「NTT、辞めました。」ー退職ブームに沸くNTTを中の人が考察してみたー

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最終更新日:2024年01月18日

「NTT、辞めました。」ー退職ブームに沸くNTTを中の人が考察してみたー

Webメディア上の記事・コンテンツは "エントリー" と言われ、中でも退職に関して述べたものを、"退職エントリー" と呼びます。

日本を代表するような大企業から新興ベンチャー企業まで、様々な企業の退職者が自身の経験を発信していますが、中でも最近ブームと言っていい程退職エントリーが量産されているのが、ズバリ "NTTグループ" になります。

元々NTT関連の退職エントリーはいくつもあったのですが、上記のエントリーがバズって以来、NTTグループの退職エントリーが世間の注目を集めています。

私自身も現在NTTグループの一角の大手企業に勤めており、こういった退職エントリーブームを中の人視点からしていろいろと思うことがあります(筆者は退職しているわけではなく現在も中の人です)。

本記事では、そんなNTTの退職エントリーを紹介しながら、「NTT退職エントリーブームが示唆すること」について考察していきます。

NTTに限らず、「安定した日系大企業」に共通する大手で働くメリット/デメリットが浮き彫りになりました。

NTTに興味がある人もない人も、ぜひご覧ください。

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まず、 "NTT" とは何か

NTTとは?

 "NTT" という言葉自体をご存知ない方はいないと思います。

「電話線を引いている会社?」
「ドコモのこと?」
「フレッツ光の会社?」

世間一般では主にC向けの代表商品に紐づいたイメージが先行していると思われますが、NTTグループ自体は2017年度現在で連結子会社922社を要する日本最大級のグループ企業となっています。

詳細については以下の二記事で異なった視点から述べていますので、こちらを参考にしていただければと思います。

一般に、"NTT" と言われるとNTT東西・NTTドコモを始めとした個別企業を差すことも多いのですが、厳密にはNTTグループの純粋持ち株会社である日本電信電話のことをNTTと言います。

(日本電信電話は純粋持ち株会社として設立されていますが、実際には自社で研究活動等を行い収益をあげているという点では事業持株会社の側面を持ちます。)

最近ブームとなっているNTT退職エントリーの多くは、「〇年勤めたNTTを辞めました」といったように、「NTTグループうちのどの企業について書かれているか」については書かれていません。

本来のNTTである日本電信電話の場合もあれば、孫会社と言われるような企業の退職エントリーである場合もあります。(ちなみに中で勤めていると、退職エントリーで書かれている内容がどの企業について書かれているものなのか何となくわかったりもします)

「なぜ、辞めないのか」ーNTTで働くメリットー

退職エントリーではもちろん「退職した理由」について書かれているわけですが、基本的には前職についての悪口だけをつらつらと述べるものではありません。

「〇〇という良い点も確かにあったけど、最終的にデメリットの方が多いと考えて退職しました」という形で、自分の所属組織について良かった点/悪かった点を両軸で述べている印象があります。

ここでは、退職理由の前にNTTで働くメリットについて、過去の退職エントリーや私自身の就業経験に基づいて紹介します。

 メリット1:いい人が多く、クビにならない

総じてすげーいい人が多いです。

コミュ力重視の採用を長年続けていることもあり、日本語が適切に通じて、かつ人もいい人が多い気がします。

良く言えば草食男子、悪く言えばキレが無い、ガツガツしていないという感じでしょうか。

私が新卒の時は、ザ・パワハラ上司みたいな人たちもたまに見ましたが、今では絶滅種でほとんど良い人しか見当たりません。

出典:【退職エントリ】10年以上勤めたが、いまさらNTTを辞めました。

「一緒に働く人」を志望動機の一つとして語る就活生はそれなりにいますが、NTTのグループの退職エントリーでも "人" については魅力として語っているものは多かった印象があります。

総じて穏やかな人が多く、理不尽な要求やそれこそパワハラといったものはほぼ無い傾向が各種エントリーから読み取ることができます(もちろん現場によりけりで、「絶対にありえない」とは言い切れないわけですが)。

また、元々NTT一社時代から分社化して現在に至るNTTグループでは、高年層を中心に様々な経歴を持った社員が存在します。そのため、得意分野やスキルの異なる社員がよくわからない人員配置をされている気も個人的にはしています。

・僕の成績は最低だったが、なぜかクビにならない。

国家資格や社内資格に無理やり挑戦させられるも連戦連敗。パートのご婦人の方々に罵倒され、息も絶え絶えに徒然を過ごすなか、無駄に歳を積み重ねる。

出典:10年勤めたNTTを退職しました(無能編)

こちらの方が生々しく語っている通り、NTTグループでは非常に解雇規制が強く、会社を辞めさせられるという事態はまず起こり得ません。特に成果を上げなくても、会社にいるだけでそれなりに役職が上がったりもします。

企業に所属してその対価として得る給与を生活の糧としている人がまだまだ大多数である現代社会において、雇用の安定性が確保されていることはメリットの一つとして挙げていいことだと考えます。

メリット2:「ホワイト企業」の代名詞

就職活動の場で "NTT" と言われると、ホワイト企業のイメージをまず真っ先に抱く方も多いと思います。

『「裁量が大きい」「風通しのいい」会社とは何か?就活界の5つのマジックワードを徹底解説』でも述べた通り、「ホワイト企業」という言葉の定義は個人の価値観によって異なりますが、ここでは便宜上残業が少ない・休暇日数が多いという労働時間に紐づく一般的な定義を扱います。

