの手段が目的になっている。これと同じようなことが日常生活では多々あります。

英語が話せるようになるためにTOEICの勉強をしているのであって、気がついたらTOEICのスコアを上げることが目的になっている。。。

痩せることが目的でダイエットしているのに、ダイエットすることが目的となっている。。。

医者になるために医学部に行くのであって、気がついたら医学部に行くことが目的になっている。。。

グローバルの例も同じで、仕事を通して成し遂げたいこと(目的)の為にグローバルに働く(手段)のであって、グローバルに働くために会社を選んでいるわけではないと思います。グローバルに働くことは手段であって、目的ではないことを見落とさないようにするべきでしょう。

理解はしていても、手段と目的が入れ替わった君の名は。のような状態に就活生は陥りがちなので注意が必要です。

さいごに

グローバルに働くということに対して具体的なイメージを持つことができたでしょうか。グローバルに働くと一口に言ってもその形態は大きく3つあり、更にどこで働くかによって無限通りの組み合わせがあります。

「グローバルに働きたい」と口を揃えて就活生は語ります。特に留学の経験のある学生や語学系学部の学生がこのように強く語っている印象を受けます。自分が考えるグローバルを明確にしていく必要があるのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、グローバルに働くのは手段であって目的ではないことを念頭に置き、本記事が改めて自身のキャリアについて考えるきっかけになっていったら幸いです。

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不動産2トップ、三井不動産と三菱地所の牙城を崩したのはあの企業。その背景には綿密な経営戦略が!? 不動産2トップ、三井不動産と三菱地所の牙城を崩したのはあの企業。その背景には綿密な経営戦略が!? 1月の今日この頃、就活生は業界研究・企業研究に勤しんでいるかと思います。そこで、今回は就活生からの人気の高い不動産業界の大手企業6社を、各社が発表した2020年3月期第二四半期決算を基に分析してみました。IR情報・第二四半期決算などと聞くと、「IR情報で企業研究って難しそう」と思う就活生も多いかと思います。本記事では、IR情報の基本知識と各社のセグメント別の営業成績を、IR情報に馴染みのない就活生にもわかりやすく分析・解説しているので、業界研究・企業研究・他社比較に役立てていただけると幸いです。◆「IR情報」とはIR情報とは、英語でInvestorRelations、日本語では「投資家向け広報」と呼ばれるもので、企業が投資家向けに経営状況や財務状況、業績動向に関して発信している情報のことを指します。就活生がIR情報を分析するメリットとしては、定量的な数字で企業研究をすることができ、今後の注力する事業領域などを垣間見ることができます。◆年度の数え方IR情報での年度表記は、その年度の通期決算をする時期で表記します。例えば、「2020年3月期」という期間は2019年4月1日から2020年3月31日を指します。◆「第二四半期」とは一年間(12か月)を4つに分割した3か月の期間を四半期と呼びます。その年度の4月から6月末までが第一四半期、7月から9月末までが第二四半期、10月から12月末までが第三四半期、1月から3月末までが第四四半期となります。そのため、「2020年3月期第二四半期」という期間は2019年4月1日から2019年9月30日までを指します。第二四半期決算では、その年度の第二四半期(4月から9月末)までの決算報告となるため、上半期の経営状況の指標として用いられます。また、Quater(四半期)の頭文字「Q」を使って、2020年3月期第二四半期を2020/3-2Qと表記する場合もあります。◆「営業利益」とは売上高から、原価と営業活動に要した費用(販売原価や人件費)を差し引いた利益のことを指します。◆「営業利益率」とは売上高に占める営業利益額の割合です。営業利益率が高いほど効率的な営業活動をしていると言えます。本記事の構成過去4年間の営業利益の推移【2020年3月期第二四半期決算】不動産6社の営業利益比較【住友不動産】マンション供給の「量」×「質」で、第二四半期決算3年連続首位!【三井不動産】賃貸・分譲・マネジメントとバランスよく増益。海外事業のさらなる拡大を目指す。【三菱地所】キャピタルゲインの計上時期が下半期にずれ込むも、通期予想では順調。依然丸の内ビル事業が牽引。【東急不動産】投資家向け不動産販売が不調も、住宅事業は好調。広域渋谷圏構想による渋谷再開発も順調に進行中。【森ビル】投資家向け不動産販売を抑えたことで、分譲事業が前年同期比-82億円と大きく減益。虎ノ門・麻布台プロジェクトに着工。【野村不動産】住宅事業の第四四半期ずれ込みにより大幅減益も、主力の都市開発事業は順調に推移。デベロッパー業界の情報収集に役立つ!就活生向けLINEオープンチャットを紹介まとめ過去4年間の営業利益の推移昨年度(2019年3月期通期決算)も含めた過去4年間分の営業利益の推移を示すグラフは以下の通りです。【期間の見方】2016年3月期:2015年4月1日~2016年3月31日2017年3月期:2016年4月1日~2017年3月31日2018年3月期:2017年4月1日~2018年3月31日2019年3月期:2018年4月1日~2019年3月31日上記グラフを見ると、三井不動産・三菱地所・住友不動産の営業利益が過去4年間で順調に推移していることがわかります。不動産業界のトップランナーは変わらず三井不動産。2017年3月期通期決算から三菱地所が次いで二番手。その2社を追いかけるのが住友不動産という構図です。昨年度の不動産業界4位は、過去4年間を通して毎年度微増している東急不動産でした。それに対し、野村不動産・森ビルの営業利益は過去4年間でほぼ横ばいの状況です。【2020年3月期第二四半期決算】不動産6社の営業利益比較【2020年3月期第二四半期決算】は以下の通りです。また、過去4年間分を合わせたグラフを作成しています。【期間の見方】2017年3月期第二四半期:2016年4月1日~2016年9月30日2018年3月期第二四半期:2017年4月1日~2017年9月30日2019年3月期第二四半期:2018年4月1日~2018年9月30日2020年3月期第二四半期:2019年4月1日~2019年9月30日【2020年3月期第二四半期決算】を、前年同期比で対比させてみると以下のようになります。住友不動産:1,375億7300万円(前年同期比9.8%の増益)三井不動産:1,186億400万円(前年同期比5.8%の増益)三菱地所:922億7600万円(前年同期比13.7%の減益)東急不動産:316億8200万円(前年同期比1.5%の減益)森ビル:305億円(前年同期比15.0%の減益)野村不動産:216億8400万円(前年同期比16.7%の減益)このグラフから読み取れることとして、最も大きなポイントが、住友不動産が【2018年3月期第ニ四半期決算】から3年連続で首位に立っていることです。住友不動産・三井不動産が前年度同期比で増益、東急不動産が微増、三菱地所・野村不動産・森ビルが減益という結果になりました。また、不動産業界全体に影響を及ぼすようなトレンドは以下のようなものが挙げられます。「2019年上半期、首都圏の新築マンション供給戸数減少も、平均価格は上昇」首都圏における2019年上半期の新築マンションの新規供給戸数は、前年同期(2018年上半期)の1万5,504戸から2,068戸(13.3%)減少の1万3,436戸で、上期としては3年ぶりの減少となり、「1992年(1万959戸)以来の低水準」となった。2019年下半期の供給戸数は2万3,500戸を見込んでおり、2018年下半期と比べ8.7%増加すると見ている。2019年上半期の1戸当たりの平均価格は6,137万円(同2.9%上昇)で、上半期としては2013年以降7年連続で上昇した。