TOEIC 500点から始める米国有名大学へのTOEFLの道

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最終更新日:2022年03月29日

TOEIC 500点から始める米国有名大学へのTOEFLの道

 

こんにちは。私は学部時代に米国へ9ヶ月の留学を経験し、現在は大学院に籍を置く文系院生です。今回は私の経験を下に、「いかにして米国有名大留学に必要なTOEFLのスコアを取るか」をテーマに書きます。
はじめに私自身のスタート地点を明らかにしておくと、留学対策を始める前、TOEICスコアは約500点相当でした。TOEFLでは56点です。それが半年の対策後にはTOEFLで87点、TOEIC換算で780点相当まで伸びました。
ここではまず、TOEFLは何かを簡単に説明し、その後留学準備スケジュール内でのテストの位置づけ、その後スコアアップの為にやるべきことを紹介します。
 

TOEFLとは何か

TOEFLとはTest of English as a Foreign Languageの略称で、米国ETS社が実施している英語のテストです。これは特に英米圏の大学で問題なくやっていく能力があるかを測るテストであり、出てくる問題も授業や大学での日常生活が題材となっています。
 
皆さんが今後受けるのはTOEFL-iBTというテストになります。これは、4つのセクションで構成されています。読む力のリーディング、聞く力のリスニング、話す力のスピーキング、書く力のライティングです。4つのセクションは各30点満点で、テストは120点満点になります。実際に留学を目指すのであれば、学部レベルで低くとも60点〜70点程度、有名大学ですと80〜90点、中には100点以上を最低基準として掲げている所もあります。例えば、ハーバード大ですと、学部で(明示されてませんが)100点以上、MBAで109点以上は必要です。
 

TOEFLをいつ受けるのか〜留学までのスケジュールの一例〜

ここでは大学からの派遣留学(交換留学)制度を利用して留学すると仮定します。すると、留学までのスケジュールはざっと以下のようになります(注:時期等は地域、国、サマースクールの有無等で前後します)。
 
10月初旬 学内で留学を申請(スコア提出の余裕ある期限)
11月初旬 学内選考
   中旬 選考通過連絡
12月    希望大学への申請準備開始(推薦状など準備)
2月中旬  受け入れ先大学への申請締め切り(スコア提出最終期限)
3月末〜  受け入れ先より決定の通知、以後チケットやビザ取得など渡航準備
・・・・
7月〜9月 留学開始
 
理想的には留学を希望する前年の9月中までに、希望大学が要求する最低限のスコアを取っていたいところです。仮に学内申請までに取れなかった場合でも、あちらの本申請の期日までに十分なスコアを提示できれば留学が許可されることもあります。
そうすると、夏頃までには数回はTOEFLを受験しておきたいところです。ギリギリまで粘るとしても、1月中旬の受験が期限となります。また、スコアが低い場合は、留学が始まる前に高額なサマースクールへの出席が義務付けられたり、履修できる授業に制限が加えられることがあります。
 
 

スコアアップためにやるべき4つのこと

では実際にスコアを上げる勉強法です。私が行った勉強は、①参考書の繰り返し(公式参考書+CD付の参考書)、②多読、③多聴、④各テンプレートのブラッシュアップです。以下それぞれ詳しく説明します。
 
①参考書の繰り返し
私が初めて買ったTOEFLの参考書は、辞書で有名なロングマンが出している『Longman Preparation Course for the TOEFL Test: iBT Student Book with CD-ROM and Answer Key 』です。この本に付属するPC用の演習ソフトがかなり使えます。豊富な演習問題が収録され、繰り返し解くことで実際の形式にも慣れますし、自分の弱点もすぐ分かります。本番に比べ若干問題は簡単ですが、テストに対して免疫をつける意味でも演習は非常に役立ちました。
 
次に重宝したのが、ETSが出している『Official Guide to the TOEFL Test With CD-ROM』という本です。こちらにはロングマンのようなソフトは付いてなく、問題数では劣ります。しかし、TOEFLの実施機関が出している本だけあって、試験のコツや問題の質は圧巻です。極端な話、この本をひたすら繰り返せばスコアは間違いなく上がります。
 
他にも単語力をつけるため、トフルゼミナールの高木義人さんの『TOEFL TEST対策iBT英単語—100点獲得のためのRole Playing』を使いました。この本は分野ごとに単語を学べたり、接頭語、接尾語の知識を着け未知の単語を推測する力が着きます。ただ何分、分厚い本なので、全部やり切るにはかなりの根気が必要です。TOEFLに限って言えば、文法よりも単語の方がはるかに大切かもしれません。
 
②多読
次に時間をかけたのが多読です。図書館や本屋に置いてあるような薄い洋書を何冊も読みました。例えば、Oxford、Cambridge、Penguinといった出版社が出しているGraded Readerというシリーズを読めば、必ずや速読力・語彙力を養えます。辞書なしで読み進められるものを選ぶのがポイントです。ある程度数をこなした上でリーディング問題に向かえば、あら不思議、内容が自然と頭に入ってくるようになります。
 
また、TOEFL対策だからといって、興味のないものばかり読むと気がめいります。その意味で好きな小説を選んで読むのはいい気分転換です。英文に慣れてきたら、ネットを使ってThe EconomistやNew York Timesなどに目を通せば、質のいい英語に触れられ、更にライティングに使える表現を学べ、一石二鳥でしょう。 
 
③多聴
よく英語が自然と聞こえる瞬間は突然くる、と言いますがあれは本当です。その為にお勧めなのが、Podcastで取れる各コンテンツです。CNNやBBCなどの有名海外メディアのコンテンツ、若しくは英語学習者向けのコンテンツが無料でダウンロードできます。また、ただ聞き流すだけでなく、英語が流れてる中で自分も同じように喋る、シャドウィングという方法が効率的です。はじめのうちは、ニュース英語は早いのでよりゆっくり喋ってくれるコンテンツを探し、ひたすら繰り返します。慣れてきたらニュース系のものに移ります。
 
