就職活動で求められるコミュニケーション能力とは?|池上彰に学ぶ「伝える力」

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最終更新日:2018年12月20日

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就職活動において最も大切な素質、それは「コミュニケーション能力」です。

経団連が発表した2017年度版「新卒採用に関するアンケート調査結果」によると、選考にあたって重視した点として「コミュニケーション能力」を挙げた企業は全体の82%を占めています。こうした事実からも、企業の選考においてコミュニケーション能力がいかに重要であるかがお分かりいただけると思います。

とはいえ、実際にコミュニケーション能力を高めようとなると、具体的に何をどう鍛えれば良いのか分からないと感じる方も多いのではないでしょうか? 

皆さんの中にも、面接官と会話が思うように噛み合わなかった経験や、面接自体は盛り上がったのに選考に落ちてしまった経験をしたことのある方がいらっしゃるかもしれません。

そこで本稿では、分かりやすく伝えることに定評のある池上彰さんの著書『伝える力』を参考にしながら、就職活動におけるコミュニケーションを円滑にする際に役立つ考え方・テクニックをいくつか紹介していこうと思います。

 

『伝える力』の紹介

本書の著者である池上彰さんはNHK出身のフリージャーナリストです。

池上さんは1973年に記者としてNHKに入局して以来、報道の現場に長らく携わってきました。1994年にはニュースを解説する番組「週刊こどもニュース」のキャスターとなり、分かりやすい解説で評判となりました。

2005年にNHKを退社してからは、ニュース解説者として様々な報道番組に出演しています。近年では、選挙特番での歯に衣着せぬ質問で政治家に斬り込む様子が「池上無双」と呼ばれて人気を集めています。

本書ではそんな池上さんが、長年のジャーナリスト経験の中で培った「伝える力」を高めるための方法を紹介しています。ビジネスパーソンを対象とした本ではありますが、その中にはビジネス同様にコミュニケーションが重視される面接においても活かすことのできる考え方やテクニックが含まれています。

そもそも「コミュニケーション能力」とは何か?

まずは「コミュニケーション能力とは何か?」について確認をしておきましょう。

コミュニケーション能力とは、読んで字の如く、「他者とのコミュニケーションを円滑に行える能力」であると言えるでしょう。池上さんは、コミュニケーション能力が「話す」「書く」「聞く」の3つの要素から構成されると述べています。

【1】「話す」:自分の伝えたいことを会話で適切に表現する力
【2】「書く」:自分の伝えたいことを文章で適切に表現する力
【3】「聞く」:相手の話に耳を傾けることができる力

コミュニケーション能力と言うと「話す」行為をイメージする方が多いですが、分かりやすい文章を「書く」行為や、相手の話に相ずちを打ったり、返事をするといった「聞く」行為も、相手に何かを「伝える」ための行為であると考えればコミュニケーション能力に含めることができます。

次の段落からは、これらの能力を高めるための方法をいくつか紹介していきます。

自分が知らないことを知る

私は自分の「知らないこと」を子どもたちの「素朴な疑問」によってたくさん知らされました。あるいは、私が知っていることでも、知らない大人が大勢いることを初めて知りました。

彼らの疑問は時に本質を衝きます。
「ねえねえ、ユダヤ教とイスラム教の人はどうして争っているの?」
「キリスト教の人はユダヤ教とイスラム教、どっちの味方なの?それはなぜ?」
「日本の宗教は何?」

こうした質問に正確に答えられる人は多くはないでしょう。
まずは「自分が知らないことを知る」
「伝える力」を高めるには、このことに気がつく必要があります。

出典:池上彰『伝える力』p.28

こちらは、「週刊こどもニュース」のキャスター時代の経験を振り返った池上さんの発言です。

それらしい説明で物事を理解したつもりになってしまう大人と異なり、子どもは分からないことを素直に口にします。池上さん自身も、子どもたちから「日本銀行って何?」と聞かれた際に上手く答えられずに、「自分は日銀について、本当に分かっているんだろうか」と疑問に感じた経験があるようです。

物事を相手に分かりやすく伝えるためには、自分自身が話す内容を理解しなければなりません。理解を深めるためには、まずはその前段階として「自分がいかに物事を知らないか」を知り、謙虚な姿勢になることが大切になります。

就職活動で活きる場面

「自分が知らないことを知る」マインドは就職活動の準備を行う段階で役立ちます。

例えば、面接では自分の用意した自己PRなどのエピソードに対して、面接官から「具体的にどんな活動をしているの?」「それってどういうこと?」といった事実関係を確認する質問が飛んできます。その中には以下の例のように、自分の思いもよらなかったことを質問される可能性もあります。

【面接のイメージ】

学生:◯◯大学の☓☓☓☓と申します。学生時代にはイギリスに1年間留学していました。現地では日本文化を紹介する国際交流イベントを企画・運営した経験があります。

面接官:☓☓さんは留学先ではどんなことを勉強していたの?分かりやすく教えて。

学生:(えっ、そこから聞いてくるの!?どうしよう、準備していないや、、)国際法を勉強していました。

面接官:国際法て条約や協定みたいなもの?

学生:(えー、ちゃんと覚えてないな、、)条約以外にも、国際慣習法や法の一般原則といったものが含まれます。

面接官:それって、条約とはどう違うの?