㎡単価は平均90.7万円(同3.7%上昇)で、平均価格と同様、7年連続で上昇した。【引用】「首都圏マンション市場動向」(不動産経済研究所)「2020年東京オリンピック後の不動産マーケットはどうなる?」2020年の東京オリンピック開催が決定したのが、2013(平成26年)年9月ですが、確かに、その位の時期から不動産マーケットは上昇傾向となりました。その時期から地価公示価格の地価変動率推移が一都三県を中心として上昇に転じています。(中略)東京オリンピック後に、リーマンショック級の世界的な経済危機といった不可抗力な事態の発生を除けば、不動産マーケット全体が暴落に転ずることは考えにくく、緩やかな後退をするエリア・分野や、極地的な上昇をするエリア・分野、底堅く平行線をたどるエリア・分野など、かつてないほど多極化した不動産マーケットの状況を迎えるかもしれません。【引用】2020年東京オリンピック後の不動産マーケットはどうなる?(三井不動産リアルティ)ここからは、各社ごとの営業利益の増減要因や今年度の通期予想などについて、【2020年3月期第2四半期決算】を基に分析していきます。【住友不動産】マンション供給の「量」×「質」で、第二四半期決算3年連続首位!住友不動産の2020年3月期第二四半期決算は1376億円の営業利益となり、前年同期の1252億円から9.8%の増益となりました。この結果、第二四半期での営業利益額は三井不動産・三菱地所を抑え"3年連続首位"に立ちました。今期決算分析前年同期比9.8%増益、第二四半期決算では不動産業界首位に立った住友不動産。その要因として考えられるのは、"販売事業の上半期集中"と"賃貸事業の好調"です。住友不動産の過去4年間の第二四半期決算を見てみると、販売事業の通期予想に対する第二四半期までの進捗率に変化があることがわかります。【販売事業の対通期予想進捗率】2016年3月期第二四半期:49%2017年3月期第二四半期:67%2018年3月期第二四半期:77%2019年3月期第二四半期:95%2020年3月期第二四半期:99%このように、2017年度3月期第二四半期から通期予想に対する進捗が上半期に集中していることが分かります。これは、後述する中期経営計画の「量を追わず利益重視で販売ペースをコントロールしていく」「競争激化の用地取得環境が続く中、『好球必打』で着実に確保する方針は継続する」という方針が関わっていると思われます。不動産業界全体として賃貸・販売の需要が集中しやすい第四四半期を待たずに「好球必打」で確実な利益を確保する戦略のため、通期予想の進捗が上半期集中になっているものと思われます。その結果、マンション供給戸数では不動産業界5年連続首位に立っています。また、供給戸数という「量」で首位であることに加え、今後は量よりも利益重視の方針により甘い値付けや値引きをしないで「質」を追い求めていくようです。そのため、三井不動産(分譲事業:347億円)、三菱地所(住宅事業:47億円)に対して、住友不動産の販売事業は464億円の営業利益を第二四半期で記録し、業界首位に立っています。※分譲住宅マンションの販売を行っている事業が、三井不動産では分譲事業、三菱地所では住宅事業、住友不動産では販売事業にあたります。【参考】「住友不動産、事業主別供給戸数で5年連続の全国・首都圏第1位」(日本経済新聞)マンション販売事業が住友不動産の一つの強みではありますが、セグメント別営業利益を見てもわかる通り、住友不動産の主力事業はやはり賃貸事業です。住友不動産は、三井不動産や三菱地所などのように所有物件の売却を繰り返し数百億円の利益を得るようなビジネスをせず、物件を所有し続け賃貸事業や販売事業に回しています。第七次中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)での東京都心への賃貸ビル投資という方針で開発した既存ビルが、昨今の東京都心でのオフィスビルの需要・空室率の低下・賃料の上昇という好調な市場環境の下で功を奏したことが好調の要因です。そのために、賃貸事業では既存物件の賃貸収益だけで、前年同期比61億円の増益、新規物件を合わせて賃貸事業では前年同期比65億円の増益の837億円の営業利益、39%という高い営業利益率を叩き出しています。住友不動産は、第二四半期決算発表後の通期予想営業利益を2,340億円と見込んでおり、これは三菱地所の通期予想の2,300億円を追い抜き、2,800億円を見込んでいる三井不動産に次ぐ業界二位に躍り出る可能性があります。下半期の住友不動産と三菱地所の動向により、不動産業界の情勢に変化が起こる年になりそうです。【参考】【住友不動産】2020年3月期第二四半期:決算説明会資料経営計画住友不動産は2019年5月に第八期中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)を発表し、今年度はその初年度にあたります。経営計画の概要は以下の通りです。第八次中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)✔業績目標→中計最高営業成績連続更新、営業利益三か年累計7,400億円の達成(第七次中計+1,268億円、+21%)✔賃貸設備投資計画→収益基盤強化のため、東京都心における賃貸ビル投資を継続推進✔部門別業績目標→東京のオフィスビル賃貸を成長の柱に<事業戦略>①不動産賃貸→好調な市場環境に支えられた七次を上回る利益成長を目指す②不動産販売→七次で実現した高水準の利益規模を維持する③完成工事→リフォーム(新築そっくりさん)は、六次までの停滞から脱した七次の成長路線を継続する④不動産流通→グループの連携を一層強化し、九次以降の成長基盤を構築する住友不動産は、第八次中期経営計画において賃貸事業を継続的に成長させ、三か年累計の目標営業利益は第七次比+1,145億円の5,300億円としています。第七次中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)で投資した東京都心のビルが2020年3月期第二四半期では既存ビルとして大きな収益源となったことを踏襲し、継続的に東京都心の賃貸ビルへの投資を行うことでさらに収益力を強化させることで実現させる計画です。また、販売事業においては用地取得が激化している環境を踏まえ、量を追わず利益重視で販売ペースをコントロールし、「好球必打」で着実に確保する方針は継続することで、七次の利益規模を維持する方針です。【参考】【住友不動産】第八次中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)【三井不動産】賃貸・分譲・マネジメントとバランスよく増益。海外事業のさらなる拡大を目指す。三井不動産の2020年3月期第二四半期決算は1186億円の営業利益となり、前年同期の1121億円から5.8%の増益となりました。全社消去とは→各セグメントのどこにも分類できない営業利益・営業経費を加算したもの。今期決算分析前年同期比5.8%の増益の要因としては、賃貸事業・マネジメント事業の好調が挙げられます。賃貸事業では、日本橋・八重洲を中心としたオフィスビル、LaLaportやMITSUIOUTLETPARKなどの商業施設といった事業が、賃料改定と空室率の低下により、増益しました。(当期:782億円・前年同期比9.2%の増益/前年同期:716億円)三井のリパークやマンション管理などを手掛けるマネジメント事業も好調で、受託物件の増加により安定した収益に成長しました。(当期:288億円・全同期比19.5%の増益/前年同期:236億円)三井不動産は第二四半期決算発表後に、2020年3月期通期決算での営業利益予想を当初の予想よりも130億円上乗せの2800億円に上方修正しました。機関投資家向けの収益不動産の開発・売却を行う投資家向け分譲事業の営業状況が順調で、通期での分譲事業での営業利益を1240億円と見込んでいることが、通期予想の上方修正の要因となっています。