加速する総合商社によるベンチャー出資、三菱商事がシリコンバレー新興企業向け投資ファンド設立

25,730 views

最終更新日:2025年03月18日

加速する総合商社によるベンチャー出資、三菱商事がシリコンバレー新興企業向け投資ファンド設立

三菱商事は2016年5月17日、前駐日米国大使でIT業界やライフサイエンス業界、新興企業への顧問業務で知られるウィルソン・ソンシーニ・グッドリッチ&ロサーティ法律事務所元CEOのジョン・ルース氏、並びに米国大手ベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツ元パートナーのアシュビン・バチレディ氏と共に、シリコンバレーの先端企業に成長資金投資を行うファンド、「Geodesic Capital Fund I」 (以下、本ファンド)を設立したことを発表しました。ファンドの規模は335百万米ドルとのことです。

リリースでは既に投資を開始しており、日本でも最近流行の兆しがある「Snapchat」など複数の企業に投資を実施済みであると発表しています。

近年では三井物産がフリマアプリのメルカリに出資したり、伊藤忠商事が飲食店予約アプリのトレタに出資するなど、総合商社によるソフトウェア関連の企業に対する投資が話題になっています。今回は総合商社によるベンチャー企業投資について見ていきたいと思います。

本選考とインターンの締め切り情報

総合商社がベンチャー企業に提供できる価値とはなにか

総合商社がこういったベンチャー企業にどのような価値を提供できるのでしょうか?各社のリリースを読んでいくと「海外展開支援」の部分が共通項として浮かび上がります。

又資金提供のみならず、投資先企業の日本への進出支援を専門的に行うチームを組織し、投資先の成長促進と企業価値向上に努めてまいります。
 

参考:三菱商事 プレスルーム 米シリコンバレー域内新興企業向け投資ファンド設立について

 

三井物産は、国内最大規模の利用者数を有し、グローバル展開を志向するメルカリ社は共同で事業展開を進めるパートナーとして最適と判断し、同社に出資参画することを決定しました。
三井物産は、モバイル通信インフラ事業をプラットフォームとし、モバイル決済、ECを始めとする様々なサービスの創出を目指しています。国内及び海外でのICT分野事業(例:ロシア決済事業者Qiwi社、インドネシア高速通信事業者PT. Internux社、アフリカ高速通信Afrimax社等)を通じて蓄積した知見とグローバルネットワークを活用して、各国での事業立上げに必要な機能の提供及び現地企業との提携等を通じ、新興国(含む東南アジア、ロシア、アフリカ等)を中心に、同社のグローバル展開を支援していきます。
 

参考:三井物産 リリース スマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」社に出資参画

 

伊藤忠商事のネットワークを活用したアジア地域へのサービス展開も進めます。特に台湾では台湾最大手の電気通信事業者である中華電信股份有限公司(本社:中華民国 台北市、董事長 蔡力行、以下、「中華電信」)の販売網を活用する営業提携を検討します。
 

参考:伊藤忠商事 ニュースリリース 予約/顧客台帳サービス トレタとの資本提携によりBPO分野の強化へ

総合商社の特徴的な強みの一つとして、世界各国に駐在員をおき常に現地の情報を収集し、現地のパートナーとの関係構築を図っていることがあげられます。この情報網とネットワークを活かし、日系企業の海外進出だけでなく、海外企業の日本進出や日本での販売にも大きく関わってきました。

総合商社による企業の海外進出サポート

日系企業の海外進出の事例でいえば、三菱商事はユニクロの東南アジア進出においてタイおよびインドネシイアで合弁で販売会社を設立しています。伊藤忠商事は菓子メーカーであるカルビーの中国進出やインドネシア進出に大きく関わっています。

海外企業の日本進出の事例としては、住友商事が、機械工具の卸売企業である米国グレンジャー社と合弁で工事事業者向けのECサイトMonotaROを設立し、上場までさせています。

このように総合商社の強みの一つとして、自社が持つ情報とネットワークを利用して、企業の海外進出をサポートできるというものがあります。商社冬の時代における「商社不要論」ではこのネットワーク機能をメーカー自身で内製化すれば商社に口銭を払う必要もないとして、商社を通さない体制を構築しようとし、実際に米国やヨーロッパではそのモデルが成功したといえます。

