【業界研究】出版業界の2020年の市場規模と現状を徹底解説!

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最終更新日:2022年03月23日

華やかなイメージから、毎年就活生から高い人気を誇る出版業界。その倍率の高さは大手であれば100〜400倍とも言われるほどです。

一方で、近年"出版不況"が叫ばれているように斜陽産業としてのイメージも強いのではないでしょうか。

本記事では、そんな出版業界の市場規模と現状を分析していきます。

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出版業界の市場規模

それでは、全国出版協会が出している最新(2019年度分まで)の出版業界の市場規模をみていきましょう。


[引用:全国出版協会

電子出版がやや拡大傾向にありますが、紙の市場は年々縮小しています。

2019年こそ微増していますが、業界全体として縮小傾向にあります。

では、この紙の市場規模の推移についてもう少し詳しく見てみましょう。

以下は書籍と雑誌(週刊誌・月刊誌)の販売額の推移です。


[引用:全国出版協会

1996〜7年の出版全盛期以降、20年間減少傾向にあり、市場規模は半分になりつつあります。

それでは、紙の書籍や雑誌の主な販売者である書店の数の推移をみてみましょう。


[引用:日本著書促販センター

こちらも20年足らずで半数近くにまで減少しています。

この縮小のペースから考えて、市場規模の縮小と書店数の減少は今後も止まる気配はないと考えられます。

出版業界の市場規模が縮小している背景

では、なぜこのような紙媒体の縮小が進んでいるのでしょうか?

主に以下のような原因が挙げられます。

若者の活字離れ

一般的に、国内の識字率が上がるほどその国の紙媒体の利用率も上がると言われていますが、高い識字率を維持している地域や国においてはインターネットメディアなどの登場によって本や新聞などの媒体の利用率が下がることがあり、この現象が活字離れと呼ばれます。

活字離れは特にデジタル機器に慣れ親しんだ若者の間に見られ、長い文章への耐性を低下させると共にそれがさらに紙媒体への接触を減らせるという循環を生み出します。日本でも、特に大学生の間で進行している現象です。

次のグラフは大学生の読書時間についての調査を表したものです。全体としても読書時間の現象が見られますが、特にここ数年での「読書時間0分」の値の上昇が目立ちます。


[引用:全国大学生活共同組合連合会

媒体が紙からデジタルへ移行しただけでこれは人間のあるべき姿勢であるという意見や、人々の読解力低下に繋がるという意見など賛否ありますが、今後もますます紙媒体の利用が減っていくのは間違いないと言ってよいでしょう。

娯楽や情報収集手段の多様化や無料化

調べ物をする際に本を買うという手段しかなかった時代に比べ、現在はインターネットやSNSに大量の情報が無料、もしくは低価格で溢れています。

また人々の暇つぶしの手段として、NetflixやAmazonプライム、YouTubeなどのデジタルメディアはこの数年で大きく成長し、すっかり人々の生活に浸透しています。

このように急速に進む社会の高度情報化や娯楽のデジタル化により、本を購入するという選択肢はますます少なくなってきています。

団塊の世代の退職

団塊の世代とは、日本の第一次ベビーブームの時期に生まれた世代のことを指します。この世代は現在70歳前後の層にあたり、現在ではほとんどの人が退職しています。

他世代より圧倒的に人口の多いこの世代の退職は様々な分野のマーケットに影響を及ぼしますが、特に出版業界の雑誌分野が打撃を受けています。

というのも、雑誌分野の売上は比較的デジタル機器に疎いこの世代が仕事帰りに書店に立ち寄って購入する分が多くを占めていたからです。

上の項目で示した月刊誌の販売額の推移グラフを見ても、団塊の世代が定年退職を迎える2005〜6年以降の落ち込みが特に大きいことが分かります。

書籍に比べ雑誌の落ち込みが一際大きい理由の一つとして、この世代の退職が挙げられます。

フリマアプリの成長

日本において、出版物は再販売価格維持制度によって守られています。この制度はものすごく簡単に言えば、「文化や教養のメディアである本は地域や書店によって値段に差がでてはいけないという視点から、書店などの販売者は出版社が決めた価格でしか本(新品)を販売することができない。」という法律です。

書店で「◯◯本△△%OFFセール!」などのキャンペーンを見かけないのはこの法律のためです。

しかし、近年ではこの「一定の利益が保証されている」という出版社側のメリットを脅かすシステムが成長してきました。メルカリを筆頭とするフリーマーケットアプリです。

二次流通の市場であるフリマアプリで売られる本は中古本であり(たとえ新品であっても「中古」として出品すれば中古扱いになってしまう)、再販売価格維持制度は適応されません