住友不動産は第二四半期決算発表後に通期予想2340億円と見込んでいるのに対し、三井不動産は2800億円を見込んでいることから、三井不動産は通期での首位奪還を見込んでいます。【参考】【三井不動産】2020年3月期第二四半期:決算説明会資料経営計画三井不動産が2018年5月に策定した中期経営計画「VISION2025」では以下の3点を重視して取り組んでいくと明言しています。主要な取り組み方針✔街づくりの一層の進化✔リアルエステートテック活用によるビジネスモデルの革新✔海外事業の飛躍的成長リアルエステートテック(不動産テック)とは→IoT機器やAIなどのテクノロジーを、不動産販売・賃貸・管理の仕組みに取り組むこと。上記の3点の取り組みの中から、三井不動産の強みである海外事業について取り上げます。2019年3月期通期決算での海外事業営業利益は554億円で他社と比較しても高く(三菱地所海外事業:269億円/2019年3月期)、三井不動産の2019年度連結営業利益のうち19.8%を占めています。2019年3月期における、ハドソンヤード(ニューヨーク)・テレビジョンセンター(ロンドン)の賃貸事業(オフィスビル)や、三井アウトレットパーク台中港(台湾台中市)などの賃貸事業(商業施設)などの竣工が海外事業の成長の一因と考えられます。三井不動産はVISION2025の中で、2025年までに連結営業利益に占める海外事業の営業利益を30%程度まで成長させる目標を打ち立てていることから、賃貸を中心とした海外事業がますます展開されていくと思われます。【参考】【三井不動産】VISION2025【三菱地所】キャピタルゲインの計上時期が下半期にずれ込むも、通期予想では順調。依然丸の内ビル事業が牽引。三菱地所の2020年3月期第二四半期決算は923億円の営業利益となり、前年同期の1069億円から13.7%の減益となりました。今期決算分析前年同期比13.7%の減益の要因は、キャピタルゲインの計上時期・国内分譲マンションの引渡時期の差異が考えられています。【キャピタルゲインとは】保有している資産を売却することで得られる売買差益のこと。キャピタルゲインに対し、資産を保有することで得られる収益(利息や配当)をインカムゲインといいます。三菱地所が保有していた不動産を売却したにも関わらず、その収益を第二四半期決算に計上できなかったために、前年同期よりも減益したと考えられています。キャピタルゲインを下半期に計上した際の取引状況は順調のようです。また国内分譲マンションの営業利益計上も下半期に偏重していることも減益の要因となっています。キャピタルゲインの上半期計上額は前年同期から90億円減益の120億円にとどまりましたが、下半期での計上にずれ込んだことで、下半期は前年同期から120億円増益の390億円、通期では前年度から30億円増益の510億円を予想しています。第二四半期決算だけを見ると三菱地所は不調かと思うかもしれませんが、しっかりと通期予想と併せてIR情報を分析しなければいけないことがわかります。セグメント別に見ていくと、三菱地所の主力事業はビル事業であることは一目瞭然です。連結営業利益の65.9%をビル事業が担っています。昨今の強いオフィス需要による追い風により、丸の内を中心としたビル事業では昨年度から53億円増益の1530億円の営業利益という通期予想になっています。その要因の一つである既存ビルの賃料の改定により、賃料収益の増益が2020年3月期第二四半期で22億円、通期予想で38億円に到達する見込みで、過去5年間で200億円超の増益を実現しました。丸の内のみならず、2019年8月には新宿駅直結ビルリンクスクエア新宿が竣工し、竣工時満室にて稼働しており、ビル事業は順調なようです。また、主力のビル事業のみならず生活産業不動産事業では、御殿場など6サイトのアウトレットで上半期収益で過去最高を更新し、前年同期から24億円の増益となりました。海外事業も好調で、アメリカのビルをリニューアルし2019年12月に全体竣工、リーシング内定率は95%となっています。イギリスでも保有物件を売却し、新規物件の建築工事にも着手しています。【リーシングとは】商業用不動産の賃貸を支援する業務のことで、物件に対するテナント付けや物件の収益性を高めるための一連の業務も含まれます。海外事業においても賃貸収益・キャピタルゲインの増加に伴い、前年同期より100億円増益の370億円という通期予想となっています。前述した通り、アウトレットを手掛ける生活産業不動産事業や海外事業が成長していることは間違いありませんが、連結営業利益の65.9%を占めるビル事業が依然として三菱地所の屋台骨を支えています。三菱地所は第二四半期決算発表後に通期予想2,300億円の営業利益を見込んでいます。これは、通期予想2,800億円を見込んでいる三井不動産、2,340億円を見込んでいる住友不動産に次ぐ三番手となっています。今年度の三菱地所は昨年度の2位から一つ後退し、住友不動産に抜かれる可能性があります。【参考】【三菱地所】2020年3月期第二四半期:決算説明会資料経営計画2020年3月期は三菱地所の中期経営計画の最終年度に該当し、第二四半期決算発表ではその目標に対する予想営業利益も提示しています。今回の中期経営計画は以下の通りです。三菱地所グループ中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)✔丸の内エリアを中心とする大型プロジェクトの竣工・稼働寄与→開発・運営ノウハウ、ブランド力を最大限に発揮し、確実な収益を獲得✔海外事業の拡大・進化→三菱地所グループの競争力を発揮できる事業スタイルに注力し、利益成長を実現✔「回転型投資」のバリューチェーン活性化→優良物件の供給を通じ、売却益を獲得するとともに、多様なフィービジネスを展開三菱地所の中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期の3年間)に対して、各指標が無事に着地する見通しであると決算発表会で述べています。生活産業不動産事業で目標比-20億円、投資マネジメント事業で目標比-40億円と当初の目標に到達しないと予想しています。しかし、中期経営計画において注力すると明言していたビル事業では目標比+150億円、海外事業では+80億円、キャピタルゲインは目標比+130億円と予想しています。そのため、連結営業利益では目標比+100億円の2,300億円に到達すると予想しており、今回の中期経営計画は無事目標に到達する見込みです。【参考】【三菱地所】三菱地所グループ中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)【東急不動産】投資家向け不動産販売が不調も、住宅事業は好調。広域渋谷圏構想による渋谷再開発も順調に進行中。東急不動産の2020年3月期第二四半期決算は316億円の営業利益となり、前年同期の322億円から1.5%の減益となりました。今期決算分析前年同期比1.5%の減益となりました。この要因の一つとされているのが、前年同期比-24億円となってしまった都市事業の不調です。投資家向けビル等売却収益が減益したため、都市事業の減益に影響したようです。この都市事業では、東急電鉄沿線エリア、特に渋谷を中心に都市開発を進めてきました。今期は渋谷ソラスタ、渋谷フクラスが竣工、渋谷駅桜丘口地区再開発も10月に着工し、開発ペースは順調の様子です、減益した都市事業とは違い、住宅事業では前年同期比+24億円と好調で、さらに分譲マンションの引渡時期や物件売却が第四四半期に集中する傾向にあるため、第二四半期時点では通期の計画に対して順調に進捗しているそうです。第二四半期決算発表後の通期予想は、当初の予想よりも100億円上乗せの820億円を見込んでいます。通期予想800億円を見込む野村不動産や、620億円を見込む森ビルなどと比べると、東急不動産が一歩抜きんでるかもしれません。【参考】【東急不動産】2020年3月期第二四半期:決算説明会資料経営計画今年度は東急不動産の中期経営計画「ValueFrontier」(2017年3月期~2020年3月期)の最終年度に当たり、近年の東急不動産の経営計画がどのように決算に影響していたか考察していきます。