そのためどちらかというと、ホワイトというよりは徹底した労務管理と法令順守意識と言った方が適切かもしれません。

・生産性を犠牲にしてでも守る。サービス残業なんてやると逆に上司に鬼のように怒られる。
・有給消化率は部署にもよるがほぼ100%。
・退職後は非常に手厚い保証。嘱託社員のおじいちゃんによく自慢された。

出典:7年勤めたNTT系列を退職して2年半が経過しました(ノンキャリア編)

NTTグループがホワイト企業とイメージされる要因の一つが労働組合の強さにあります。

若者の過労死や働き方改革などでこの手の話は近年注目を集めるトピックの一つにはなりますが、NTTグループの多くではサービス残業や不当な長時間労働なんてのはもってのほか。法令に違反するような労務管理をしたら最後、組合からお叱りや説明の場を設けられることになります。

勤務時間については、PCの使用時間・オフィスの入退出時間・入居ビルの入退出時間までが管理され、どう頑張ってもサービス残業が出来ないような体制が整っているグループ企業も存在しています。

また、よくある話で私自身も実感しているところとして、毎年有給休暇の期限切れ直前となる9月には休暇を取得する人が続出し、夏季休暇も相まって人手不足で仕事がなかなか進まないということが往々にして発生します。

仕事を進めることよりも、有給休暇を使い切ることを優先する。それが、NTTグループなのです。

メリット3:世間で言う安定性は抜群(と思われる)

「ホワイト企業」と並んで就活生が話題に挙げる話として、その企業の安定性、すなわち潰れにくいかを気にするケースは多い印象です。

元々は三公社の一つの国策企業として発足したNTT。長年日本の通信インフラを支えてきた組織として安定性をイメージする方は多いと思われます。

NTTの全体像をちゃんと把握している人はおそらく(私を含めて)少ない数しかいないはずです。

とてつもなく大きい企業グループで、本当にいろいろなことをやって日本を下支えしています。

国や公共団体の情報通信分野において利用や政策をリードしているのは間違いなくNTTで、私はNTTが終わるようなら日本も終わると思っています。

出典:次々出てくる退職エントリー、それでもNTTはすごいよ

こちらの退職エントリーが指摘する通り、端的に言って今でもNTTグループが日本の通信インフラを支えていることは事実でしょう。

MVNOや海外の有名IT企業等が参入する現在においても、結局はNTTのプラットフォームが用いられて多くの事業は行われており、NTTグループが丸ごと潰れるといったことはまず考えられないと言っていいでしょう。

もちろん、「10年前は東電・シャープに入社した人は勝ち組だった」でも指摘した通り、今や「~~社に入っておけば絶対将来も安泰」といった絶対的な安定というものは存在しません。

とは言え、大企業やこういった社会基盤を支える企業がそうでない企業と比較して相対的に安定していることも事実であり、「NTTが安定している企業か」と言われればYesと回答せざるを得ない面も少なからずあると思っています。

あれだけ株価が下がり世間的なイメージも悪くした東京電力が、潰れるどころかむしろ数年後にあっさりと過去最高益を記録した話は記憶に新しいことかと思います。

「なぜ、辞めるのか」ーNTTで働くデメリットー

このように、NTTで働くうえでは様々なメリットがある一方で、当然これだけの退職エントリーが出ている分デメリットも存在します。

デメリット1:効率性・スピード感の欠如

NTTの社内システムは非常に使いづらい印象を受けます。

末端までセキュリティ施策を推し進めるのは結構ですが、全体最適化のために推し進められた施策が個々の部署の生産性を大きく押し下げているケースが多々あります。

参考:10年勤めたNTTを退職しました(無能編)

こちらについては以前unstyle内の記事「NTT東日本のイメージが変わる?OB訪問でわかった実態」でも少し触れましたが、NTTグループ全体の傾向として、リスクに対する慎重な姿勢や非効率な業務運営がなされているケースは多いという指摘が広くなされています。

意思決定の遅さというのも、「スピード感に欠ける」という指摘を受ける一要素でしょう。

やはり日本の通信インフラを支えている企業らしく、セキュリティーには敏感な性格は強いと言えます。

コーディング規約や社内で閲覧できるWebサイトに大幅な制約があるなど、業務を進めるにあたってあらゆる制約がかかっており、結果的に効率性を欠いている面があります。

その例として上記のような社内システムの使い勝手の悪さは個人的にも実感しています。情報通信分野のリーディングカンパニーである割には、会議室の予約システムや勤怠管理システムなど、効率的とは言えない面が随所に見受けられます。 

デメリット2:給与には満足していない社員も一定数いる

就職活動におけるNTTグループの代名詞として挙げられるのが、「まったり高給」という言葉。

しかし、「NTTコミュニケーションズの社員が伝えたい6つの真実」でも触れた通り、「まったり高給」とは「まったりの割には給料がそれなりに貰える」という意味合いの方が近く、いわゆる「高給取り」と呼ぶには物足りないと感じる人は多いようです。

入社7年目のサラリーマンの給料(ボーナスや家賃補助など全部込み)として、僕の年収653万円という数字は先に書いたように年代平均よりは良いしこの数字を貶すのは気が引ける。

その一方でここからモリモリ上がるかというと管理職昇格という狭き門を通り抜けない限り良くて800万円になるかどうかというラインを生涯さまよい続ける事になる。

出典:6年勤めたNTTを退職しました
四十の管理職で650万らしい。ゆ、夢がない。

出典:7年勤めたNTT系列を退職して2年半が経過しました(ノンキャリア編) 