更に擬似留学体験がしたい!ということであれば、iTunes Uという、大学の講義を録音したものがいいでしょう。大学の講義というだけあって、本当に多様なトピックを選んで聞くことが出来ます。あちらの講義を先取りでき、尚且つ色々な英語への免疫がつきます。かなりお勧めしたいコンテンツです。勿論、シャドウィングは必須です。
 
④各テンプレートのブラッシュアップ
最後に少しテクニック的なことですが、スピーキング、ライティング対策としてテンプレートを作り、それを絶えず改善しました。両セクションに出てくる問題はある程度決まっています。なので、問題への答え方をテンプレート化し、それを少しずつ直すことで、点数を上げました。参考になるのが、ETSの参考書に載っているエッセイや回答例です。これらを元に、自分の好きな言い回しや表現を盛り込んだテンプレートを準備すれば、本番も焦らずに答えることが出来ます。また、スピーキングについては、恥を忍んで自分の喋りを録音し、変なところを改善していくこともスコアアップにつながります。
 

まとめ

さて、ここまでTOEFLとは何か、留学までのスケジュール内でいつまでに受けるか、どうやってスコアアップするかについて書いてきました。繰り返しになりますが、TOEFLは英米圏の大学で問題なくやっていく能力があるかを測るテストです。そして、テストは対策さえ出来ていれば怖いものではありません。これまで英語を日常的に話してこなかったり、書いてこなかった人でも、対策さえすれば必ず点数は上がります。後はいかに根気強く勉強を続けられるかです。
 
個人的なことを言えば私自身、様々な参考書に手を出し、勉強が嫌になったことが多々ありました。しかし、その中で今回紹介した本に取り組み、英語を多読・多聴していく中で少しずつスコアは上がりました。帰国子女でも無く、特段英語が得意でない私が出来たのです。皆さんに出来ないはずが無い。そして、TOEFLさえ出来ないようならば、海外に行って勉強できるはずがありません。60点あれば留学が出来るかもしれません。しかし、その位じゃあちらに行っても、現地の人が何を言っているのか全く分かりません。私はそうでした。しかし、この勉強が役に立たないわけじゃない。現地でエッセイを書いたり、課題をこなす上でTOEFL対策で培ったものは必ずや力になります。
 
だからこそ、TOEFLの勉強なぞ集中して一気に終わらせ、さっさと目標スコアを獲得しましょう。やることはシンプルです。参考書の繰り返し、多読、多聴、テンプレートの改善、これだけやれば十分です。
 
