エントリー戦略の実践
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最終更新日:2022年03月29日
ここまで、達成計画の核を成すエントリー戦略について概念を説明してきましたが、よりわかりやすく説明するためにも、架空の人物である田中君を例にとってエントリー戦略の立案の仕方を説明したいと思います。
1.田中くんのスペック
名前:田中太郎
学歴:青山学院大学 経済学部三年(一浪)
海外経験:海外旅行で行く程度
学生時代の活動:飲食店アルバイト1年、家庭教師1年、テニスサークル3年、マクロ経済学ゼミ所属
志望業界:自動車メーカー、機械メーカー、商社、金融機関
【設定】
田中君はどこにでもいる普通の大学生。一年間浪人して、青山学院大学に入学し一年生からテニスサークルに所属。一年生の時には家庭教師のアルバイトをして、最近までは大手チェーンの居酒屋でアルバイトをしています。
就職活動は始めたばかりであまりわからないものの、父親が自動車メーカーで働いていることから、漠然と自動車メーカーや機械メーカーを志望。
但し、給与やステータスの憧れから商社や金融機関への就職もしたいと考えています。もちろんコネなどあるはずもなく、浪人したものの第一志望の大学ではないことから若干学歴にも引け目を感じており、今後の就職活動には不安を感じています。
2.田中君のエントリー戦略 ①出発は自動車業界
unistyleのアカウント登録を行い、一通り読み終えた田中君は早速自分自身のエントリー戦略について考えてみました。
まずは父親も働く自動車メーカーに一番興味があるので自動車メーカーを中心に調べてみましたが、調べてすぐに驚きました。
自動車メーカーだけで10社以上もあるのです。トヨタ、日産、ホンダ、いすゞ、マツダ、三菱自動車、日野自動車、富士重工業、ダイハツなどなど。取り急ぎunistyleにある通り、同一業界の企業は上位から下位までエントリーすることにしました。
次に田中君は自動車業界の本を買ってビジネスマップを広げることにしました。そこまで業界のことを知らなかった田中君はその本で始めて、自動車の部品が別会社で作られていること、それらの会社も独自に新卒採用をしていることを知りました。
自動車メーカーと密接な関係を築いており、安定しているようにも感じられました。部品メーカーであれば自動車メーカー本体よりも採用における競争が厳しくないかもしれないと考え、これらの業界も見ることにしました。選考時期をみんなの就職活動日記掲示板で調べてみると、5月以降の晩期に選考活動を行う企業が多いこともわかりました。
3.田中君のエントリー戦略 ②思いもがけない業界との出会い
次に自動車業界以外の業界にもマップを広げるべく、ゼミの先輩で自動車メーカーに内定した人に話を聞くことにしました。
先輩は自動車メーカー以外にも幅広く様々な業界に内定をもらったこともあり、色々な話を聞けるのではと思ったからでした。結論から言えば、この訪問では非常に学ぶことが多かったです。
先輩も自動車メーカーを中心に様々な業界を見ており、中でも自動車の原料である鉄を作っている鉄鋼メーカーと最後まで悩んだとのことでした。先輩曰く、自動車メーカーでは一生自動車の仕事にしか関われないが、鉄鋼メーカーであれば自動車だけでなく新幹線や不動産など様々な業界と関わることができるという自動車メーカーにはない魅力があったそうです。
但し、最終的には「日本のモノ作りを最先端で担うメーカーで働きたい」と考えて自動車メーカーへの就職を決意したそうです。先輩は初めから日本のモノ作りに深く関わる仕事がしたいというのが企業選びの軸だったとのことです。
また鉄鋼メーカーの話から派生して鉄鋼専門商社の話も先輩から聞く事ができました。鉄鋼メーカーが作っている鉄の卸をしているのが、鉄鋼専門商社とのことで、それらの企業はエントリーしたものの内定がもらえなかったとのことです。
思いもかけないところから給与やステータスだけで志望していた商社とのつながりが見えた田中君は商社についても調べてみることにしました。
4.田中君のエントリー戦略 ③商社とのつながりの発見
商社についてもっと詳しく調べるためにも、鉄鋼専門商社で働く社会人の方にOB訪問することにしました。
始めてのOB訪問で緊張したものの、このOB訪問もしてよかったと思える収穫の多い訪問でした。専門商社というくらいなので、作られた製品を右から左に流すだけかと思ったら、そんなことはなく鉄鋼メーカーから買った鉄を加工する会社にも投資をして、加工してから販売するといった仕事もしており、鉄に関わる仕事はかなり幅広くしていることを知りました。
当然自動車業界にも販売をしており、自動車メーカー担当の人もいるなど自動車に関わる仕事ができるのも魅力でした。また鉄鋼専門商社の親会社である総合商社がそもそもの鉄の原料である鉄鉱石の獲得をしていることも知ることができました。
商社が世界から原料を獲得し、日本の技術力を持ったメーカーが世界に売るための最終製品にし、また海外へ輸出していく、多くのプレーヤーが関わり一つのビジネスが成り立っていることを改めて実感することができました。
【参考:田中君作成のビジネスマップ】
5.田中君のエントリー候補
ここまでで田中君は自動車メーカー、自動車部品メーカー、鉄鋼メーカー、総合商社の鉄部門、鉄鋼専門商社を受けていくことにしました。
また鉄鋼専門商社の方に、金融は全てのビジネスの基本だから興味がなくとも受けるべきというというアドバイスに基づき、銀行・証券・損害保険会社を受けることにしました。現状の志望度では自動車メーカーが一番高いものの、今後調べていく中では総合商社や鉄鋼専門商社の志望度が高くなる可能性も感じており、就職活動を通してビジネスの成り立ちを学ぶのが楽しくなってきました。
ここまで研究していく中でおぼろげながら「父親と同じ様に日本のモノ作りを支える仕事がしたい」と考えるようになり、もっと日本のモノ作りを支えている企業を調べてみたいと思うようになり、就職活動が段々と楽しくなってきました。
①自動車メーカー
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、ダイハツ、三菱自動車、富士重工業、いすゞ自動車、日野自動車
②自動車部品メーカー
デンソー、アイシン精機、トヨタ車体、豊田自動織機、豊田紡織、ジェイテクト
③鉄鋼専門商社
メタルワン、伊藤忠丸紅鉄鋼、JFE商事、住金物産、阪和興業、岡谷綱機、神鋼商事
④総合商社
三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、双日、豊田通商、兼松
⑤銀行
三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行、新生銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行など
⑥証券会社
野村證券、大和証券、SMBC日興証券、三菱UFJ証券、みずほ証券、SBIインベストメントなど
6.最後に
以上が、ある意味理想的なエントリー戦略で自分の足を使いながら動き、もらったアドバイスを基に自分の頭で考えて広げていくという例になります。
これだけでも40社以上の会社へエントリーすることができます。また自動車部品の会社などは選考時期も晩期に相当するほど遅いことが一般的でリスクヘッジも十分できています。
皆さんも田中君の動きを参考に是非とも様々な業界へのエントリーを考えていただければと思います。
photo by woodleywonderworks