自動車の未来、4つの論点。三井物産が欧州EV事業に参入【unistyle業界ニュース】

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最終更新日:2023年10月31日

自動車の未来、4つの論点。三井物産が欧州EV事業に参入【unistyle業界ニュース】

本選考とインターンの締め切り情報

2017年10月26日。
三井物産はダイムラー (Daimler AG) と提携のうえ、ヨーロッパでEV (電気自動車) 向け充電・電力事業を展開するベンチャー企業、The Mobility House AG社への出資参画をアナウンスしました。

The Mobility House AGはドイツに本拠をおき、ヨーロッパ市場向けにEV向けスマート充電ソリューションを提供するベンチャー企業です。

環境問題への懸念から世界的にEV移行が期待されていることを受けて、EV充電システムの開発・供給を手がける同社への出資を決めたものと考えられます。

また、三井物産はこの出資参画を通じて「同社の成長を支援すると共に、三井物産が自動車・電力インフラ・エネルギー事業で培ってきた総合力の発揮により、再生可能エネルギーとEV導入が加速している欧州の先進的ビジネスモデルの事業化に取り組み、米国や日本等の他地域における事業拡大」を目指すとのことです。

トヨタや日産、ホンダなどの完成車メーカーはもちろん、ブリヂストンやデンソーなどの部品メーカーも含め、長きにわたって日本の主力産業として発展し続けてきた自動車業界。
就活マーケットにおいても学生からの人気が高く、各社とも多数のエントリーが殺到する状況が続いています。

しかし、三井物産が出資を決定したEV事業に見られるように、テクノロジーの発展や生活スタイルの変化にともない、自動車業界も変革を迫られています。

本記事では、自動車メーカーや総合商社をはじめとする企業の実際の動きを例に取りながら、自動車業界の未来について考えてみましょう。

21世紀型の自動車ビジネス、4つの論点


まず、自動車業界に訪れつつある変化の波を確認しておきましょう。
ここでは自動車ビジネスの新しい動きとして、特に注目すべき論点を4つ解説します。

論点①「EV」

EV (Electirc Vehicle:電気自動車) は、その名の通り、電動モーターによって走行する自動車のことを指します。

従来のガソリンエンジンを搭載せずに電力で駆動するため、騒音の少ない快適な走行が可能になるとともに、大気汚染をはじめとする環境問題への対応策としても注目されています(ただし、「火力発電などに下支えされる以上、トータルなCO2排出量は減少しない」という議論も存在するようです)。

既存の大手自動車メーカーがこぞって研究開発を進めていることはもちろん、シリコンバレーに拠点をおくTesla (テスラ・モーターズ) のように、EVに特化した新興企業も幅をきかせているマーケットです。

世界の自動車全体におけるEVのシェアは0.2% (2016年) に過ぎないものの、同年のEVの世界販売台数は200万台に達するなど、今後も急成長が見込まれています。
EVの生産・販売そのものの拡大が見込まれることはもちろん、EV向けのバッテリーや充電システムの開発など、周辺でも数多くの新規ビジネスが生まれています。

そして、EVの普及は既存の自動車産業をおびやかす存在にもなり得ます。
とりわけ、すぐれた技術力を武器にガソリン車市場を席巻してきた日本の完成車メーカー・部品メーカーにとっては、EVの普及は死活問題となるでしょう。

論点②「自動運転」

人間の操作を部分的に、あるいは完全に必要とせずに走行できる「自動運転」の技術も、高い注目を集めている領域です。

自動運転は、搭載される機能によって0〜5のレベルが設定されています。
レベル2までは走行コースの補正など「運転サポート」であり、すでに各社の製品で導入・実用化されています。
レベル3からがいわゆる「自動運転」の領域となり、現在はこの実現のため、各企業によって開発競争が行われている段階にあります。

トヨタやフォルクスワーゲンのような大手自動車メーカーはもちろん、海外ではGoogleやApple、Microsoft、Baidu、日本国内でもDeNAやソフトバンクなどの大手IT企業が次々と参入しており、各社とも莫大な予算を注ぎ込んで実用化を目指しています。