一方で、中国や東南アジアなどの市場が成熟しきっていない国に新規で進出する際には、総合商社と提携して商社の持つ情報とネットワークを活用した方がよいといえます。そのためまだまだ総合商社が海外進出で果たす役割は大きいといえます。

インターネットサービスでもローカライズが重要

いまでは社会インフラの一つに成長したWebサービスと言えるfacebookの日本語版は2008年5月にスタートしましたが、大きく伸びたのはfacebookが日本法人を設立し、日本でのマーケティングに本腰を入れてからです。(もちろん映画「ソーシャル・ネットワーク」の成功も大きな要因の一つだとはいえますが)

グローバルにサービスを展開する上では、進出する国のことをよく理解し、その国に合わせたローカライズが不可欠です。総合商社では様々な企業の海外進出を長年サポートしてきた経験から、Webサービスにおけるローカライズにも貢献できると考えていると思われます。

三菱商事が組成したファンドにて既に投資を実施したと発表しているSNS「snapchat」も既にアーリーアダプターが日本でも使い始めていまうが、日本法人が設立され、そのサポートを三菱商事が行ったら日本でもfacebookやtwitterのようにマジョリティまで一気に広がる可能性があるといえます。

最後に

一つ懸念点をあげるとしたら、総合商社の社員のITリテラシーは高いわけではなく、ベンチャー企業をサポートする上ではこの点がネックになる可能性はあります。それでもここまで培ってきた海外進出のノウハウを遺憾なく発揮し、IT分野の企業のローカライズの知見も深めることができれば、総合商社の覇権はまだまだ続くといえます。総合商社志望の方や内定者の方は、今後の総合商社によるベンチャーキャピタル事業にも注目してほしいと思います。

