三菱商事の内定者ES解説!選考通過のエントリーシートの共通項
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最終更新日:2023年09月28日
前回の解説では、事業内容がわかりにくい総合商社においては、仕事内容の本質的な部分を抽出して学生時代の経験と結びつけると考えやすいことを説明しました。具体的に体育会経験であればどのような志望動機のひな形ができるかも説明しているのでぜひ参考にしてください。
なお、今回のエントリーシートは体育会経験ではなく、集団塾講師のバイトや、海外での実地研究を他者を巻き込み実現させた経験から自己PRを書いてくれた内定者のエントリーシートになります。
一つ目の設問
これまでの学生生活の中で挙げた実績・経験を4つあげてください(それぞれ50字以内)
海外での渡航調査。自力で研究を1から作り上げ、財団から資金調達してインドでの実地調査を成功させた。
学会発表。森林学研究室における研究に積極的に取り組み、同期より1年早く学会発表を実現した。
集団塾講師のバイトでの講師チーフ。職場環境を改善したことで大学合格率を4割向上させた。
ダンスサークルでの渉外担当。広報活動につとめ、それまでで最も大きなライブハウスでの公演を実現。
実績そのものが素晴らしく、非常に高いレベルで物事を成し遂げることができる人材であることが伺えます。
また、バイトでの実績のところで、「4割」と数字を用いて説明することにより、実績に具体性を持たせることに成功しています。
ここで記載したエピソードはどれも面接で深堀される可能性が高いため、何が聞かれても答えられるように各エピソードを整理しておくと良いです。
二つ目の設問
あなたがリーダーシップを発揮した経験の中で,最もインパクトの大きなものについて教えてください。またその活動の中で関係者とどのように信頼関係を築いたのかという点も含めて,具体的に記述してください(前の設問から選ぶ)(400字以内)
集団塾講師のアルバイトでのチーフ経験を挙げる。30人ほどの学生講師で一つの講習を1から作っていく仕事だったが、始めた当初は職場の雰囲気が悪く全体の士気も低い状態だった。楽しい環境で仕事をしたいと思い、問題を根本から解決できるチーフの立場に立候補した。最初に問題の洗い出しのため、全員と何度も個人的に飲みに行き、時間をかけて信頼関係を構築していった。環境を一新するには全員から信頼を得ることが重要と考え、この段階にもっとも力を入れた。対話を重ねた結果明らかになったのは、人間関係の悪さや先輩に対して意見が言えないなどの風通しの悪さだった。 そこで全体をチーム分けして仲の悪いところを離し、能力や希望を元にチーム毎に異なる仕事を任せた。また、学年別会議や匿名でのアイデア出し、第三者による企画の評価など新たな制度も導入していった結果、教師の士気も向上し3年後には講習の合格率が4割向上した。
このエピソードからは、実績のみならず学生が行動した際にどのように考えていたかが伝わってきます。
実績を挙げた取り組みに着手しようと思った理由、困難に直面した際にどのようにしてその困難を乗り越えたのか、関係者との信頼関係の築き方、といった要素が漏れなく記載されているため、この学生の人となりがわかるエピソードとなっています。
聞こえのよい実績だけ書いて満足してしまう学生は少からずいますが、面接官が聞きたいのは実績そのものではなく、モチベーションの源泉や困難に直面した際の行動の仕方といったプロセスに当たる部分です。
この学生はプロセスを詳細に書けているため、評価が高いと考えられます。
三つ目の設問
自分の殻を破って成長したと思う経験のうち,最も困難を伴ったものについて,途中でチャレンジをあきらめなかった理由も含めて具体的に記述してください(上の中から選ぶ)(400字以内)
インドでの実地調査の経験を挙げる。研究にあたって現場での経験を積みたかったが、経費の関係から研究室で反対された。しかしどうしてもやりたい研究があったため外部の財団から資金調達することを決意、1から研究計画を作り多くの人にアプローチして協力を得た。具体的には、
