金融業界(銀行・証券・生損保)の働き方|採用HPから見える違い
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最終更新日:2022年02月02日
金融業界はメガバンクを始めとして学生の中でも知名度が高い企業が数多くあり、多くの学生が志望します。金融業界を更に細かく業界を分けると生保・損保・証券・銀行の4つに分かれます。金融業界を志望する学生であればこれら4つの業界を一通りチェックするとは思いますが、実は「生保・損保業界」と「銀行・証券業界」では働き方が大きく異なります。
実際の就職活動では、これら金融機関の面接を受けると、ほぼ間違いなく「何故数ある金融機関の中でも証券業界を選ぶのか?」、「なぜ生保や損保を受けずに銀行と証券に業界を絞ったのか?」というような質問をされることがあります。
そういった場合に、「社風が合わなかった」などのぼんやりした回答ではなく、しっかりと業務内容を照らし合わせた上で根拠に基づいた説明が出来ると、面接官も納得できるような説得力のある回答が出来るでしょう。
今回の記事では、その手助けとして生保・損保業界と銀行・証券業界の働き方の違いについて解説したいと思います。採用数が多く、かつ志望する学生も多い「営業職」についての働き方について紹介しますので、ぜひこの記事を通して「自分に適しているであろう業界」に出会ってほしいと思います。
生保・損保の働き方
まず生保・損保業界の働き方について紹介したいと思います。
生命保険の働き方
一般に「営業職」と聞くと、担当の営業マンが直接お客様のところに伺い、金融商品の提案を行うイメージがあると思います。しかし、生保のリテール営業は皆さんがイメージしているような営業マンとは異なる働き方をします。まず、日本生命の新卒採用HPから実際の仕事内容を確認しましょう。
営業総合職
全国の営業拠点の管理者として、営業職員のマネジメント業務を行う職種です。
一定期間の実務経験を経た後、入社6年目以降、営業拠点の管理者として登用されます。
中村は昨年から滋賀支社木之本営業部で営業部長を務めている。
同営業部に所属する34人の営業職員を束ねる責任ある立場だ。まさしく営業部を経営する立場にある営業部長の仕事は多岐にわたる。営業部の年間売上目標達成に向けた管理や指導、営業職員の採用、育成から、日々のマネジメントまでさまざまだ。「営業職員の性格はそれぞれ異なります。一人ひとりのモチベーションを上げ、いかに動いてもらうか、常に考え、行動しています」と中村は言う。営業職員の出勤時の表情、営業先から戻ってきた時の表情などの観察を欠かさない。「職員たちがどんな状態にあって、どのようなアドバイスが的確か知ることは大切です。"リーダーたるもの正面の理、側面の情、背面の恐怖が必要である"という言葉があります。営業部の運営から販売計画など責任と裁量が大きい仕事である分、リーダーとしてさらに精進していきたいです」。
日本生命の新卒採用HPからも分かる通り、総合職で採用された社員は全国の営業拠点における営業担当者のマネジメントを行うことがメインの業務となります。つまり、総合職として採用された営業担当が直接個人顧客に出向いて営業を行うことは基本的にありません。
また、上の日本生命の新卒採用HPにおける社員紹介に記述されていることからも分かるように、営業部のリーダーとして日々の職員マネジメントのみならず、営業職員の採用や育成、そして管理や指導など業務をこなしていく必要があることが分かります。
unistyleでも過去に紹介した『ES・面接で人気企業内定者が企業に伝えていた5つの強みとは?』と照らし合わせて考えてみると、生保の営業職は「1.個人として努力し、成果をあげることができる」スキルを求められているというよりも、「3.リーダーシップを発揮し、周囲の人と目標を共有し達成することができる」、「4.価値観や立場の異なる人と協力して成果をあげることができる」などのスキルが求められていると言えるでしょう。
損害保険の働き方
さて、生保と同様に損保業界の働き方についても同様に紹介していきます。
三井住友海上の新卒採用HPにも紹介されていますが、一般的な法人営業を除いた損保業界の営業職としては、特定地域の保険代理店を担当する「リテール営業」と、自動車販売会社や自動車リース会社における自動車保険の販売成績を上げるための施策を提案などを行う「ディーラー営業」の2つが挙げられます。
これらの職種に関しても、三井住友海上の新卒採用HPを参考にしながら業務内容を確認してみましょう。
リテール営業の目標を一言でいうと、代理店の売上を向上させることです。代理店の顧客に対する新しい保険提案を一緒に考え、新規の契約確保のために、市場調査を行い、新しい営業先を絞り、一緒に開拓していく。代理店のスタッフ採用の支援や、新人向けに保険の勉強会を開催する、など。自分で販売するのではなく、販売戦略を考え、指導していく仕事です。代理店経営の支援という方が近いかもしれません。当社だけでなく複数の保険会社を扱う代理店もあります。その中でいかにして当社のシェアを上げていくか。そこが私たちの腕のみせどころでもある。それぞれの代理店や顧客のビジネスと業界の置かれている現状を理解し、いかに優れた販売戦略を提案していけるか。そして、パートナーとしての信頼を勝ち取れるか。いろいろなノウハウはあるけれど、いちばんはクイックレスポンスと情熱ではないでしょうか。
