「ビジネスではなく、公的機関だからこそできる国創りを」現役職員3名が語る国際協力機構(JICA)の仕事とやりがい

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最終更新日:2023年10月27日

「ビジネスではなく、公的機関だからこそできる国創りを」現役職員3名が語る国際協力機構(JICA)の仕事とやりがい

国際協力機構(以下JICA)は、日本の政府開発援助(ODA)の実施機関として、開発途上国への支援を行っています。

世界には200を超える国が存在していますが、そのうち150カ国が開発途上国です。開発途上国が抱える紛争や貧困、社会インフラの未整備といった課題に対し、JICAは技術協力や資金協力といった手段を用いて解決に取り組んでいます。

今回の記事では、経歴や勤続年数の異なる3名のJICA職員の話をまとめています。
それぞれの職員がどのような思いを持ちながら働いているのか、またこの記事を読んでいる皆さま自身の持つ経験とつながる部分はないのか、考えながら読んでいっていただければと思います。

本選考とインターンの締め切り情報

若手女性職員の苦労とやりがい

【職員プロフィール】
・新卒入社2年目/女性/理系国立大学院卒
・JICAへの志望動機:世界中のひとりでも多くの人を笑顔にしたい、日本人代表として途上国に貢献したい、活躍する人を繋ぐ人になりたい。

携わっている業務

現在は無償資金協力で実施されるプロジェクトの実施監理を担う部門に所属しています。
無償資金協力は、開発途上国の中でも所得水準が低い国を主な対象として、給水施設、学校、病院、道路・橋梁など、経済・社会発展に必要となる、基礎的な社会基盤などを整えるためのJICAの協力手法の一つです。

プロジェクト開始前の調査や協力の枠組み作りは、JICA内の別の部署が中心になって行うのですが、現在所属している部署では、施設建設等を行う民間企業との契約やそれに伴う交渉、プロジェクト開始後のモニタリングなどを行っています。

開発途上国で実施するプロジェクトは、一筋縄ではいかないことも多く発生します。
例えば、無償資金協力によって橋を建設するプロジェクトがあるとします。橋の建設のためには橋の根元に大きな土地が必要で、土地は途上国側で準備することになりますが、着工のタイミングで土地の確保が間に合っていない、という状況が発生することもあります。

土地の準備が間に合わないと、着工が遅れ、当初想定していたよりも大きな費用が発生してしまうことにもつながります。予定している費用を超過してしまうと、「プロジェクトを完遂できない」という判断を下さざるを得ない状況にも繋がってしまうため、途上国側に対して、交渉や申し入れをしていくことも必要になります。この時交渉のフロントに立つのが私たちです。タフな粘り強い交渉が求められることもあります。

大変さの中で感じるやりがい

一方で、未然に上記のようなことを防ぐということも私たちの業務の一つです。

着工前にボトルネックになりそうなことがらを抽出し、事前に排除します。上記の橋の建設工事の例であれば、①いつまでに土地を確保するのかという情報を確定し、②それまでにとるべきワークフローを策定し、③実際にスケジュール通りに行うよう促しながら実施監理する、といった内容を想像してもらえればと思います。

自分がいることで未然にトラブルをなくプロジェクトが進み、現地国・JICA・そして日本のいずれにとってもよい関係を構築することができた時は、大きなやりがいを感じます。

総合商社からJICAへの転職をした職員が語る、総合商社とJICAとの違い

【職員プロフィール】
・中途入社2年目/男性/総合商社金属部門より転職
・JICAへの志望動機:ビジネス(インフラ整備、雇用創出等)を通して途上国開発に貢献したいと考えて総合商社に入社したが、途上国の政策形成の部分から人材育成、インフラ整備など、より幅広い援助手法を駆使し、途上国支援を行いたいと考えてJICAへ転職した。

なぜ総合商社からJICAへ転職をしたのか

もともと総合商社へは、ビジネスを通して途上国開発を支援するという思いを持って入社しました。

総合商社はその思いを実現させることができる環境でしたが、どうしてもビジネス上の利益が出なければ事業の継続ができません(当たり前ではあるのですが)。徐々に総合商社としての途上国支援に限界を感じるようになり、利益的な側面だけではなく、公的機関としての立場から、技術支援や資金援助、政策の策定などの様々な手法を駆使することができるJICAへの転職を決めました。

総合商社とJICAのどちらが良い悪いというものではありませんが、皆さんには自分がどういうスタンスで途上国支援に携わりたいのかを考えてキャリアを選んでいって欲しいと思います。

JICAで感じる総合商社との共通点/異なる点

JICAと総合商社で共通しているのは、プロジェクトを組み立てていくオーガナイザーであるという点です。組織内部に多くの専門家を抱えているということではなく、深い技術的な面については外部の組織や専門家と協力・調整して実施することも多くあります。

逆に異なる点は、ビジネスなのかそうでないのかということ以外にも、国づくりの政策的な側面から関わりやすいのがJICAだと思っています。ある国の交通インフラ整備について考えてみましょう。

JICAであれば、都市交通の調査を実施、交通網整備のための大きな計画策定(マスタープラン)から実施することも多くあります。そして、例えば結果として地下鉄の敷設がよいとなった際に、円借款による資金協力等につなげていきます
一方で商社は、上記の例であれば、地下鉄敷設が決まった際に「うちに取り仕切らせて欲しい」と受注するイメージが近いと思います。
これはあくまで一例で、近年は官民連携も進んでおり、民間企業とJICAで協力して事業を形成・実施している例も増えてきています。

ただ繰り返しになりますが、JICAと商社のどちらが優れているということではなく、あくまでスタンスの違いによるものと理解して欲しいと思います。商社によるビジネスとしての支援が結果的に自社の利益に大きく寄与し、末長い経済発展に結びつくということもあります。

生え抜き11年目の職員が携わるリアルなプロジェクト

【職員プロフィール】
・新卒入社11年目/男性/理系私立大学院卒
・JICAへの志望動機:安全な水を世界の人々に届けたい。専門性のあるJICA職員になり、より質の高い事業を行いたい。

自分が中心となって進めた貧困解消のプロジェクト

学生のみなさんからは「JICA職員がどのような仕事をしているのか分からない」という声をよく聞きます。JICAでは多くの場合、1人で複数の案件を担当します。
JICA職員の仕事のイメージを持っていいただくために、パキスタン事務所に駐在していたときに担当として携わったパキスタンの「高付加価値果樹産品振興プロジェクト」の案件形成の事例を紹介します。

パキスタンの北部地域は、パキスタンの中でも最貧困地区であり、産業の中心は農業、その中でも果物が非常に大きなウェイトを占めていました。
プロジェクト開始にあたり、貧困の根本的な原因を考え、解決すべき問題を定めることから始めました。そこで見えてきたのが、現地の特産品であるアプリコットのポテンシャルを生かせておらず、また生産やマーケティング体制の未熟さのために生産したうち約40%を廃棄しているという現状でした。

その状況に関して、①市場のニーズ、②品質改善ポテンシャル、③そして持続的な生産可能性、について分析しました。

私は農業の知識やノウハウを持ち合わせていなかったため、日本のアプリコットの生産地である長野県千曲市を訪問し、日本としてどのような優位性を持って現地を支援することができるのか考えました。そして、農業を専門とするJICAの部署のアドバイスや、コンサルタントの力を借りながら、生産、加工、マーケティングなどの分野の専門家からなるプロジェクトチームを組成しました。パキスタンが持続的に技術普及をしていけるように、専門家の方に実際にパキスタンに来ていただき、現地農業局や住民組織などへの技術指導を通じて、プロジェクトを遂行していきました。


その結果として、現地で生産できた品質の高いドライアプリコットは、一部、渋谷のヒカリエなどで、販売されるようになるまでに至りました。
まだまだ、安定的な供給や販売を続けていくには課題がある状況だと理解していますが、自分が中心となって進めたプロジェクトが実を結び地域の貧困解消に一役買ったこの経験は、深く心に残っています。

最後に

JICAは、総合商社を見ている方にとってはオーガナイザーとしての役割が共通している点や、ビジネスか非ビジネスかの対比などから考えていくと、双方の役割がより分かりやすくなるのではと思います。
加えて、貧困解消プロジェクトの事例の中にあるように、解決するべきイシューの見定めや打ち手の立案など、コンサルティングファームと共通する部分もあると言えます。