1.国内外の研究者に連絡を取り協力者・同行者を探した。2.現地の研究所に研究内容を説明してデータを送ってもらう。3.研究室の先輩に計画書の書き方の指導を仰ぎ、財団審査を通過して180万円を獲得。4.現地の村では英語が通じない中、村長に研究の意義を説明して村の畑の使用許可を得る。5.村人と交渉して10人ほどのインド人に作業を手伝ってもらう、など。以上のように多くの人に働きかけ、巻き込んだ結果研究を成功させることができた。以前は自分ひとりで課題を解決することが多かったため、殻を破って成長したと感じたことの一つである。
このエピソードからは、実績そのものの凄さだけではなく達成するまでのプロセスからこの学生の芯の強さが伺えます。
また、自分の思いを実現するにあたり、他者を巻き込んでいることも総合商社のエントリーシートということを考えると評価が高いです。総合商社は「商社不要論」に晒されたこともあり、常に新しいビジネスを提案することで存在価値を確立しています。
商社は自社商品を持たないぶん、関係者を巻き込みその提案を実現しなければなりません。その際必要になるのが、このエピソードにも表現されている「他者を巻き込み自らの想いを実現する能力」です。
その能力を持っていることがこのエピソードからは見て取れるため、非常に良い記述となっています。
四つ目の設問
三菱商事の中期経営戦略2018を踏まえて,商事だからこそ実現できると考えるあなたの夢や目標を教えてください(250字以内)
東南アジアにおける食品事業に関わり、現地の生活水準に貢献したい。貴社は非資源分野の収益拡大を戦略の一つに挙げている。また、インドネシアやミャンマーにおける食品事業を行っている。現地での成功経験があり今後力を入れていく貴社でなら、東南アジアにおける食料事業に大きく関わっていけるのではないかと考えた。また、食料事業は比較的トレードがメインであるが、経営に積極的に人材を投入していく姿勢や常にトップを走る戦略を持つ貴社では他社ではできない多様な経験ができ、パイオニアになる機会があると考えた。
この設問は実質三菱商事の志望動機を尋ねている設問になりますが、「三菱商事の中期経営計画2018を踏まえて」という部分から、三菱商事の目指す方向性に学生が沿っているかも確認しています。
この学生は東南アジアにおける食品事業に関わりたいと記述しており、三菱商事の非資源分野を強化していくという方向性と合致しています。
また、多くの総合商社が食品事業を行なっており、メーカーの海外進出が盛んで食品業界でもこの夢・目標を叶えられる現状で、三菱商事でこの夢・目標を叶えたい理由も、三菱商事の「経営へのシフト」という理念に沿う形で説明できています。
以上2点の理由から、面接官にとって三菱商事で実現するのに納得感のある夢・目標になっていると言えます。
面接では「何故東南アジアなのか」「何故食品事業なのか」「何故パイオニアでありたいのか」といったことは尋ねられると考えられます。これらの質問に「面白そうだからです!」といった頭お花畑の回答をするのではなく、実体験に基づいて説明できるように説明できるような準備はしておく必要があります。
志望動機についてはどの企業でも重要視されることが多いため、特に対策が必要な設問になります。「何故同業他社ではだめなのか」「何故他業界ではできないのか」といった質問に答えられるようにしておく必要があります。
以下の記事では志望動機を作る際に学生が陥りがちな問題点と、そうならずに志望動機を作成する方法が紹介されています。是非参考にしてみてください。
五つ目の設問
あなたらしさが最も現れている写真を添付し、その説明を記述してください(それぞれ100字以内)
インドに行った際に研究所のメンバーと取った写真です。普段から誰とでも積極的にコミュニケーションを取るよう心掛けています。人と話すことが好きで、そのことが伝わる写真を選びました。
ダンスサークルでライブをしている写真です。2年生の時に出たライブで、初めて自分で振付から考え、チームで構成をつくりました
近年総合商社のエントリーシートで頻繁に問われている、「あなたらしい写真とその説明」を求める設問です。
この設問では、素直に自分が力を入れて取り組んでいた物事の写真や、好きなことに取り組んでいる様子がわかる写真を添付すれば良いと思います。
選考を受けた学生によると、この設問に関して面接で深堀された学生はあまりいなかったようなので、気負いすぎず初対面の人に自分の普段の様子を知ってもらうための設問と考えるぐらいが良いと思います。
→設問として写真の提出を求められた際の対策と、エントリーシートに貼る証明写真についての解説記事です。