photo by Martin Thomas

おすすめコラム 4 件

「転職」で眺める電通/博報堂 ―「電博」発スタートアップを目指せ― 「転職」で眺める電通/博報堂 ―「電博」発スタートアップを目指せ― 新卒就活中の皆さんは、どれだけ【入社後の転職】を視野に入れているでしょうか?日本的な終身雇用原則が崩れつつあるなか、同一企業に40年勤め上げることを過度に信奉せず、将来的な転職までを見越して新卒入社先を検討するべきでしょう。unistyleでも「」・「」等の記事で、入社時のブランドや給与水準が永劫保証されているわけではないことを強調しています。また、入社してから転職活動のための業界研究を行う時間は限られていることから、新卒就活の段階でベンチャー企業も含めて幅広い業界を受けることがキーになります。参考:「転職」シリーズ・第2回のテーマは「電通/博報堂」。実際の転職者データをもとに【電通/博報堂に新卒入社した方の転職キャリア】を分析します。0.転職キャリアのリサーチunistyleでは「人気企業に新卒入社したあとに転職して辿り着くエリートキャリア」を考えるため、プライベート・エクイティ・ファンド(PE)ベンチャー・キャピタル(VC)戦略コンサルベンチャー企業の創業者および役員(未上場も含む)以上4つの集団の現職者に対象を限定し、これに該当するビジネスエリート計1231名のキャリアをリサーチすることで「一流転職市場のリアル」に迫りました。(なお、全ての情報は各社有価証券報告書ないし企業HPから収集したものです。)1.電通/博報堂の転職事情本記事では、上記のデータをもとに【新卒で電通/博報堂に入社し、その後に今回の調査対象の企業群に転職した方のキャリア】を考察します。a.転職者そのものは多くない前提としておくべきは、電通/博報堂から転職する方は決して多くないということです。​​離職率が低い総合商社と比較しても、電通/博報堂出身者が今回の転職者集団に占める絶対数の割合は低いと言えるでしょう。さらにリクルート、マッキンゼー・アンド・カンパニー等と比較すると、その差は歴然です。​b.エスタブリッシュメントよりベンチャー界隈だ次に、実際の電通/博報堂社員がどんな企業に転職しているか、その内訳を見ていきましょう。​​このデータから主に2つ、重要なポイントが明らかになります。【示唆(1)】エスタブリッシュメントには転職しない(できない?)電通/博報堂は、いわゆるエスタブリッシュメント的企業(PEファンド、戦略コンサル)には1人も転職者を輩出していません。総合商社2社との比較からも、この数値には間違いなく大きな意味があると言えるでしょう。そもそも電通/博報堂に入社する方がそうした志向性(大規模な投資、上流の企業経営への興味)を持たないという解釈もできる一方、広告代理店で経験を積んだ人材が、PEファンドや戦略コンサルが求める人物像にマッチしないという側面もあるかもしれません。【示唆(2)】選ばれるのはベンチャー界隈の投資・経営だ一方、VCメンバーやベンチャー役員など、ベンチャー企業周辺の主要ポストには電通/博報堂の出身者が一定数在籍しているようです。VCにおいては電通が、ベンチャー役員においては博報堂が、それぞれ総合商社2社よりも多数の人材を輩出していることが分かります。以上2点から、【電通/博報堂出身者は、エスタブリッシュメント企業には転職しないが、ベンチャー企業周辺の投資・経営には親和性が高い】という仮説が導かれます。c.「投資」の電通、「起業・経営」の博報堂両社の転職傾向が掴めたところで、次はVCメンバー、ベンチャー役員への転職市場における電通/博報堂の両社を比較してみましょう。両社を比較すると、ベンチャー周辺転職の傾向の違いが見えます。【示唆(1)】電通出身者はスタートアップ「投資」に強いVCメンバー輩出数において、博報堂が0人であるのに対し、電通は6名(うち2名は電通ベンチャーズ)と強みを見せています。電通からベンチャー界隈に転職する層は、スタートアップ起業に「投資する」側に回る傾向が強いようです。このことは、電通社内でも投資・買収業務が増加傾向にあることに起因していると考えられます。電通は2016年夏にもマークル社(米国のデータマーケティング会社、2015年の売上高は4億3600万ドル)を買収するなど、近年になって企業買収を積極的に行っており、2015年度には日系企業で第5位となる6,569億円の「のれん*」を計上しています(2016年度12月期には更に増加し、7,187億円に膨れ上がっています)。また、電通の連結子会社数は844社(2016年度12月期)で、博報堂の58社(2016年度3月期)に大きな差をつけています。こうした社内の潮流もあって、電通出身者はスタートアップに「投資する」役割に回る傾向が強いようです。*のれん→企業買収の際に発生する、「被買収企業の時価評価純資産」と「実際の買収金額」の差額のこと。