JICAは社会貢献性の高さから例年一定数のファンがいるように感じていますが、この記事を読んで新たにJICAに興味を持つ方が出てくれば幸いです。

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最近気になるニュースについて回答を求められたら?就活生必携アプリ「NewsPicks」とは 最近気になるニュースについて回答を求められたら?就活生必携アプリ「NewsPicks」とは 経済や社会のことなんて全然わからないという学生も、就職活動がスタートすると日経新聞ぐらいは読むべきなどと言われるようになって久しいと感じます。そうは言っても移動中など隙間時間に新聞を広げて情報収集、というのもなかなかやりづらいものと思いますし、最近はほとんどの人がスマートフォンからニュースアプリを起動し、各種ニュースを読むようになっていると言えます。Twitterや日経新聞、スマートニュースといった一般的なニュースアプリなどと比べた際に、特におすすめなのが経済情報に特化した「NewsPicks」です。ほとんどの記事は無料で閲覧可能となっており、ビジネスパーソンだけではなく、就活生にとってもNewsPicksが必携になる時代はすぐそこまで来ているかもしれないと感じています。▼アプリ「NewsPicks」の無料ダウンロードはこちらから・iPhoneの方はこちら:・Androidの方はこちら:(※本コラムはNewsPicksのPR記事です)​無料で使える経済情報に特化したニュースアプリ「NewsPicks」とはNewsPicksを一言で表すと「ニュースアプリにSNS機能が備わったもの」となります。金融、経済、IT、スポーツビジネス、最近では大人の恋愛など幅広いジャンルのニュース記事やコラムを著名人のコメント付きで見ることができます。興味のある著名人などをフォローすることで、彼らが気になったニュースをシェア(Pick)したものが自分のフィードに流れてきます。また、シェアする際には著名人がニュースに対する自身の見解をコメントしている場合が多く、「ニュース+それに対する意見」がセットで見られるのが他のメデイアにはないNewsPicks最大の特徴となっています。Twitterよりも濃い情報を、日経新聞よりもわかりやすく手軽に得られると言えます。ほとんどのニュースおよび付随するコメントは無料で閲覧が可能であり、無料会員登録のみでも十分に有用なサービスとなっています。また、詳細は後述しますが有料会員限定のコンテンツや機能も非常に充実しているため、まずは無料で利用してみて、気に入ったという方は有料課金を検討してもよいでしょう。Twitterアカウント、Facebookアカウント、メールアドレスのどれでも登録が可能となっており、登録後は自分でニュースを投稿したりコメントをつけたりすることができます。​▼アプリ「NewsPicks」の無料ダウンロードはこちらから・iPhoneの方はこちら:・Androidの方はこちら:NewsPicksを利用している著名人起業家、現役コンサルタント、総合商社社員、金融リサーチャーなど様々な属性の人々がNewsPicksを利用しています。一部有名どころの人々を下記いたしますので、フォローの参考にしてください。・堀江貴文説明不要、ライブドア元代表取締役CEOの堀江氏。基本的には1センテンスの簡単なコメントが多い印象です。・堀義人グロービス経営大学院大学学長、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーである堀氏は政治、経済、MBA、起業など幅広いニュースにコメントしています。最近は恋愛関係の柔らかめな話題のコラムにもしっかりコメントを残すなど、面白い一面もあります。・松本大マネックスグループ代表取締役CEOであり、テレビ東京の人気アナウンサー大江麻理子氏との結婚が話題になりました。主に、自身の専門分野である経済、金融分野のニュースにコメントしています。・占部伸一郎日系コンサルティングファーム「コーポレイトディレクション」のパートナーを務めており、様々なジャンルのニュースに自身のコンサルティング経験を生かした丁寧なコメントをつけています。・西村創一朗リクルートキャリア勤務、NPO法人ファザーリングジャパン理事。ニ児の父。趣味はポケモンと妖怪ウォッチと、トッキュウジャーと仮面ライダー、初音ミク、小池美由とのこと。こちらも幅広い業界の記事にコメントしており、特にキャリアやIT関連の分野に精通していると感じます。・福田滉平こちらは現役の慶應義塾大学生となっています。高校時代からPickを始め、現在はNewsPicks編集部の一員となっています。彼同様に、積極的にPickやコメントを行う学生も多くいます。就活生はNewsPicksをこう使ってみよう日経新聞などの事実を伝えるだけのニュースメディアでは、そのニュースをどう「解釈」すればいいのかわからないという人は多いと思っています。NewsPicksであれば識者のコメントなどを元に、そのニュースの「解釈」を学べると言えます。例えば最近話題のギリシャ危機の記事についてであれば、下記のようなコメントが付くといった具合です。​(参考:「ギリシャ問題が行き着くところとは」)​(参考:「焦点:ギリシャと中国、想定外の情勢悪化でアベノミクス視界不良」)​ニュースで事実だけを説明されてもピンとこない人にとって、わかりやすい補足と言えるでしょう。また、ニュースの内容についての意見や補足以外にも、記事自体の要点を整理してコメントしてくれるユーザーもいるため、ニュースを一段深く理解するための手助けになります。慣れてきたら自分の興味関心のある分野の記事にコメントを書いてみるのもよいと思います。先ほど紹介した福田滉平さんなど、自ら積極的に意見を発信している学生も多くいます。他のユーザーからよいコメントだと評価されれば「LIKE」がもらえるのも、アウトプットのモチベーションになるように感じます。また、総合商社をはじめとした企業の面接でよく聞かれる「最近関心のあるニュースは?」といった質問に対しても、NewsPicks上での識者の意見を踏まえて自分なりの考え方を構築すると一段深い内容が答えられるかもしれません。時に学生の独りよがりな解釈は、ビジネスの第一線にいる人から見た場合に、浅かったり的外れであったりといったこともままあると感じています。他にも、下記のように面接官とNewsPicksの話題で盛り上がったという話もあるようです。余頃:第一志望の企業の面接官が、インターネットメディアに詳しい方で。その方もNewsPicksを利用されていることは元々知っていたんだけど、「何かメディアで意見を発信することはある?」と聞かれたときに「NewsPicksです」と即答(笑)その場でスマホを取り出して、自分の過去のコメントとかを見てもらえました!これはたまたま運が良かった話かもしれないけど、就活に限らず、社会で活躍している方と接点を持てるという意味でNewsPicksはすごく役に立つんじゃないかな。(「取材企画第三弾!就活に役立つNewsPicks!」より抜粋)就活関連記事など、有料コンテンツや機能も充実ちなみに、NewsPicksでは就活特集記事も複数掲載しており、ほとんどが有料ながらかなり読み応えのある内容となっています。人気業界の分析や、著名人が「今、自分が就活生ならどんなキャリアを歩むのか」といった記事はキャリア選択の参考になるものと思います。簡単にタイトルのみ下記いたしますので、興味のある方は是非読んでみてください。【Vol.5】「商社一人勝ち」。とばっちりを食う、外資金融・コンサル【Vol.8】DeNA創業者・南場智子氏「いま私が22歳だったら、絶対マッキンゼーには行かない」【Vol.13】自動車業界が抱える「4つのリスク」と有望企業【Vol.14】総合商社が「新卒至上主義」なのは当然か?【Vol.15】圧倒的人気のメガバンク、商社。繁栄は10年後も続くか【Vol.17】電通・博報堂は10年後も強い。マーケターは超有望職業に【Vol.26】「学歴、コネ偏重採用」に待ったをかける「人間アナリティクス」採用術【vol.27】今からでも間に合う、「就活後ろ倒し時代」の内定獲得術また、企業の面接直前にその企業が関連するニュースをすべて検索して、意見も含めてチェックしておくという学生もいるとのことです。過去記事やユーザーの検索機能も有料会員限定となっているので、使ってみたいという方は有料登録も検討してもよいと思います。なお、NewsPicksの有料会員月額はiPhone/Androidともに1,500円(税込)となっています。日経電子版の4,200円(税込)よりは手が出やすく、飲み会0.5回分くらいだと考えれば十分価値のあるものと思います。もちろん、無料での使用でも大いに役立ちます。NewsPicksを使う上での留意点ここまで紹介してきたようにNewsPicksは非常に有用なメディアである一方で、いわゆる「デキる意識高めのビジネスパーソン」が積極的に意見を発信している傾向があると感じます。そのため、自由市場主義的な論調の意見を目にする機会の方が比較的多くなるかもしれません。示唆に富む意見がたくさんある一方で、NewsPicksが世間の縮図だと思わないよう注意はするべきでしょう。NewsPicksに限らず、どのメディアや個別の記事、意見であってもそれぞれの「色」があるので、そのいい面悪い面を踏まえて自分なりの考えを持つことが「メディアリテラシーがある」ということだと思っています。もちろんNewsPicksの中だけで見ても、ある一つのニュースに対して複数の異なる意見が交わされることも非常に多いため、物事を多面的に考える上で参考になる有用なメディアであることは間違いないと言えます。最後に基本的に無料で使えて、業界研究やニュースの見方まで学べるNewsPicksは今後の経済メディアの主流になるポテンシャルがあると感じます。就活に限らず、社会に出てからも役立ちますし楽しめること請け合いのため、今のうちから登録して使い倒して欲しいと思います。▼NewsPicksの無料ダウンロードはこちらから・iPhoneの方はこちら:・Androidの方はこちら:photobyTayloright 30,831 views