一人の留学経験者として、皆さんのTOEFLのスコアが少しでも伸び、実り多い留学生活になる事を心より祈っています。
 

photo by sean hobson

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採用したいと思う人材に共通しているものとは|ネオキャリア 宇田川奈津紀|unistyleインタビュー 採用したいと思う人材に共通しているものとは|ネオキャリア 宇田川奈津紀|unistyleインタビュー 企業の人事が「採用したい」と思う人材に共通しているものはなにか。一言で言うならば「優秀である人」が採用されると思いますが、”優秀さ”とは人によっても異なるものだと思います。今回は様々な業界で様々な人材の採用をし続けてきた株式会社ネオキャリアの宇田川奈津紀さんに、採用したいと思う人材についてお聞きしてきました。あだ名は、“メスライオン”。大学卒業後、大手旅客サービスの乗務員として入社し、その後大手人材系企業にて営業として勤務。ヘッドハントにより大手福祉系企業へ移籍するも2年後、解散により退職。広告業界での新規事業の立上げを経て再び人材業界へ戻る。IT企業をメインクライアントとして営業として活動後、人事として人材業界で培ったノウハウを活かしダイレクトリクルーティングの確立や新卒・中途採用、採用ブランディングを統括。また、人材会社にて社内向け営業研修セミナーや年間約1500社が受講した人事向け採用セミナーの講師を務める。2018年4月にネオキャリアに入社。CEO直属の特命採用責任者兼中途採用責任者として高難易度の採用に挑戦し続ける。◆株式会社ネオキャリアHP◆メスライオンと呼ばれる理由目次・優秀な人材=”能力の高さ”だけではない・理論武装は本質的ではない。”本音かどうか”を人事は見抜いている・心にもないことを言って内定をもらっても幸せにはなれない・最後に伝えたいこと優秀な人材=”能力の高さ”だけではないこれまでのストーリーと未来のビジョンを語れるか私はこれまで新卒・第二新卒・中途・専門職(エンジニア、クリエイター等)など多様な採用を長年してきましたが、「採用したい人材の共通点」を挙げるとすれば、「これまでの人生を語れる人」や「こうなりたいという未来を描けている人」に対しては採用意向度がぐっとあがります。もちろん、これまでのスペックや経験もある程度大事ですが、結局採用している人は、こうなりたいという「未来」を描いていて、その未来と企業を重ね合わせて考え、語れる人なんですよね。このあたりが語れると、極論ですが採用しない理由がなくなっちゃうんです。言い換えるなら、採用したい人=興味があるからこそ質問をたくさん持ってくる学生といったところでしょうか。手当たり次第企業研究をしてくださいと言っているわけではありません。自分の未来と重ね合わせて考えてきている学生は、「こうありたいんですけどその会社でどんな経験が詰めますか」「この会社に本気で入りたいので会社についてもっと教えて下さい」といった前のめりな姿勢でくるんです。やはりこういう学生にはこちらも向き合う姿勢が前のめりになりますね。いつも学生と話す際に「就活って何だと思いますか?」って聞くんですが、多くの学生を見てきて思うことは、「世間一般で言われる”こうあるべき”」という固定概念が先行しているんです。聞きたいことがあっても落とされたくないから当たり障りのないことを語ったり質問したりこれでは本質がお互いに見えないと思います。私は”それは個性を重視する会社をみてないだけなんじゃないか?”と思っていて。自分の聞きたいこと、挑戦したいことをぶつけてみてそれを受け入れてくれる会社を探す、というのが人事経験を積んだ私が思う”正攻法”なんじゃないかなと思っています。苦しいけど、自分について愚直に考え続けることが近道繰り返しになりますが、自分の将来をどうしたいかについて真剣に向き合っている人を採用したいと思っていて、それができている人は過去とも向き合っているし、就活で出会う企業に対しても真剣に考えています。自分自身の中にある答えが合っているかは分かりませんが、愚直に考え続けるということは想像以上に大変なことですし、大切なんですよね。そしてきっと、真剣に考えて出した答えであれば、後悔もないと思います。20年間の人生において就活は一番自分について考える時間だと思います。自分の人生と向き合うことってとても辛いこともときにはあると思いますが、そこで考え抜けないで「このへんでいいや。」といい加減に意思決定してしまうと、入社した後にも「これでいいのか?」と迷って転々としてしまう。そんな人がたくさんいます。キラキラした目で「御社に入りたいです!」と言われたら「なんで入りたいの?」という質問をします。この質問に会社と自分の将来を重ねて答えられたら、次は「一緒に働こう!インターンして自分の目で確かめてみる?」ってなるわけです。チャンスを手に入れるかどうかは、最後は情熱が大切だなってつくづく思いますね。興味があること全てを書き出してみることが、最初の一歩私はどの学生と話しても必ず1回では決めつけないようにしています。「少し的はずれなことを言っている。」「就活で疲れているのかな。」そんな違和感を覚えたら(聞いてはいけないことを除いた)パーソナルな話をするようにしています。そもそも何に興味を持っているか、友人関係、何に対して劣等感を持っているか、などあらゆることを人事としての目線ではなく”一人の人”として話すんです。興味を全部書き出してあげて、それを元に二回目は大学に私が出向いて話したりします。採用面接は基本的に企業に学生が赴いて行われることがほとんどだと思うんですけど、それだとこちらのテリトリーになってしまってなかなか本音で話してくれたりしない。でも、学生のテリトリーに入ると段々心を開いてくれて、今何に悩んでいるか、本心が分かるんです。少し私の人事としての採用テクニックのような話になってしまったんですが、伝えたいこととしては、優秀さとは能力の高さだけではなく、自分の未来に対してどれだけ真摯に向き合って考え抜いているかだと思います。理論武装は本質的ではない。”本音かどうか”を人事は見抜いている就活テクニックは多く存在していますし、特に上位校の学生はロジックの通った自己PRや志望動機を作るのは得意だと思いますので理論武装をして面接に臨むことが多いように思います。でも、実はその武装は人事には簡単に見抜けてしまうんですよね。人事も就活を経験し「人」のスペシャリストとして多くの学生に会ってきているので。今は限られた期間の中で集中的に企業を受けなければならないようなスケジュールになっているので一つ一つのステップを進めていくことが大変であることも理解しています。ただ本当に自分がどうなりたいかを考えているかいないかはすぐ分かります。要するに「自分の本心はどうなのか/何をどう伝えようとしているのか」を人事の私は見ています。求人票に乗っているような質問をされると、本心としてはうちに興味がないんだろうなと思ってしまいます。自分の将来を見ていれば会社の将来と重ねるのは当然だと思いますし、調べればわかるようなことも聞かなくなるはずです。