論点③「カーシェアリング」

「カーシェアリング」は、個人・法人が所有するクルマを一定期間だけ他者に貸し出すことを指します。
不動産の分野で「Airbnb (エアビーアンドビー)」が普及したように、自動車市場にも「シェアリングエコノミー」の波が到来しつつあります。

例えば、DeNAが展開するカーシェアリング・サービス「Anyca (エニカ)」。
スマホ上のアプリを通じ、個人間で自家用車を貸し借りできるC2C (Customer to Customer) 仲介サービスです。

レンタカーにくらべて価格が割安であること、車種が豊富 (高級スポーツカーやいわゆる「痛車」もラインナップされている) であることなどから、2015年のリリース以来、都内を中心に利用者が増加しているようです。

戦後の日本において「マイカー購入」は、一般的なサラリーマン世帯にとって大きなマイルストーンのひとつでした。
しかし、レンタカーだけでなくカーシェアリングまでもが成長を遂げたとき、クルマを「購入」することは首都圏の消費者にとって一般的でなくなるのかもしれません。

この消費スタイルの変化は、既存の自動車ビジネスの構造を根底から覆してしまう可能性を秘めています。
首都圏の消費者が「所有」から「利用」へと移行しつつあるなか、従来の「自動車を作って売る」ビジネスはどれほど影響を受けるでしょうか。

論点④「大手メーカーに相次ぐ不祥事」

長年のあいだ日本の主力産業として外貨を稼いできた自動車産業。
しかし、ここ最近になって大手メーカーの不祥事が相次いで発覚し、国内メーカーのガバナンス、ひいては日本車の信頼が問われる事態に陥っています。

2016年、三菱自動車が燃費データを恣意的に改ざんしていたことが発覚。
また2017年10月には、神戸製鋼所が品質データを改ざんしていたこと (該当の部材がホンダなどに供給されていたことも判明)、日産自動車とスバルが無資格の従業員を製品検査にあたらせていたことが立て続けに判明しました。

”Made in Japan” ブランドへの信頼が大きく損なわれかねない不祥事。
自動運転やEVの分野で遅れをとる国内メーカーにとって、ガバナンスの問題も大きな懸念事項になってしまいました。

総合商社の自動車ビジネス

上記のように、自動車業界は決して安定しているとは言いがたい環境に置かれています。
この業界の変革に対応すべく、各企業とも新たな商機をうかがって活動しています。

冒頭の三井物産のEV事業をふまえ、ここでは総合商社にフォーカス。
総合商社の自動車ビジネスの実例を3つ紹介します。

三菱商事:日産と提携、欧州EV電力供給事業

三井物産同様、三菱商事もヨーロッパのEV市場に目を光らせています。
2017年10月、三菱商事は日産自動車と提携し、オランダなどでEV向け電力ステーション整備に乗り出すことを発表しました。

伊藤忠商事:輸入車販売のヤナセをTOB、子会社化

2017年5月、伊藤忠商事は輸入車販売・国内最大手のヤナセに対してTOB (株式公開買い付け) を実施し、同社を子会社化することを発表しました。

近年、輸入車市場は絶好調。ヤナセなどのディーラーを通じ、海外メーカーのクルマが日本市場に多数流入しています。
これも国内の自動車市場を左右する要因のひとつになるかもしれません。

三井物産:シンガポールのカーシェア大手に出資

三井物産は冒頭のEV事業だけでなく、自動車領域で複数の新規事業を推進しています。
全社的な重点注力分野のひとつに「モビリティ」を掲げ、シンガポールでは2010年より現地カーシェアリング大手に出資するなど、新しいビジネス領域の開拓にも積極的に乗り出しているといえます。