また、役職についても各社上詰まり感が否めない傾向はあるようで、年齢を重ねれば半自動的に課長ぐらいまでは到達できるという時代でも無くなってきているようです。

現に、定年が近づいていても、いつまで経っても平社員でいる人はそれなりに見受けられます(そういった人たちが特段スキルが低いようには内部で働いていて感じないのですが...)。

その昇進も、いわゆる社内政治といった業務遂行とは直接関係のない分野や、社内システムの仕様といった他企業では通用できない狭い世界のスキルで決まっている面は少なからずある印象です。

NTTグループは単純に給与として受け取れる絶対値が高いというよりは、扶養手当・住宅手当といった福利厚生に関する各種手当や、休暇の多さ・残業時間の少なさなど、総合的に加味したうえで待遇の良さが語られるべきだと思っています。

一般的な生活をする分には十分な給与がある程度のゆとりをもって得られる一方、若くしてがっつり稼ぎたいという方には物足りない金額なのかもしれません。

デメリット3:夢ある仕事?でも実際は...  

貴社がこれまでに築いたネットワーク技術や膨大な顧客基盤を活かして、今よりも人のつながりが強い社会を実現したい。

私の強みである【組織の足りない部分に気づく力とそれを埋めるための行動力】を活かして、隠れたニーズを顧客から引出し、多くの社内外のスペシャリストを巻き込みながら、社会に変革を与える事業に取り組みたいと考える。また多くの分野の仕事に関わるなかで、ゼネラリストを超えたスペシャリストを目指したい。

参考:【内定】NTT東日本エントリーシート(総合職)

NTTグループの主要事業である情報通信の分野における志望動機のよくある例として、「社会をよりよくする」というビジョンを書くケースは非常に多い印象です。

NTT東日本の新卒採用HP」にも書かれた「つながる」というキーワードから想起されるように、「○○と××を繋げて社会をよりよくしたい」といったものがその代表例です。

情報化社会という言葉が誕生してからしばらく経ちますが、今や通信やITが無くては事業活動や我々の日常生活は成り立たないものとなっています。

それだけ活用可能性が高い分野であれば、通信やITを用いてあらゆる分野で社会をより良くするというビジョンを掲げ、企業に入社してくるという方はそれなりに多いことでしょう。

良くも悪くも、受託開発のSIerの血は根強いです。

お客様に言われた仕様のシステムを確実に作って納品する。旧来型のビジネスモデルをアイデンティティにしているため、今現在も全てはお客様ありきです。

つまりは、会社は私たちに、プロフェッショナル御用聞きに徹することを望んでいるのです。

当社に入社した社員のほとんどは、ITを使って社会に新しい価値を提供したい、社会を変えたいというモチベーションで入社したことでしょう。

しかし、全てとは言いませんが、当社の大部分の仕事は、目の前の顧客だけをみた近視眼的な仕事がほとんどです。

出典:【退職エントリ】10年以上勤めたが、いまさらNTTを辞めました。

しかし、現実問題として、NTTグループの事業のメインは、技術力を活かして社会に新たな価値をもたらすことではなく、お客に要求された仕様通りにシステムを作り上げることだったりもします。  

もちろん全社方針として海外展開や新規事業へ手を出すといった話を時おり耳にすることはありますが、この方が指摘するように、まだまだ国内の受託開発のSIerとしての性格は根強い印象です。

あれだけ海外展開のイメージが強いNTTデータでさえ、国内の売上高が過半数を占めているというのが現状です。インターンシップでよくあるような、「新規事業立案」みたいなものに携われるケースはほんの一握りでしょう。

「通信・ITの力で社会をよりよくする」という気概を持って入社する一方、実際に入ってみると「要求された仕様条件を満たす」ことに必死で、ほとんどの社員が自らの仕事の社会的意義のようなものには目を向けず目先の業務に注力しているというのが現実ではないでしょうか。

私自身は元々そういったビジョンがあって入社したわけではありませんが、それでもやはり今の仕事をすることで誰が喜ぶのか・社会の発展にどう寄与しているのかといった実感は正直得られないまま日々を過ごしているのは否めない気もしています。

こういったミスマッチが、退職者を生み出す一つの要因となっていることが想定されます。

優良企業一覧

優秀な人が日系大企業を抜けているのは、何もNTTに限った話ではない

これまでの内容から、「安定した日系大企業」の典型例とも言えるNTTグループにも、実際に働くとなると様々なメリット/デメリットがあることは認識していただけたかと思います。

しかし、NTT退職エントリーブームである現在では、あたかもNTTグループだけで人材流出が加速しているかのように思われるかもしれませんが、このことは日本社会全体にある程度共通している傾向だと考えています。

この記事のように、現在新卒就活の最人気業界と言ってもいい総合商社でさえ、優秀な若手の離職率増加に危機感を覚えているということです。

先ほど「解雇規制が強く、会社に所属しているだけでそれなりに役職が上がったりする→相対的に雇用が安定していて良い」といった話をしましたが、裏を返せばこれは優秀な若手にとって画一化された報酬・雇用体系による大きな機会損失となる可能性を含んでいると考えることもできるでしょう。

新卒一括採用・終身雇用といった日本型雇用慣行が徐々に薄れていく現代において、優秀な若手社員にも雇用の流動化の波が少しずつ押し寄せてきているように感じます。

ある意味日系企業の縮図とも言えるNTTグループでそれが顕在化するというのも不思議な話ではなく、今回はたまたまNTTグループで退職エントリーとして連続したからブームのように語られているだけだと考えています。