2015年度の日系企業ではソフトバンクがトップ、次点にJT、日本電信電話が続く。【示唆(2)】博報堂出身者はスタートアップ「起業・経営」に強い社員の絶対数が倍近く異なることも踏まえると、博報堂出身者には上場ベンチャーの役員、特に創業者が非常に多いことが分かります。電通との比較において、博報堂は「個性的」「個人主義的」「クリエイティブ」というキーワードで語られます。広告代理店業務のなかで自分のやりたい事業を発見する社員、それを実現するために独立起業という選択肢を選ぶ社員が多いという観点から、こうした印象はあながち間違っていないと言えるでしょう。博報堂社内の気風が、スタートアップ創業者の多さに現れているのかもしれません。参考:2.電通/博報堂からのスタートアップ以下では、実際に電通/博報堂出身者が立ち上げたスタートアップを紹介します。a.電通からのスタートアップ【例1】アーキタイプarchetype*(創業者:中嶋淳氏)【中嶋氏プロフィール】一橋大学/社会学部卒1989年電通入社2000年インスパイア入社/取締役副社長2006年アーキタイプ創業/代表取締役参考:アーキタイプ株式会社teamアーキタイプ株式会社はスタートアップ企業の支援を行うインキュベーション企業です。創業者である中嶋氏は、新卒で電通に入社して11年間の経験を積んだ後、投資会社・インスパイアを経て同社を設立されました。【例2】CloudPayment(創業者:清久健也氏)【清久氏プロフィール】東京大学/工学部卒1993年電通入社2000年J-Payment創業2014年「CloudPayment」に社名変更/代表取締役社長参考:CAREERWOOSトップインタビューインターネット決済代行サービスや請求管理クラウドサービス「経理のミカタ」等を運営するCloudPayment株式会社も、電通出身の清久氏が創業したスタートアップです。未上場ではありますが、国内でも非常に注目度の高いベンチャー企業のひとつであると言えるでしょう。b.博報堂からのスタートアップ【例1】freee(創業者:佐々木大輔氏)【佐々木氏プロフィール】一橋大学/商学部卒2004年博報堂入社2006年CLSAサンライズ・キャピタル入社/投資アナリスト2007年ALBERT入社/CFO2008年Google入社2012年freee創業/代表取締役参考:freee株式会社会社概要全自動型クラウド会計ソフト「freee」を提供するfreee株式会社の創業者、佐々木氏も博報堂OB起業家の1人です。新卒で博報堂に入社したのちにファンド、ベンチャー、Googleを渡り歩き、2012年にスモールビジネス向け会計プラットフォーム「freee」をリリースされました。【例2】エニグモ(創業者:須田将啓氏)【須田氏プロフィール】慶應義塾大学/大学院/理工学研究科修了2000年博報堂入社2004年エニグモ創業/代表取締役CEO参考:エニグモ役員紹介海外ファッション通販サイト「BUYMA(バイマ)」を運営するエニグモ株式会社を創業されたのは、博報堂OBの須田氏です。新卒で入社した博報堂に4年間在籍したのち、同社の同僚である田中禎人氏と共にエニグモ株式会社を創業されました(現在、田中氏はエニグモを退社済みです)3.最後に以下、本記事のサマリーです。ポイントは主に3点です。◎エスタブリッシュメントよりベンチャー界隈だ電通/博報堂からの転職者は、PEファンドや戦略コンサルよりも、VCファンドのメンバーやベンチャーの役員、創業者としてのキャリアを選ぶ傾向が強い。◎「投資」の電通、「起業・経営」の博報堂電通/博報堂の間にも転職傾向の差異が見られ、電通はベンチャーに「投資」するサイド、博報堂はベンチャーを「起業・経営」するサイドを選ぶ社員が多い。◎「電博」発スタートアップ電通/博報堂出身者が起業したスタートアップは、toC・toBに関わらず、既存の事業領域にITを巧く絡めて価値を出す、魅力的なサービスを提供する企業が多い。電通/博報堂は、「ものの売り方」という価値を様々な業界・企業に提供しています。様々なマーケットに入り込んで消費者・事業者のインサイトに触れることができる点で、自ら事業を興すためのヒントを得やすい環境です。給与面のリスクを回避しつつ、知見を広めながら起業の機会を伺いたいと考える方にとっても、素晴らしい選択肢のひとつになるはずです。【unistyle転職シリーズ】【#1】 27,698 views