最後に

日本の主力産業のひとつ、自動車産業。

その未来は決して安泰ではなく、テクノロジーの発展による物質的変化、消費スタイルの変容による文化的変化によって、業界全体が大きな変革期を迎えようとしています。

自動車メーカーや総合商社の自動車部門は、既存のビジネスモデルでは収益を維持できなくなる恐れがある一方、EVや自動運転、カーシェアリングなどの領域での新規事業開発に関わることができるフィールドにもなるでしょう。

自動車業界全体の現状をきちんと把握し、説得力のある志望動機を述べられるよう準備を重ねましょう。

photo by mariordo59

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「内定辞退率、64.6%」を経済学の基本用語に当てはめて考える【unistyle業界ニュース】 「内定辞退率、64.6%」を経済学の基本用語に当てはめて考える【unistyle業界ニュース】 2017年11月13日。街中では年賀状の売出しが徐々に始まり、同日には紅白歌合戦の司会が発表されるなど、年末年始の話題が増えてくる時期となりました。そんな年末・週末へと未来に目を向けたくなる週明け月曜日、18卒就活生にとっては過去に引き戻されるような話題がニュースで取り上げられました。参考:リクルートキャリア就職みらい研究所【確報版】「2017年10月1日時点内定状況」|【学生の内定辞退率64.6%】【空前の売り手市場影響か】|そんな見出しのもと、各媒体がこぞってこの話題を取り上げました。当事者である18卒だけでなく、もちろん19卒以降の学生にとっても、ダイレクトに自分の就活に関連する話として関心を持った方は多いことでしょう。今回はこの「内定辞退率64.6%」という数字について、その定義や理由を中心に大学で学ぶ経済学用語と関連付けて解説していきたいと思います。「内定辞退率」とはー何社辞退しても数値上は同じ上記リクルートキャリアの調査書では、【内定辞退率=就職内定辞退人数÷就職内定取得人数】という形でこの用語を定義しています。もう少し詳しく言えば、「企業から1社以上の内定を得た学生のうち、1社以上内定を辞退した割合」と説明できるでしょう。この言葉について考えるうえでは、「同じ学生が複数社辞退したとしても、率自体には影響を与えない」という点を把握しておく必要があると思っています。例えば、「2社内定して1社辞退した学生」と「10社内定して9社辞退した学生」では、企業に与える影響度合いは大きく異なるでしょう。この点が数値上反映されないため、例えば「100人内定を出したら平均65人が辞退する」という意味にはならないことは認識しておくべきだと思います。もちろん、内定辞退をする学生の大半は複数内定を獲得していたでしょうから、学生から見た内定辞退率と企業から見た内定辞退率の間には当然相関はあると考えられるでしょう。また、一口に「企業」と言っても社員数が1桁のような中小企業から万単位を誇る大企業までその種類は様々です。国内の全従業員者数のうち、70%程度が中小企業で働いているわけですから、多くの就活生が志望する人気大手企業以外にこの数値が大きく左右されることも理解しておくべきでしょう。参考:独立行政法人経済産業研究所2016年版中小企業白書なぜ「内定辞退率」が高まったのか?ー「エントリー数」と「就活の期間」この点について、多くの媒体では「景気の改善による採用数の増加」というブーム的な要因として辞退率の高さを説明しています。もちろんそれは一つとして、ここではもう少し長期的な要因について考えていきたいと思います。理由1:大量エントリーシステム(需要と供給)大学以前にも、高校の政治経済の授業で学ぶ「需要曲線・供給曲線」。労働市場においては、求職者(=学生)が供給側・採用側(=企業)が需要側に該当します。需要側の実数が増えなくてものべ人数が増えるのであれば、企業側が採用人数を増やさない限り、内定辞退者数が高まるのは当然と言えば当然です。1995年にマイナビ(当時は「毎日就職ナビ」)・1996年にリクナビ(当時は「RBontheNET」)がサービスを開始するなどして以来、就活におけるエントリーはWeb媒体でボタン一つで完了というケースが徐々に増加していきました。