ValueFrontier✔関与アセット拡大✔新たな需要創出3つの成長戦略(1)ライフスタイル提案型の街づくり→【広域渋谷圏構想】(2)循環型投資事業の領域拡大→インフラ・インダストリー・ホテル・リゾート・学生レジデンス(3)ストックの活用強化東急不動産が強みとしている渋谷において【広域渋谷圏構想】を打ち出し、東急グループ全体での渋谷再開発を進め、個別プロジェクトの開発からエリアマネジメントや管理・運営までを含めたグループの独自性を打ち出す街づくりを進め、関与アセットの価値を高めます。また、太陽光発電事業、風力発電事業などの再生可能エネルギーへの投資も積極的に行っています。この中期経営計画では、2021年度3月期通期決算までに950億円の連結営業利益を目標としていますが、今期の通期予想が820億円に留まっているため、目標達成に向けてさらなる追い上げが必要になりそうです。【参考】【東急不動産】ValueFrontier2020【森ビル】投資家向け不動産販売を抑えたことで、分譲事業が前年同期比-82億円と大きく減益。虎ノ門・麻布台プロジェクトに着工。森ビルの2020年3月期第二四半期決算は305億円の営業利益となり、前年同期の359億円から15%の減益となりました。今期決算分析今期決算全体では、前年同期比-54億円・15.0%減益の305億円となりました。この大きな要因が分譲事業での前年同期比-82億円の大きな減益が挙げられます。その中でも特に、投資家向け不動産販売事業が前年同期比-181億円の減益となっています。森ビルは通期予想でも分譲事業で前年度比-66億円と見込んでいます。森ビルは2019年8月に虎ノ門・麻布台プロジェクトに着工しました。他にもグローバルビジネスセンターの形成を予定しています。ここから、森ビルが所有している物件を新規プロジェクトに回すために、投資家向け不動産販売事業を抑えたことが要因かと推測できます。他の不動産が用地を取得してから再開発するのに対して、森ビルは六本木ヒルズや虎ノ門、麻布など高稼働・高単価の物件を港区に多数所有しており、その土地を再開発しているために用地取得コストがかからず事業効率が良くなっています。実際に、主力事業の賃貸事業では高単価の賃料と99%のオフィス稼働率(2019年3月期)があいまって、前年同期比+12億円の194億円の営業利益を出しています。この賃貸事業での営業利益利益率は25.2%と高いです。【参考】【森ビル】2020年3月期第二四半期:決算説明会資料主要プロジェクト:「虎ノ門・麻布台プロジェクト」「ヒルズの未来形」「総事業費は六本木ヒルズの2倍の5800億円」メインタワー付近には、約700人の生徒が学べるインターナショナルスクールを誘致した。「ヒト・モノ・カネを呼び込むには、外国人が働き、住み、学べることが重要だ」(森ビルの辻慎吾社長)。虎ノ門や六本木エリアには外資系企業が集積し、今回のヒルズのオフィステナントも半数が外資系企業になる予定だという。働くだけでなく、子どもも育てられる機能を付加することで、海外の企業や外国人が集まる拠点にしていきたい構えだ。【引用】森ビル、虎ノ門「第2ヒルズ」に勝算はあるか(東洋経済ONLINE)森ビルが構想から30年を経て着手した虎ノ門・麻布台プロジェクト。その総事業費用は六本木ヒルズの2倍である5,800億円を投じる計画です。東京をさらなるグローバルな都市にするために、虎ノ門を「ヒト・モノ・カネ」が集まる街とすることが目的のようです。オフィス面積・居住可能人数ともに六本木ヒルズよりも規模の大きい開発を予定しているため、竣工予定の2023年以降にさらなる賃貸事業・分譲事業で増益が見込めますが、このプロジェクトの成否によって大きく左右されると思われます。【参考】【森ビル】虎ノ門・麻布台プロジェクト【野村不動産】住宅事業の第四四半期ずれ込みにより大幅減益も、主力の都市開発事業は順調に推移。野村不動産の2020年3月期第二四半期決算は217億円の営業利益となり、前年同期の260億円から16.7%の減益となりました。CREとは→CorporateRealEstateの略で、日本語では「企業不動産」という。企業が事業のために保有している事務所、店舗、工場、福利厚生施設などのすべての不動産を指す。今期決算分析前年同期比16.7%の減益となり、今回取り上げている6社の中で最も大きい減益率となりました。その大きな要因となっているのが、野村プラウドなどのブランドが有名な住宅事業での減益です。マンションと一戸建てを併せた今年度の予定計上戸数が5,100戸であるのに対して第二四半期までには997戸で、一見すると低調な進捗に思われます。しかし、今年度計上予定物件の多くが第四四半期に完成予定であり、通期の計上予定物件に対する第二四半期までの契約進捗率は81.8%と順調です。つまり、契約は取れているが、その物件の引き渡し時期が第四四半期に集中するため、第二四半期では大きく減益してしまったと読み取ることができます。野村不動産の主力事業は、オフィスビル賃貸や商業施設賃貸を行う都市開発事業です。2020年3月期の通期予想での連結営業利益に対する都市開発事業の営業利益は48.1%と野村不動産の利益の約半分を担っています。その都市開発事業の今期の営業利益は188億円・前年同期比+11.4%と好調に推移しました。これは、主に物件売却収入の増加が要因になっています。しかし、都市開発事業のオフィスビルや商業施設での第二四半期空室率は4.3%(前年同期比+0.4%)となっています。空室率の上昇は、オフィスビルや商業施設で空きテナントの割合が増加してしまい、その分の賃料収益が減少することを意味しています。ちなみに、三井不動産賃貸事業のオフィスビルや商業施設での第二四半期空室率は2.0%ですので、野村不動産のほうが2倍高いことが分かります。野村不動産は空室率の改善が今後の課題となりそうです。【参考】【野村不動産】2020年3月期第二四半期:決算説明会資料経営計画野村不動産は2020年3月期~2028年3月期までの9年間にわたる中長期経営改革「NewValue,RealValue」を策定し、今年度はその初年度にあたります。経営計画の概要は以下の通りです。NewValue,RealValue✔連結営業利益:850億円(2022年3月期)(都市開発事業:330億円/住宅事業:330億円)✔分譲・売却事業国内・海外を問わず、分譲住宅事業及び収益不動産開発事業を積極的に展開し、開発利益の拡大を実現。✔保有・賃貸事業優良な賃貸資産の開発と戦略的な物件入替により、競争力の高い賃貸資産ポートフォリオを構築し、安定した賃貸利益を実現。✔海外事業国内で培ったノウハウを活かして事業を展開し、フェーズ3(2026年3月期~20228年3月期)における海外事業の利益比率を15~20%まで拡大。第二四半期で収益用不動産の売却収入が好調だったことで、都市開発事業での営業利益が全同期比+19億円の188億円となっています。今後も国内外を問わずに収益用不動産開発事業を拡大させることで、営業利益を330億円までに成長させる計画です。また、中長期経営計画では、海外事業の展開を示唆しています。すでに進出しているタイ・ベトナム・フィリピンなどの東南アジアでさらに事業を拡大させていくだけでなく、新たな国にも拡大し、2028年3月期までに連結営業利益に占める海外事業の割合を15~20%までに成長させていく姿勢です。【参考】【野村不動産】NewValue,RealValue(2020年3月期~2028年3月期)デベロッパー業界の情報収集に役立つ!就活生向けLINEオープンチャットを紹介unistyleでは業界別のLINEオープンチャットを運営しており、数多くの就活生が匿名で就活に関する情報交換をしています。実際にデベロッパー業界志望者向けのグループでも、各社の選考に関するトークが活発に交わされています。下記の画像をクリックすることで参加用ページに飛び、ニックネームとプロフィール画像を登録するだけで参加することができますので、興味のある方はぜひご参加ください。