もっと前向きな質問がたくさん出てくるはずなんですよね。そして「生き生きしているかどうか」も重要視しています。「3年営業をやってそのあとマネジメントしたいです。」といったよくあるフレーズを聞くと「それ楽しい?」と思っちゃうんですよね。本心でそう思っているのであれば問題ないと思いますが、その会社のロールモデルのような人に感化されて「そうならないといけない」という思考が働いている場合は、根本的に生き生きしているとはあまり思えないんですよね。心にもないことを言って内定をもらっても幸せにはなれない内定はゴールじゃない私は就活と恋愛は似ているとよく言います。「失恋」しないためにも、嘘はつかないで欲しいと思っています。なぜなら、嘘をついてまで人と付き合ったとしても、おそらく幸せにはなれないと思うからですね。個人的には、企業側もできるだけ嘘になるようなことは控えないといけないと思っています。就職も同じで、自分の気持ちに嘘を付いてまで入社してもきっと幸せになれないです。自分が情熱を持っているかどうかを何よりも大切にして欲しいです。心にもないことをいって入っても、その後嘘のオーバーラップが出てしまうのは目に見えていますから。ですので、重要なことは、その先の人生が最も大切であり、内定そのものはゴールじゃないということを正しく理解することだと思います。興味のアンテナを高く掲げることでリスクを最小化する一点集中には、集中するあまりチャンスを逃してしまうリスクもあるんです。よくある失敗談としては、志望業界を一つに絞ってしまってうまくいかなかったケースですね。時既に遅しで、周りを見渡すと大抵の企業が募集を終了しているんです。私自身もその経験をしているのですが、だからこそ伝えたいのが、”興味はないけど一度行ってみること”が大事で、常にアンテナは高く掲げておいて損はないと思っています。昔話になりますが過去に慶應義塾大学の学生と就職相談でお会いしたのですが、彼は金融を志望していました。ご両親も金融業界に勤めておられ、ゼミの先生も金融を勧めている。幸か不幸か彼は金融にしか目がいかなくなり、金融しか知らないまま選考に行ってみたら全部落ちてしまって、この先どうすればいいかわからなくなってしまった学生がいました。彼にはそのとき「例えばIT×金融も金融だよね」と視野を広げるお手伝いをしたんです。第一希望の企業から内定をいただければ問題ないかもしれませんが、固定概念やあるべき論を強烈に持ってしまうことは一歩間違えるとリスクにしかならないと思います。また、視野が狭まっていると友人は受かったのに自分は落ちたということに引け目を感じて気持ちが沈んでしまったりするんです。そんな学生には自分が落ちたという引け目じゃなくて「将来で勝負してほしい」と提案しています。特定の業界への固執を解くことで生まれる新しい可能性はたくさんありますからね。最後に伝えたいこと1社に骨をうずめろとは言えないですが、「この会社だ!」と思えた会社に入社してほしいと思っています。自分が「これだ」と思える会社に出会って欲しいですし、出会うために行動できているか?ということをもう一度考えてみてほしいですね。そして、人生でこれだけ自分のことを考えられる時期なんてなかなかないです。とても苦しいことだと思いますが、自分自身の未来を突き詰めて考えられる機会はそうそうないので、この時間を大事に楽しんで欲しいですね。 18,113 views
どの業界・企業でも使える説明会・本選考で困った時に使える逆質問3選 どの業界・企業でも使える説明会・本選考で困った時に使える逆質問3選 こんにちは、16卒の早稲田院生です。今回は、質問会や座談会、面接の最後などで度々行われる「逆質問」について、今回は取り上げていきます。聞きたいことが多すぎて、何を聞けばいいかわからないと感じている方も多いでしょう。一方で、ネタ切れで無言になってしまった経験がある方もいるでしょう。そこで今回は、実用的な逆質問3選を紹介します!まず本題に入る前に、逆質問の場がなぜあるのか、について解説していきます。逆質問の目的は、大きく分けると以下の2点があります。【1】(学生視点)その企業に対する理解を、更に深めるため。逆質問の場は、説明会や配布資料などでは載っていないような情報についても直接聞くことのできる貴重な機会です。特に、●業務のやりがい●その社員が入社した決め手●福利厚生に対する満足度などについて質問する方が多いようです。確かに説明会でも説明してくれることはありませんし、企業資料にも載っていない情報ばかりです。【2】(面接官視点)逆質問の内容や質から、学生を評価するため。逆質問の場も、もちろん学生の評価の対象になっています。逆質問の内容によって、評価は上がりも下がりもします。●評価が上がる質問の例:社員が簡単に答えられない質問や、その業界・企業に関心がないとできない、鋭い質問。●評価が下がる質問の例:資料に載っていること、説明会で話すような内容、知ったところで使い道のない情報など。ですので、なるべく評価の上がる質問を何個も聞いていく方が良いでしょう。また、ありきたりな質問(入社の決め手など)については、聞かれることが多すぎてウンザリしている社員も多いようです。場合によっては、評価が下がることもあるかもしれません。【1】と【2】から、「更に企業の理解を深めることができ、鋭く、ありきたりでない質問」が良い質問と言えるでしょう。※逆質問で何を質問すべきなのか、という点について更に詳しく解説している記事がありますので、ぜひ読んでみてください。参考:面接における逆質問で何を質問すべきかさて、そこで今回は●よくある質問ではない●簡単に回答できるような易しい質問でない●企業の魅力を更に知ることができるという質問を3つご紹介します。つまり、困ったときの為の単なるネタ切れ対策でなく、社員に「鋭い質問」と思わせた上で、今後の選考に活かせる回答を引き出すことのできる質問になっています。そして、実際に僕がそれらの回答を選考に活かした経験も載せていきます!逆質問例1:会社の一番の魅力は何ですか?社員の語る「会社の一番の魅力」は、他社にはない魅力である場合がほとんどです。つまり、他社と差別化できている点です。ですので、志望先企業の選定に関して、非常に参考になります。以後はその会社の志望理由として用いていくことができます。一方で、この質問に対して「休みが多いところ」や「ワークライフバランス」等と回答する社員もいます。こういう回答をしてきた社員は、業務に魅力をほとんど感じていないということです。ですので、その会社は気を付けた方が良いでしょう。《実例》某証券会社にて、「”お客様との信頼関係の構築能力”を育てる環境や研修制度が整っているところ。ウチの社員の、信頼を得る力は他社に絶対に負けない。はっきり言って業界内で圧倒的最強。金融業界はカタチがないものを扱うので、信頼を得るということが最重要で、そのまま業績に繋がる。だからこそ、これを育てる環境が整っていることが一番の魅力ですね。」という回答をいただきました。証券会社を比較する際、扱っている商品などに全く差がありません。ですので、学生視点では「業界内順位」と「社風・社員の雰囲気」ぐらいでしか判断することができません。