OB訪問の流れ・メリット・2回目に繋げてもらうための方法を解説! OB訪問の流れ・メリット・2回目に繋げてもらうための方法を解説! 就職活動となると、OB訪問は誰もが通る道です。実際に仕事に携わる社会人の話を伺って自分の将来をイメージすることは、志望動機を考える上で非常に重要なファクターです。今回は、OB訪問でも特に同じ人に複数回OB訪問をすることによって、自己PRや志望動機をブラッシュアップするメリットや効果について説明したいと思います。本記事のコンテンツ・OB訪問の方法・やり方・アポイントの取り方・日程の決め方・当日の準備・OB訪問での質問事項・年代別に対応を変えるべきか・OB訪問の際の御礼のメール・次回のOB訪問に繋げていく・OB訪問は選考に影響するかどうか・最後にOB訪問の方法・やり方まず、OB訪問する相手について考えてみます。大きく分けて、OB訪問の相手は以下の5つの場合に分けて考えられます。①部活動・サークルの先輩②ゼミの先輩③親戚の紹介④大学のOB名簿⑤友人・先輩の紹介①部活動・サークルの先輩体育会気質であればあるほど、活動時の苦楽など共有する点が多く、親しみが湧きます。したがってOBとしても、現役に会いたい気持ちも少なからずあるはずです。特に、ラグビー・ボート・野球など合宿所生活で学生生活のほぼ全てを捧げるような部活動に取り組んでいる学生はOBとの結びつきが非常に強いです。過去の有名企業内定者の話を聞いていると、練習の合間にOBにきめ細かい指導をお願いし、内定が近づいたという話もありました。OB側としても、同じ部活動・サークルに所属していた学生と一緒に働いたり、お酒を飲みたいと思うことは当然でもあるので、積極的にアプローチしてみるといいかもしれません。②ゼミの先輩同じ先生から少人数で教わるため、共通点が多いです。また、ゼミのOB会などが開催されればそこもOB訪問のきっかけになります。同じゼミの門下生は同ゼミに入るという時点で、「〇〇を勉強してみたい!」というある程度同じ志を持って入会するなど、考え方に多少の共通点を持っています。就活の企業選びに関しても、その軸や原体験が被ることもしばしばあるので、その辺りについて伺ってみると良いかもしれません。ゼミの繋がりが強いという場合には、部活動やサークルの先輩と同様に細かくみていただけることも良くあります。③親戚の紹介親戚の紹介で、共通点も特にない場合は、自分が家族を代表して会いに行くことになりますので、それなりの覚悟が必要です。OB側としても、「〇〇の頼みとあれば、やります!(一肌脱ぐか!)」という基本スタンスなので、相手がどのような学生か知らないにも拘らず、求められるハードルは高いです。多くの場合、人は「しっかりしている」と判断し、太鼓判を押したからこそ企業の社員を紹介します。ですので、紹介される社員側は「当然しっかりしているだろう」「礼儀正しい子だろう」「うちに入りたいんだろう」という先入観を持っています。この先入観を上回れば、そこで初めて非常に高い評価を得られるというわけです。ここで評価を得ることができれば、元々の親戚の繋がりもあるので、「やはりいい子だったし、会ってよかった」と思われ、ますます別の社員等を紹介していただけて就活状況が好転する可能性も大いに考えられます。④大学のOB名簿大学OBという大きな枠の中の繋がりなので、平たく言うと赤の他人です。失言等によって誰かの名誉・威信を傷つけることはありませんが、会話が続かずに実のない訪問になってしまうと、企業のOB側からも「時間を無駄にした」と思われかねません。この場合は、OB訪問へのハードルは低いですが、実際に評価されて次に繋げることが難しいです。共通の話題もいちから探さねばならず、「しっかりしている」という先入観が手助けしてくれるわけでもありません。その上、名簿を伝って訪問に来る学生は星の数ほどいるので、その中で印象に残るためには並大抵のことをしていては困難です。例えば、簡単な例だと「その場を会話によって盛り上げたのち、もう一度お話を聞くお願いをする」「別の人を紹介していただく流れにもっていく」などするのが良いでしょう。このような流れに持っていく方法論は下で別途紹介させていただきます。このように、OB訪問の相手と知り合うプロセスは主に5つほどありますが、その中で高い評価を得て、次回に繋げるにはどのようにしたらいいのでしょうか。OB訪問では、お話する際の内容のみならず、メールや会うまでのアプローチにも気を配ってみると好印象かもしれません。アポイントの取り方・日程の決め方やはり、メールが基本でしょう。社会人は勤務中は基本的に仕事で忙しいです。電話でアポを取ろうとした際、相手方が忙しい場合や、手際よく自分が日程提示できないと心象がよくありません。メールを送る際には、宛名(〇〇様)と署名を忘れないようにしましょう。この際、敬語の使い方には細心の注意を払わなければなりません。尊敬語・謙譲語・丁寧語のマスターは必須条件です。もちろん、社会人の人とメールする際には、ccの使い方や件名入力など知っておいた方が良い点がいくつかあるので、併せて調べてみると良いかもしれません。また、もし一度メールを送っても返信が来ない場合は、頃合いを見計らってから再送したり催促のメールを送ってみても良いかもしれません。ただ気づいていないだけというケースも良くありますし、複数回メールすることによって自分の強い熱意が伝わることもあります。(メールが丁寧という前提があってこそです。)参考:→OB訪問への依頼やお礼の際のメールについて、具体的な文面の例を紹介しています。当日の準備基本的にはリクルートスーツに就活カバンで行く場合が一般的です。筆記用具、メモ帳、携帯電話は必須アイテムです。それに加え、清潔感を出すために男性ならワックス、女性なら髪を束ねるなどして、髪を纏めておいてもいいかもしれません。また、相手に貴重な時間を割いて会っていただくという立場なので、遅刻は絶対に厳禁です。何があっても(電車の遅延等)遅刻しないために、集合時間の30分前にはオフィスの最寄りに到着するようにしましょう。(どんな理由であっても遅刻は人からの信頼を失います。)また、集合の際などにはわかりやすいように、電話番号を先方と教え合う場合が多々あります。待ち合わせ時間に電話が来た際には、すぐ出られるように準備すること・元気よく応対することが非常に大事です。もし自分がOB訪問を受ける社会人の立場であれば、元気の無い学生よりは元気のある学生と話してみたいと思うはずです。直接対話の前の電話やメールの時点で、相手に印象を植え付けるチャンスはあるので、心してとりかかりましょう。参考:OB訪問での質問事項さて、実際にOB訪問本番でどうすればよいのでしょうか。ここを知りたい学生がほとんどだと思います。するべき質問について考えてみたいと思います。話を聞いていると、インターネットで調べた質問のテンプレをそのままOB訪問に活用する学生が多いです。それらには以下のような例があります。①今まで仕事をしてきて最もやりがいを感じたのは、どんな瞬間ですか?②御社で活躍している人材に共通する特徴はありますか?③平均的な1日の仕事のスケジュールを教えて下さい話の流れの中でこういった質問を出すのはまだしも、何の流れもないところから、「やりがいは何ですか?」「社員に共通するポイントは何ですか?」などと質問しても、OB側は「また、こういう学生がきたか…」という思いを抱いてしまい、他の学生との差別化を図ることが困難です。「こういう学生」というのは、コミュニケーション能力に不足がある学生のことを指しています。仕事の話を伺う中で、「〜の仕事〜という場面では何に苦労したのでしょうか?私も似たような経験があって…」などと、流れの中で上手く会話が出来ると、相手方も「実際の仕事となると、〜という場面があって…」と話が続いていくはずです。以下は、就活生が実際に経験した総合商社OB訪問のいち場面です。就活生:総合商社の水事業ではどんな仕事をするのでしょうか。社員:水道が未発達な国に出向いてそこの人と話を進めながら…(以下省略)就活生:実際にホームページで拝見した仕事内容からイメージするに、日本の上下水道整備の技術者を海外に派遣してみればいいのでは?