デベロッパー業界志望者向けグループに参加したい方はこちらをクリックまとめ今回は、不動産6社のIR情報を第二四半期決算を基にまとめました。第二四半期では、過去3年間住友不動産が首位となっていますが、その理由を紐解いていくと、住友不動産の中期経営計画に基づく賃貸事業での営業方針が要因の一つとして考えられます。このように各社の経営状況をIR情報を基に分析してみることで、企業ごとの経営方針や各事業部での好不調が見えてきます。さらに中期経営計画と併せて分析してみると、各社が今後注力していきたい事業領域も明白になってきます。第二四半期決算は短期的な実績に過ぎないため、あくまで現時点での各社の経営状況ということに留意した上で、企業研究・業界研究・他社比較に本記事を役立ててもらえればと思います。不動産業界研究科関連記事はこちらから不動産の業界研究記事一覧決算・IR情報に関する記事はこちら不動産6社に関する記事はこちら◆住友不動産◆三井不動産◆三菱地所◆東急不動産◆森ビル◆野村不動産下記の動画では不動産業界の全体像を紹介していますので、参考にしてみてください。 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安定志向の自分が国家総合職(旧:国家Ⅰ種)ではなく民間就職に舵を切った理由 安定志向の自分が国家総合職(旧:国家Ⅰ種)ではなく民間就職に舵を切った理由 こんにちは、現在就活中の19卒国公立大生です。私は現在、大学を一年間休学しています。大学3年次は、公務員試験(特に国家公務員総合職)に向けて勉学に励んでいました。その後、国家総合職に最終合格したものの、休学という選択肢を選びました。今回は、タイトルにあるように国家総合職に最終合格した私が、なぜ休学してまで民間就活に舵を切ったのかについてお話したいと思います。【本記事のアウトライン】・国家総合職とは何か、その試験制度や年収について・国家総合職が学歴社会といわれる所以・私が民間就活に切り替えた理由・減少傾向にある国家総合職志望者国家総合職(旧:国家Ⅰ種)の試験制度・待遇まずは、国家総合職についてご存じない方やあまり詳しく知らないという方に向けて、試験制度についてざっくり説明させて頂きたいと思います。国家総合職試験は、以前は国家Ⅰ種試験と呼ばれていました。いわゆる「キャリア官僚」になるための試験を指します。公務員試験の中でも最難関と言われており、最終合格はもちろん、その後の内々定までたどり着く人はごく少数です。まずはその試験フローについて以下にまとめてみました。1次試験(マークシート式)→2次試験(論述式、人物試験)⇒[[最終合格]]↓官庁訪問(GD、採用面接)]⇒[[内々定]]1次試験と2次試験に合格してはじめて最終合格者となり、官庁訪問を行う権利を得ることができます。私の受けた大卒程度、法律区分の国家総合職試験の1次試験の倍率は8倍程度、2次試験の倍率は2倍程度となっており、全体の実質倍率は約15倍となっております。もっとも、ここでただ試験に最終合格すればいいというものではなく席次も非常に重要となります。財務省や外務省、経産省、警察庁などの人気省庁を志望する場合は特に席次を意識する必要があるといえます。最終合格時点では、大袈裟に言うと民間でいうESとWebテストが通過した段階に過ぎません。官庁訪問では10数回の面接が複数日に渡り行われ、省庁によっても差がありますが、その倍率は2.5倍ともいわれています。官庁訪問では、省庁に関する知識はもちろんのこと、政治や経済、社会、カルチャーなど幅広い知識が必要となります。そして、その熾烈な官庁訪問を見事乗り越えると内々定となります。つまり、内々定を得るためには、全体として見ると約30倍もの高い倍率を勝ち抜いていく必要があります。ここで、官庁訪問とは何かご存知ない方もいるかと思いますので、簡単に説明させて頂きます。官庁訪問とは、各省庁に採用面接を受けに行くもので、最大3省庁を受けることができます。丸一日拘束される場合がほとんどで、これが数日に渡って行われます。この官庁訪問が、国家総合職試験の最大の山場であり、ここで内々定を貰うことができなければ、無い内定となります。次に、国家総合職の職務内容についてみていきましょう。国家公務員には総合職と一般職の2種類があり、大まかに説明すると民間企業同様、総合職が将来の幹部候補としての職務、一般職は主に事務処理等を担当することとなります。両者の大きな違いは、「昇進スピード」と「就くことのできる役職」の2つです。総合職の方が、より早く管理職ポストに就くことができ、最終的には事務方のトップである事務次官のポストも狙うことができます。もっとも、一般職採用であっても本人の希望や努力次第で管理職を目指すことも十分に可能なようです。続いて、キャリアパスについて簡単に説明します。ここでは、国土交通省のHPを参考にみていきたいと思います。1年目〜3年目採用直後は、本省係員として配属され、政策立案や法令事務などに携わります。4年目~6年目本省係長として、よりオリジナリティのある政策立案や法令作成業務などに携わります。地方支分部局の課長としての赴任、他省庁への出向等の機会があります。7年目〜本省課長補佐クラスとして、国土交通省の政策の企画・立案の中枢となっていきます。その後は、在外公館の一等書記官、地方公共団体の部課長、地方支分部局の部長等のキャリアを経て、本省課長等へ昇進し、国土交通行政において重要な役割を果たしていくことになります。参考:国土交通省採用HP他省庁でも概ね同様のキャリアパスを歩んでいくこととなります。また、総合職に関しては海外留学や海外勤務の機会も多分にあるようです。最後に、皆さんが最も気になっているであろう給与について見てみましょう。キャリアパスと給与について人事院が発表している年収モデルから以下のようにまとめました。【国家公務員モデル給与例(扶養親族がいない場合)】参考:平成29年人事院勧告もっとも、これには残業代等が含まれていないため、実際の年収としてはプラスαで100〜300万円上乗せした金額をイメージしてもらえれば良いかと思います。昇進するにつれて金額も上がり、給与自体は民間大手と大差ないといえますが、その仕事量からするとやや低いといえるかもしれません。また、トップの事務次官ともなると年収は約2300万円になるようです。もっとも、官僚の出世争いは熾烈でトップ事務次官になれるのはたった一人です。出世争いに敗れるといわゆる天下りをして再就職することが多いです。そのため、上記の通り一人ひとりのキャリアが大きく異なり、給与に関しても相当な個人差があるといえます。学歴社会の国家総合職(旧:国家Ⅰ種)ここでは、私が民間就活に切り替えた理由についてお話したいと思います。結論からいうと、私の学歴では将来的に活躍しにくい職場だと判断したためです。なぜそう考えたかについて書いていきたいと思います。要因としては以下の3つが挙げられます。①国家総合職は他に類を見ない学歴社会である②旧帝・早慶以外は官庁訪問で切られる可能性が高い上に訪問できる官庁も限られてくる③官庁訪問を乗り越え就職できたとしても出世が見込めない国家総合職が学歴社会であるといわれる所以について説明していきたいと思います。以下のデータをご覧ください。【平成29年度(2017年度)国家公務員採用総合職試験・出身大学別合格者数】​参考:ReseMom一目見てご理解頂けると思いますが、東京大学の合格者が圧倒的に多いことが分かります。2017年度の国家総合職最終合格者は1878人であるため、合格者の約5人に1人が東大生という計算になります。なお東京大は各省庁の総合職の就職者数を発表している。内訳は、総務省27人、国土交通省26人、経済産業省23人、農林水産省17人などとなっている。昨年、各省庁の採用予定者数のうち東京大の人数は、総務省が49人中27人、経済産業省が43人中23人、外務省が28人中15人、金融庁が18人中10人となっており、これらでは5割以上を占めている。やはり人気省庁では東京大の強さは際立っている。