今では当たり前になった"エントリーシート(ES)"という選考形式が始まったのもこの時期と言われています。それ以前は、個別に企業から資料を取り寄せてエントリーし、手書きで履歴書を作成するという形式が一般に取られていました。現在では、一企業のESをコピペ+一文改変することで複数の企業へエントリーシートを送信することができ、50社・100社といった"大量エントリー"が可能になっています。ナビサイトは、企業側から期間ごとの掲載料形式で収益を得ています。そこからのエントリー数の成果は、それが直接収益金額に結びつくわけではありませんが、来年度以降の継続的な利用を促すうえでは重要な指標になります。社内に目を向けても、「学生1人あたりのエントリー社数」のような指標を重要業績評価指標(KPI)として設定している可能性は高いと考えています。ちなみに、学生にそんな形で大量エントリーを促す一方で、「内定者フォロー」という名目で内定辞退を防ぐコンサルサービスまでやっているということです。そういったビジネス的な背景を見ると、現在の就活システムで学生が「踊らされている」と表現されるのもある意味納得かもしれませんね。しかし、どんなにエントリーしたとしても、いつの時代でも最終的に入社できるのは1社のみであり、それだけ「内定辞退者」が増える要因にも繋がります。そのため、現在ではあえて手書き郵送のエントリーシートを課す・説明会に参加した学生のみエントリーできるなどの策を講ずることで「とりあえずエントリーする」層を減らし、本当に入りたいと考える学生に受けてもらおうとする企業も一定数存在しています。理由2:情報の非対称性(モラル・ハザード)学生がエントリー数を増やす要因は、何も就活ナビサイトやマイページといったシステム上の話だけではありません。学生が受験する企業を選ぶにあたっては、その企業の情報を知ることが必要となります。その手段としては採用HP・ナビサイト・企業説明会など様々ですが、基本的にそれはどれも「エントリーしてもらうため・企業のイメージを高めるために提供する情報」であることは考慮しておくべきだと思います。ナビサイト上でよく見られる「人気企業ランキング」などについても、その企業でやりたいことがある人がそれだけ多いというわけではありません。「人気だから人気」すなわち「ランキングに載っているから」という理由でスパイラル的にアクセス数・エントリー数が増えているのだと考えられます。そもそも広告料を多く払った企業がトップページに掲載されるなどして、学生の「人気」が形作られているという側面ですらあります。さらに、就職活動で「自分をより良くみせよう」とするのは何も企業側だけでなく学生側にも近いことが言えると思います。「優秀な人材を採用したい」「より上位の企業から内定を貰いたい」という双方の考えが、結果的に「逆選択」(=優良企業・優秀な学生が選択されず、両者の間にミスマッチが生じること)を生み出していると言えるでしょう。経済学的に言えば、「最適な資源配分がなされていない」という市場の失敗の状態に陥っていると言い換えられると思います。理由3:就職活動の早期化・長期化(囚人のジレンマ)上記2つの理由ではエントリー数に焦点を当てて述べていきましたが、経団連に属する大手企業に限ればもう一つ、就職活動の期間についても一つの要因があると思います。16卒の「3月解禁・8月内定」と言われた採用活動期間の後ろ倒し以来、毎年のようにその年の就活スケジュールがどう設定されるかに注目が集まっています。しかし、多くの企業はその後ろ倒しとなったスケジュールを守らず、「インターン」「面談」「座談会」といった形で早期から学生との接点を持つような企業が増えています。学生側もその企業の動きに合わせて、広報活動解禁のずっと前からインターン選考への参加を中心とした動き出しが当たり前のようになっています。その多くが、「他の人がやっているから自分もやらなきゃ」という意識によるものだと考えています。経団連が学生の学業への影響などを考えて設定したこのスケジュールが、結果的に就活の早期化・長期化をもたらし負担を増やすことになったのは皮肉と言えるかもしれません。少なくとも、「インターンがあるから授業を欠席する」といった学生の態度を経団連側が望んでいたとはとうてい思えないでしょう。