【業界研究】旅行業界とは?業界の動向・今後の取り組みを徹底解説
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最終更新日:2023年09月12日
・旅行業に従事する「旅行会社」と旅行業者代理業を行う「旅行代理店」の2つに分類される。
・旅行業は「第1種」「第2種」「第3種」の3つに分類することが出来る。
・旅行業界の収益源は宿泊施設・交通機関・他社からの仲介・販売手数料
グローバル化の進展に伴い訪日する外国人の数が日々増加していることや、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定に伴って今後の成長が期待される旅行業界。
大学生にとっても旅行というジャンルは親しみやすい領域であり、旅行業界に注目している就活生も多いのではないのでしょうか。
そこで本記事では、旅行業界の概要や、ビジネスモデルについて図を用いてわかりやすく解説していきます。また日本経済新聞なども用いながら、最新のトピックや業界動向についても触れていきますので、旅行業界を志望する方はぜひ参考にしてみて下さい。
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- 本記事の構成
- 旅行業界の概要
- 旅行業界の仕組み
- 旅行業界の現状のトピック
- 最後に
旅行業界の概要
旅行会社は旅行者のため宿泊施設や交通機関の手配を行ったり、ツアーとしてパッケージ旅行プランの企画や販売などといった業務を行います。
法律の定めによると、旅行業界は「旅行業」と「旅行業者代理業」の2つに分けることが出来、さらに「旅行業」は「第1種」「第2種」「第3種」の3つに分類することが出来ます。これら3つには以下のような違いがあります。
第1種
海外・国内の旅行を企画できる
第2種
国内旅行のみの企画ができる
第3種
一定の条件下で国内旅行を企画できる
また、「旅行業者代理業」は旅行業者と代理契約を結び、ツアーなどの旅行商品を代理販売するいわばBtoBの企業になります。そんな旅行業界ですが、主要企業と簡単な特徴は以下のようになっています。
JTBグループ
→旅行取扱高1位、非上場
KNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト、クラブツーリズム)
→国内旅行が7割、2020東京五輪・旅行業務の正式パートナー
H.I.S
→格安海外旅行に強み、団体旅行・訪日観光にも注力、ハウステンボスやホテル事業など多角化路線
日本旅行
→国内旅行が旅行取扱高の6割強、親会社JR西日本との連携で国内鉄道旅行に強み
災害や燃料高、景気などの影響を非常に受けやすい旅行業界ですが、平性24年以降から非常に好調と言うことが出来るでしょう。その背景として、安倍内閣の成長戦略に「観光立国」が挙げられ、「2020年までに訪日外国人を4,000万人に引き上げる」という目標があるということが考えられます。これに円安という要因が加わり、経済発展著しい東南アジアの中間層・富裕層を中心に訪日外国人旅行客(インバウンド)が急増したことが、好調の原因と言えるでしょう。
平性29年時点での日本での旅行消費額は26.7兆円となっており、そのうちの訪日外国人の旅行消費額は6兆円ほどを占めていることからもインバウンド需要の伸びを伺うことが出来ます。
また、日本人国内旅行消費額は21兆1,028億円で前年+0.7%となっていますが、バブル崩壊後の団体旅行需要減や人口減少、日帰り手段の発達に伴う、今後の国内旅行の需要減は避けられないと考えられており、各社ともインバウンド事業を強化した戦略を採る傾向があるといえるでしょう。
旅行業界の仕組み
ここからは、旅行業界のビジネスモデルや業務内容を明らかにするために、①収益源②商材・サービス内容③サービスの提供方法の3つの切り口で解説していきます。
①旅行業界の収益源
上記の図のように、旅行業界の収益源は以下の3つに分けて考えることが出来ます。
- 旅行者から収受する取り扱い手数料
- 運送・宿泊機関から収受する販売手数料
- 他社のパッケージツアーを販売した場合の、当該他社から収受する販売手数料
全て旅行者と宿泊施設・交通機関・他社からの仲介・販売手数料であり、この部分が旅行会社の主要な収益源となります。しかしながら、近年では従来の交通機関や宿泊施設は、LCCやAirbnbといった格安の新業態との値下げ競争が激しく、その分旅行会社が得られる手数料も減少傾向にあります。
そのため、各旅行会社では、仲介手数料以外にガイド料や添乗料、または通訳料などいった人的サービス提供料やお土産施設や観光地写真業者からの送客手数料などといった付加価値をつけて販売することで、収益源を増やしています。