私が担当しているのは、法人向けの自動車リースを本業とする保険代理店です。企業が営業車や社用車に使用する車両をリース契約する際に、同時に自動車保険を提案しているのです。私たちディーラー営業の仕事は、リース会社の営業担当者が自動車保険の新規契約獲得するための指導や支援を行うことと、既にご加入いただいている法人への事故発生時のスムーズな対応、さらには事故防止(ロスプリベンション)を始めとしたサービスを提供することです。
たくさんの車両を使用する法人にとって、ロスプリベンションは大きなテーマ。事故を減らすことは、修理費用や年間保険料の削減につながります。損害率を減らしていくことは、私たち保険会社にとってもさまざまなメリットがありますが、何よりもお客さまや代理店からの信頼を獲得できること。競争の激しい自動車保険の世界では、信頼は大きな財産です。今、私たちの仕事は、自動車保険を売るだけではなく、事故の発生原因を分析し、事故を減らしていくための講習会の実施や、お客さまの組織風土整備にまで及んでいます。
社員が語っているように、リテール営業・ディーラー営業の主な職務内容は、代理店企業の売上を向上させることや、代理店スタッフの支援などが挙げられます。代理店経営の支援を行う「マネージャー」という表現が近いかもしれません。
つまり、これらの営業担当が顧客を直接担当する機会は基本的にないため、損保業界の営業の業務内容は生保業界のリテール営業に非常に似通っており、やはりこちらの職種もリーダーシップが求められていることがわかります。
よって仕事において求められている強みとしては、生保業界のリテール営業と同じく「3.リーダーシップを発揮し、周囲の人と目標を共有し達成することができる」、「4.価値観や立場の異なる人と協力して成果をあげることができる」などのスキルが求められていると言えるでしょう。
銀行・証券の働き方
これまで紹介した生損保業界の働き方は、チームや代理店におけるマネジメント業務がメインであったと思います。
それとは対照的に銀行・証券のリテール営業の働き方は、個人の営業マンとして顧客先に訪問し金融商品を提案していくのが主な仕事になっており、多くの企業において個人の業績が評価に強く反映されていきます。実際の業務内容についての確認を通して、銀行・証券業界の働き方についても考えてみましょう。
銀行の働き方
銀行におけるリテール業務は、大きく分けて個人顧客向けと、中小企業向けの2つに別れます。個人顧客に対しては、預金や資産運用、ローンなどをすすめるといったもので、金融商品を購入してもらうことが主な仕事であり、中小企業向けの営業は融資などを行うことがメインの業務になります。
以下は、実際に三井住友銀行にてリテール営業を担当している行員のインタビューです。
心に残ったお客さまとのエピソード
現在、私が担当している業務は「お客さまのお金に関する悩みを解決する仕事」です。お客さま一人一人、様々なお金の悩みを抱えています。「大相続時代って新聞で言うてるけど、どういう対策をとればいいかわからないわ」「いまの預金の金利は低すぎるわよね」「事業をうまく後継者に引き継ぎたいけど、どうすればいいんだろう」など様々です。お金や資産に関する悩み、心配事は生活していれば誰しも1つや2つは必ずあるものなんです。
それを解決する為に、私たち担当者は一人一人のお客さまに真摯に向き合い、ご自身のお考えやお話を聞きます。それを踏まえて解決に向けてアドバイスや提案をします。お客さまのお金に関する悩みや心配事を解決する為の商品やノウハウは、三井住友銀行にたくさん揃っています。しかし、その商品や仕組みを使ってお客さまの問題を解決するには、お客さまが「何で悩んでいるのか」、「今後どうしたいのか」を理解する必要があります。それを聞き出すことは簡単なことではありません。自分の家族や友達の悩みを聞き出すのもけっこう大変ですよね。
行員が語っているように、銀行におけるリテール営業の担当者は個人でお客様を抱え、そして一人ひとりの顧客に真摯に向き合い、顧客の課題解決のため最適な金融商品を提供することが主な仕事です。
個々の営業担当がノルマを与えられて競い合いながら業務を行うため、unistyleでも過去に紹介した『ES・面接で人気企業内定者が企業に伝えていた5つの強みとは?』と照らし合わせて考えてみると、「1.個人として努力し、成果をあげることができる」、そして「2.関係者と信頼関係を構築し、課題やニーズを引き出し、解決のための提案から実行まで行うことができる」の2つの強みが業務において特に重要になってくるでしょう。
生損保業界と比較すると働き方はもちろん、仕事を行う上で必要になってくるスキルも異なっていることがわかるのではないでしょうか。
証券の働き方
金融業界の中でも、多くの学生にとってゴリゴリの営業スタイルのイメージが強いであろう証券業界。そんな証券業界のリテール営業についても同様に紹介したいと思います。
営業部門では、全国約160の本支店・営業所で、個人や法人のお客様を対象に資産運用等のビジネスを展開しています。
お客様の大切なご資産についてのお悩みやご要望に対して、安心して相談できる良きパートナーとなり、お客様から選ばれる金融機関となるために、より質の高いサービスの提供を目指して、日々取り組んでいます。