図:学生側にとっての就活の早期化と囚人のジレンマ〜就活の早期化〜自分早めに動く早めに動かない他の学生早めに動く競争激化無い内定早めに動かない余裕で内定競争正常化このような学生の動き出しの早まりは、しばしば経済学用語の一つである「囚人のジレンマ」に当てはめて説明されます。上図のように、・学生個人(自分)としては、自分は一人だけ早く動き出し他人は自粛している状態が最も有利に働くでしょう。いわゆる"フリーライダー"という状態です。=余裕で内定・次点で好ましいのは、自分も含めた全員が早期の動き出しを自粛している状態です。=競争正常化・その次に好ましいのは、自分も含めた全員が早期の動き出しをしている状態です。=競争激化・最悪なケースは、他の学生は早期に動き出しをしているのに自分だけが何もしていない状態です。=無い内定「学生」という全体集団で見れば、皆が早期に動き出すよりは自粛した方が良い"パレート優位"なはずなのに、自分だけが何もせず出遅れていく「無い内定」の状態を避けるために、結果的に早期からの動き出しを選択するという説明になります。就職活動が早期化・長期化すれば、学生にとっては企業との接点が増え「(就職する気はないけど)早めに内定を貰う」といった、時期によるポートフォリオの形成・志望度の低い企業の内定獲得へのインセンティブが働きます。このことが、内定辞退率を高める一因となっていると考えられるでしょう。最後にと、これまで内定辞退率が高まる要因について分析をしていきましたが、もちろんunistyleでは何も現状の新卒採用システムを頭ごなしに否定しているわけではありません。特に早期からの動き出しは「理由2:情報の非対称性」を多少なりとも減らすことに繋がるため、競争激化のデメリットを考慮しても意味のある行為だと考えています。いずれにせよ、何十万人といる他の就活生の動きをどうにかすることはできないわけですので、現状では競争激化を覚悟で自ら早く動き出すしか勝ち抜く術はないでしょう。いずれにせよ、「内定率が高いから自分たちの就活も楽勝」と考えたり、一時的なデータに惑わされたりすることなく、その数字の意味や背景にまで目を向けることが、今後の納得のいく選択をしていくためには大切になるのではないでしょうか。その際、本記事のように大学で学んだ内容を簡単でいいので当てはめてみると、学業・就活の双方向の活動に役立てることができるかもしれません。参考:photobyChrisPotter 13,340 views
総合商社の女性総合職採用比率と他業界の比較 総合商社の女性総合職採用比率と他業界の比較 先日も政府として国家公務員の女性割合を30%以上にする政府目標を発表するなど、女性の社会進出に関する議論が盛んです。日本における女性の社会進出度の低さは以前から指摘されており、世界経済フォーラムが毎年発表している「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」におけるランキングは毎年非常に低い順位で推移しています。就職活動においても、女性の総合職採用は不利なのかという質問をよく受けますので、今回は女性の就職活動に関わるデータを色々と調べてみました。ちなみに総合職に占める男女の割合については、就職四季報2015年度版から引用させていただいています。就職四季報には、男女別だけではなく、文理別の採用数や採用実績こう、3年後離職率などの就活生が知りたいデータがいろいろ詰まっていますのでぜひとも手に取っていただければと思います。就職四季報2015年版全体のデータ厚生労働省が発表した「コース別雇用管理制度の実施・指導状況」によると、対象企業129社の総合職採用予定者に占める女性割合はわずか11.6%というデータが出ています。またこの発表では、男性応募者の5.8%が採用されているのに対して、女性応募者は1.6%しか採用されていないとして、男女の採用格差があることを示しています。参考:「コース別雇用管理制度の実施・指導状況」総合商社のデータ【2013年卒総合商社男女比内訳】2013年のデータ総合職合計男性女性女性比率三菱商事1751462916.57%三井物産1281052317.97%伊藤忠商事110991110.00%丸紅1481212718.24%住友商事136124128.82%総合商社全体69759510214.63%女性採用比率1位は丸紅の18.24%、最下位は住友商事の8.82%です。