参考:PRESIDENTOnline以上からも、国家総合職に占める東大のウェイトの大きさがよく分かります。また、官庁の中で最も人気である財務省を例に見てみると、事務方のトップである財務事務次官の歴代出身大学は、57人中55人が東京大学、残り2人が京都大学となっております。これについては、官僚に占める東京大学出身者の割合が高いため、事務次官の割合が高くなることも不自然ではありませんが、やはり少なからず学閥が関係しているとも考えられます。このように、国家総合職に就職する人、出世していく人の学歴には、民間では考えられないほどの偏りがあるといえます。そのため、当然ながら学閥が力を持ち、出身大学が官庁訪問や出世でも大きく影響するのが実情です。官庁訪問に学閥が影響するという理由は、大学のOB・OGである現官僚との繋がりを持てるか否かで省庁の採用情報などを得ることができるか否かが変わってくるためです。当然ながら、OB・OGが多い大学の方が情報量という面で有利な傾向にあります。ここからは、私が見聞きしたりインターネットなどで囁かれたりしている情報ですが、省庁によってはOB・OG経由で官庁訪問に来るよう連絡したり(内々定を必ず出すとの旨を伝えた上で)、官庁訪問で学歴順に面接を行い低学歴(ここでは旧帝・早慶以外)の人については面接をしてもらえなかったりといった話があります。これらについては、確証が取れているものではなく、あくまで噂にすぎないのでその点お間違いのないようご注意下さい。しかし、このような噂が出回るほど国家総合職は学歴社会であるのは事実でしょう。以上が、国家総合職が学歴社会であるとの所以です。つまり、正直なところ自分の大学だと先が知れていて、また、前述の通り年収もそこまででもありません。そのため、私は国家総合職という選択肢を選びませんでした。もちろん、民間でも学閥はあると思いますが、それでも数字などビジネスの結果で巻き返せる余地が大きいと考えています。私は自分の実力が正当に評価される環境で働きたいと思い、民間就活を選びました。東大生に関しても国家総合職の人気は落ちている東大の牙城ともいえる国家総合職ですが、東大生の中でも人気が落ちてきているようです。まず、国家総合職自体の志願者数の変遷について見てみます。キャリア官僚を志す学生が減少している。2017年度の総合職の第1次試験の合格発表が12日に迫ったが、人事院によると、17年度の総合職試験(11年度までは1種試験、1984年度までは上級試験)の申込者数は前年度比6%減の2万591人。1970年度以来47年ぶりの低水準だった。参考:日本経済新聞以上の新聞記事からも分かるように、そもそも官僚を志す人の割合は減少傾向にあります。一般的に、国家公務員に限らず公務員志願者数は景気によって増減するといわれています。公務員は安定しているとのイメージから、好景気の際は志願者数は減り、反対に不景気の際は志願者数が増える傾向にあります。次に、東大生の国家総合職就職不人気について見てみましょう。毎年「国家I種」試験の合格者を多数輩出する東大前で学生に話を聞くと、「父も官僚なので子どもの頃から憧れてるんですけど、仕事の割に給料が安いイメージがある。周りの友達も外資など、民間企業に行く人が多くて、公務員志望はあまりいません」「なるのが大変な割には外資や大手銀行に比べて給料がよくないので、ちょっとコスパが悪いのかなって」「気持ちが強い人じゃない仕事だと思う。薄給だけれど、仕事はそれなりに大変」と、あまり良いイメージを持たれていないようだ。参考:AbemaTIMESやはり、景気の影響だけでなく薄給・激務といったマイナスイメージから東大生も国家総合職を敬遠する傾向にあるようです。売り手市場であるのに加えて、分配側ではなく価値を生み出す側(ビジネスサイド)で力を発揮したいと考えている人の割合が高まっていることも関係しているのではないでしょうか。これには、仕事に対する価値観も影響しているのではないかと考えます。現行政府が働き方改革を推進しているように、バブル期のようにひたすら働くことが良しとされる時代ではなくなりました。世間体や出世だけに価値基準を置くのではなく、自己の能力をより発揮でき、より働きやすい環境であるかを基準に仕事を選ぶ方が増えているのではないでしょうか。以上のように、東大生の国家総合職への人気も低下傾向にあるといえそうです。最後に皆さん、最後までお付き合い頂きありがとうございました。ここまで、私がなぜ国家総合職でなく民間就活を選択したのかについてお話してきました。一言申し上げておくと当記事は、決して官僚になることや官僚社会の内部体制について批判することを目的としたものではありません。むしろ、国の中枢に入って日本を支えたいという志が高い方に、国家総合職を目指して頂きたいと考えています。激務・薄給・学歴社会等悪い噂ばかりが目立つ国家総合職ですが、その社会貢献性や公共性は民間企業と比較にならないくらい大きいでしょう。また、私自身も省庁の説明会等に何度も参加し、官僚の方々の熱意や意欲については並々ならぬものを感じました。現在では、官庁訪問で大学名を名乗らせなかったり面接カードにも大学名を書かせなかったりと学歴社会であった国家総合職も変わりつつあります。今後は、より学歴に関係なく活躍できる環境になっていくことは間違いないでしょう。また、皆さんの中には、公務員か民間で悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。そういう方については公務員勉強と民間就活を並行して自分の適性、志向を考えていけばいいのではないでしょうか。私の周囲にも両立をしていた人は現に沢山いました。私自身は初めから公務員と決め打ちしたために休学することになってしまったため、時間をかけて自分の適性をよく見極めることが重要かと思います。もっとも、安易な考えで公務員勉強もしておこうという考えであれば、賛成はできません。国家総合職を含め、公務員試験は片手間で合格できるような簡単な試験ではありません。勉強と就活の両立をするのであれば、それだけの覚悟をもって挑むべきでしょう。この記事が、皆さんの就職活動に少しでも役立てば幸いです。今後もunistyleを是非ご活用ください。【参考】・・・photobyStooMathiesen 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【20卒早稲田教育学部】あとむくんの就活体験記vol.2|2018.8 interview 【20卒早稲田教育学部】あとむくんの就活体験記vol.2|2018.8 interview 前期末テストもひと段落し、20卒の皆さんはインターンシップ選考が本格化してきた時期ではないでしょうか。今回は早稲田大学教育学部のあとむくんに2018年8月にインタビューした内容を掲載します。↓↓↓あとむくんのこれまでのインタビュー記事はこちら↓↓↓早稲田大学あとむくんの履歴書あとむくんの履歴書◆性別└男性◆大学└早稲田大学教育学部に一年浪人ののち一般受験で合格。早稲田の政治経済学部が第一志望であったものの不合格。◆趣味└映画鑑賞(主にアメコミ)◆サークル└広告研究会。プロモーションの統括を担当するなど積極的にコミット。あとむくん所属の広告研究会運営メディア→早稲田を広告する、webメディア「WASEAD」◆アルバイト└塾講師(大学1年から)として働いている。また、報道系ベンチャー企業で長期インターン中(大学3年から先輩の紹介で)。◆留学└旅行以外での海外経験なし。ただし、社会人の半分以上の期間は海外で働いてみたいと考えている。◆資格└柔道二段・TOEIC720点◆就活をはじめた時期└2018年6月頃◆志望業界└現段階で、広告、戦略コンサル、PRの3つに絞っている。◆希望職種└企画・プランナー。ゴリゴリの営業をしたい訳ではない。本インタビューはunistyle編集部のむたか(@mutaka_unistyle)とくらもん(@esquestion)にて行っております。7月の活動を振り返って自分の活動量・内容について「7月の就職活動について教えてください。」「ESを提出した企業のインターン選考への参加が主な活動でした。