意外と侮れない!履歴書の「趣味・特技」の欄〜印象に残る学生になる為に〜 意外と侮れない!履歴書の「趣味・特技」の欄〜印象に残る学生になる為に〜 こんにちは。今回は履歴書やプレエントリー時にほぼ必ずある「趣味・特技」の欄についてコラムを書こうと思います。筆者は金融業界と総合商社を中心に就職活動を行っていたのですが、ほぼ必ずこの趣味・特技の欄についての質問をされました。もちろん突っ込み具合には会社により差があります。筆者や周りの友人がどのようなことを記載していたのか、またこの事を聞く意味は何なのかについて個人的な考えをこれから皆さんにお伝えできればと思います。「趣味・特技の欄」=会話のネタである趣味・特技の欄は、一言で言うと会話のネタです。これまで何回も面接を受けて来ましたが、それ以上でもこそれ以下でも無いというのが個人的な感想です。会社やその方の年次・経験にもよりますが、必ずしも面接官全員が面接を得意としている訳ではありません。現場社員も人事に頼まれ、マニュアルを渡され仕事の合間に面接をしています。そういった方々に与えなければいけないのは、"良い印象"です。「この学生と一緒に働きたい!」と思わせたらその面接、特に一次やニ次といった初期段階の面接は通過します。その為にも学生時代頑張ってきたことやアルバイト、ゼミ以外にも話のネタを持っておくことが大切なのです。実際の内定者が書いていた特徴的な趣味や特技*特定を避けたいので明記は避けさせて頂きますが筆者が実際に書いていた事もこの中に含まれています。趣味・映画鑑賞:年間300本以上の映画を観ており、特に○○監督の作品が好き・読書:年間400冊以上の漫画、書籍を読んでおり、特に○○の□□という本が好き・美術館巡り:何故人々が美しいものに惹かれるのかを客観的に見られるから・文章を書くこと:自分が魅力的だと感じた人に取材をし記事を書くこと特技・口笛で小鳥を呼ぶ事ができる・綺麗に縦列駐車できる・ワンピースの名台詞を何でも言える・ジャニーズ並のバク転ができる等です。趣味はただ書くだけでなく、自分はその事がどれくらい好きでどれほどのことをしてきたのかまで明記すると面接官も質問しやすくなると思います。特技に関しては、それが嘘でなければどんな事を書いても良いと思います。実際に隣の学生が「ジャニーズ並のバク転ができる」と話した時その部屋は笑いだらけで完全に流れはその子に傾きました。グループ面接等では自分に注目を向ける武器にもなります。印象に残る学生になる為には・・就職活動を通して多くの社会人の方や人事部の方とお話をさせて頂きましたが、やはり最初の数分間でほぼ結果は決まっているそうです。つまり、入退出時の挨拶や姿勢、スーツの着こなし方、顔つきだけである程度判断されているそうです。ここが悪いと悪い印象しか与えません。私は「趣味・特技」の欄の内容をほぼどの会社の面接でも質問してもらえましたし、それで笑って頂きました。面接中に笑いが起きると自分もリラックスできるので非常に良いと思います。ですが、こうした細かい部分を意識するのはもちろんの事、身だしなみや挨拶が大事なのは言うまでもありません。これらを両立させることで印象に残る学生になれるのだと思います。【関連記事】外部サービスのご紹介転職にいいことまるごとJobuddy(ジョバディ)新卒就活生が注意したい履歴書の作り方|基本や書き方のコツまで紹介|ワンポチ 62,383 views
「探したり調べたり考えたりしたけど、結局やりたいことがない!」就活生へ 「探したり調べたり考えたりしたけど、結局やりたいことがない!」就活生へ こんにちは、就活を既に終えている理系院生です。院生なのに専攻内容を仕事に結びつけたくない、海外に行きたくもない、別に楽をしたいわけでも、高給取りになりたいわけでもない、そんな僕がどのようにして就活を進めたかについて書いていきたいと思います!この記事は、多くの業界を見て、職種を調べて、自己分析をして自分の性格を把握したにも関わらず、それでもなお「やりたいことないんだけど!参った!」と困っている方に読んで欲しい記事です。逆に、そうでない方が読む際には、強く注意していただきたいと思います。思考を放棄することになりかねません。もし「まだ業界や職種について十分に調べられていない」「自己分析が不十分だ」などと感じる方は、以下のコラムを参考にすると良いかと思います!参考:「やりたいことが分からない!」就活生へ参考:なりたくない自分を考えることは就活のスタートにちょうどいいかも▼目次クリックで展開本記事のコンテンツ・僕の就活の振り返り・ただし、志望理由が「人」は危ない!・おわりに僕の就活の振り返り僕は、小さいころから「やりたいこと」がありませんでした。小学生のとき「将来の夢」の欄が書けなくて悩み続けたこともあります。このような方は、多数いることと思います。前述の通り、僕は理系院生です。ただ、「専攻内容を仕事に活かしたい」とは全く考えていませんでした。むしろ「就職してからもコレばかりなんて嫌だ!」とまで思っていました。そこで、まず、僕の専攻の学生が受ける企業を、志望企業から外すことにしました。次に「いち学生の知識なんて社会的に見たらゼロ同然だろう」と感じた僕は、ひたすら企業を見て回りました。あえて、全く興味のない企業の説明会にも行きました。興味のない企業を見に行った理由は単純で、その企業に興味がないことを再確認したかったからです。