横浜支店で個人・未上場法人等のお客様を担当しています。お客様それぞれのニーズを汲み取りながら、最適な資産運用の提案を行うのがリテールビジネスのミッションです。
現在の私があるのは、「人」との関わりのおかげと言ってよいと思います。リテール営業のノウハウを教えてくれたのはチューター(新人指導役の先輩)でした。マンツーマンでプロに教えてもらう中で、自分自身も先輩のスキルや知識を日々吸収できる環境が当社にはあります。
またあるお客様(経営者)との出会いは、私にとって「かけがえのないもの」となりました。お客様ご自身の経営者としてのエピソードを惜しげもなく教えていただき、若く経験の浅い私に対して、ビジネスパーソンとしてのアドバイスを数多くいただきました。仕事を行う上で大切にしていることは、「常に、お客様のことを考え、考え尽くす」こと。簡単なことではありませんが、日々実践するよう心がけています。ただ、どんなに考えても確固たる知識やスキルがないと、プロとして信頼されることはありません。「自身のスキル・知識の向上が、よりお客様に貢献することに繋がる」と考え、日々努力を続けています。
証券業界に入社した社員の多くは、全国の支店や営業所に配属され、現地の個人や法人の顧客を対象に資産運用のビジネスを行います。銀行と同様に、各社員が各々の顧客を抱え、支店ノルマの達成に向けて営業を行います。
大和証券の社員が語っているように、顧客に真摯に向き合い、そして信頼関係を築くことが仕事において特に大切なことであり、それを通してより良いサービスを提供していくことが証券リテールとして成長する上で重要であると話しています。
こういった側面から、unistyleでも過去に紹介した『ES・面接で人気企業内定者が企業に伝えていた5つの強みとは?』と照らし合わせて考えてみると、「1.個人として努力し、成果をあげることができる」、そして「2.関係者と信頼関係を構築し、課題やニーズを引き出し、解決のための提案から実行まで行うことができる」の2つの強みが業務において重要になってくるでしょう。
銀行のリテール営業と業務のスタイルが非常に似ているため、やはり必要となる強みも一致していることがわかります。
それぞれの業界が求める人材
さてこれまで生損保と銀行証券の営業職の働き方について紹介してきましたが、それぞれの業界においてリテール営業職の働き方が実は違うことがわかったのではないでしょうか。
このように、「金融業界」と一括りにしても、働き方によって求められる能力は大きく異なるので、業界という括りだけでなく実際の業務内容についてもしっかりとおさえた方がよいことに注意してください。
生損保の営業は、代理店や社内の営業担当者の管理や教育、支援をメインの業務としており、顧客と直接関わる機会が少ないのとは対照的に、銀行証券の営業は、各社員がエリアごとに各々の担当顧客を抱えており、それぞれの顧客のニーズに合わせた金融サービスを提案していくことがメインの業務となっております。
よって、生損保業界が求めるであろう人材としては、「3.リーダーシップを発揮し、周囲の人と目標を共有し達成することができる」、「4.価値観や立場の異なる人と協力して成果をあげることができる」これら2つの強みを持っている学生だと思われ、一方で銀行証券業界が求めるであろう人材は「1.個人として努力し、成果をあげることができる」、そして「2.関係者と信頼関係を構築し、課題やニーズを引き出し、解決のための提案から実行まで行うことができる」これら2つの強みを持っている学生であると考えられます。
また、金融業界の各機関にはリテール営業とは別に大口顧客(大企業など)を対象としたビジネスである「ホールセール」が存在します。こちらの職種は生損保・銀行証券の間で職務内容や求められるスキルに大きな差はないため、働き方の違いについて特別フォーカス必要はないと思われます。
最後に
いかがでしたでしょうか。
毎年多くの学生が志望する金融業界ですが、憧れやブランドだけで業界を志望しており、実際の働き方についてしっかりと把握しないまま選考を受けてしまう学生が少なくないのが現状です。「それぞれの業界での働き方はどのようなものか」をしっかり把握した上で自分の就きたいキャリアを考えることで、「自分が将来活躍したいフィールド」がより明らかになってくるのではないでしょうか。
また、実際の就職活動における選考においても、業界における職種の具体的な内容をしっかり理解していることを説明した上で、自分のどういった強みがその仕事で活きるのかをアピールすることで説得力が増し、面接官にとっても納得しやすい志望動機を話すことができると思います。ぜひ今回の記事を通して、納得のいく就職活動をしてほしいと思います。
金融業界の情報収集に役立つ!就活生向けLINEオープンチャットを紹介
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金融業界について詳細に知りたい方はこちらを参照してみてください。
金融業界完全攻略記事まとめ
1.金融業界の仕組み
2.金融業界の働き方(職種)
3.金融業界の現状と今後の動向
4.金融業界の志望動機の書き方
5.金融業界の自己PRの書き方
6.金融業界のオススメ本