女性の採用に積極的な三菱、三井、丸紅と消極的な伊藤忠、住友という形が見て取れます。伊藤忠・住友と関西系の二社は社風としてもガツガツしていると言われており、男性色の強い企業なのがデータからは言えそうです。一方で、丸紅はさすが「ギャル紅」と呼ばれるだけあるといったところでしょうか。長期にわたる海外駐在、長時間労働など女性にとっては働きにくい環境とイメージしがちな総合商社ですが、総合商社全体の女性比率は上記で紹介した全体のデータよりも高いものとなっています。【参考】総合商社内定者の志望動機他業界との比較【2013卒その他業界女性比率】2013年のデータ総合職合計男性女性女性比率日本生命131120118.40%東京海上908733.33%三菱電機89074015016.85%ソニー1601332716.88%トヨタ592539538.95%NTTドコモ2571857228.02%KDDI2531916224.51%NHK2291705925.76%読売新聞社62412133.87%朝日新聞社66412537.88%その他の業界についても女性総合職の比率が発表されている会社のものを抜粋しました。傾向としては金融関連の企業は非常に女性総合職の採用比率が低く、東京海上ではわずか3.3%です。総合職で採用しない分、一般職や地域総合職で大量に女性を採用するのが金融機関の特徴と言えそうです。一方で、通信業界やマスコミ業界は軒並み、女性総合職の採用比率が高く、朝日新聞社は37.88%という結果になっています。通信業界・マスコミ業界ともに3年後の離職率は低く、女性が活躍するための風土がある程度整っている様子が読み取れます。女性の社会進出やキャリア進出という文脈の中では、海外の事例をモデルケースにする例が多いのですが、このような日本の伝統的企業にその答えがあるのかもしれません。もちろん女性の役員活用についてはまだまだ遅れており、KDDIで2014年4月に初めての女性執行役員が誕生したと報道されたのみです。ちなみにグローバル企業の代表格といえるgoogleの女性比率もまだ30%にすぎないようです。参考:GettingtoworkondiversityatGoogle学歴にみるデータ最後に学歴に関するデータを紹介したいと思います。①キャリア志向の人は上位校への進学を目指す、②企業が学歴をスクリーニング基準として採用しているとすると、上位校の男女比は女性総合職の採用数に直結しそうです。東京大学の女性比率は約18%、京都大学が22%、慶應義塾大学が34%、早稲田大学が36%となっています。女性は親元を離れず、キャリア志向でも地元国立大学へ進学するという意見もあったので調べましたが、山梨大学が30%、島根大学が37%と大きな違いは見られませんでした。慶應や早稲田といった上位校の女性学生の中にも、一般職志向の学生は多く、特に総合商社や金融の人気はまだまだ高いと言われています。商社一般職の倍率は総合職よりも高い500倍になることもあるようです。学歴が企業の採用スクリーニングに使用されているとすると、上位校の一部学生が一般職に流れたとしても、20%〜30%の女性が総合職として採用されるべきと言えるでしょう。【参考】企業が学歴差別をする理由最後に女性のキャリア問題についてはなかなか難しく、上記で紹介した通り、Googleのようなグローバル企業もまだ取り組みの最中であると言えます。日本の雇用環境について、新卒一括採用、終身雇用を前提とした採用慣習、ホワイトカラーエグゼンプションなど様々な議論がされています。しかし議論がどうしても新卒一括採用批判や残業代なし法案といった形で、個別のものに集中してしまいがちであるように感じています。女性のキャリアについても単純に女性の採用数を増やす、幹部を増やすために数字目標を掲げるといった対処ではなく、なぜ女性が働きづらいのか、その大元となっている制度や雇用体系は何なのかといった全体からの議論をするべきだと思っています。なお、雇用環境について日本型雇用と欧米型雇用のメリット・デメリットについてはこちらのブログで紹介されている本が面白いかもしれません。参考:いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる/海老原嗣夫氏いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる(PHP新書)photobySamChurchill 69,932 views