意思決定の遅さ・非効率性・解雇規制といった先述した話の多くは多くの日系大企業にも当てはまるものでしょう。

NTTを特に志望していない方でも、現代のキャリア論のある種一つの象徴として今回の一件を捉えていただければと思います。

退職エントリーを読む際に注意すべきこと

さて、今回のような退職エントリーブームとなると、何だかNTTグループ(もしくはそれに代表されるような大企業全般)は辞めることこそが正義であり、残る側の人間=能力が無く企業にしがみつくことしかできない人のような見方をする方も中にはいるかもしれません。

しかし、特に就活生の皆さんにとっては、このような考え方については注意が必要です。

注意点1:退職しない人は退職エントリーは書かない 

至極当たり前ですが、案外見落としがちな観点だと思います。

退職せずに企業に残る人は、退職エントリーに限らずわざわざ自身のキャリアについてWeb上であれこれ語る割合がぐんと下がります。

世界史の分野でも「歴史上のほとんどは成功者の体験により出来ている」といった指摘がありますが、Web上の世界では「大企業を辞めた人」の方が自身のキャリアについて語る割合は高いと言えます。

「ひとまず大企業に就職して長期間勤め上げる」というキャリアがまだまだ一般的なモデルケースとしてみなされている現在では、"普通ではない"(と多くの人に思われている)キャリアを歩む人の声が多く発信されるのは自然なことだと考えています。

また、実際にNTTグループ・大企業を退職した人の中でも、退職したことに後悔している人が退職エントリーを書くケースは稀だと考えられます。

就活生の皆さんには、退職エントリーには生存者バイアスだけでなく、"退職者バイアス" のようなものがかかっていることをくれぐれも忘れないでいただきたいと思います。

もちろん、この方のように「残った側の人間」が情報発信をするケースはゼロではないのですが...。

注意点2:そもそも、NTTグループ各企業を "NTT" と一括りにして考えることが間違っている 

巷で出回るNTTグループの退職エントリーですが、そのほとんどは辞めた先を "NTT" と表記するだけで、NTTグループのどの企業を辞めたか明記されていないケースは多い印象です。

もちろん、NTT本体(=日本電信電話)について述べた退職エントリーもありますし、中の人からすればどの企業について言っているかほぼ特定できるものも存在します。

しかし一方で、先述したメリット/デメリットはNTTグループの全体的な傾向ではあるでしょうが、結局は各個別企業ごとに、更にはその中の部署ごとによって実態は異なります。

私自身、先述したメリット/デメリットは6つ全て基本的に共感できる内容ですが、隣の部署の同期は連日残業続き・向かいの部署の同期は短い期間で案件を回すスピード感のある(ありそうな)事業に従事といったように、結局は行き先次第で待遇や仕事内容は大きく異なります。

そのため、900社超の企業を含むNTTグループを一括りにして「NTTの退職ブーム」とされるのは個人的には若干の疑問が残ります。

注意点3:「大企業に勤める=スキルが身につかない=自身の市場価値が下がる」とは思って欲しくない

先ほど「他企業では通用できない狭い世界のスキルが評価される」と述べたように、NTTグループの企業に勤めていると社内でしか通用しない知識で評価されるケースも多く、その後のキャリアの選択肢を広げるには適切とは言えない環境に遭遇する確率が高いのは事実だと思っています。

こういった話をすると、「スキルが身につかないような上から降ってくる仕事をただただこなすだけだから大企業はダメなんだ。やっぱり今の時代ベンチャーに就職すべき。」といった論調を時おり耳にしますが、就活生の皆さんは本件については慎重に考えるべきです。

「大企業」や「ベンチャー」をそれぞれ一括りに語るべきではないというのは前提に、ではベンチャーだったら本当にスキルが身につく可能性が高いと言えるのでしょうか。

例えば企業体力がないベンチャー企業では単純に一人当たりがこなすべき業務量が多く、目先の業務を終わらせることに集中してしまう一方、稼働に余裕がある大企業の方が手厚い研修や業務外の時間を活用したスキルアップの機会が多いという考え方もできるでしょう。

また、大企業の場合は最悪身動きが取れなくなっても「居続ける」という選択肢が取れる可能性が高いことは現実問題として優位性の一つでしょう。特にNTTグループの場合はジョブチャレンジというグループ他社への転職という機会も設けられています。

もちろん、転職市場では「年齢」というのも一つの重要な評価指標になりますので、数十年同じ企業に勤めた後でのキャリアチェンジは困難であることが多いのは事実です。

一方で、伊藤忠商事を退職し起業という典型的な大企業を「辞めた側」の人間であるunistyle創業者の樋口も、新卒では大企業に就職したことが結果的に自身の市場価値を高めた一要素となったことを指摘しています。

最後に:NTT退職エントリーブームが就活生に示唆しているものは何か

長々と書いてきましたが、結局この記事で言いたいことは「NTT退職エントリーがブームだよ」といった事実報告や、大企業を退職することを肯定/否定する話ではありません。

(今回のNTT退職エントリーのような)一過性のブームに踊らされず、自身が描きたいと考えるキャリアに真摯に向き合い、それに伴う就職活動をしていくべき。

「自分のモノサシでキャリアを考えろ」という話は直近の記事で何度もしており、「またか」と思った方もいらっしゃるでしょうが、それだけ繰り返すほど今の時代では大切なことです。

