大阪大学キャリアセンターの「人生100年時代を生き抜くためのキャリア教育」
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最終更新日:2025年02月20日
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大阪大学キャリアセンターの副センター長にキャリア教育や就職支援の取り組み内容についてお話を伺いました。
・大阪大学に通っていてキャリアセンターの実績や取り組みを知りたい学生
・大阪大学のキャリア教育や就職支援について知りたい企業・高校生・保護者の方
- 本記事の構成
- 世界の研究大学と伍していくための革新的な大阪大学キャリアセンター
- 自分の人生は、自分で創る!大阪大学キャリアセンターの目指す姿
- 理論に基づいたキャリア教育
- 実践に役立つ就職支援
- 旧帝国大学という立場に甘んじず学生の支援にさらに力を入れていく。
- 最後に一言
- 取材後記
世界の研究大学と伍していくための革新的な大阪大学キャリアセンター
取材した方のプロフィール
キャリアセンター准教授(副センター長)
大阪大学にキャリアセンターを立ち上げ、キャリア教育・支援業務に従事しています。
公認心理師、キャリア・カウンセラーの資格を有し、講演や本の出版や俳優など、活躍分野は多岐にわたります。
大阪大学とはどんな大学?
豊中・吹田・箕面の3拠点にキャンパスを構えています。11学部、15研究科で成る研究型総合大学です。学部生の人数は、なんと約1万5,000人。国立大学の中で最も学部生の人数が多いです。大学院生の人数は約8,000人。修士の6人に1人は外国人留学生、博士の4人に1人は外国人留学生というグローバルな環境です。
日本で6番目の旧帝国大学として1931年に創設されました。「地域に生き世界に伸びる」ことを基本理念としています。
キャリアセンターとは?
世界の研究大学と伍していくために設置されたキャリアセンターは、理論に基づいた「キャリア教育」と実践に役立つ「就職支援」を両輪とし、人生100年時代を生き抜くために必要となる知識・技能・態度を学生に修得してもらうための組織です。
家島さんが日本キャリア教育学会に所属していることもあり、常に最新のキャリア教育を取り入れています。
グローバルキャリアサービスサミット2023では大阪大学キャリアセンターが、アジアの大学初となる創設者特別賞を受賞しました。
※大阪大学WEBサイトより引用
自分の人生は、自分で創る!大阪大学キャリアセンターの目指す姿
大阪大学キャリアセンターの目指す姿とは
キャリアセンターはどのようなことを目的としている部署ですか。
家島さん:一人ひとりが望むキャリア(生き方・働き方)を実現できるようにサポートすることを目的とした部署です。すなわち、単なる就職(ワーク・キャリア)支援だけではなく人生(ライフ・キャリア)支援を目指しています。
おっしゃる通り、人生において就職がゴールというわけではないですよね。どのような想いで学生と接していますか。
家島さん:ウェブサイトに掲げているキャッチフレーズ「自分の人生(キャリア)は、自分で創る!」の実現を全学的に全力でサポートする想いで接しています。誰ひとり取り残さないキャリア教育・就職支援を目標としています。
理論に基づいたキャリア教育
理論に基づいた「キャリア教育」
(大阪大学キャリア教育・支援プログラムの全体像)
大阪大学が力を入れているキャリア教育の仕組みについて教えてください。
家島さん:本学のキャリア教育・支援プログラムは大きく二つに分かれます。正課の授業(単位が出るもの)と、正課外の講座(単位が出ないもの)です。入学時から卒業・修了まで段階的にキャリア教育を受けることができます。
本学では就職活動のノウハウを教えるだけの授業を「キャリア教育」とは呼びません。大阪大学キャリア教育ポリシーを策定し、キャリアに関する理論と実践に裏打ちされた内容かつ学生のキャリア発達に資する内容の授業を本学では「キャリア教育」としています。
まさに白熱教室のよう!現代キャリアデザイン論Ⅰの授業内容とは
(「現代キャリアデザイン論Ⅰ」ビジュアル・シラバス)
価値・意義、知識・理解、技能・態度を理論や実践に基づいて学んでいく構成となっています。
特に学生から評判の良いキャリア教育の内容を教えていただけますか。
家島さん:1年次から受講できる授業「現代キャリアデザイン論Ⅰ」は特に学生から人気が高く、年に複数回開講しています。
「現代キャリアデザイン論Ⅰ」の授業内容としては、ほぼ毎回4人1組でグループワークをします。授業の最初に自己紹介を1人1分、今週気になったニュースなど決められたテーマでのトークを1人1分、合計8分間グループで話す時間を設けています。