学生:えーと、それはですね、、

面接官:(なんだかハッキリしないなあ、、ちゃんと勉強したのかなあ、、)

すべての質問を想定することは不可能であるため、面接においてはその場で相手が納得できる説明をする対応力も当然必要になりますが、今回のような質問は事前に想定することが十分に可能であったと思われます。

「自己紹介」から「自己PR」、「学生時代に頑張った経験」に至るまで、事前に用意した原稿を用意するだけではなく、自分の話す分野について何も知らない面接官の立場になって、あらかじめ説明に分かりにくい部分がないか確認をすることができていれば、思いがけない質問に対応しなければならない事態も減ると思われます。

文章を寝かせてから見直す

見直しはプリントアウトをした上でも行なう。さらに欲をいえば、書いた後、しばらく寝かせることが望ましいと言えます。寝かせる時間は、長い文であれば1週間ほどです。

そのあいだほうっておいて、頃合いを見て、自分が書いた文章を見直します。

そうすると、書いているときや書き終えた直後には気がつかなかった不十分な点に気が付くものです。

出典:池上彰『伝える力』p.127

こちらは、文章を「書く」力をアップさせるためのテクニックの1つです。

自分が書いた文章を見直すことで、誤字や脱字、不適切な表現などの書いているときには気づかなかった問題を見直すことができます。実際に本を出版する際にも、著者は「ゲラ」と呼ばれる試し刷りを文章を書き終えてから数日後に確認し、文章を修正することがあるようです。

実際に自分の書いた文章を数日間寝かせることで、当初は気づけなかった問題が見えてくることがあります。

就職活動で活きる場面

「寝かせてから見直すという」テクニックは、ESを「書く」際にも活用することができます。

ESを寝かせることは、文章を第三者的な視点から見直せることはもちろん、自分自身を理解することにも役立ちます。就職活動では、様々な社会人の考え方に触れる中で、自分自身の考え方も日々変化していきます。

ESを寝かせている間に、これまで見えていなかった企業の魅力に気がつき、新しい志望動機が思いつくかもしれません。ひょっとしたら、以前は志望度の高かった企業にそれほど魅力を感じなくなっているかもしれません。その場合には、自分の考え方が変化した理由について考えてみると良いと思います。

もっとも、ESは早く出すに越したことはありません。締切日の直前にはアクセスが殺到してサーバダウンしてしまうこともありますし、ESを早期に提出した学生限定のイベントを開催する企業も存在します。ESはどんなに寝かせようとも、必ず一次締切日前に余裕を持って提出しましょう。

「難しいことも簡単に」書く・話す

私が記者として訓練を受けたときは、「中学生にもわかる原稿を書け」と指導されたものです。新人の新聞記者も、同じことを言われています。

しかし実際には、それとはほど遠い原稿がはびこっています。
「難しく書くことは簡単だが、わかりやすく書くことは難しい」のです。

出典:池上彰『伝える力』p.153

これまで難しい政治の問題を分かりやすい言葉で説明することで、お茶の間の人気を集めてきた池上さんらしい発言です。難しい言葉を噛み砕いて表現できるということは、その問題について深く理解しているという証拠であるとも言えます。

この本の中では、分かりづらい言葉の代表例として以下の3つを挙げています。

カタカナ用語
   ex) コンテンツ、コンプライアンス、シナジー

漢語表現・四字熟語
 ex) 一朝一夕、浅学非才、異口同音

「〜性」「〜的」といった抽象的な表現
 ex) 利便性、想像性、機能的、絶対的

カタカナ用語、漢語表現、四字熟語は、普段の生活の中で日常的に利用している人にとっては便利なのですが、相手によっては全く理解されない独りよがりな表現になってしまう可能性をはらんでいます。そのため時と場合による使い分けが求められる表現と言えます。

例えば「バリュー」「コントラクト」などの外資系企業で利用されている横文字の表現は、日系企業で長年働いてきた人には分かりにくいかもしれません。

「〜性」「〜的」といった抽象的な表現は使い勝手の良さが魅力的ですが、具体的な事柄が何も伝わってきません。こうした表現を多用している人には、踏み込んだ思考をしていない可能性があります。なるべく他の言葉に言い換えた方が懸命でしょう。

例えば「当社の新製品は従来品よりも利便性が高まりました」という表現は、「当社の新製品は従来品よりも業務のスピードが高まりました」と言い換えた方が分かりやすいと思います。

就職活動で活きる場面

就職活動においても、上記の3つの言葉を使用した表現(カタカナ用語/漢語表現・四字熟語 /抽象的な表現)はなるべく避けるべきです。

面接の場面で抽象的な言葉を使用してしまうと、エピソードの内容が具体的ではなくなり、学生の個性が伝わりづらくなってしまいます。また、面接官がカタカナ語や漢語表現・四字熟語を知らなかった場合には、面接官との間の認識に齟齬が生じやすくなってしまいます。

しかし、中にはこうした表現を使わざるを得ない場面も存在しています。例えば、ESの制限字数が少なく、話をまとめるためにはどうしても抽象語を利用しなければならない場合が出てくるかもしれません。時と場合に応じて柔軟に使い分けられると良いでしょう。

また、業界ごとに存在している専門用語にも注意が必要です。総合商社における「トレーディング」と「事業投資」のような、業界を志望する者は必ず理解しておくべき知識であれば面接でも使わざるを得ないでしょう。その一方で、コンサルティング会社で用いられる「バリュー」「コンセンサス」のような他の言葉に簡単に使い分けられる言葉であれば、なるべく分かりやすい言葉に言い換えた方が賢明です。

最後に

今回は『伝える力』に掲載されている内容のほんの一部しか紹介することができませんでしたが、他にも相手を惹きつける「つかみの作り方」、伝える力を養うための 「インプットの方法」など、コミュニケーション能力を高めるための様々なノウハウが紹介されています。

就職活動のみならず「人に思いを伝えること」に対して何か不安を抱えている方は、ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。

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