その再確認ですら「やりたいことを探すため」に活きると考えていました。もしその場で「あれ!?意外と面白いかも!?」と思った場合には、やりたいことの発見に繋がるのではないかとも期待していました。ですが、実際には何もなく、「やりたくないこと」がたくさん分かっていくだけでした。「やりたくないこと」が多くなっていく内に、自然と「やりたいこと」が絞られてきたように感じるようになりました。具体的に特定できたものはありませんし、言語化できるものもありませんが、ただ抽象的に「こんな感じのがいいな」レベルで、やりたいことが見つかってきました。具体的に、僕が感じ始めていた「やりたくないこと」と「やりたいこと」は以下です;<やりたいこと>優秀な人に囲まれてみたいな~日本が良いけど、都心がいいな~東名阪がいいかな~そこそこに給料は欲しいな~、でも人並で十分かな~後で困りたくないし、知識や経験が身に付く仕事がいいな~<やりたくないこと>海外を転々と飛び回るのは嫌だな~英語苦手だから、外資は大変そうだな~社内で人間関係の悩みとか持ちたくないな~説明会を何十社も参加して、100人超の社員と話して得たものがコレです。そもそも「やりたいこと」と呼べるのかどうか分かりませんが……。改めて見てみると、「業界」「業務内容」「職種」に関することが一切ありません。「やりたいこと」がここまで抽象的でいいのかと思えるくらい、何も定まっていません。しかしながら、これだけでもかなり定まってきた方だと思いました。実際、新卒で東名阪確定の企業はそう多くはありません。たとえば大手企業にいけば日本各地に行く可能性が高いですし、反対にベンチャー等に行けば、そもそも転勤がありえなかったりします。やりたいことが特に見つからなかった僕は、こういうことから志望企業を絞り込んでいくしかありませんでした。しかしながら、これだけでは絞り込むことは不可能ですし、ましてや選考で志望理由を聞かれたときに「勤務地が東京で確定するからです!」なんて回答ができるわけでもありません。したがって僕は、さらなる「やりたいこと」を探すために就活を続けました。説明会に行ったり、OB訪問をしたりしていく中で、とある社員の方が、非常に親身に接してくれるようになりました。「『こういう社員と話したい』とか有れば何でも言ってね!出来る限り紹介するよ!」と言ってくれたのです。この場合、「○○の職種の人で、○年目くらいの方をお願いできますか?」などとお願いするのが一般的だと思います。しかしながら僕は、思い切って「やりたいことが分からないまま就職してしまった人って周りにいませんか?いたらお願いします!」という、とんでもないお願いをしてしまいました。いま振り返ってみると、本当にとんでもないお願いだと思います。真似しない方が良いかもしれません。運よく、この方と非常に仲の良い方で「やりたいことがないまま就職してしまい、今でもやりたいことが見つかっていない」という方がいて、紹介してもらえることとなりました。その方とはOB訪問という形で、1時間ほど就活の相談をさせていただけることになりました。普通OB訪問では「御社の仕事は~~」等、企業に対する質問をするのが一般的だと思いますが、就職全般の相談をすることにしました。その方と相談して強く感じたことですが、その方は今の仕事に満足しているようでした。やりたいことがないのにも関わらず、です。なぜそのように満足しているかということを聞いていると、周りの人に恵まれているという話を伺うことができました。そして、「何をするか、よりも誰とするか、の方が大切だよ」という言葉をいただきました。そこで、僕は極端な例を考えてみました。●めっちゃ仲良い人と、やりたくない事をやる●絶対に一緒に行動したくないような嫌いな人と、楽しい事をするこの2つを比較してみたのです。そして、この二択なら、僕は前者を選ぶだろうなと考えました。そして、多くの人が前者を選ぶのではないか、と僕は思います。このことを考えてから、僕は「やりたいことを探す」ことをやめ、『「一緒に行動したい人」「こういう人になりたいと思う人」「自分に似ている人」が多くいる企業』を探すようになりました。この行動を繰り返す中で志望企業を徐々に絞ることに成功し、運よく内定を戴くことができました。よく「就活は量だ」と言われますが、やりたいことが明確にない人ほど量を積むことは重要なんだなと身をもって経験しました。結局「人」で決めたわけですが、相当な数の企業を見た結果「人」で選んだわけなので、もはや後悔する余地もなさそうです。これが「探したり調べたり考えたりしたけど、結局やりたいことがない」と分かった僕の、就活の流れでした。よく言われることですが、就活は「運」と「縁」なのだと、強く思います。ただし、志望理由が「人」は危ない!社員に「この会社に入社を決めた最大の理由はなんですか」と聞くと、たいてい「最後は、人で判断して決めました」という答えが返ってきます。しかしながら、志望動機として「人です。