ベクトルの1dayインターンにも参加しました。」「前回から他の企業にもESは提出した?選考状況と併せて教えて下さい。」「あの後、Strategy&にも提出したんですが、ウェブテストで落ちました。この前出していたBCG、ベインについても同じくウェブテストで落ちて、電通中部も面接で落ちました。博報堂は面接の結果待ち、アマゾンはES通過して次がウェブテストです。サイバーエージェントはテストと塾講師のバイトで忙しくて質が担保できないなと思って出すのをやめました。」「ベクトルのインターンはどんな感じだった?志望度は上がった?」「志望度は上がりました。インターンというよりも説明会に近くて、事業内容についてはある程度事前に知っていたので目新しいものはそんなになかったです。」自分の行動量・内容まとめ・インターン選考への参加が主な活動。面接には2度参加した。・ウェブテストの結果が芳しくなく、勉強する必要性を感じている。インターン選考について「博報堂の面接はどんな感じだった?他の学生のレベル感や面接の雰囲気について教えてください。」「12人での集団面接で、内容はスライドを使った自己紹介が3分と"日本をどう変えていきたいか"について口頭で2分プレゼンというものでした。倍率もかなり高くて、12人で3、4人程度しか通らないようです。他の学生のレベルはまちまちでしたね。正直言うと、顔とかコミュ力だけの人もいたような印象です(笑)。」「自己紹介ではガクチカについても話したと思うけど、何の経験について話したの?」「広告研究会のことをさらっと話しました。時間もそんなになかったので詳細には話していません。」「電通中部の面接も受けたみたいだけど、そっちはどうだった?落ちた理由を自分なりに考えてみた?」「電通中部は、自己紹介とガクチカと課題について端的にプレゼンするというものでした。面接では、難しいことを端的に分かりやすく答えられるかが見られていたと思うのですが、緊張したのもあって冗長に話してしまったのが良くなかったなと思っています。あと、相手の質問に対してレベル感の違うことを話してしまっていたことが一番の反省点ですね。」「そこでもガクチカは広告研究会のことを話したの?」「いや、ここでは塾講師のバイトの話をしました。ここも少し話が難しくなってしまったなとは思っています。ちなみにガクチカに関しては企業ごとに使い分けるようにしています。」「そうなんだ。それはどのような意図があって使い分けるようにしているのかな?」「相手の企業から"小さなことから大きなことを成し遂げたい"という雰囲気が感じられたら、"人の感じ方を汲み取って大きなことを成し遂げた"という広告研究会の活動について話しています。一方で、人の心の動きを探求して何かを生み出そうという企業では、生徒一人ひとりと向き合った経験のある塾講師のバイトのことを話しています。相手の感覚に合わせて、事前にどちらのエピソードを話すか考えています。」インターン選考まとめ・うまくいかなかった面接については当日中に振り返り、何が良くなかったかを反省している。また、その場その場でこの面接では何を見られているか推測している。・ガクチカは企業に応じて、広告研究会か塾講師のバイトかどちらを話すか使い分けている。周りの活動量・内容について「やっぱり周りの広告研究会の人たちは積極的に就活に取り組んでる?」「はい、みんなインターンとかも結構出しているみたいです。広告研究会ということもあって、サイバーとかADKのインターンに受かっている人が多いですね。」「広告研究会の人たちとは頻繁に情報交換とかはしてるのかな?」「そうですね。どこに提出したとかも話しますし、提出した課題についてどう書けば良かったかとかを話し合います。みんな就活してるので、必然的に就活関連の話題が多くなります。」周りの行動量・内容まとめ・周囲の人たちが積極的に動いていることもあり、自然と就活関係の情報が入ってくる環境。・インターンの課題について話し合う友達もおり、壁打ち相手が周りに沢山いる。7月と8月を比較した変化企業選びの軸「企業選びの軸には何か変化あった?前回の段階でかなり具体的に落とし込まれていたとは思うけど、選考に参加する中でより明確になったとかあれば教えて下さい。」「軸に関しては何も変わったりということはありませんね。インターンに参加する中で変わることもあるかとは思いますが。」志望業界・職種「前回は、広告、戦略コンサル、PRの3業界に絞っているということだったけど、ここについても変わらない?」「業界については変わりませんが、ベクトルのインターンに参加したことで志望度は少し変化しました。今は、戦略コンサルとPRが第一志望で、広告が第二志望という感じですね。あと投資銀行にも少し興味が出てきました。というのも、バイト先の塾長に自分がどんな人物か聞いてみたらピンチヒッター的な役割を担っていると言われて、企業が困っているときに融資して共に取り組んでいくという投資銀行のスタイルに似ていると感じたからです。」「広告よりもPRの方が志望度が高いのはどういった理由があるのかな?」「正直なところ、PRも広告も仕事内容に関してはほとんど変わらないと思っています。ただ広告はいかに枠を獲得するかにフォーカスしている印象で、自分はPRの方が興味を持って楽しみながら仕事をできるかなと思いました。」ガクチカ・自己PR「ガクチカ、自己PRのネタについては困らないと思うんだけど、今何かやらないといけないなと考えていることはある?」「内容そのものに関しては何も困ってはいないのですが、それを面接官にどう伝えるかを工夫していかないといけないと感じています。これは面接の数をこなしていくしかないと思っています。」全体を通して「どんなことでもいいんだけれど、就活をしていて考えたこととか心がけていることとかはある?」「なるべく自然体で臨むというのは常に意識しています。選考の際も企業は星の数ほどあると考えて気楽に考えるようにしていて、失敗したときは次に活かすことができるように何が良くて何が悪かったかを分析するようにしています。なので、電通中部の面接で失敗したのも良い経験だったなと思っています。」「あとむくんは選考に落ちても良い意味で割り切れているなと感じたんだけど、それは選考に落ちたことをどのように捉えるようにしているのかな?面接で落ちると自己否定されたように感じる学生も一定数いると聞くけど。」「選考に落ちてしまったのは、①企業が求めているものにうまく答えられなかった、②自分よりうまく答えられた人がいたという2点だと思っています。なので、企業が何を求めていたのかを考え、自分はどのように伝えたら良かったのかを反省することが大事だと思っています。」「面接を2回経験して自分なりに反省や気づきをまとめられていると感じたけど、他に今後こうしようというものはある?」「自分は良くも悪くも真面目すぎて、全て丁寧に説明しようとするあまり、話が分かりにくくなってしまっていると感じました。実際に、博報堂では1つに絞って話すとウケが良かったので、話題の取捨選択は意識して行なっていこうと思っています。」7月と8月を比較した変化まとめ・業界の志望順位はやや変動したものの、特に変化なし。投資銀行にも興味を持っている。・ガクチカに関しては、内容ではなく伝え方に重点を置いている。・面接の振り返りを行い、何が悪かったかを分析し、そこを改善するという目的意識を持ち、次の面接に臨むことができている。8月にやろうと思っていること「7月はインターン選考への参加が中心だったみたいだけど、8月には何をやろうと思ってる?」「まずは筆記試験の勉強に取り組む予定です。英語と算数が弱いのでその2つを重点的に対策しようと思っています。それと投資銀行のインターンESも提出しようと考えています。あと、面接での伝え方を工夫する必要があるため、後期はプレゼン多めの授業を取ってプレゼン慣れしたいなと思ってます。」「就活関連では、テスト対策とES提出が中心になってくるみたいだね。就活以外だと今後どんなことをしていく予定なの?」「広告研究会の活動に力を入れたいです。就活ばかりしているのも嫌なので学生らしい活動をすることも重視したいと思っています。