これをすることでアイスブレイクにもなりますし、1分間スピーチのスキルも上がります。また、ニュースや世間へ関心を向けることで、社会の動きを把握したり、自分たち大学生も社会の一員であることを自覚して、視野を広げることができるようになるという仕掛けになっています。
授業では、クリッカー機能※を用いて教室にいる学生全員の賛否を、リアルタイムでスライドに表示したり、学生の疑問等にこたえたり、学生に意見を発表してもらったりする方式(多方向型の対話形式)もとっています。ハーバード大学の白熱教室のようなスタイルですね。
※クリッカー:投票等を行い、即時集計した結果をスクリーン表示する仕組み。
実践に役立つ就職支援
学内合同企業説明会の様子 with ワニ博士※
※ワニ博士:大阪大学の公式マスコットキャラクター
実践に役立つ「就職支援」
数多くの革新的な就職支援を行う大阪大学。取り組み内容をいくつか伺いました。
・キャリア相談(進路・就職相談)
・就職・キャリアガイダンス(各種セミナー)
・キャリアサポーター/キャリアサポーターJr.制度(就活ピアサポート制度)
・阪大生のためのキャリアアップ講座(産学共創キャリア支援イベント)
・大阪大学Career Fair(学内合同企業説明会)
など多数
就職支援の取り組みについて、教えてください。
家島さん:キャリア相談は、3キャンパスで平日毎日実施しています。各種セミナーやガイダンスについては、年間通して数十回開催しています。
そんな数多くある就職支援の中でも、キャリアサポーター制度やキャリアサポーターJr.制度は本学の特徴的な取組です。
キャリアサポーター制度は、内定を得た最終学年の学生(先輩)が就活生(後輩)をサポートする制度です。最近は卒業後に後輩をサポートする形も増えてきています。卒業後も同窓会が開催されていて、人数は累積150名を超えています。
自分の大学の先輩から就職のサポートを受けることができるのはとても心強いですね!
家島さん:学生からの評判もいいです。また、キャリアサポーターJr.制度は、内定者ではなくても学内のキャリア支援イベントの運営に携わりたい学生(主に低学年)のための制度です。過去にはキャリアサポーターJr.が自らスキルアップ講座を企画したり、交流会を開催したりしています。
阪大生のためのキャリアアップ講座も特徴的な取組です。企業の強みを阪大生に提供してもらう企画となっています。例えば、化粧品会社による身だしなみ講座、酒類専門商社による宴席マナー講座、などユニークなものが多く学生に好評です。スキルアップだけでなく、各企業と触れ合う機会にもなるので業界理解に繋がる点も魅力的です。
是非利用してほしいおすすめの取組と今後の予定
これだけは是非利用してほしいというおすすめの取組はありますか?
家島さん:学内合同企業説明会がおすすめです。他ならぬ「阪大生」の採用のために企業がわざわざ来ているイベントは、他の合同企業説明会よりマッチング率が高いと思います。
間違いなく阪大生を求めている企業が来るのは大きなメリットですよね。今年度に予定している取り組みがあれば教えてください。
家島さん:就職活動の流れや進め方など基本的な情報、模擬面接やグループワークなどの実践的な内容、企業研究などに役立つ内容など年間を通して様々な就職・キャリアガイダンスを予定しています。
また、実際に企業や工場を訪問する「キャリア教育キャラバン」も始めました。第一弾は関西の3空港を運営している関西エアポート株式会社とコラボした関西国際空港の裏側を見学するツアーを企画しました。
旧帝国大学という立場に甘んじず学生の支援にさらに力を入れていく。
就職実績の数字を求めるのではなく、一人一人のポジティブな進路を支援したい
大阪大学のキャリアセンターの実績についてお聞かせいただけますか。
家島さん:いわゆる就職率(就職決定者/就職希望者)は全国平均以上です。就職しなかった学生の中には起業や留学、専業主婦・主夫の道を選択した等ポジティブな理由もあると思うので数字はあまり気にしていません。
しかし、就職や進学を希望しつつ就職・進学ができずに卒業する人も毎年100人ほどいるので、一人残らず支援していきたいと考えています。希望の進路を実現できなかった学生の中には、キャリアセンターの存在を知らなかった人やキャリアセンターを利用するタイミングが遅かった人もいるので早期に利用してもらえるようにしていきたいと考えています。
キャリア教育の受講者数は、例年、正課の授業で約1,500人(延べ)、正課外の講座で約4,000人(延べ)です。授業は受講できる人数の上限(定員)が決まっているため、人気の授業は毎年抽選となります。上記「現代キャリアデザイン論Ⅰ」は阪大で最も人気がある授業のひとつで、1人でも多くの人が受講できるように年に複数回開講しています。