新卒の学生は大人が思っている以上に株価や直近の業績に敏感です。

もちろん株価や業績が、説明会開催などの採用にかける費用に影響するためという考え方も出来ますが、世の中の「空気感」といったものを感じ取っているように思います。

トヨタがリコールの対象になるといった話がでると反射的に人気ランキングが低下するといったことが起きています。

世の中の空気に敏感というと聞こえはいいのですが、自分自身の企業選びやキャリアに対する考え方がしっかりしていないために世の中の流れに翻弄されてしまっているとも言えます。

参考:10年前は東電・シャープに入社した人は勝ち組だった 

東京電力やシャープといった大企業でも大きく業績を下げた時期がありました。就活生の最人気業界である総合商社でさえ、「商社の冬の時代」と呼ばれる時期を乗り越え現在の地位まで上り詰めました。

いつかは、NTTグループにもこういった苦しい時代が訪れるのかもしれません。

人生一度しか使うことができない "新卒カード" 。

『あなたは』それをどのように使い、どのようなキャリアを歩んでいく将来を描きますか。

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就活塾に対する疑問を就活塾経営者にぶつけてみた 就活塾に対する疑問を就活塾経営者にぶつけてみた 先輩や社会人、就活本、Webサイトなど就職活動のためのツールは複数あります。そうした中、その実態が分かりにくいものの一つが「就活塾」ではないでしょうか。就活本の購入などであれば数千円の費用で済みますが、就活塾では安くても数万円以上かかり相対的には高額となっています。大学受験の予備校代に比べればはるかに安い価格ではありますが、受験の点数のような定量的な指標が無いのが就職活動。利用に及び腰になるのも仕方ないのかもしれません。今回は、そんな就活塾について気になることを、これまで5年以上にわたり1,000名を超える学生に就活コーチングを実施してきた就活コーチ代表の廣瀬泰幸氏にうかがってきました。就活塾と聞くと「内容がよくわからない」「就活本に書いてあることを教えているだけで役に立たないのでは?」「本当に役に立つのか?」といったイメージを抱いている人もいるのが現実です。イメージの元となっている良くない就活塾が存在するのも事実なのでしょうか?—残念ながら役に立たない就活塾も存在していると思います。現在、関東圏だけで50以上の就活塾があります。学生さん相手の仕事のため参入障壁が低く、ノウハウの乏しい就活塾が生まれてしまうというケースが見られます。また、「ESの書き方」「グループディスカッションの仕方」「面接の受け方」など、ありきたりのテクニックを学生に教えるだけで、就活本を読めば十分といった就活塾もあります。併せて、よく広告に用いられる「内定率◯◯%」「トップ企業△△へ内定者輩出」という情報に関してですが、安易にそれを鵜呑みにすることは危険だと思っています。(1)受講生が何名いて、そのうち何人が内定を獲得したのか。→「内定率=内定数÷受講生数」として算出している場合、少数の学生が複数内定を得ているだけかもしれません。(2)いつの受講生の内定実績なのか。→何年も前の内定実績をあたかも直近の情報であるかのように掲載している場合もあります。それでは就活塾の良し悪しは、どのような観点から判断するのがよいのでしょうか?—まずは塾の歴史の長短です。3年未満は運営が軌道に乗っていない場合が多く、サービスの質にムラがあったり、いきなり事業をクローズするということもありえます。ノウハウの蓄積にも不安がありますね。次に、経営者の略歴とポリシーです。就活塾の経営母体は、現在のところ100%中堅・中小企業か個人経営です。従って、経営者の略歴やポリシーが明示されていない塾は要注意と言えます。それからやはり、講師の質です。講師の経歴の記載がぞんざいなところは悪い就活塾だと思っていただいて構いません。併せて、カリキュラムの質です。筆記試験対策など、そもそも対面指導の必要性が薄いものに無駄に注力していたりはしないか。論理性があるか。受講生1人1人に対して親身に対応する体制がとれているか。はとても大切なことだと思います。最後に、利用者の声です。就活塾サイドのメッセージは極端に言えば、何とでも書けるし言えます。本当に大切なことは、今までの受講生の感想です。利用者の声がないのは、論外だと思います。また、受講者の声が掲載されていても、元々優秀な受講生の声しか掲載されていなかったとすれば、要注意だと思っていただくのが賢明だと思います。正直なところ、就活塾にも向いている人と向いていない人がいるのではないかと考えています。どのような人が就活塾を利用することに向いているのでしょうか?—たしかに就活塾を利用するのにも向いている人と向いていない人がいるのも事実です。これまでの経験から、向いている人と向いていない人の違いは以下のようにあると考えています。(1)就活塾に向いている人まずは、学歴などのスペックはあっても、特筆すべき実績の無い学生さんは向いていると思います。「大学時代はゆるいサークルで友人とつるんでいたけど、どう自己PRすればいいのかわからない。そもそも就活って何をどう頑張ればいいの?」といった学生さんは、就活塾で努力の方向性を示されれば化ける可能性は大きいと思います。次に、勉強はよくやってきたけど、それをどう面接などでアウトプットすればいいのかわからない学生さんです。就活塾で場数を踏み、伝え方を学べば内定出来る可能性は高くなります。そして、自分がどういった業界や企業に適性があるのかよくわかっていない学生さんは、社会や企業をよく知っている講師が的確に導いてくれる可能性が高いですね。