と思うのですが…いかがでしょう。社員:いやいや、実際に水事業のポイント・大変な点は日々のメンテナンスであって…このようなイメージで、聞きたい内容を意識しながらも会話の流れの中で自分の求める話を引き出せるようにしてみるといいかもしれません。会話の流れを作って、その中でテンプレの質問を活用するというのが、あるべきOB訪問の質問事項です。何も考えずにOB訪問をして、テンプレ通りの質問をしていては、自分にも相手にも何も得るものはありません。コミュニケーションを上手く取れない学生を採用したいと思う企業は存在しないうえ、そのような学生と話をしたい社会人もいません。互いに聞くこと、話すことがなくなり始めたらOB訪問も潮時なので、その時間が早く来すぎると互いに退屈してしまいます。ちなみに大体の場合は、12:00〜12:50くらいの時間で昼休みを使ってOB訪問を受ける社員が多いです。こうした社会人とのコミュニケーションの中で、自分が好感触を持った相手に対して、複数回にわたってESの添削や自己PRを見ていただくなどしてみるといいかもしれません。また、下記参考では、OB訪問での質問を作成することに関した記事がありますので、そちらも併せて是非ご参考ください。年代別に対応を変えるべきかまた、若手社員には就活時代のノウハウや研修のこと・中堅社員やベテラン社員には仕事のことを聞くと良いと言われてみますが実際のところはどうなのでしょうか。若手比較的就活を終えてからまだ時間が経っていないため、就活時のOB訪問・ES・面接の際に気をつけていたことなども聞いてみるといいかもしれません。また、自分(相手方の社員)が採用されたとき、どこを評価されたかなどを聞いてみると意外な答えや新たな発見もあるでしょう。併せて比較的若めであるならば、大学時代に所属していた部活動やサークルなどについて伺ってみても話の幅が拡がるかもしれません。中堅基本的な業務に慣れ、日系企業ではいよいよ大きな仕事を任される位のイメージです。若手のころの仕事の話から、その会社ではどのくらいの忙しさ・フィールドの大きさで・どのような人と働くのか伺ってみるといいかもしれません。もしかすると、企業によっては一次面接を担当するような人もいると思うので、面接の話を伺ってみても良いかもしれません。社員の紹介をお願いするのであれば、この年代以上の方にするのが良いでしょう。(5〜10年目くらい)また、バリバリのベテラン社員と若手の中間点にいるこれらの年齢層の社員は、学生の相談にも親身になってくれることがあるので面倒をみていただいているという学生もいました。ベテラン自分の分野における業務(ジョブローテがある場合は包括的な範囲で)に関しては、色々な経験を積んでいる社員です。このレベルの社員にお話を伺うのであれば、その分野で仕事に携わることを希望しており、簡単な知識がある状態でOB訪問するのが理想です。OB訪問の中でも、ベテラン社員が相手だと「どうして〇〇分野に興味があるのか(もしくはどの分野に興味があるのか)」という質問は絶対にされます。どの年齢層の社員にも尋ねられる確率は高いですが、ベテラン社員に訊かれた際にしっかり受け答えができないと、「こいつはたいしたことないな」と思われてしまいます。下で改めて述べますが、OB訪問での評価が選考に繋がるとすると、しっかり受け答えできるに越したことはありません。ベテラン社員と呼ばれる層の社員は面接でもよく登場するので、本番の面接と思ってOB訪問に臨むといかもしれません。OB訪問の際の御礼のメール御礼のメールでは、ご馳走いただいた食事への御礼の言葉(カフェの場合は飲み物)、その日の話で印象に残った点と自分の感想、自分の課題などを改めて丁寧に述べておくと良いでしょう。また、OB訪問した際に別の社員を紹介していただく約束を取り付けていれば、メールで改めてそのことに言及しても良いかもしれません。ただし、直接やりとりしていない場合にメールでお願いごとをすると心象が悪いので、紹介のお願いをするならば直接しましょう。直接会った際にすればいいお願い事を、後でメールでされると誰しも面倒に思うものです。それに加え、その日のOB訪問で感じた、自分の課題の整理をできると良いでしょう。OB訪問時に質問する中で、自分の知らないトピックや内容が出てきた際には、それらを取捨選択して自分のESや面接で話す内容に盛り込む必要性があります。時間が経たないうちにこれを実践できれば良いと思います。具体的には、OB訪問の御礼メールは一時間以内に打つべきです。社会人は常にやるべきことがあり、次々にとりかからねばならない仕事があるので、「鉄は熱いうちに打て」というわけではありませんが、早めにメールしておくのが得策でしょう。参考:これから総合商社のOB訪問を行う人が持つべき心構え次回のOB訪問に繋げていく別の社員紹介であれ、同じ社員に再度伺うのであれ、聞きたいことを整理してブラッシュアップする必要があります。同企業で、二回目以降にOB訪問するパターンには以下の二種類があります。①同じ社員に再びOB訪問する②紹介していただいた別の社員にOB訪問する①同じ社員に再びOB訪問するこの方法でOB訪問する学生は非常に少ないように思われますが、私の実体験からも、この方法でのOB訪問が最も有意義な時間となりました。「沢山の社会人から色々な話を聞くことによって見聞を広めなさい」「自分の興味がある仕事を見つけて、そこに携わる社員を紹介してもらいなさい」という類のアドバイスをもらう就活生は非常に多いように思いますが、これは半分正解で半分は間違いです。今回は、この方法でOB訪問を行うメリット・効果についても言及したいと思います。前提初めて会ってせいぜい一時間の、どこの馬の骨とも知らぬ大学生に対して、わざわざ丁寧に話を聞いて的確なアドバイスをしようと思う、お人好しな社会人はほとんどいません。(いないと思って臨みましょう。)自分のことをわかっていただいた上で、親身なアドバイスを頂くためには、何回も足を運んで信頼関係を醸成することが必要不可欠です。効果何度も時間を作って下さるのは、「この学生になら時間を割いてもいいな」と思われているからこそです。そういう気持ちに応えるためにも、自分のその会社での仕事への熱意を示すためにも、心身ともに本気でOB訪問に取り組むようになります。社会人側としても、いち学生に多くの時間を割くからには頑張って欲しいという想いが生まれて、懇切丁寧にご指導下さるケースも多いです。メリット具体的には、学生時代頑張ったことの説明の仕方や志望動機の練り方などを細かくみていただくことによって、面接での受け答えにキレを出すことができます。現場で仕事に携わる人が持つ仕事観と自分のイメージを擦り合わせることが出来るので、実際の面接でも面接官を納得させられるようなことを話せる可能性が上がります。もし社会人の方に、自己PRや志望動機に関してきめ細かく指導してもらいたいという気持ちがあれば、勇気を出して、同一の社会人に複数回OB訪問してみるといい結果が出るかもしれません。②紹介していただいた別の社員にOB訪問する多くの人はOB訪問というとこちらのパターンをイメージするかと思います。一回のOB訪問ののち、興味のある分野に携わる別の社員を紹介していいただくというパターンです。注意したいポイント一人の社員にOB訪問したからといって必ず別社員を紹介してもらえるかと言うと、それは大きな間違いです。社員の側からすると、学生を別社員に紹介するというのはそれなりにハードルが高いです。例えば、自分が上司や同僚に紹介した学生の評価が低いとすると、彼らは「〇〇に紹介された学生に時間を潰された」と思い、今度はそういう学生を紹介した自分の評価を下げてしまうことに繋がるかもしれないからです。ですから社会人に別の社員を紹介していただくためには、自分がまず高い評価を得なければならないということです。また、一度紹介してもらえると芋づる式に紹介されるという話もよく言われることですが、これは採用広報解禁後の場合が多いです。先陣を切って年末から年始めにOB訪問をする場合は、OB訪問をする学生の母数も少なく、企業側も本腰を入れていません。3月以前(現在の体制では)にOB訪問をして別の社員を紹介していただけなかったからといって、大して気にする必要はないでしょう。OB訪問は選考に影響するかどうかOB訪問をせずとも内定を獲得できる学生は数多くいます。ですが、単刀直入に申し上げて、OB訪問は必ず選考に影響すると言えます。多くの大企業では、OB訪問を受けた社員は学生のプロフィールと評価を纏めたものを人事に提出していると言われています。企業側から考えると、優秀な学生でかつ自社を志望してくれる学生がいれば、早めにマークしておきたいと思うのはごく自然なことです。実際に、いくつかの企業にOB訪問をしていた日系大手の内定者は、普通の学生と選考ルートが違ったと述べていました。実際にこのような例は日系大手企業でよくあることで、下に学生が述べていた就活におけるケースを記載しておきます。三菱商事・・・一次面接が会議室(通常はブース)住友商事・・・一次面接を免除伊藤忠商事・・・OB訪問人数・印象を質問三井不動産・・・特別選考イベントに招待東京海上・・・最終前にOB訪問の有無を確認トヨタ・・・説明会なしでリクルーターがつく逆に、先程も述べたとおり、OB訪問は全くしていないという内定者が数多くいるのも事実です。