就活も学生生活も両方楽しんでやっていきたいと思います。」8月にやろうと思っていることまとめ・ウェブテストへの対策を中心に行なっていく様子。プレゼンの練習も兼ねてプレゼンが多い授業を履修する予定。・就職活動だけでなく広告研究会の活動にも積極的に取り組んでいく。今就活で悩んでいること「今就活で困っていることとか悩んでいることはある?」「悩みというかとにかくウェブテストの勉強をやらないといけないなと思ってます。コンサルの秋冬インターンに間に合わせたいと思っているので、SPIの本を何周かするつもりです。それと、物事の伝え方についてもインターン先やバイト先等、日常的に気をつけていこうと思っています。」今就活で悩んでいることまとめ・コンサルの秋冬インターンに向けてウェブテスト対策を徹底的に行っていく。unistyle編集部よりあとむくんへのフィードバックあとむくんはガクチカを、相手の感覚に合わせて事前にどのエピソードを話すか考えているようです。この戦略は非常に良いと思います。企業の求める人物像に迎合し、良く見せるために自分自身を偽ることはおすすめ出来ませんが、企業によって自分の見せ方を変えるということは重要なことです。誰しも強みは1つではないでしょうし、その時々によって異なる見え方をしていることでしょう。それを理解した上で、意図的に相手によって見せ方を変えるというのは、自己理解が十分に出来ているという証拠と言えます。8月には、ウェブテスト対策を中心に行なっていくようです。筆記対策に関しては、勉強をするかしないかの問題なので、解き方を理解した上でとにかく量をこなすことが必須です。正確さはもちろん、スピードについても意識したいところです。外銀、外コンはテストのボーダーも比較的高いため、不安だという方は早い段階から取り組むように心がけましょう。あとむくんは、夏は就活だけでなく広告研究会の活動にも積極的に取り組みたいということでした。これは、就活をしていく中でとても大切なことです。就活をしているとどうしても他のことが疎かになりがちですが、就活と同時に学生生活を楽しむということも大切なことです。企業も何か1つだけしかできない人を欲しがるとは思えません。就活をやりながらも、学業やサークル活動等複数の活動を並行して行うことは将来的にも役立つスキルと言えるでしょう。息抜きという意味でも、就活以外のコミュニティがあるということは間違いなくプラスに働きます。あとむくんへのオススメ記事今回は、テスト対策を中心的に行なっていくあとむくんにはあらゆる企業で出題されるWebテスト・筆記試験に関する以下の記事をオススメします。「Webテスト・筆記試験対策」をする上で読むべき記事3選はこちら【1】→本選考だけでなくインターンでもWebテストを用いている企業は多いです。就職活動でまず避けては通れないWebテスト・及びテストセンターも含めて、その対策方法・練習方法について解説していきます。【2】→「採用テスト」の意義から、対策方法までを詳細に説明しています。企業は何のために採用テストを行い、学生のどこを見ているのかを知って頂ける記事となっています。【3】→適性検査の種類と見分け方、課される業界や企業について考察していきます。メジャーなものからマイナーなテストまで、幅広く解説します。Vol.3は9月に公開予定●その他の20卒就活生のリアルタイム就活体験記は以下よりご覧いただけます。● 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経験もお金も手に入れるサマーインターン20選 経験もお金も手に入れるサマーインターン20選 インターンの第一義は職業理解や経験・成長です。しかし、インターンは多くが3〜5日。長いと2週間程度拘束されるものもあります。「どうせやるなら、お金の出るインターンの方がいい」みなさん、そうは思いませんか?少なくとも、私はそうでした。そこで、16卒の私が昨年調べた”お金のもらえるサマーインターン”を紹介します。なかには日給2万、合計30万円をもらえるものも!新卒学生の方は、必見です。※給与などの条件については過去のインターンの条件を元に掲載しております。こちらは掲載当時の情報のため、現在の情報については対象企業のサイトまたはunistyle締切情報ページでお調べください。IT業界のお金のもらえるインターンまず報酬ありのインターンが多いのがIT企業。中でも、比較的年数の浅いベンチャー企業にその傾向が見られます。高報酬のインターンを行うことで、企業の知名度UPや優秀な人材の獲得を目指す企業が多いようです。(1)DeNA―10万円(約10日間)(2)グリー―2万円(2日間)※2014年の実施内容です(3)ワークスアプリケーションズ―16万円(20日間)※こちらは16卒向けです(4)ネットプロテクションズ―2万円(5日間)(5)クラウドワークス―1.5万円(5日間)(6)VOYAGEGROUP―5万円(7日間)(7)コロプラ―3万円(3日間)DeNAは毎年高報酬で話題となる「StuDIG」というインターンを実施していました。「StuBiz」と名前を変えた今年も、例年通りの高報酬で実施が決定しています。しかし、インターンの中でも高い報酬を誇るDeNAは、インターン最難関と呼ばれ、通過難易度は最高レベルとなっています。また、ワークスアプリケーションズは、優秀者には34万の奨励金が給付され、合計50万円の報酬となり、最高レベルの報酬額となります。コンサル・シンクタンク業界次に多いのが就活生にも大人気の業界。コンサル・シンクタンク。私もこの業界のサマーインターンに参加。高額の報酬に加え、六本木で高級ディナーもご馳走になりました。(8)PwCstrategy&―3万円(2日間)(9)ボストン・コンサルティング・グループ―3万円(3日間)※2014年の実施内容です(10)A.T.カーニー―4万円(4日間)※2014年の実施内容です(11)ビービット―2万円(5日間)(12)野村総研―4万円(5日間)※2014年の実施内容です(13)日本総研―1万円(5日間)※交通費・昼食費としての支給ですコンサルのインターンは優秀な学生が多く参加するだけでなく、選考の過程でフェルミ推定やケース問題などが問われるので、選考の予行練習となり、非常にオススメです。リクルートグループ日系大手はほとんど給料が出ないのですが、就活生に大人気のリクルートグループは、5日間で5〜10万を含む、破格の報酬を出しています。ここでは昨年の実施内容を記載します。(14)リクルートジョブズ―10万円(5日間)※2014年の実施内容です(15)リクルートライフスタイル―5万円(5日間)※2014年の実施内容です(16)リクルート住まいカンパニー―5万円(5日間)※2014年の実施内容ですそれ以外にもリクルートグループは、2週間ベトナムに滞在するプロジェクトやなど、魅力的なインターンを多数開催しています。番外編:エンジニア向けインターンインターンの中にはエンジニア限定のものも多くあります。エンジニア向けインターンじは一般的な就活生には敷居が高いですが、期間が長くかなり高額の報酬を支給してくれることが多いです。(17)リクルートホールディングス―45万円(30日間)こちらはエンジニア向けの長期に渡るインターンシップです。(18)LINE―40万円(4週間)(19)マイクロソフト―50万円(2ヶ月間)(20)楽天―20万円(1ヵ月間)高報酬インターンは高倍率今回は、報酬のもらえるサマーインターンをご紹介しました。しかし、高報酬のインターンは、お金の欲しい学生が集まるので、ほとんどが高倍率かつ高難易度です。受験者は東大早慶が当たり前、それらの学生も落ちるのが当たり前という世界です。私も7社ほどエントリーしましたが、通過したのは1社だけでした。しかし、だからこそ選考のよい練習になりますし、得るものも多くあります。ぜひ、経験もお金も実りある夏休みを送ってください。photoby401(K)2012 31,181 views

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