併せて、そもそも、自分に自信のない学生さんは、個人をよくみることができる講師が、その人が持っているいい点を気づかせ、伸ばしてくれると思います。(2)就活塾に向いていない人逆に向いていない学生さんは、「就活塾を利用する→内定獲得」と考えている学生さんです。「就活塾を利用する→本人が努力する→内定獲得」が正しい図式です。大学受験予備校でも、ただ何となく周囲が通っているから自分も、というタイプの人は良い結果を得られていないのではないでしょうか。また、元々素晴らしい経験をしていたり、地頭が優秀な学生でかつ、説得力を持って伝える力がある人は自力で十分良い結果が得られると思います。しかし、このタイプの学生さんは少数かもしれませんね。採用する側の企業から見た場合、就活塾などが面接ウケを良くするための小手先のテクニックや付け焼き刃的なスキルを指導することで、学生本来の資質や能力などを見えづらくしてしまい、本当に企業が求めている人材を獲得する妨げになってしまうという危険性はないでしょうか。—もちろん模擬面接などを通して、実際に内定を獲得できるように指導しています。顧客である学生さんや親御さんからお金をいただいている以上、顧客の成果にコミットするのは当然のことです。しかし、就活塾の本来のミッションは、学生さんのレベルを企業側の求める水準まで高めることだと考えています。現状、企業サイドからの視点に欠け、独りよがりの自己PR/志望動機を展開し、採用に至らないという就活生が多く見られることは、とても残念なことです。他方で、就職活動をサポートする側においては、小手先の就活テクニック指導に偏重していることも多いと言えます。しかし付け焼刃のスキルで通用する程、企業側が求めていることは浅くはありません。これらのミスマッチを解消させるべく尽力することこそ、就活塾の存在意義だと考えています。今回の話をまとめますと、一口に就活塾と言っても質にはばらつきがあるのが現状です。就活塾利用に向いている学生さんとそうでない人もいると思っています。塾の見極め及び自分自身の利用適性の見極めには無料相談を使うのがいいですね。支払うコストに見合ったリターンが見込めそうか、まずは一度相談してから判断してみてください。廣瀬さん、貴重なお話をありがとうございました。就活コーチ代表廣瀬泰幸氏慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、株式会社リクルート入社。大企業からベンチャー企業まで1000社を超える企業の採用と人材育成を支援。その後、一部上場企業の人事部採用責任者として年間500名の採用と人材育成を行う。2004年より、株式会社リンクアンドモチベーションの講師として、主として大企業の10,000人を超える社員に教育研修を実施。2010年株式会社オールウェイズを設立し、「就活コーチ」を主催。以降1,000名を超える学生に就活コーチングを自ら実施している。日本で初めて就活に誰もが成功するために「新卒採用基準の公式」(200点満点)をわかりやすく、具体的に定義。新卒採用基準=【「有能感」+「仕事力」×「表現力」×「就活スキル」+α。】「就活コーチ」のHPから、誰もが現在の自分の基準を自己診断できる。就活コーチへの就活無料相談はこちらからphotobyPhilRoeder 20,582 views
麻雀、大喜利、演劇採用?!新しい就活スタイルを提案するサービス「ミートボウル」に注目! 麻雀、大喜利、演劇採用?!新しい就活スタイルを提案するサービス「ミートボウル」に注目! 就職活動というとESを書いて筆記試験を受けて面接・GDを繰り返してといった流れが一般的ですが、面接などのいかにも就活といった場では変に身構えて就活用の仮面を被ってしまい、逆に評価されない学生も多いと感じます。社会人から評価されるよう臨む以上、十分な準備は必要ですが、一方で普段と明らかに乖離した付け焼き刃の自分を売り込もうとしても採用側に違和感を抱かせるだけなので注意が必要です。どうしても仮面を被ってしまいがちだという方は、一度それを取り払ってくれるような採用イベントに参加してみるのもいいかもしれません。(※本コラムは「ミートボウル」のPR記事です)「ミートボウル」とは:素の自分で勝負したい人のための就活サービス​​​就活のためだけのテクや知識を慌てて身に付けるより、普段から好きで続けてきたことを通して、あなた本来のチカラで就活してみませんか?ミートボウルのイベントなら、あなたの素のチカラを活かして企業と出会えます。(「ミートボウル」イベント紹介ページより抜粋)ミートボウルでは「得意な分野で企業と出会う」というテーマを掲げ、学生がいつもの姿で企業にPRできる場を用意しています。他ではなかなか無いようなユニークなイベントを多数開催しており、いずれも評価されればその後の企業選考フローに乗り、内定を獲得する学生も毎年輩出しています。今回は、その珍しさからSNSでもたびたび拡散されるミートボウルの主なイベントをご紹介します。①アドリブ力が問われる「即興演劇採用」​台本無し、リハーサルなし、準備なしの一発勝負での即興演劇での振る舞いを評価されるイベントです。面接で想定外の質問が飛んできたりといった経験のある方も多いと思います。そういったアドリブ力が問われる意味で、就職活動と即興演劇は共通点があると言えます。unistyleでも伝えていますが、アドリブするにもいきなり何もないところから話のタネが浮かぶわけではなく、普段どれだけ物事を考えているかによる部分が大きいと感じます。参考:面接で問われているのは瞬発力ではなく、普段から物事を考える力自分では対応力に自信があると思っている人も、実際に企業の人事担当者に評価されながらでは案外オロオロしてしまうことと思っています。自分の引き出しの幅や深さについて知る機会としても有用なイベントですので、第一志望企業の選考前に腕試しに受けておくのもよいでしょう。