ですが、それ以外に多大なる魅力があるということを、前述の回答を通じて知ることができました。これによりこの企業の志望度は上がりました。また、志望理由にこれを盛り込んで話すことで、面接官の方から「よく当社のことを理解できているね。まさに、そこがウチの魅力なんだ。だからこそ新卒で入るならウチを本当にオススメするよ。」というフィードバックを受けました。逆質問例2:入社して最も驚いたことは何ですか?「ギャップはありましたか?」という質問をしている学生が非常に多く見受けられますが、ギャップについて尋ねると「あら探しをしている」ように見えてしまいます。また、対する回答も「悪い内容」になりがちです。それでは、今後の選考に使うことができません。そこで、ギャップではなく「最も驚いたことは何ですか?」と聞くようにしましょう。この質問に対しては、ほとんどの社員は「良かった点・想像以上に凄かった点」を回答してくださいます。この回答から、学生視点で気づかないような新たな魅力を知ることもできますし、志望理由にしていくこともできます。《実例》某信託銀行にて、「最初の配属で、希望部署があったのに、全く興味がない部署に入れられてしまって絶望した。だけど、数週間たったときにはその業務がとても大好きになっていて、ハマっていた。ウチの人事部は本当に社員のことをよく見ているよ。しっかりと社員ひとりひとりの適性や性格を見抜いた上で、配属を決めている。最初の希望部署に行かず、人事部に決められた部署に入ったことを本当に今では良かったと思っている。」という回答をいただきました。希望部署へ行けない配属リスクを危惧している学生は多いですが、この会社の場合は入社後の配属にも不安を抱かなさそうだと考えました。これを通じて、この企業へのかなり志望度は上がりました。逆質問例3:同業界で会社を比較するときは、どういった点で比較するべきですか?この質問に対する回答は、「その企業が最も秀でていると考えている点」である場合が多いです。なぜなら、その社員は、その点を重視し、その企業を選んだはずだからです。(例)成長率が著しい企業=「企業の成長性で比較すべき」という回答が多い。(例)業界順位も高くなく、特に特徴もない企業=「人が良い」という回答が多い。この質問を通じて「その企業が最も秀でていると考えている点」を知ることができます。またその回答は、社員が実際の志望理由としてアピールし入社した可能性が高いです。ですので、業界下位の企業などの特徴の少ない企業に対する志望理由を考える上で、非常に参考になるかと思います。《実例》知名度の低いが、利益率が異常に高い某ベンチャー企業にて、「利益率の良さは重視したほうがいいよ。利益率がいいっていうことは給料もよくなる可能性が高いということだし、利益率が良くないと新しい事業にもチャレンジできないと思う。当社は営業利益率を常に気をつけていて、最低何%は維持するという目標を掲げているんです。だからこそ当社は、新しい事業にも手を出すことに成功していて、今後も何か新しいことがやりたいと思えば始められる、非常に良い環境だと思うよ。」という回答をいただきました。学生視点では「業界内順位」「売上高」「社風」などで企業を判断しがちですが、「利益率」という視点で企業を見ることの重要性を学びました。また志望理由として、この話を挙げることで「なぜ似たような他企業ではダメなのか」という点を説明できるようになりました。最後に逆質問の場において、多くの学生は、ありきたりな質問や調べれば分かることばかりを聞いてしまっています。そうではなく、有意義な質問を多く投げかけていくことで、【1】企業の理解を深めた上で【2】面接官からの評価を上げられるよう、努めてみてください!photobytheItalianvoice 62,928 views
【コンサル志望者必見】ケース面接対策に読むべき本6冊を紹介! 【コンサル志望者必見】ケース面接対策に読むべき本6冊を紹介! 今回は、そんなコンサルティングファームを志望し、面接に臨む方には是非呼んでいただきたい本6冊を紹介します。本記事の構成なぜ本を読む必要があるのかケース面接とはケース面接で人事が見ているポイントコンサルティングファーム志望者が読むべき本・6選番外編└『考える技術・書く技術ー問題解決力を伸ばすピラミッド問題』└『ざっくり分かるファイナンス経営センスを磨くための財務』└『外資系コンサルのスライド作成術ー図解表現23のテクニック』最後にコンサル業界の情報収集に役立つ!就活生向けLINEオープンチャットを紹介なぜ本を読む必要があるのかなぜ就活生は本を読むべきなのでしょうか。過去のunistyleのコラム「」では、(1)キャリアを深く考えるための土台ができることと、(2)思考法や伝え方の原則を学ぶことで選考で評価されやすくなることの2点を本を読む効果としてご紹介しました。コンサルティングファームを受ける上では、(2)の内容を理解することが大切になります。なぜならコンサルティングファームは、選考の段階でケース面接やフェルミ推定といった就活生の思考力やコミュニケーション力を測る面接が存在するからです。そのためにも読書をし、必要となる思考法や知識を頭に入れておくことが選考を通過するためには重要な要素になります。ケース面接とはケース面接は、お題に対して自ら課題の仮説を立て、それに対する解決策を考えるというものです。ケース面接では次のようなお題がよく出題されます。例題・駅前にあるカフェの売上を2倍にする施策・売上の落ちている水族館の売上を向上させる方法上記のようなビジネス場面に即した内容が出題されます。通常の企業のグループディスカッションで行うことを個人で行うと考えればわかりやすいでしょう。また、ケース面接と混同されやすいのがフェルミ推定と呼ばれるものです。フェルミ推定とは、一見出せそうもない数字をいくつかの手がかりを元に導き出していくものです。有名な問題ですと、「シカゴにいるピアノ調律師の人数」や「日本にある電柱の数」などがあります。コンサルティングファームの面接では、どちらかだけが出題されるというよりは、フェルミ推定の概算をもとに、ケース面接を行うといった流れが多いです。また企業によっても、出題されやすい傾向にあるケースの種類があるので、自分が志望している企業がどれなのかも視野に入れ練習すると良いでしょう。フェルミ推定やケース面接をどのように考えていくべきかを知りたい方は以下に掲載している記事を参考にして下さい。参考・・・・・・なお、コンサルティングファームの内定を獲得したい就活生は就職エージェントneoの利用もオススメです。エージェントを利用することでアドバイザーから、就活全般のノウハウや他にも受けるべき企業の紹介など客観的にアドバイスがもらえます。少しでも興味があるという方は、下記の画像をクリックしてサービスを利用してみてください。ケース面接で人事が見ているポイント人事はケース面接から「論理的思考力・コミュニケーション能力・思考の柔軟性」といったポイントを見ています。論理的思考力コンサルティング業界といえばロジカルシンキングと言われるほど、論理的思考力は重視されるポイントになります。