自己PRで”オタクな部分”を語るべし!なぜ今の時代”オタク”が評価されるのか 自己PRで”オタクな部分”を語るべし!なぜ今の時代”オタク”が評価されるのか 「宇宙戦艦ヤマト」などの人気作品の誕生によりアニメブームが巻き起こり、1960年代からオタクというワードが浸透し始めました。近年では「鉄道オタク」「アイドルオタク」「漫画オタク」など、様々なオタクが存在します。そこで本記事では一般的にオタクと言われる人たちのエピソードは、就活に強いのかについて解説していきたいと思います。オタクとは世間では「オタク」という言葉が浸透していますが、実際オタクとは何なのでしょうか。実はオタクの定義は人によって解釈が違うので、未だに確立していません。しかし辞書的には以下のように説明されています。ある趣味・事物には深い関心をもつが、他分野の知識や社会性に欠けている人物引用:ウィキペディアつまりオタクとは表現を言い換えると、"一つのことを突き詰める能力が優れている人材"だと言うことができます。例えば、アニメファンの中でも特に知識が深かったりフィギュアやグッズをたくさん持っている人を「アニメオタク(アニオタ)」と呼びます。オタクと言うとあまり良い響きではないかもしれませんが、実は就活市場においてオタクは今や評価される人材になってきています。では、なぜオタクが評価される時代になってきているのか、解説します。オタクが評価される理由日本経団連が発表した「2018年度新卒採用に関するアンケート調査結果」では企業が選考で重視した点は16年連続で「コミュニケーション能力」が1位でした。このことからコミュニケーション能力は常に必須とされていることがわかります。しかし企業の考え方も年々変わってきており、林修の「林先生が驚く初耳学!」では超有名企業の採用担当者が「今はシュッとした優等生よりも、オタク気質を持った学生を採用する」と名言していました。なぜかというと広く浅くより、狭く深くが評価される時代に変化しつつあるからです。例えば、以下は狭く深くの経験の例になります。私は月に20冊の本を読む読書家です。これにより、知らないことへの謙虚さが身に付いたと考えております。また、有名な映画やクラシック音楽を積極的に鑑賞し、どの世代の方とも話が合うよう教養を高めました。さらに、家庭教師での体験を通じ、問題解決の際は相手の性格レベルまで寄り添って考える術を体得いたしました。学生団体での活動では適材適所を考え他者と協業するため様々な工夫をしました。このようにして商社で働くために必要な人間力を高めております。面接官はこの文章を読んで、この就活生に対して良い印象を受けるはずです。なぜなら月に20冊もの本を読んでいるということから、仕事においても何かわからないことに遭遇した際に自分から本を読み、改善しようと試みてくれるだろうと予想することができるからです。仕事をしていくとわからないことは必ず出てきます。そういった時にわからないことをそのままにせず、自分から行動してくれる人材は企業にとって必要となります。そのため、このような読書好きをアピールできている文章は評価されると言うことができます。今までは浅くても幅広い情報や知識を得ている方が良いとされていましたが、インターネットなどの進化に伴い、浅い情報や知識しかない人はインターネットが簡単に代替できる人材にしかなれなくなってしまいました。インターネットが代わりを務められる人材をあえて欲しがる企業なんてありません。オタクは一つのことに対してとことん深く追求することができるため、企業にとって必要な人材となる可能性を秘めています。こういった時代の変化によって、就活にオタクが評価されやすくなっていると言うことができます。オタクエピソードが評価されたES上記で述べたようにオタクは評価されやすくなっていると言われていますが、どのようなエピソードが実際に評価されているのか気になりますよね。今回は「一つのことを突き詰めることができる」という軸に焦点を当てて、大手企業で実際に評価されたESを紹介していきたいと思います。