▼開催日程はこちらでご確認ください。​​②ユーモアで勝負する「大喜利採用」​先ほどの即興演劇同様にアドリブ力が求められるのはもちろん、ユーモアのレベルも評価されるイベントです。仕事において取引先と円滑に仕事を進める際にも適度なユーモアは有効に作用します。企業面接においても、ガチガチの就活生よりもある程度大人と話し慣れた印象を与えた方が上手くいきやすいように感じます。一方で、これまでに面接でウケを狙いに行って玉砕した方も一定数いると思っており、友人間での身内ウケと初対面の社会人からのウケとの違いを改めて考えるよい機会かもしれません。▼開催日程はこちらでご確認ください。現役のお笑い芸人が司会進行を務めることもあり、プロの表現者の言葉を盗むチャンスかもしれません。③思考力重視の「頭脳ゲーム採用」就職活動においてもよく聞く「地頭」という言葉。ミートボウルのオリジナルゲームで参加者同士競い合い、思考力を評価されるイベントです。ゲームで思考力をアピールした後は、人事担当者との交流会で人柄面も評価してもらえるとよいでしょう。なお、頭脳ゲーム採用に限らず、今回ご紹介するすべてのイベントで企業の人事との交流会が行われます。とにかく論理性・思考力が求められると思われがちなコンサル業界においても人柄やリーダーシップは重視されるので、その他の業界でも多面的に評価されると内定に近づけることと思います。​▼開催日程はこちらでご確認ください。​④今までにない自己分析「謎解き脱出ゲーム採用」​地球を救う唯一の手段、隕石破壊の方法はとある暗号化された論文に秘められているらしい。そこで突如あなたには「仲間と協力して暗号を読み解き、隕石の弱点を突き止めよ」というミッションが渡された!隕石破壊のチャンスまであと60分。地球存亡をかけた謎解き脱出ゲームが、今はじまる。皆さんの挑戦をお待ちしております。(「ミートボウル」謎解き脱出ゲーム採用ページより抜粋)このアオリ文のみからは何を行うのか想像できませんが、内容は非常にユニークな自己分析方法を用いたゲームとなっています。企業のインターンなどでもこうしたゲームを用いて学生同士が協力する内容のプログラムは多数あるため、そうした経験をお持ちの方はこちらにも参加してみてはいかがでしょうか。▼開催日程はこちらでご確認ください。⑤納得のいくキャリアをツモる「麻雀採用」​こちらがミートボウルのイベントの中でも最大の人気を誇る麻雀採用です。当日は雀荘を貸し切ってプロ雀士立会いのもと、企業の人事も交えて卓を囲みます。人事との交流会も雀卓で行います。なお、数あるミートボウル就活イベントの中で最も多くの内定者を輩出しているのがこの麻雀採用です。こうした勝負事では、優勢な時・劣勢な時など様々な場面でその人の本性が露わになりやすいと思っています。採用する側も、「あなたの人柄を教えてください」と聞くよりもはるかに正確に学生の人となりを見抜きやすいイベントだと考えているのかもしれません。▼開催日程はこちらでご確認ください。最後に面接やGDに苦手意識がある人ほど、就活用に作った自分を演じるようになりがちだと感じます。かりそめの自分を貫き通せればよいのかもしれませんが、ほとんどの場合は見抜かれます。今回ご紹介したミートボウルの採用イベントは一見珍妙なものばかりですが、通常の面接と切り口は違えど、どちらも自分という人間をどう伝えるかを問われていることに変わりはありません。また、採用担当者を前にしても自分がどんな人間なのか、改めて見つめ直す機会として活用できるでしょう。色々な土俵で多くの企業から評価される経験を重ねて、納得のいくキャリアを選択して欲しいと思います。photobyyui* 17,971 views
給料が「上がる仕事」「下がる仕事」ランキングを発表します 給料が「上がる仕事」「下がる仕事」ランキングを発表します 「給料が上がる仕事と下がる仕事を解説します。」unistyle編集部のせいちゃんです。労働人口の減少、AIの普及等によって「仕事」は目まぐるしく変わっていきます。その中で、仕事の対価として支払われる給料がこれから大きく変わる職種があるようです。今回は、給料の上がる仕事と下がる仕事ランキングから、給料が変動する理由や職種の特徴を解説します。給料が上がる仕事・下がる仕事それぞれのランキングを見ていきましょう。給料が「上がる」仕事1位から50位までをここでは表示しています。給料が上がる仕事の上位には、対人トラブル処理・複雑で繊細な動きが求められる作業・人同士の調整を執り行う業務が共通点として考えられます。なお、就職活動に不安があるという方には就職エージェントneoがおすすめです。アドバイザーからは、自分の就活の軸に合った企業選びを手伝ってもらえるだけでなく、その企業のエントリーシート・面接といった選考対策のサポートを受けることができます。少しでも興味のあるという方は、下記の画像をクリックしてサービスを利用してみてください。給料が「下がる」仕事【参考】これから給料が「下がる仕事」「上がる仕事」全210職種を公開給料が下がる仕事の要素として多いものは、蓄積されたデータをもとに行う仕事・計算や情報処理があげられます。これらの仕事でなぜ給料が増減するのか、理由と特徴をまとめていきたいと思います。給料が増減する理由給料が増減する最たる理由は2つだと考えられています。それは、ニュースで見ない日はないトピックである、AIの普及と少子高齢化です。もちろん、それ以外にも要因は考えられますが、この二つが大きな要因であることは明らかでしょう。AIの普及AIがこれまでより安価に企業に導入できるようになり、普及していくことによって、なくなる仕事や人が担う部分が変化する仕事が多く出てきます。AIと仕事については、unistyleの他のコラムでも紹介していますので、そちらも参考にしてください。