中長期的な取り組み
就職支援のみならずキャリア教育にも力を入れていますが、中長期的なキャリア支援の取り組みについて教えていただけますか。
家島さん:就職がゴールではない(ゴールであると同時に、次の新たなスタートである)ということを強調し、人生を見据えた中長期的な視点で就職活動を考えることを推奨しています。
就職支援の文脈で実施しているセミナーやガイダンスについては、どちらかというと内定を得るための実践的なスキルやノウハウを教える内容のものが多いですが、自分の生き方・働き方を探索するためのお手伝いという位置づけで実施しています。
「阪大生のためのキャリアアップ講座」では、「日経新聞の読み方講座」や「宴席マナー講座」など、社会人になってからも役立つ内容の講座を実施しています。
大阪大学キャリアセンターの将来展望とは
将来の展望を教えていただけますか。
家島さん:個人的に抱いている密かな野望があって、それはキャンパス内で就活が完結できるように、大学生が本業である研究に専念できるように、学内にキャリアセンター棟を建てることです。
キャンパス内で就活が完結!理想的です。どのような棟にしたいと考えていますか。
家島さん:キャリアセンター棟に来れば、様々な企業のことを知ることができて、さらに就職活動が棟内で完結できるような機能を備えた建物にしたいと考えています。
例えば、棟内の机や椅子に「この椅子のネジを作っているのは○○製作所です」みたいな表示(ネーミングライツ)をつけることによって、様々な中小企業が社会や暮らしを支えていることを学生が自然と学べるような棟にしたいです。
また、キャリアセンター棟内の部屋を企業にレンタルすることで、学生がキャンパス内にいながら採用面接を受けることができるようにしたいです。
学内にいながら就活ができるなんて学生からしてもとても嬉しいですね!また、学生が世の中の企業について学べる環境を、作りたいと思った経緯があれば教えてください。
家島さん:私自身もそうだったのですが、大阪大学の学生は、受験で大学を選ぶ際に、学力偏差値で上から順番に選んでいた可能性が高いです。そういう人は、日本だけでも800以上の大学があるのに、自分で調べて自分に合った大学を選択肢として絞り込むという経験をしていませんので、企業選びの際も知名度で大手企業から選ぶ傾向が高いです。
けれど現時点で知らない企業の中にも、もしかしたら自分に合った企業があるかもしれないのです。キャリアセンター棟に足を踏み入れたら、世の中が中小企業も含め様々な企業で回っていることが自然に学べるようにしたいです。
世の中の企業を知ることができて選択肢が増えるということですね!
家島さん:知らない選択肢は選べないので視野を広げることができる場所にしたいと考えています!誰一人取り残さないキャリア教育・支援を実現していきたいです。
最後に一言
大阪大学の学生に向けて最後に一言
最後に、大阪大学の学生に向けて一言お願いします。
家島さん:キャリアセンターを積極的に活用して「自分の人生(キャリア)は、自分で創る!」を実現してください!人生は一度きり。思いっきり楽しみましょう!
そして、学生のみなさんに覚えておいてほしい「3つの『な』」があります。「なんとかなる」「なるようにしかならない」「なんとかする」です。
要するに「人生はなんとかなるので失敗を恐れずチャレンジをしよう。けれど努力したからと言って必ずしも人生思い通りになるとは限らない=なるようにしかならない。だから、うまくいかなくても自分でなんとかするという気概を持って努力し続けることが大事!」という意味です。そんな生き方をしてほしいと思っています。
学外へ向けて大阪大学キャリアセンターから訴求したい内容を教えてください。
家島さん:本学は「産学共創キャリア教育支援」に力を入れています。各企業とコラボし、企業の強みを活かした阪大生のための講座は非常に人気があります。
大阪大学キャリアサポーター企業も募集していますので是非ご参加ください!
取材後記
旧帝国大学の大阪大学。2017年に設置されたキャリアセンターは従来の日本の大学のキャリアセンターの概念を大きく変える第一歩を踏み出しています。
就職=ゴールではなく、社会人になってからも人生は続いていきます。過去・現在・未来の自分と向き合い、人生をデザインする手助けをしてくれるのが大阪大学のキャリアセンターです。
今後間違いなく、日本を世界へ導く人材をより多く輩出していくことでしょう。
大阪大学のキャリアセンターについての詳細は以下のリンクからご確認ください。
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