本選考ES:NHK(ヒッチハイク・サーフィンオタク)計画を綿密に立て、二週間のヒッチハイクで日本一周を行いました。趣味でヒッチハイクをしていますが、奇想天外な出来事の体験が楽しみで、計画を立てることはありません。しかし今回は、時間的制約がある中、日本一周をして達成感を得たいと考えました。そのため、時間内に居るべき場所を記入して計画を立てました。しかし始めてみると、間に合うか難しい状況でした。ボードを掲げて乗せて頂くまでの時間を正確に考慮出来ておらず、思った以上の時間を費やしてしまいました。そこで、ボードを掲げて受動的に待つと時間が掛かると思った場合、直接お願いをして時間短縮をしました。睡眠時間を削り、50人以上に話し掛け計画を果たしました。引用:NHK20卒本選考ES日本の良さを隅々まで伝える番組を制作したいです。私は大学でサーフィンを行っており、全国各地を回って活動してきました。サーフィンを行うと同時に、訪れた土地で出会う個性的な人、美味しい食事などの体験を映像にまとめて発信していました。Youtubeで多くの反響を得ることができ、改めて映像が持つ力と日本の良さを実感しました。生まれてから現在まで神奈川県で人生を過ごしてきた私にとって、日本の良さを全く知らなかったという事実を突きつけられると同時に、もっと多くの人に伝えたいと思うようになりました。今後はNHKの強大な発信力をお借りして、さらに日本の良さを伝えていきたいと思い、NHKを志望しています。引用:NHK20卒本選考ES本選考ES:三菱商事(スキー・将棋オタク)初心者から始めたため、経験のある同期部員らが颯爽と滑っている中、自分はうまく滑ることができずにこけてばかりで、非常に悔しい思いをしました。そこで自分の滑りをビデオに撮ってもらい、上手な人の滑りと何が違うのか、どういう動きをすべきなのかを自己分析しました。客観的なアドバイスも必要と感じ、先輩やインストラクターの方に自分の滑りを見ていただいたりもしました。そして、問題点を改善するために営業時間いっぱいまで滑り、数をこなしました。その結果、2回生の時にスキー検定1級を獲得することができました。3回生からは指導係として、初心者から始めた後輩の指導に当たりました。指導においては自らの経験を踏まえ、一人一人が問題点を自覚して練習に取り組み、成長を実感できるようにと心掛けました。最終的に私が指導を担当した5人中4人がスキー検定2級に合格することができました。引用:三菱商事19卒本選考ES私が学生時代に諦めずに取り込んだ事は「将棋」です。小学1年生から将棋を始め、大学でも部活動に所属しました。入部当初は団体戦の補欠にすら入る事が出来なかったため、入部と同時に1年以内に選手として団体戦に出場する事を目標に掲げました。まず、選手と自分の実力差を対局を通して明瞭化し、課題を3点に分類しました。対局の序・中盤における定石の知識と変化への対応力、終盤における読みの鋭さです。解決策として、プロの指し回しや戦型を勉強する事、知識を実践に応用するために対局数を増やす事を考え、部活動やネットを通して部員の2倍の時間を将棋に費やしました。しかし入部から6ヶ月後も部内外で成績を残す事が出来なかったため、練習の密度を上げるために高段者の部員と研究をする頻度や対局後の感想戦を多く取り入れ将棋に勤しみました。その結果、入部から1年後には選手になる事が出来、2年生の秋には団体戦で関東5位に貢献しました。引用:三菱商事20卒本選考ES最後に本記事では「一つのことを突き詰めることができる人材」という観点でオタクは就活に有利なのかについて解説してきました。企業側の求める人材像の変化に伴い、オタクエピソードでも就活に十分役立てることがわかります。本記事で最も大切なことは「突き詰めた経験」を語るということです。部活やアルバイトなどでアピールできる強みがないという人は趣味の延長線上でも良いので、何か突き詰めた経験がないか振り返ってみてください。自己PRのポイントを確認したい方は、下記の動画も参考にしてもらえればと思います。【関連記事】 26,575 views

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