論理的思考力は、本質的な問題解決を効率的に、且つクライアントを説得させられるように伝えるためにも必要な能力です。コミュニケーション能力コンサルティング業界は、あまりコミュニケーション能力を重視されないイメージがあるかも知れません。しかし、コンサルタントとして関わるクライアントから本質的な課題を発見し解決するために、信頼関係を築くことは必要です。また、企業によっては、1つの案件を自分の担当分野以外の人達と協力して携わることもあります。円滑にモノゴトを運ばせるためにも、コミュニケ-ション能力は必要な能力と言えます。思考の柔軟性いくら地頭がよく、優秀な人材であっても人の意見を聞けない人は受け入れられにくいでしょう。ケース面接では、面接官とディスカッション方式で行うものや、グループディスカッションの場合だと、面接官からのフィードバックがあることがあります。その時に、自分の考えと異なる提案や思いもしなかった質問をされることもあります。そういった時に人事は頭の回転の速さや、指摘を素直に受け入れられる素直さを評価しているようです。コンサルティングファーム志望者が読むべき本・6選以下では、コンサルティングファームの選考を受ける上で必要となる知識や考え方をインプットするための書籍を紹介していきます。『現役東大生が書いた地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』現役東大生が書いた地頭を鍛えるフェルミ推定ノート――「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!外資系コンサルティングファームの面接において必要となる「フェルミ推定」の「パターン」と「解法ステップ」を、1000以上のフェルミ推定問題を解いてトップ外資系企業に内定した東大生たちがわかりやすく説明し、さらに、厳選された30問を詳しく解説しています。『東大生が書いた問題を解く力を鍛えるケース問題ノート』東大生が書いた問題を解く力を鍛えるケース問題ノート50の厳選フレームワークで、どんな難問もスッキリ「地図化」外資系コンサルティングファームの面接において必要となる「問題解決ケース」を、50の厳選されたフレームワークで解説しています。多くの問題には共通の「型」があり、その「型」に合った「基本動作」さえつかめば、あらゆる問題をシステマチックに解けるようになります。『過去問で鍛える地頭力外資系コンサルの面接試験問題』過去問で鍛える地頭力外資系コンサルの面接試験問題外資系コンサルティングファームで実際に出題された地頭力を問う面接問題を紹介し、その模範解答例を詳しく述べています。著者の大石哲之氏は、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略部門を経て、2004年に起業しています。『戦略コンサルティング・ファームの面接試験—難関突破のための傾向と対策』戦略コンサルティング・ファームの面接試験―難関突破のための傾向と対策戦略コンサルティング・ファームへの就職・転職をめざすアメリカの大学生・ビジネスマンのバイブル。ケースは計36題掲載されていて、各問題に対して、面接者と面接官の議論のやり取りが示されており、実際のケース・インタビューがどのような形で進んでいくかのイメージをつかむことができます。ケースをタイプ別に12のシナリオに分類し、各シナリオで重要となるポイントや、どのような思考プロセスを踏めばいいかを図解で解説しています。著者のマーク・コゼンティーノはハーバード大学の就職指導課で20年にわたり、戦略コンサルタントを目指す延べ1万人を超える学生の就職指導を行ってきたケース・インタビュー対策の第一人者として知られています。『ビル・ゲイツの面接試験—富士山をどう動かしますか?』ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?タイトルの「富士山をどうやって動かすか?」のほかにも、「マンホールのふたはなぜ丸いのか」「鏡が上下でなく左右を逆転させるのはなぜか」「ビル・ゲイツの浴室を設計するとしたらどうするか」などは、過去に出た問題の一例です。著者は「どんな答えが期待されているのか、頭の中や対話の中で整理する」「大きくて複雑な問題には単純な答えがある」など、問題を解くヒントも紹介しています。『地頭力を鍛える問題解決に活かす「フェルミ推定」』地頭力を鍛える問題解決に活かす「フェルミ推定」タイトルにもあるように地頭を鍛えるためのハウツーが丁寧に解説されています。また、なぜ地頭力が必要とされるのかと言った基本的な内容から、ケース問題の基礎となっている「フェルミ推定」とは何なのか、テクニックに頼るのではなく本質的に能力を身につけることが重要だと気づかせてくれる1冊です。番外編ここまでは、コンサルティングファームの選考を受ける上で読むべき本を紹介してきました。これらの本を上手く活用することが、選考を突破するためには必要不可欠です。さて、ここからは番外編として、コンサルタントとして働くことを決めた場合に読むべき本を紹介してきたいと思います。『考える技術・書く技術ー問題解決力を伸ばすピラミッド問題』考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則マッキンゼーをはじめとした世界の主要コンサルティングファームでライティングのコースを教えるバーバラ・ミントが、独自の文書作成術を披露したものになります。コンサルタントとして働く上で必要となるわかりやすい文章の書き方について解説しています。トップダウン型アプローチやグルーピングなど、論理的に考える上で必要な技術についても述べています。『ざっくり分かるファイナンス経営センスを磨くための財務』ざっくり分かるファイナンス経営センスを磨くための財務(光文社新書)著者の石野雄一さんが日産自動車の財務部や戦略系コンサルファームで働いた経験をもとに、分かりづらいファイナンスについてまとめたものとなっています。コンサルタントに財務知識が必要なのかと思われそうですが、コンサルの仕事の成果は財務諸表に現れるため、感覚を掴んでおくことで、よりビジネス的な観点をアウトプットに加えることができます。『外資系コンサルのスライド作成術ー図解表現23のテクニック』外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニックボストンコンサルティンググループやA.T.カーニーといったトップファームでの経験をもとに、プレゼンテーションの際に必要となるスライドの作成技術をまとめたものとなっています。こちらの本は、思考法を身につける類のものではないですが、若手コンサルタントで生き延びていくために必要不可欠なスライド作成技術といったテクニック的なものを解説しているため、読んでおくといいでしょう。最後にコンサルティングファームでの選考では、一筋縄ではいかない設問も多く、また入社後も様々なスキル・知識が必要となります。選考に向けて、これらの本を活用しながら、コンサルティングファームに必要な素養を是非身につけていただければ幸いです。外資コンサル業界完全攻略記事一覧1.