つまり、フリマアプリは消費者にとってディスカウントされた本を買える数少ない市場ということになります。加えて古本屋へ足を運ぶよりも手間が少ないことや手軽に売る側にも回れることなどのメリットもあり、「書店で気に入った本をメルカリで買う」、「読み終わった本をラクマで売る」などの選択肢は今後も増えていきそうです。

【出版業界の仕組みについての詳しい記事】
出版業界の仕組みと今後 〜業界の将来性を徹底分析〜

出版業界の市場規模縮小に対する打ち手

しかし、このような市場規模の縮小を前にして出版社各社がただ指をくわえているはずがありません。各企業ビジネスモデルのシフトや事業の多角化など様々な工夫に励み、利益を伸ばしています。

講談社

日本の最大手総合出版社である講談社。2018年11月期の単独決算によると、純利益は前の期比64%増の28億円、売上高は同2%増の1204億円で、出版不況をものともしない好調ぶりです。

講談社は、ライツビジネスという版権を扱う事業に重きを置き、B to B事業の売上を伸ばしています。

つまり自社出版物のコンテンツを紙から「他のメディア」に変えて発信しており、具体的には、ある作品をドラマやアニメにする映像化、あるサービスのイメージキャラクターとして作品を使用する広告宣伝利用、キャラクターを使ったグッズの商品化などで利益を伸ばしています。

このライツビジネスはすでの制作済みのコンテンツの版権を売るだけなので原価がとても低く、利益率が非常に高いことが特徴です。

KADOKAWA

出版事業に加え、映像事業、ゲーム事業、Webサービス事業など、特に事業の多角化に積極的であるKADOKAWA。

その強みの一つとして、KADOKAWAが掲げるIP戦略というビジネスモデルが挙げられます。IPとはIntellectual Property(知的財産)の略で、上記の講談社のように自社コンテンツの映像化や商品化によって利益をあげたり、他企業とイベントを開催したりしています。

また、2014年にはIT企業であるドワンゴ経営統合し、Webサービス事業も手がけ始めました。一時は減収も経験しましたが、構造改革が功を成し2019年度上半期の決算では大きな黒字となっています。

東洋経済新報社

『四季報』や『業界地図』、『週刊東洋経済』の出版元として有名な東洋経済新報社。

日本最大級のPV数を誇るメディアである『東洋経済オンライン』を武器に出版不況を跳ね返しています。

「紙とデジタルでは同じ記事でも読む場面が違う」という視点から、同じ内容を取り扱った記事でも雑誌『週刊東洋経済』と『東洋経済オンライン』では少し違った編集が組み込まれおり、紙とデジタルそれぞれの強みを活かして読者を惹きつけています。

また、PV数2億を超え、2500万人以上に日頃から読まれている『東洋経済オンライン』の圧倒的なデータ量を活用し、デジタル広告においても進化を続けています。

3社まとめ

紙の本が売れない現代、一言に「出版社にはデジタル化が重要である」と言っても、その中身は様々です。

コミック・アニメに強い講談社、映像やネット事業に強いKADOKAWA、日本最大級のニュースメディアを要する東洋経済新報社、各社それぞれの強みを活かしたビジネスモデルで利益を伸ばしています。

もはや出版社の枠組みを超えた事業は当たり前になってきており、今後もこのような動きはますます盛んになっていくでしょう。

【出版社のランキングについてまとめた記事】
【最新版】出版業界売上ランキング(出版社・出版取次)

出版業界に就職するという選択



以上のように、出版業界の市場規模の縮小や変化に伴い、出版社の役割やビジネスモデルは大きく変化しています。

しかし媒体が紙からデジタルに変わっても、情報を集め一つのコンテンツとしてまとめ上げる編集という仕事はなくなりません。むしろAIに代替される可能性の低いクリエイティブな仕事といえます。この編集力はこれからの出版社でも変わらず求められ続ける能力でしょう。

加えて、本を作りさえすればよく売れていた一昔前とは違い、これからはそのコンテンツをいかに提供するかという創意工夫が重要となっています。

つまり、今後の出版社には編集力創造力に加えてビジネスの素養も必要になってきており、それらを兼ね備えるマルチプレイヤーが求められています。

見方を変えると、出版不況は「新しいビジネスに積極的に挑戦しやすい環境」とも捉えることができます。

また一方で、縮小傾向にあると言えどもまだまだ出版業界の利益の中心である紙媒体を見捨てるわけにはいきません。紙にしかない強みにこだわる姿勢も出版人にとって重要です。

例えば、自分で自由に書き込めるという利点や機器がいらない手軽さなどの紙の強みは学習や教育に向くと言われ、実際に医学などの専門書や児童書、教科書(学習参考書含む)などはまだまだ紙の文化が強いジャンルとして知られています。

このようにまだまだ可能性を残した業界であるため、「斜陽産業だから」と諦めるのではなく、興味があるのならぜひ志望してみることをオススメします。

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