大手広告代理店や、総合商社のようにOB訪問が必須と言われる業界にもOB訪問をせずに内定している学生は数多くいます。結局のところ、優秀であれば内定は獲得できるのかもしれませんが、「OB訪問をして自己分析・企業研究をしっかりしていれば…」というような悔いを残すことが絶対にないよう、志望度の高い企業には一通りOB訪問しておくことを強くお薦めします。特に、複数回のOB訪問を同一の社会人相手に繰り返すことで、志望度の高さを示すとともに、毎度のブラッシュアップで企業側に自分の成長を見せておくというのも一つの戦略として良いかもしれません。最後にいかがでしたか。今回は、就活生の第一関門であるOB訪問にまつわる話について述べさせて頂きました。特に、インターンシップなどには中々参加できない層の学生にとっては、OB訪問が命です。社会人との接点であるOB訪問においては、学生の独りよがりにならずに、上手くコミュニケーションを取って信頼関係を築けていけるかどうかがカギになってきそうです。photobyVilmosVincze 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「裁量が大きい」「風通しのいい」会社とは何か?就活界の5つのマジックワードを徹底解説 「裁量が大きい」「風通しのいい」会社とは何か?就活界の5つのマジックワードを徹底解説 本記事では、誰でも言えるマジックワードを意味もなくただただ並べる量産型就活生になることを避けるために、代表的な5つの言葉に注目してその意味を探っていきたいと思います。◆本記事で扱うマジックワード・「ホワイト企業」・「裁量が大きい」・「風通しのいい会社」・「部署による」・「トータルソリューション」そもそも、「マジックワード」とは何か「就活で一番大切なのは自己分析だよ」「弊社は大変風通しのよい会社です!」「最近はホワイト企業を志望する若者が...」就職活動をしていれば一度は耳にすることも多い上記のような言葉。それを聞いたとき、あなたはどのように感じ、どのように考えるでしょうか。何となく、「そういうものだ」で終わらせていないでしょうか。例えば、一番上の言葉。そもそも「就活」とは何か。「自己分析」はなぜ大切なのか。▼「就職活動」「自己分析」という言葉の意味についてはこちら▼参考:参考:就活界では、このように誰もが言うような言葉の数々が"マジックワード"として蔓延っています。人をあたかも魔法のように思うように動かすことができるキーワード。主に意味が曖昧で、使う側の思想によって便利に扱うことが出来る言葉や幅広い意味を持つ呼称(特に蔑称)を指して呼ばれている。参考:マジックワードとは-はてなキーワードマジックワード(magicword)とは、直訳すると文字通り「魔法の言葉」です。魔法といってもいわゆる呪文・おまじないのような話ではありません。ここではマジックワードを、「本来その言葉が持つ意味が形骸化され、汎用性が高く逆に意味がありそう(だがよくわからない)に捉えられる、魔法のように用いられる悪い意味で利便性が高い言葉」と定義付けることにします。マジックワードは、「とりあえずその言葉を使っておけばいいだろう」ぐらいに認識され、思考停止状態で用いられることが多い点に問題があります。この性質から、例えば後輩から「就活って何をやればいいですか?」と尋ねられたときに、「とりあえず自己分析だよ」と意味もわからず返すようなやり取りがしばしば発生しているのだと思われます。特に就職活動では面接で「深堀り」と呼ばれる言葉の背景や意味を探る問いかけがなされるため、マジックワードを並べることには問題が多いものだと考えています。以下では、その代表的なものを紹介します。就活界のマジックワード1:「ホワイト企業」近年、有名企業の若手社員の過労死問題・政府の働き方改革の推進・業務効率化のノウハウの普及などにより、社員を酷使するブラック企業への反発やワークライフバランスへの関心が高まってきているように感じます。これより、ブラック企業=悪・ホワイト企業=善といったような風潮が生み出され、就活生の間でも"ホワイトさ"を軸として企業選びをしている層が一定数存在しています。もちろん、従業員を酷使して過労死に追いやったり、法令に違反するような労務管理をしている企業は、当然絶対的な悪として判断していいものでしょう。では、逆に「ホワイト企業」とはどういった企業を指すのでしょうか?・給料が高い・適正な人事評価・休みが多い・人間関係が良好・定時で帰れる・やりがいのある仕事ができるこれらの例に共感できる人もいれば、「それは違うのでは」と否定的な項目がある人もいるでしょう。一般に、ホワイト企業はワークライフバランスと紐づいて語られがちであり、残業の少なさや有休消化率といった労働時間を基準としたイメージを持つ方が多いと思っています。全ての社員にとってホワイトな企業なんて無いんだってよく分かったよ。無能は無能らしい就職をしろってね。参考:ホワイト企業だったら良いですね。一方、定時帰りや有休消化率100%といった誰もがうらやむような労働環境の企業であっても、この文が示唆するように、それが「自分にとって」ホワイトであると結論づけられるかは定かではありません。この動画の主人公のように、基幹職から外れたことを「会社の中心から外された」と悲観的に考える方もいるでしょうし、温い職場環境をホワイトなものとして好意的に考える方もいるでしょう。また、仕事内容云々よりも定時退社ばかりに目を向けているようでは、実際に働いた際のやりがいの欠如や、貴重な若手のうちにスキルが身につきにくくなり、結果的に一企業に依存する。すなわち、「つまらない」仕事をする「使えない人材」として、長期的に見ればワークライフバランスの取れた生活から外れてしまうという推測もできるでしょう。企業側もアピールを進める"ホワイト感"今や採用HPや就職四季報に限らず、転職サイトや掲示板等でも(真偽は別として)労働環境に関する情報はあらゆるところで入手することができます。こうした学生の関心の高さも相まって、最近では合同説明会や個別説明会でも自社の平均残業時間といったデータを開示し、自社の"ホワイトさ"をアピールしてくる企業は増えている印象があります。就活界のマジックワード2:「裁量が大きい」「若いうちから大きな仕事を任されたい」という考え方を持つ就活生は毎年一定数いると思っています。恐らく多くの方が「裁量が大きい」という言葉をこのような意味で用いているのではないでしょうか。特にベンチャー気質のある企業においてこの言葉はマジックワードとして用いられることが多い印象を受けます。では、「大きな」仕事とはこの場合何を指すのでしょうか。スケールの大きい仕事。ではスケールとは何で図られるのか...「裁量が大きい」という言葉は、先ほどの「ホワイト企業」と似たように、大きいことが良しとされ、小さいと「自分の意見や考えが反映されにくく責任のある仕事を任せてもらえない」といったように語られることが多い気がしています。参考:この記事でも述べたように、例えば「裁量」を「扱う金額の大きさ」と定義すれば、ベンチャーよりも大手企業の方が満たされる可能性が高いわけであり、裁量権が大きい=ベンチャーという短絡的な考え方は改めるべきでしょう。「若いうちから大きな仕事を任されたい」は何もベンチャー志望者だけが考える言葉ではない一方、日系大手企業の場合でも、「若いうちから任せられる」という言葉を採用メッセージとしてアピールしている企業も一定数存在しています。自分は学生時代の経験にやりがいがあり、その経験に繋がる軸を用意していました。「1点目は若手から大きな仕事を任される企業です。2点目は様々な人々と関われる企業です。3点目はグローバルな環境の企業です。」というように答えたところ、1点目の軸に対して面接官からは「若手って何年目までのこと?」「大きな仕事って具体的には何?」「若手の時に1人で中くらいの仕事をするのか、中堅の時に大きな仕事をするのかでも前者が良いの?」「大きな仕事が任されないと嫌なの?」というような質問が返ってきました。参考:例えば某日系大手素材メーカーであるA社ですが、上記のようにESで短い文言で記載した企業選びの軸について面接で厳しく深堀りがなされるようです。このように、裁量権や若いうちから任せられるという言葉について考えるべきなのは何もベンチャー志望者だけではありません。中長期的なキャリアパスを描くことが多い日系企業の場合は、「若いうちから」というだけで無く、その後中堅・ベテラン社員になったときについても自分がどういった働き方をしたいと考えているのかを整理しておくべきでしょう。就活界のマジックワード3:「風通しのいい会社」「風通しのいい会社」という言葉も、先ほどの「裁量が大きい」と並んでしばしば"いい会社"の特徴として用いられることがあります。こちらも人によって定義が分かれますが、一般には「自分の意見を発信できること」が条件となることが多い気がしています。特に新卒就活の場では「若手の意見も積極的に採用してもらえる」という意味を含むことも出て来るでしょう。