②商材・サービス内容
勿論、旅行会社のサービスは「旅行プランのパッケージ」や「旅行者に対して宿泊施設などの仲介」となります。
③サービスの提供方法
上記のようなサービスを提供するために一般的に旅行業界では「カウンター」「企画(ツアープランナー)」「仕入れ」「コンダクタ―(添乗員)」「法人営業」「団体営業」「ITエンジニア」といった業務が存在します。
旅行業界の主要なビジネスの1つである「旅行プランの企画」を行う業務が「ツアープランナー」であり、その企画に基づいて宿泊施設や交通機関を手配する業務が「仕入れ」となります。
また、多くの方が学生の頃の修学旅行で馴染み深いと思いますが、「コンダクター(添乗員)」もツアーに同行して旅行者の管理や引率するという業務を行っており、旅行会社の社員となります。
また、航空券やツアーの販売を自社店舗で直接行う「カウンター」、団体に直接営業してツアーを売り込む「団体営業」といったリテール業務も行っています。さらに、企業の海外出張などの手配も旅行会社の「法人営業」という業務が担っています。
加えて、インターネットの普及に伴い現在では既に旅行プランのインターネット販売が主流となっています。
Yahoo!トラベルや楽天トラベルといったインターネット専業旅行会社の台頭を受けて、各大手旅行会社も自社の販売サイトの強化・差別化に力を入れているため、「ITエンジニア」の業務が非常に重要視されています。
旅行業界の現状のトピック
続いては旅行業界のトピックをいくつか抜粋して紹介していきます。
訪日外国人への対応
先程も触れましたが、日本は2003年から「ビジット・ジャパン事業」として観光庁などが中心となり、海外消費者に向けた宣伝活動や、旅行会社への働きかけを強化するなど、インバウンド需要の拡張に力を入れています。これに2013年からの円安や、LCCと呼ばれる格安航空会社の進出により、非常に多くの外国人が日本を観光先として選ぶようになりました。
これにより、2017年には2800万を超える外国人が訪日し、これは世界16位の観光受入人数となっています。
しかし、増え続ける訪日外国人の大半が東京、富士山、関西を巡る「ゴールデンルート」を中心に回っており、これらの観光地の受け入れ限度を超える恐れがあるため、地方へ足を運んでもらうかが課題となっています。そのためには、地方の国立公園や文化財の再整備が欠かせなく、政府はそのための資金を様々な方法で収集しようと画策しています。
旅行業界の提案するパッケージにも今後更に地方へのツアーを積極的に売り込んでいく必要がありそうです。
インターネット専業旅行会社の台頭
店舗維持費や人件費がかからずに旅行プランの販売を行えるインターネット専業旅行会社(OTA)が格安旅行の需要を受けて急成長しています。従来の旅行会社の自社専用サイトは自ら客室を仕入れ、企画した宿泊商品をネットで販売しているのに対し、インターネット専業旅行会社はホテルや旅館にサイト上の場所を貸して、独自にプランや価格を設定した宿泊商品を販売することで、それぞれの特色を出していました。しかし、現在ではその垣根も崩れ、競争がますます激しくなっています。
Yahoo!トラベル、一休.com、じゃらんnet、楽天トラベル
特にJTB、H.I.Sといった各大手旅行会社はOTAに顧客を奪われ収益を減らしており、新たな対応を迫られています。
デジタル化の流れ
このようなOTAの台頭を受け、JTBは豊富な資源を利用してデジタル技術を利用した次世代の旅行販売に2022年までに1000億を投資することを発表しています。
例えば、人工知能(AI)による旅行の提案や、仮想現実(VR)を使った旅行商品の作成などに注力していくものと見られています。また、スマートフォンの位置情報提供サービスを利用し、観光客が興味を持った施設などのビッグデータを活用・分析することで、新たな観光ルートや観光資源の発掘などにも役立てられると考えられています。
最後に
私達の生活に非常に身近な旅行業界ですが、意外と知られていない業務などもあったかと思います。単に「旅行が好き」という志望動機で終わらせずに実際の業務内容から自身の適性ややりがいを見つけて、アピールしないと選考突破は厳しいでしょう。
以上の働き方から、旅行業界では「価値観や立場の異なる人と協力して成果をあげることができる」「今までにない仕組みや企画を提案し、周囲の協力を得た上で実現することができる」といった能力が重視されると考えられますので、選考ではこれらの素養をアピールしてみて下さい。
unistyleでは旅行業界の各社の内定者の過去ESや選考レポートなどをまとめていますので、そちらも是非活用してみて下さい。