【業界研究】外資コンサルの仕組み・大手企業ランキング・選考対策まで一挙大公開!2.【業界研究|コンサルティング】コンサルティングとは?から選考対策までを徹底解説3.【業界研究】外資コンサル大手企業一覧まとめ4.【業界研究】外資コンサルの年収ランキングを大公開!ケース面接・フェルミ推定完全攻略記事一覧・【ケース面接完全攻略】解き方や評価基準、対策に役立つフレームワーク・例題・本を徹底解説・ケース面接とは?フェルミ推定との違いや出題業界について解説・ケース面接の評価基準と対策まとめ【現役コンサルタントが解説】・ケース面接の解き方と対策方法を徹底解説【外コン過去問付き】・ケース面接対策に役立つフレームワーク、おすすめ本、数値を徹底解説・ケース面接対策に読むべき本6冊・└└└・・コンサル業界の情報収集に役立つ!就活生向けLINEオープンチャットを紹介unistyleでは業界別の就活用LINEオープンチャットを運営しており、数多くの就活生が匿名で就活に関する情報交換をしています。実際にコンサル業界志望者向けのグループでも、各社の選考に関するトークが活発に交わされています。下記の画像をクリックすることで参加用ページに飛び、ニックネームとプロフィール画像を登録するだけで参加することができますので、興味のある方はぜひご参加ください。 142,463 views
「転職」で総合商社を比較する ―投資側への転職なら三菱商事を選べ― 「転職」で総合商社を比較する ―投資側への転職なら三菱商事を選べ― 新卒就活中の皆さんは、どれだけ【入社後の転職】を視野に入れているでしょうか?日本的な終身雇用原則が崩れつつあるなか、同一企業に40年勤め上げることを過度に信奉せず、将来的な転職までを見越して新卒入社先を検討するべきでしょう。unistyleでも「勝ち組企業に内定したと思ってる学生は「ブラック・スワン」を読んでおこう」・「10年前は東電・シャープに入社した人は勝ち組だった」を始めとした記事で、入社時のブランドや給与水準が永劫保証されているわけではないとお伝えしています。また、入社してから転職活動のための業界研究ができる時間は限られていることから、就職活動の段階でベンチャー起業も含めて幅広く様々な業界を受けることが重要であると考えています。参考:優秀な就活生は3年後の転職を見据えて幅広くベンチャー企業まで受けている今回は、いわゆる日本的大企業の代表格とも言える「総合商社」をピックアップしました。実際の転職者データをもとに、【総合商社に新卒入社した方の転職キャリア】について考察していきたいと思います。転職キャリアのリサーチunistyleでは「人気企業に新卒入社したあとに転職して辿り着くエリートキャリア」を考えるため、◆プライベート・エクイティ・ファンド(PE)◆ベンチャー・キャピタル(VC)◆戦略コンサル◆ベンチャー企業の創業者および役員(未上場も含む)以上4つの集団の現職者に対象を限定し、これに該当するビジネスエリート計1231名のキャリアをリサーチすることで「一流転職市場のリアル」に迫りました。(なお、全ての情報は有価証券報告書ないし企業HPから収集したものです)総合商社の転職事情今回は【総合商社からの転職ルート】、特に【ファンドへの転職】にフォーカスします。新卒就活市場において非常に人気の高い総合商社ですが、その後の転職までを視野に入れて検討している学生は決して多くないと思います。・実際に総合商社から転職した方が、その後にどんなキャリアを歩んでいるか・各総合商社を比較したとき、その転職キャリアの傾向に違いはあるか本記事から以上2点を把握し、キャリア選択の好材料としていただきたく思います。a.総合商社から転職する人数は多くない最初の論点は、「そもそも総合商社からの転職者はどの程度いるか」という点です。以下、4つの集団それぞれにおける総合商社7社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商)出身者の人数を合計しました。◆各集団の7大商社出身者(人)PE(N=169)VC(N=182)戦略コンサル(N=138)ベンチャー役員(N=742)合計(N=1231)16(1)12(3)7(1)32(4)67(9)※()内は総合商社出身者のうち、各商社に中途入社した人数【総合商社からのエリート転職者は、決して多くはない】と評価していいでしょう。以下の表の通り、母集団1231名のなかでリクルート出身者が63名、マッキンゼー出身者が50名ということを鑑みれば、総合商社7社合計で67名というのは大きい数字ではありません。◆母集団(N=1231)のうち、出身者が多い上位5社(人)1リクルート632McKinsey&Co.503Accenture494BCG345GoldmanSachs33実際のところ、総合商社は給与水準も高いうえ、年功序列・終身雇用の日本企業体質が多分に根付いており、極めて離職率の低い層の企業と言えます。したがって、各総合商社の社員は「そもそも転職市場に出て来にくい」層であり、また「転職市場価値が必ずしも高くない」層だ、というのが実態でしょう。参考:意外に低い総合商社人材の転職市場価値b.総合商社から転職する3類型(投資/経営/起業)しかし、それでも転職に踏み切る総合商社社員が一定数いるのも事実です。総合商社を出る方の転職ルートは、主に3つに分類できると考えられます。◆総合商社を飛び出す転職の3類型「投資」「経営」「起業」志向事業・企業に投資する側に回りたい企業経営の上流に深く携わりたい自ら新規事業を立ち上げたい例・投資ファンド・投資銀行・コンサルファーム・ベンチャー役員・スタートアップ創業【投資】総合商社でプレイヤーとして事業に関わるよりも、そこに投資する側に移りたいと考える層です。商社社内の投資機能では満足できない、あるいはそこへの配属が叶わないケースや、より大きな額の給与を望むケース、その後のキャリアアップの為の助走として利用するケース等が考えられます。例:投資ファンド(PE、VCなど)、投資銀行(ゴールドマン・サックスなど)【経営】若いうちから企業経営の上流部分に携わりたいと考える層です。コンサルタントとして幅広い業界の企業経営に関与する、実際に社内の役員メンバーとして経営に参画する、といった実現方法に辿り着きます。特に前者は、その後のキャリア形成のための修行期間として捉える方も多いようです。例:コンサル(マッキンゼー、BCGなど)、各種ベンチャーの役員ポスト【起業】興したい事業の実現のため、独立・起業という手段を選択する層です。自分の「やりたい事業」のイメージをクリアに持ち、かつそれが総合商社で実現できない、あるいは若いうちに実現したいケースに選択されます(三菱商事の「SoupStockTokyo」、伊藤忠商事の「カブドットコム証券」のような、「総合商社に残ったまま社内起業」という選択肢も無いわけではありませんが、運良くこれを主導できるのは未だレアケースと言わざるを得ません)。