また、もう少し広い意味で「人間環境が良好な職場」というイメージを持たれるケースもそれなりに多いと思っています。「風通し」については、二項対立では無く「いい」という表現であることに問題があるのかもこれまで見た2つのマジックワードは、ホワイト⇔ブラック・大きい⇔小さいといったような二項対立の言葉を含む一方、「風通し」については「いい」⇔「悪い」という優劣的な文言である点は一部問題なような気もしています。先ほどのA社の深堀りのように、企業選びの軸を選定する際は二項対立で判断することが有効です。参考:「風通し」という何だか爽やかな文言が「いい」のであれば「いい方がいいに決まっている」わけであり、漠然とした好意的なイメージからマジックワードと化してしまっているのかもしれません。しかし、意見を述べるにも評価するにもやり取りが発生する中で、「とりあえず意見を言えば聞いてあげる」といったような姿勢はコスト的に無駄になることもあるでしょう。「風通しがいい」環境においては、「全く理にかなっていない意見」「背景を全く鑑みていない意見」といったようなものもとりあえず発言しようという考えが生じ、建設的な議論を阻害する一因となる可能性も考えられます。(もちろん、「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」ばかりが重視される環境はそれもまた問題でしょうが)「風通し」の場合でも、結局のところ「いい方がいいか」についてはその定義付けや職場での活用のされ方に依存するものであり、絶対的な価値としてマジックワードとして用いることは(企業側も学生側も)賢明な判断とは言えないでしょう。就活界のマジックワード4:「部署による」さて、ここまでは企業側が出す採用メッセージや学生の軸に関するマジックワードが並びましたが、4つ目はやや登場のシチュエーションが異なる言葉になります。ここまでのマジックワードを採用担当、もしくはOB訪問や座談会で現場社員に尋ねたとき、「ここの会社って残業多いって本当ですか?」(ホワイト企業)「若手でも任せてもらえる社風ですか?」(裁量が大きい)「職場の皆さんで飲みに行かれたりしますか?」(風通しのいい会社)(これらの質問が適切かどうかは別として、)恐らく多くの社員は答えるでしょう。「うーん、まあ部署によるかな」。YesともNoとも答えない、学生側からしたら歯切れが悪いとも捉えられる回答。とりあえずこう言っておけばいいだろうぐらいな回答とも感じうるため、面談界のマジックワードとして機能している言葉という考えも生じると思います。「部署による」のはだいたいが"正解"では、なぜ多くの社員の方は学生からの質問を「部署による」で済ませるのか。答えは簡単で、会社全体の傾向を問う質問は、本当に部署によって回答が異なることが多いためです。新卒採用において、総合職の一括ポテンシャル採用をすることが多い日系大手企業。メガバンクのコース採用や伊藤忠商事の先決め採用といった例もあるものの、基本的には入社するまで自分が実際にどのような業務に携わるのかはわからないものです。そこでは、部署・勤務地・職種などが異なれば同じ一企業内でも組織風土が異なることから、「部署による」という回答はだいたいの企業で当てはまるある種妥当なものと言えるでしょう。大方の人が「他の銀行で働いたことがないからわからない」といって答えが終了するので、実は無意味な質問の一つとのことです。みずほFG人事部採用総括次長のインタビューでもそのように語られています。ちなみにですが、質問の仕方を変えて、「なぜ今の銀行を選んだのか」だと、ある程度的を得た答えが返ってくることが多かったです。参考:結局、人事であろうとOB訪問先の社員であろうとあなたの先に入社した先輩に過ぎず、自分が実業務で携わったところ以外のことを聞かれても正直わからないものです。まして上記のように同業と言えども社外のこととなれば尚更でしょう。社員は企業のことを何でも知っているわけではないことを認識することが、質問力向上のための第一歩として重要であり、何よりそれがお互いのためでもあることは認識しておいてもらえたらなと思います。企業理念にも敏感で、企業理念の素晴らしさを面接で語ってしまったりします。実際に中で働いている人が自社の企業理念を知っているかというと必ずしも知っているとは言えなかったりするんですが、ガンジー就活生は企業理念を全ての社員が胸に刻んで働いていると考えてしまいがちです。参考:OB訪問をする際は「部署による」ことを前提とした準備をすべき「」でも述べた通り、OB訪問を学生・OB双方にとって有意義なものにするためには「仮説を持つ」ことが重要です。本記事ではこの仮説=志望動機・学生時代頑張ったこと・自己PRについて自分なりの答えを用意することであると書かれています。そしてその仮説をもとにOBへ質問をする際も、相手の所属部署といった経歴に沿って検証がしやすい問い方をすることが必要になるでしょう。「相手の立場に立つ」というのは就活界でも学生側がしばしば語る文言ですが、実際にそれが行動として出来る人は案外少ないものです。(ある種これもマジックワードかもしれません)相手意識を保つことはビジネスパーソンとして求められる基本的な素養でもあり、明らかに「部署による」で終わってしまうような質問を避けることはその一要素になり得ると考えます。就活界のマジックワード5:「トータルソリューション」就職活動への意識が高い学生が目指す典型的な業界として挙げられる外資系コンサル・外資系投資銀行。特に前者の中でもBCG・マッキンゼーといった戦略コンサルと呼ばれる立ち位置の企業は採用数も非常に少なく、最上位の学生のみが内定を勝ち取る企業群とされています。しかし、この"戦略コンサル"という言葉について、近年変化が生じてきているようです。参考:「パワーポイントで奇麗にまとめた提案資料をクライアントに発表する」といったいわゆるコンサルタントとして思い描かれがちなイメージとは離れ、近年はその実行部分まで携わるビジネスモデルに戦略コンサルと呼ばれる企業も移行しつつあることが指摘されています。これまでの戦略コンサルのビジネスでは、"机上の空論"として世の中のニーズからはずれていっているのかもしれません。そんな戦略策定部分にしか携わらない従来型の戦略コンサルと比較して、実行まで一気通貫で携わることを「トータルソリューション」と呼ぶことがあります。システム開発において、自社は要件定義・外部設計といった上流工程のみ行い、コーディングを始めとした製造部分の多くは協力会社にほぼ丸投げする。こういったありがちな産業構造とは逆の考え方にあたるのがこのトータルソリューションになります。「何でもやります」こそが最高だという風潮このように、案件に一部分しか携わらないよりもフルラインで携わることこそが善であり、「自社で何でもやる」という姿勢が正しいような風潮は少なからずあると思っています。例えば、高い技術力からクライアントへ多様なソリューションを提供できるといったことは強みとして示すには妥当性があるでしょう。IBMは世界最大手のIT企業として約170カ国にわたるグローバルネットワークを有し、さらに長年蓄積されてきたノウハウや製品を保持しています。そのため、顧客の課題を解決する「武器」を多く揃えており、コンサルタントからすればクライアントに提案できる解決策の幅が広くとてもありがたいことだと思います。参考:しかし、近年の業界の流れを見ていると、必ずしも携わるフェーズが多ければ多いほどよいというわけにはいかなくなってきているように感じます。システム開発においては今や利便性の高いパッケージが数多く存在しており、ハードの手配云々から始めるオーダーメイドの提案が効率性に欠けることは想像に難くないでしょう。世界的な技術力の進歩などにより業界として競合性が増す昨今。顧客が求めるものも当然変化しており、オーダーメイドかつ高品質なサービスというよりは、コスト削減や一部分に限定したピンポイントな機能へのニーズが高まってきている傾向にあるとも指摘されています。三菱商事がひとつに連なったバリューチェーン構築(例:「飼料の生産→鶏肉の生産→鶏肉の加工→ケンタッキーなど小売流通」の流れをすべて支配する)に長けるのに対して、伊藤忠商事は既存事業とのシナジーが見込める優良ビジネスをピンポイントで「点的支配」している(例:傘下にファミリーマートを持っている→レジ決済を強化するために決済サービス会社を買収する)、という指摘です。参考:また、この話は何もSIerに限ったものではなく、上記のように例えば総合商社の間でも業界内で「どこまで携わるか」によって立ち位置が異なることなるという指摘もあります(「何でも(全部)やります」の三菱商事・「これだけやります」の伊藤忠商事といったところでしょうか)。これを見ても、「一連の流れに携わる三菱商事は善だが、一点に集中して携わる伊藤忠商事は悪」という考え方にはまずならないでしょう。富士通やNECに代表されるような、自社でハードの製造とシステム開発も行い合わせて販売するようなビジネススタイルは、今後も落ち込んでいくという指摘が広くなされています。クライアント側も情報化社会の波やシステム回りの発注選択肢が広がっていてきていることを受け、「とりあえず富士通に全部任せておけば安心」といったような考えには至らなくなってきているのが市場の流れとして指摘できるでしょう。