書評:『なぜ7割のエントリーシートは読まずに捨てられるのか?』
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最終更新日:2023年10月31日
今回は刺激的なタイトルに目を引かれ、購入したこちらの本について、ご紹介します。就職活動を企業側の視点から、学生の質問に答えるような形式でわかりやすく説明してくれているため、就職活動前の学生にオススメの一冊となっています。
著者はリクルートグループで20年間以上、雇用の現場を見てきた経験から雇用関連の本を多数執筆してきた海老原氏です。海老原氏は、unistyleの就活前に読んでおきたい就活関連漫画&小説傑作選でもご紹介した『エンゼルバンク』の主要人物の一人であるカリスマ転職代理人・海老沢康生のモデルとなった方です。
日本の就職活動について、そのメリット・デメリット含めて中立な視点から語っているので、その他の著作についても興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。
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本書の内容
本書は、リクルートグループで20年間働いた経験から、様々な実例から「企業は何を思っているか」「どうしてそんなことをするのか」について詳しく説明したものです。構成としては、学生側の下記の質問に対して、著者がばっさりと回答するという形式で進んでいきます。質問内容のみ引用しますので、興味のある方はぜひ手に取って読んでみてください。
質問1.インターンシップに行くと仕事や会社が見えてきますか?
質問2.20代でもトップになれる企業っていいですね。
質問3.説明会の予約が取れません。大学名で差別はあるのですか?
質問4.今でも学閥とかあるのですか?
質問5.なぜ、応募を受け付ける大学を指定しないのですか?
質問6.企業は、学歴フィルターで応募者を絞っているのですか?
質問7.エントリーシートって、やっぱり重要ですか?
質問8.エントリーシートの使われ方が、見抜けますか?
質問9.共通エントリーシートって普及しますか?
質問10.履歴書の写真が黒縁メガネだと、落ちると聞きましたが……。
質問11.委員長やNPO代表などの華々しい経験がないのですが……。
質問12.英語ができると就活に有利ってホントですか?
質問13.大学名に自信がないので、資格をたくさんとろうかと……。
質問14.適性検査で根暗だとバレて、落とされますか?
質問15.算数と国語みたいな試験を受けました。これで落ちますか?
質問16.グループディスカッションでは、司会役が採用されると聞きますが……。
質問17.アルバイトやサークルの話は意味がないってホントですか?
質問18.なぜ、どの企業も志望動機を聞くのですか?
質問19.社会貢献や、事業への情熱を語るべきでしょうか?
質問20.人気ランキングを操作している企業があるって本当ですか?
質問21.人気順位の高い企業は、将来も安定しているでしょうか?
質問22.文学部は人気企業に入りにくいのですか?
質問23.最近は男子より女子学生が優秀と言われますが……。
質問24.新卒採用は年々減って、厳選化が進んでいるのですか
質問25.バブルのころは人気企業も楽勝だったと聞きますが……。
質問26.一部の優秀な学生に人気企業の内定が集中すると聞きますが……。
質問27.結局、企業ってあいまいな基準で選考をしているのでしょ?
質問28.出身高校名まで気にする企業が多いのですか?
質問29.外国人採用が増え、日本人学生はますます苦しくなりますか?
質問30.入社後に宴会芸をさせられます。日本的で嫌です。
質問31.欧米なら大卒後ゆっくり将来を考えられると聞きます。
就活のくだらない噂は全てめったぎりにしてくれていますので、就活の噂話に翻弄されたり、ついつい読んでしまいがちな人はぜひ読んでほしいと思います。
企業が見ているのは「仕事がきちんとできるか」「仲間とうまくやれるか」の二点だけ
本書の根幹となる主張の一つが、「企業が見ているのは「仕事がきちんとできるか」「仲間とうまくやれるか」の二点だけ」というものです。しかも、「仲間とうまくやれるか」というのは自社の仕事をしっかりとこなせて初めて成立するものであるため、「仕事」と「周囲の仲間」に合うかどうかというのは、かなりの部分がその会社の仕事内容、つまり業界別に傾向が似てくると説明しています。
これはunistyleの企業別選考対策で常に語っている「企業が求める人材を把握する」という内容に繋がるものです。
unistyleの企業別選考対策では、特に「仕事がきちんとできるか」という部分に焦点をあて、就職活動において、学生がなかなか直視しない仕事の実務や実際のビジネスケースについて紹介し、そこで求められる能力や性格、志向性について説明しています。
証券会社では、厳しい競争環境の中で個人に成績が紐づくため、「個人として成果を上げること」や「競争環境の中で実績をあげること」に向いている人、やりがいを感じる人が向いていると考えられます。
一方で、総合商社においては、個人に実績が紐づくことはそこまで多くなく、周囲の人とどう協力し、事業を進めていくかが問われているため、「リーダーシップ」や「異なる背景・考えの人と協働する」ことに向いている人、やりがいを感じる人が向いていると考えられます。
実際に両社の内定者のESの自己PRや成し遂げたいこと、実現したい生き方を読んでみると違いが何となく見えてくるのではないでしょうか。
最後に
多くの学生だけでなく、就活を支援する社会人でも、「面接はフィギュアスケートの演技のように、面接官がその技巧や表現に点数をつけている」と思って、ノックは何回・おじぎの角度は何度などくだらない枝葉に右往左往してしまいがちです。
本書にもある通り、企業が見ているのはシンプルに、「仕事がきちんとできるか」「仲間とうまくやれるか」の二つを見ているだけだと理解できれば、就職活動において考えるべきことが明確になるでしょう。結局、その業界においてどのような働き方をするのか知り、内定者や働く人の考えに触れる中で、自分に合っているのかどうか考えることが大事だと言えます。
「ああすれば受かる」や「○○はしてはいけない」といった都市伝説に多く出会うと思いますが、そういった噂に惑わされずに、考えてほしいと思います。
credit: Matti Mattila via FindCC