一緒に働きたいと思う人ばかりです。尊敬できる方が沢山います。」などと回答するのはアウトです。理由は大きく挙げると2つあると僕は考えています。(1)自分と同じ部署になった人と気が合うかどうかですぐ悩みそう。人間関係に対して問題が起きたとき、他の人に比べてすぐ辞めそう。等。(2)どの業界の、どの会社に対しても簡単に言える内容だから。「志望理由に困っている企業に対して使っているテンプレだ」と思われる可能性がある。他にも理由はあると思いますが、とりあえず「人が良いから」は言わない方が吉です。ただし、「君の志望理由だと、他社でも良いんじゃないかと感じる点もあるけど、それでもなぜ当社なのですか?」などの質問に対する答えとしては使っても良いと思いますが。さて、それでは「やりたいことがない」上に「人です」という志望理由も使えないとなった場合に、どのような志望理由を答えれば良いのでしょうか。これが「やりたいことがない」人の抱える最大の問題だと思います。僕は、以下のような方法で回答していました。まず、座談会やOB訪問などで、社員に対して「今までの仕事の中で、楽しかったことや、達成感を得た業務や案件を教えてください。」などと質問します。それで得られた回答を用いて、志望理由として「こういう経験を積み重ねていきたい」等と言っていました。ただ転用しているだけとも思われるかもしれませんが、自身と似ているor自分がなりたい人が「楽しかった」「達成感を得た」と感じている経験なわけですから、「自分もそういう経験をすれば楽しかったり、達成感を得るはずだ」と考えたわけです。実際、「本当にそういう経験が得られたら超楽しいだろう」と思うことばかりでした!やはり似ている人は、似たようなことで喜ぶのだと思います。そういうわけで、この方法で回答していました。というかそもそも、就職したこともない学生が「就職した後は、何をしていきたいですか」なんていう質問に、正しく答えられるとも僕は思いません。ですので、上記の方法で回答しても全く問題はないし、ある意味では合理的とも思っています。おわりに「やりたいこと」ではなく「一緒に働きたい人」で内定先を選んだ僕ですが、これが正解なのか分かりません。正解がそもそもあるのかも知りません。しかし、「やりたいことがない」中では、かなり納得度の高い企業を見つけ出すことができたと感じています。「やりたいことがある」人は、志望企業もスムーズに決まることと思いますが、「やりたいことがない」人は、僕のような方法で決めてみても、良いかと思います!「やりたいことがないのはおかしい」なんていう世間の風潮もありますが、全くそんなことはないと思います。どうやら「やりたいことがある」人の方が珍しいみたいなので、焦ることなく就活を進めてみてください!photobyMartinThomas 24,321 views
unistyle監修者 杉原美佐子さん unistyle監修者 杉原美佐子さん このページではunistyle記事の監修者のプロフィールをお一人ずつ掲載しております。unistyleの記事は、人事採用やキャリアコンサルティングなど、就活関連の幅広い経験を持つ方々に監修をしていただいております。監修記事や監修者からのメッセージを、ぜひ就職活動の参考にしてみてください。杉原美佐子さん・名前:杉原美佐子さん・資格:国家資格キャリアコンサルタント/2級キャリア技能士メンタルヘルスマネジメント検定Ⅰ種(マスターコース)ITコーディネータ/秘書技能検定試験1級/ビジネス文書検定1級サービス接遇検定1級/国家資格上級システムアドミニストレータ・所属:石川県情報システム工業会/日本秘書クラブ北陸支部日本キャリア開発協会/NPO法人石川県情報化支援協会・SNS/HP:└HP:https://www.misako-sugihara.com/・プロフィール金沢星稜大学・金城大学短期大学部・石川県歯科医師会立歯科医療専門学校非常勤講師日本を代表する大手電機メーカー系システムインテグレーター出身。キャリア教育・人材育成を中心にITからビジネスマナーまで幅広く活躍。就職支援・転職支援にも対応。趣味はお花。リースが得意。華道池坊正教授二総華匡・就活生のみなさんへ一言就活は大変です。働いたことがないのに、どの職種がいいのか、どこの企業がいいのか、やりたいことは何なのかを考えないといけないからです。そして選択した結果でいいのか誰も教えてくれません。それが正しいと自分で決めるしかなく、入社後は一生懸命に働いて、選択に間違いはなかったと証明するしかありません。入社はゴールではありません。その後に続く長い職業人生が、満足できるものにするための第一歩です。杉原美佐子さんが監修した記事一覧他のunistyle監修者は以下から確認できます。 345 views

現在ES掲載数

83,935

すべて見れる

上に戻る

会員登録・ログインして全てのコンテンツを見る

無料会員登録