コスト削減や納入までのスピード感が高まっていけば、アジャイルやプロトタイプモデルといったクライアントからの要望変更に対応しやすい開発手法の割合も高まる可能性も考えられます。SIer志望者の方は、以下のようにトータルソリューションを志望理由の一つとして挙げる際にも、「なぜ自分がトータルソリューションがいいと考えたのか」について、先述したデメリットも考慮しつつ考えておくべきでしょう。私がビジネスコンサルタント職を志望する理由は二点あります。一点は戦略から実行までというトータルソリューションを提供できるという点です。私は戦略だけに留まらず、クライアントの課題解決に最後まで立ち会うことこそコンサルタントの在るべき姿と考えます。もう一点は幅広い業界と関わることで課題に対して多角的な視点を得られるという点です。クライアントに最適解を提供するためには幅広い知識が必要であると考えます。参考:アクセンチュア【内定】エントリーシート(ビジネスコンサルタント)今回のようなコンサルタントやSIerに限らず、世の中の動きやクライアントからのニーズが変われば求められるビジネスモデルも当然変化していくことになります。「『良し』と言われているから良し」ではなく、自身の価値観や市場動向などと照らし合わせながら、「良しの理由」について気づきを得るきっかけとしていただければと思います。おまけ:就職後もつきまとうマジックワード上司:「自分で考えて」顧客:「認識の相違が...」今回は就職活動にまつわるマジックワードについて紹介していきましたが、実際にはビジネスの世界でもマジックワードが蔓延っている組織というものは存在しています。「自分で考えて」と言っておけば、とりあえず自分ボールの状況を脱せるほか、相手方の当事者意識の欠如を指摘するといった教育的側面も「ありそう」(だが実際は自分がわかっていないだけ)というような話です。また、最近ではよくメディア上でもネタ話として取り上げられていますが、本来日本語でも表現できる言葉を横文字で表現することで、あたかも凄そう/賢そうな雰囲気を出すこともあります。コンセンサス・ビジョン・プライオリティ・アグリー・イニシアティブ辺りがその典型でしょうか。最後に「」でも述べたように、エントリーシートの書き方を習得するには、まずは先輩たちの中で評価されたものを真似るような形で記述してみることが有効と考えています。とは言え、なぜそれが評価されているのかを理解しないまま思考停止で何となく写すだけでは意味がありません。これはマジックワードを用いる際にも近しいことが言えると思っています。本来"魔法の言葉"だったものが、気づいたときには空虚な言葉になっていた。そんなことがないように、「正しい」とされる事柄に疑いを持つように。魔法ではない、地に足のついた言葉で自分の魅力を伝えられる就活生になる第一歩として、本記事をご活用いただければと思います。なお、就職活動に不安があるという方には就職エージェントneoがおすすめです。アドバイザーからは、自分の就活の軸に合った企業選びを手伝ってもらえるだけでなく、その企業のエントリーシート・面接といった選考対策のサポートを受けることができます。少しでも興味のあるという方は、下記の画像をクリックしてサービスを利用してみてください。 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トヨタ自動車社長のスピーチ「自分だけのドーナツを見つけよう!」から読み取るキャリア観のアドバイス トヨタ自動車社長のスピーチ「自分だけのドーナツを見つけよう!」から読み取るキャリア観のアドバイス "自分だけのドーナツを見つけよう"就活生の皆さんは、この言葉を耳にしたことはありますか。この言葉は、2019年5月18日にトヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男さんが、母校であるアメリカのバブソン大学の卒業式で行ったスピーチの中のワンフレーズです。もちろん、このフレーズだけでは何を伝えたいのかが分からないと思いますが、豊田社長は約14分間に渡るスピーチの中にこのフレーズを盛り込み、卒業生から拍手喝采を受けました。このスピーチは、今後大学を卒業して社会に出ていく日本の就活生にも当てはまるメッセージだと考えられます。今回はこの豊田社長のスピーチを要約しながら紹介し、”卒業生に何を伝えたかったのか・日本の就活生に通ずるものは何か”という内容を探っていきたいと思います。【本記事の構成】●つまらない人間になるのではなく、楽しみましょう。●自分だけのドーナツを見つけて下さい。●心からやりたいことを、今こそ見つけ出そう。●CEOからCEOへのアドバイスをさせてください。●たくさんのドーナツで満たされることを願っています。●最後につまらない人間になるのではなく、楽しみましょう。私から伝えたいことは「つまらない人間になるのではなく、楽しみましょう」ということです。幸せな人生には何が必要か。喜びをもたらすのは何なのか。自分自身で見つけ出すことが大切です。【動画時間】3:58~このメッセージの背景には、「豊田社長の大学時代の経験」があります。豊田社長の大学生時代は勉強漬けの毎日で、寮・図書館・教室を行ったり来たりの生活だったそうです。そして、そのつまらない学生生活の中で見出した喜びが"ドーナツ"であり、ドーナツがあったからこそ大学生活を乗り切ることができたと話しています。(ドーナツの詳細な説明に関しては後述の内容をご覧ください。)つまり、「自分自身(豊田社長)の中でのドーナツのようなものを皆さんにも見つけ出して欲しい」という思いが根底にあったと推測できます。そして、このメッセージの中で豊田社長が最も伝えたかったメッセージは以下の2点になります。①これからの人生を目一杯楽しもう②何事も自分自身で見つけ出していこうこれからの人生を目一杯楽しもう誰しも人生は一度きりであり、つまらない人生を送るよりは楽しんで生活した方が断然充実した人生を送ることができます。つまらない人生を送るよりは楽しんで生活した方が断然良い人生であり、その良い人生を送るために"幸せな人生に必要なもの・喜びをもたらすもの"を早めに見つけることが重要だよ、というメッセージが込められています。何事も自分自身で見つけ出していこうこのメッセージは、"最終的な判断は自分自身で行うことが重要"という意味が込められています。自分にとって重要なモノ・コトを、他人から見つけ出してもらうのと自分自身で見つけ出すとでは"納得感"が大きく異なります。また、他人から見つけ出してもらったものは「本質」ではない可能性が高いですし、今後その判断がブレてしまう可能性も低くありません。他人にアドバイスをもらったり、他人の意見を参考にすることはもちろん良いですが、自分の人生は自分だけのものですし、何事も自分自身で見つけ出し、判断していくことが大切と言えるでしょう。自分だけのドーナツを見つけて下さい。皆さんも、自分だけのドーナツを見つけて下さい。夢中になれるものを見つけたら、手離さないで下さい。▼むしろ、前だけを見て、すべてがうまく行くと考えるべきです。【動画時間】4:23~このメッセージも「豊田社長の大学時代の経験」が背景にあります。豊田社長の大学生時代の喜びであった"ドーナツ"、そのようなものを皆さん自身でも見つけてくださいという思いが込められています。そして、このメッセージの中で豊田社長が最も伝えたかったメッセージは以下の2点になります。①夢中になれるもの・喜びをもたらすものを見つけたら、それを持ち続ける②過去を振り返らず、前だけを見てポジティブに過ごそう夢中になれるもの・喜びをもたらすものを見つけたら、それを持ち続ける長い人生の中では、「辛いこと・悩むこと・挫折」といったものが多く待ち受けています。そして今後、「乗り越えなければならない課題・挫折」と向き合うことになった際、"夢中になれるもの"こそがそれを乗り越えるための「助け・原動力」となるということです。そういった課題・挫折は何歳になっても待ち受けているもの、それゆえにそれを乗り越える原動力となるものを持ち続けることも大切になります。過去を振り返らず、前だけを見てポジティブに過ごそうこれからの人生、多くの方は「成功・輝かしい人生」を目指して過ごしていくと思いますが、そういった成功する方は必ず「一筋縄ではいかないこと」に直面します。そのように一度立ち止まってしまった時、過去を振り返ってくよくよするのではなく、そういった時ほど前だけを見て行動しようというメッセージが込められています。また、前だけを見て行動する際には、必ず"ポジティブに行動する"ことを心掛ける必要があります。なぜなら、それこそが「より良い人生を送る」ための一つの手段であるからです。夢中になれるものを見つけてそれを持ち続け、常に前だけを見てポジティブに過ごすことこそが、「成功を収める」ための一歩となるでしょう。心からやりたいことを、今こそ見つけ出そう。皆さんが、心からやりたいことは何か、今こそ、それを見つけ出す時です。▼若さの恩恵である時間と自由を使い、皆さんの幸せを見つけてください。