例:スタートアップの創業メンバー(CEO、COOなど)参考:総合商社を辞めて起業したUnistyle株式会社を売却しました総合商社における社内ベンチャーの4つの実例安定した大企業に就職する学生におすすめしたい10%起業とバーベル戦略以下では、この3つの類型のうち【投資】、特に投資ファンドへの転職にフォーカスし、各商社間の転職実績比較から「総合商社から投資サイドに転職する際のリアル」を明らかにします。ファンドへの転職:際立つ三菱商事の強さa.投資ファンドへの転職実績を比較するunistyleが調査した、国内PE・VCファンドの現職メンバーにおける各商社の内訳です。◆PE・VCファンドにおける五大商社出身者の内訳(人)三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅合計PE11(1)2(0)1(0)0(0)2(0)16(1)VC6(1)3(2)2(0)1(0)0(0)12(3)計17(2)5(2)3(0)1(0)2(0)28(4)※()内は出身者のうち各商社に中途入社した人数三菱商事が圧倒的に多く、大きく水をあけられて三井物産、伊藤忠商事と続く格好となっています。住友商事、丸紅はそれぞれ少なく、投資ファンドへの転職という観点においては商社間で明白な差が見えてきます。※なお、各社グループ内ファンド(三菱商事:丸の内キャピタル、伊藤忠商事:伊藤忠テクノロジーベンチャーズなど)は調査対象から除外しています。b.示唆:「ファンドへの転職」なら、三菱商事を選ぶこの比較から導かれるのは、【総合商社で働きながら投資側への転職を見据えるなら、三菱商事が最良の選択だ】という示唆です。2015年度の決算では連結最終損益において設立以来初の最終赤字を計上し、伊藤忠商事に業界首位の座を明け渡した三菱商事。しかし、上記の「投資ファンドメンバー輩出数」においては、同社の揺るがない「人材力」「ブランド力」が透けて見える結果となりました。三菱商事の「17名(うち2名は中途採用で三菱商事入社)」という輩出人数は、他業界の企業を含めたなかでも相当多い数値です(以下表を参照)。上位2社へは中途採用で入社するケースが多いため、こと「新卒入社したケース」に限定してみると、三菱商事の「15名」という数値は全業界の中でも最多となります。将来的な投資ファンド入りを検討しているならば、三菱商事は全企業群のなかでも最良の選択のひとつであると言えるでしょう。◆投資ファンド(PE+VC)メンバー輩出人数・上位5社(人)1McKinsey&Co.24(12)2GoldmanSachs18(6)3三菱商事17(2)3日本興業銀行(現:みずほFG)17(3)5BCG16(6)※()内は出身者のうち、各社に中途入社した人数参考:2016年度総合商社上期決算レビュー三菱商事を抜いた伊藤忠の栄光はいつまで続くのかファンドへの転職事例:外コン・外銀の経由も有効次に、総合商社出身者が実際にどんな転職ルートを辿って投資ファンドに到達しているのか、実例を通じて考察しましょう。a.総合商社からファンドへの転職事例を見る【例1】水谷謙作氏(現・インテグラル/元・三菱商事)慶應義塾大学/理工学部卒慶應義塾大学大学院/理工学研究科修了一橋大学大学院/国際企業戦略研究科(金融戦略MBA)修了1998年三菱商事入社/機械グループ・プラントプロジェクト本部2003年同社/金融事業本部・M&Aユニット2005年モルガン・スタンレー証券/投資銀行本部・M&Aアドバイザリー部2006年GCA入社/M&Aアドバイザリー/メザニン出向2007年インテグラル入社/パートナー(現職)参考:インテグラル株式会社メンバー三菱商事から投資銀行、M&Aアドバイザリーファームへと転職してM&A経験を積み、現在はPEファンド・インテグラル社パートナーとして活躍されています。当初は三菱商事・機械グループにおいてプラントの海外輸出や事業投資に従事されており、その後に「投資」特に「M&A」という切り口でキャリアを展開されたようです。【例2】侍留啓介氏(現・CLSAサンライズ・キャピタル/元・三菱商事)早稲田大学/商学部卒シカゴ大学大学院/MBA2004年三菱商事入社/金融事業本部2012年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社2015年CLSAサンライズ・キャピタル入社/ヴァイス・プレジデント(現職)参考:CLSAサンライズ・キャピタルチーム三菱商事からマッキンゼー・アンド・カンパニーに転職し、その後にポスト・コンサルとしてPEファンドのキャリアを選択された例です。また、シカゴ大にてMBAを取得されていることも、その後のキャリア形成に重要な影響を与えていると推測できます。【例3】久保田雅也氏(現・WiL社パートナー/元・伊藤忠商事)慶應義塾大学/経済学部卒1997年伊藤忠商事入社1998年リーマン・ブラザーズ証券/投資銀行本部2008年バークレイズ証券/投資銀行本部2011年SMBC日興証券/投資銀行本部2014年WiL共同創業/パートナー(現職)参考:WiLTeam伊藤忠商事を僅か1年で退職し、16年間一貫して投資銀行のフィールドを歩んだのち、VCファンド・WiLの立ち上げに踏み切られた方です。なお、同社WiLの共同創業者のお一人である西条晋一氏(元サイバーエージェント、現コイニー取締役など)も伊藤忠商事のご出身です。b.示唆:「ファンドへの転職」なら、外コン・外銀の経由も有効だ総合商社からファンドへの転職を考えるとき、上に例として挙げさせていただいた方々のように【総合商社から外資系投資銀行や戦略コンサルを経由し、そののちにファンドに転身する】というルートを辿る方が相当数いるようです(以下、表参照)。◆総合商社に新卒入社後、投資ファンドに辿り着くまでに経由した企業(人)投資銀行戦略コンサルファンドへ直接その他PE:14名3560VC:9名1035とりわけPEファンドにおいては半数以上が外資投資銀行・コンサルを経由しているため、【将来的にはファンドで投資業務に従事したいが、そのための助走期間として投資銀行・コンサルに転職する】という転職アプローチも有効である、という仮説が立ちます。最後にいかがでしたでしょうか。本記事では、◎総合商社からの転職3類型(投資/経営/起業)総合商社からの転職者は大きく分けて3パターン、①投資、②経営、③起業の3つがあります。◎「ファンドへの転職」なら、三菱商事を選ぶなかでも「投資」の転職としてPE・VCファンドを目指すケースでは、総合商社のなかでは三菱商事が圧倒的な実績を挙げていると言えます。◎「ファンドへの転職」なら、外コン・外銀の経由も有効だそして、投資ファンドを目指す上では、まず総合商社から外資系投資銀行、戦略コンサルに転職し、そこを経由するかたちでファンドに移るというアプローチも有効なようです。以上の3点がポイントになるとまとめることができます。「本当に自分が入社すべきは総合商社なのか」「総合商社のなかでもどこを選ぶのか」という問いを考えるとき、上記のような転職市場における実態というポイントも重要な切り口の1つになるでしょう。皆さんのキャリアを考えるうえで、本記事を参考にしていただければ幸いです。 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