「予想外」のことがあっても恐れないでください。【動画時間】5:49~このメッセージは、遠い先の未来の皆さんに向けてではなく、今現在の皆さんに向けたメッセージになります。そして、このメッセージの中で豊田社長が最も伝えたかったメッセージは以下の2点になります。①今、この若い時期に「心からやりたいこと」を見つけ出しておこう②時間や自由が比較的ある若い時期に、「自分自身の幸せ」を見つけ出しておこう今、この若い時期に「心からやりたいこと」を見つけ出しておこう20代前半などの若い時期は比較的自由であり、この時期にしかできないことも多々あります。そして、この若い時期に見つけ出したものが「その後のキャリア・人生」にも大きく影響を及ぼすため、若い時期だからこそ「心からやりたいこと」を見つけ出しておくべきというメッセージが込められています。実際に、年齢を重ねてから「心からやりたいこと」を見つけようと思っても時間・自由が制限され、やりたくてもできないことも多々あります。しかし、若い時期に見つけ出しておけば、今後長年に渡りそれに取り組むことができます。この若い時期に見つけ出したものが、「その後のキャリア・人生」にも大きく影響を及ぼすため、"今しか見つけ出せないものを見つけ出しましょう"というメッセージが込められています。時間や自由が比較的ある若い時期に、「自分自身の幸せ」を見つけ出しておこうこのメッセージは、比較的自由にできる若い時期だからこそ、"自分自身の幸せの定義"を見つけ出しておこうという思いが込められています。①とメッセージが若干被る部分もありますが、若い時期に見つけ出した定義は、今後年齢を重ねても大きく変わることはないし、今後の人生をきっと豊かにしてくれるでしょう。つまり、「何事も若い時期に見つけ出しておくことが必要だ」というメッセージを伝えたかったのだと推測されます。CEOからCEOへのアドバイスをさせてください。CEOからCEOへのアドバイスをさせてください。●しくじらないでください●当たり前だと思わないでください●正しいことをやりましょう●正しいことをすれば、お金はついてきます●歳を取っていても、新しいことに挑戦してください▼●つまり、私がお伝えしたいことは、皆さんは「常に何か新しいことを学ばなければいけない」ということです▼●あなたに影響を与える人を見つけてください●誰かに刺激を与える人になってください●立派なグローバル市民になってください●環境のこと、この地球のこと、世界で何が起こっているのか、いつも気にかけてください●恰好つけるのではなく、温かい人になってください●自分自身のブレない軸を決めてください▼●皆さん自身を導く光を見つけてください●その光に導かれて、様々なことを判断して下さい【動画時間】10:10~これらのメッセージは、約14分間に渡るスピーチの終わりで豊田社長が伝えたものです。現在のトヨタ自動車CEOである豊田章男氏から、未来のCEOになるバブソン大学の卒業生に向けたメッセージとなっています。この部分では、「一言の簡潔なメッセージ」を立て続けに発していますが、要約すると豊田社長が最も伝えたかったメッセージは以下の4点になります。①現在の状況・環境を当たり前だと思わずに行動しよう②目先のモノ・コトに捉われず、常に正しい行動を心掛けよう③自分自身が尊敬できる人・モノを見つけ、自分自身も誰かに何かを与える人になろう④自分自身の「軸(価値観・譲れないもの)」を明確にしよう現在の状況・環境を当たり前だと思わずに行動しよう昔に比べ、現在はあらゆるものの移り変わりが早く、現在の当たり前が「何日後・何年後」の当たり前であるかは全く分かりません。だからこそ周囲の変化に合わせ、"考え・行動"を変えていく必要があります。就活生の身近なところでいくと、現在と10年前の「人気就職先企業ランキング」が大きく変化していたり、平成元年と平成30年の「企業の世界時価総額ランキング」が全く異なるものになっていたりと、ここ最近の変化のスピードは大幅に早まっています。【参考記事】ダイヤモンド・オンライン:昭和という「レガシー」を引きずった平成30年間の経済停滞を振り返る現在の状況に固定概念を持ちすぎず、柔軟に「考え・行動」を変化させていくことが重要でしょう。目先のモノ・コトに捉われず、常に正しい行動を心掛けようこのメッセージは、「目先の利益や甘い誘惑に踊らされず、"自分自身が正しいと思う・周りから見て正しいと感じる行動"を心がけよう」という意味のメッセージになります。社会人になると会社のために「利益」を追うことが増え、どうしても目先のモノ・コトに捉われてしまう可能性が高くなります。しかし、そういった行動は短期的視点では良い行動かもしれませんが、長期的視点で考えると疑問が浮かんできます。例えば、自社で製品を製造・販売している・サービスを提供している企業では、「とにかく製品を売る・サービスの利用人数を増やす」というように"利益"のみを追求してしまうことが多々あります。しかし、本来の目的は「顧客に価値提供する・喜んでもらう」ことです。利益をとにかく増やすことは短期的視点で見れば適した行動かもしれませんが、長期的視点で見ると後者を重視した方が"信頼関係の構築・長期的な関わり"に繋がることは間違いないでしょう。正しい行動を継続することこそが、結局は将来的に自分にメリットとして返ってくるため、「常に正しい行動を心掛けよう」というメッセージになります。自分自身が尊敬できる人・モノを見つけ、自分自身も誰かに何かを与える人になろうまず、「自分自身が尊敬できる人・モノを見つけ」のメッセージに関しては、"ロールモデル・目標"を明確にしようという思いが込められています。「ロールモデル・目標」が明確になることで、自分自身が取り組むべき"行動"も明確化されますし、それが結果的に"自分自身の行動の基準を上げる"ことにも繋がります。「誰かに何かを与える人になろう」のメッセージに関しては、「尊敬できる人・モノを見つけた」先にある行動になります。「尊敬できる人・モノを見つける→それを意識して行動する→いずれ誰かに何かを与える人になれる」という風に変化し、自分自身を"与えられる側から与える側"に変化させることができるでしょう。自分自身の「軸(価値観・譲れないもの)」を明確にしよう自分自身の軸、若い時期にこれを明確にしておくことで、その後の人生の行動・考え方における"核"となるものを創ることができます。そして、この軸を明確にして固めておくことで、他人・周囲の状況にブレることなく、"自分自身の理想とする行動・考え方"をすることに繋がります。時代や周囲の変化に合わせることももちろん必要ですが、「軸・ゆずれないもの」はしっかりと持っておきましょう。たくさんのドーナツで満たされることを願っています。時計の針は最初に戻り、皆さんの可能性は無限大です。皆さんの時代が、美しいハーモニーと、成功と、そして、たくさんのドーナツで満たされることを願っています。【動画時間】13:35~このメッセージはスピーチ全体の締めに用いた言葉、つまりこれまでのスピーチ全体を要約しているメッセージだと考えられます。この部分ではいくつかの比喩表現を用いていますが、「時計の針が最初に戻る=0時=ここからが新たなスタートライン」、「美しいハーモニー=令和=新しい時代の始まり」、「ドーナツ=楽しみ・喜び・夢中になれるもの」と表現することができます。では、「なぜ豊田社長は最後にこのメッセージを伝えたのか」、最後に伝えたかったメッセージとしては以下の通りです。●まだ20代前半の皆さんの可能性・未来は無限に広がっているのだから、積極的に悔いのないように人生を過ごしていこうまだ20代前半の皆さんの可能性・未来は無限に広がっているのだから、積極的に悔いのないように人生を過ごしていこうこのメッセージの意味・意図は文字の通りです。20代前半などの若い時期はまだまだ可能性が無限大に広がっていますが、年齢を重ねるにつれてそれは次第に有限になってきます。つまり、可能性が無限大である状況は今しかないと言えます。また、これから社会人として働く方にとっては、今こそが"スタートライン"です。だからこそ「積極的にあらゆる物事に取り組み、悔いのない選択をしてくことが重要である」というメッセージがこの部分には込められています。最後にトヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男さんがバブソン大学の卒業式で行ったスピーチ、これを観て就活生の皆さんはどのように感じたでしょうか。また、"自分だけのドーナツ"を見つけるためのヒントを得ることはできたでしょうか。今回は約14分間に渡るスピーチの一部を抜粋して紹介しましたが、得るものの非常に多いスピーチだったのではないかと思います。このスピーチを観ての「感想・受け取り方・感じ取り方」は人それぞれではありますが、"今後のキャリア観・今からやるべきこと"など、何か一つでも得ることができれば幸いです。ぜひ皆さんも"自分だけのドーナツ"を見つけ、社会で羽ばたいていただけたらと思います。関連記事※アイキャッチ画像は「バブソン大学HP」より引用しています。 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