【参考記事】少子高齢化少子高齢化は、今後より深刻化する見通しです。総務省の発表では、高齢化率(高齢人口の総人口に対する割合)は2013年には25.1%で4人に1人を上回り、50年後の2060年(平成72年)には39.9%、すなわち2.5人に1人が65歳以上となることが見込まれています。【参考】ICTが導く震災復興・日本再生の道筋これにより、介護者を抱える世帯数も増え、医療や介護の領域の仕事の需要は高まり続けます。また、高齢者が増えることで、空き家の増加や雇用問題など、様々な領域に影響を及ぼします。給料の増減の特徴今回紹介するランキングは、以下の基準でランク決めされています。現在の平均募集賃金(実績値)と、AIが算出した将来の賃金(予測値)を比較して、下落率、上昇率が高かった順にランキング化している。【参考】「給料が増える仕事」の中には、現在は薄給だが今後貴重になり、重宝される仕事が多く含まれていることが考えられます。同じように、「給料が減る仕事」の中には、現在は高給だが、今後需要がなくなる・AIに代替されるため価値が低くなる仕事が含まれます。変化が大きい仕事がランクインしており、薄給のままの仕事、高給なままの仕事はこのランキングには反映されていないため、見方を見誤らないようにしてください。具体的に今後、給料の適正価格が変化する仕事の特徴をまとめます。給料が下がる仕事の特徴AI・AIの方が正確にできる仕事・AIの方が早い仕事・AIの方が安全な仕事少子高齢化・少子高齢化で需要がなくなるものを作る仕事給料が上がる仕事の特徴AI・前例のないものやを扱う仕事・AIとの協働で複雑さが求められる仕事・AIにはできないホスピタリティが求められる仕事少子高齢化・高齢者への細やかな接遇が求められる仕事各職種と人気企業ランキングを見比べてみるここまで給料の話をしてきましたが、就職人気ランキングをみてみると、今後給料が下がると予想される職種を採用しているような企業が多く見受けられます。先ほどの「給料が上がる仕事・下がる仕事ランキング」で「給料が下がる仕事」としてランクインしていた、生命保険会社がランクインしています。生命保険会社の営業の給料は今後半額以下になっていくと予想されており、主な理由は、AIによって適切にカスタマイズされた保険を提案することができるようになると言われているからです。同じく、銀行業務についても「計算や情報処理」が実務として比較的多い仕事になるため、同様のことが言えると考えます。つまり、就職人気ランキングというものは、あくまで企業のブランドによるところが大半を占めているものであり、厳密には「就社人気ランキング」と言う方が正しいのではないでしょうか。純粋な「就”職”人気ランキング」とした場合、同じような結果を得られるか考える余地はありそうです。就社と就職を考えるいわゆる「就社」という意識で「この会社に入れば安定」という考えをもっていると、その後の社会情勢で思いもよらない形で仕事を失う、給料が下がるというリスクがあります。これまでは、大手企業では終身雇用が一般的な考えであり、「就社」すれば定年まで働くことができ、多額の退職金がもらえるような時代でした。しかし、終身雇用はすでに形骸化しつつあり、大手企業であっても突然の業績悪化によって大幅なリストラや退職金制度の撤廃などが頻繁に起こるようになっていることは周知のことだと思います。転職を見据えた上でファーストキャリアは名の知れたブランド企業にいきたい、という考えの就活生が大勢います。それ自体に問題はありませんが、「有名企業に入れば有名企業に転職しやすい」というのは「就社」に当たる考え方になり、これからの時代に適応した考え方なのか今一度考え直すべきだと感じます。一方で「就職」とは、職種に就くという意味です。「給料の上がる仕事、下がる仕事」で先ほど解説したように、社会的な傾向を掴むと、今後需要があり給料が上がる職種が分かります。それらの職種を含む企業は今後伸びていき、結果的に企業ブランドも高まることで、数年後の人気企業ランキングの上位にランクインしてくることが考えられます。人気企業ランキングにランクインすることは本質的ではありませんが、「転職を見据えてブランドある企業に入社したい」と考える学生こそ、”今”の人気企業ランキングだけを見て「企業ブランド」を読むということは少々打算的だと私は考えます。ここで伝えたいことは、ブランド重視の就活生もそうでない就活生にとっても、「就社」ではなく「就職」の意識をもって企業選びをして欲しい、ということです。時代の変化、テクノロジーの発達によって、「就社」の考えはそれこそ”時代遅れ”になると考えます。もちろん給料が全てではありませんし、それ以外にも就職先を決定するファクターは人それぞれあることは理解しています。が、給料というものは「仕事に対する対価」であり、それは年代ごとに変化していくものだということだけでも、皆さんにお伝えできればと思っています。これからどのような職種が必要とされるのかを吟味し、自らの軸と照らし合わせてみてください。さいごに今回は「給料が上がる仕事・下がる仕事ランキング」から、これから人気企業ランキングに起こりうる変化を解説しました。AIの普及や少子高齢化についてはよく耳にするとは思いますが、自らの仕事選びにまで知識を反映させている人はあまり多くはないのではないでしょうか。今ある植えつけられた印象に左右されず、時代の変化を敏感に読み取りながら「自分が就きたい仕事はなにか」考えてみてください。 65,051 views
商工中金の不正融資問題を解説【unistyle業界ニュース】 商工中金の不正融資問題を解説【unistyle業界ニュース】 商工中金は中小企業支援を主要業務とする半官の金融機関です。「中小企業の発展に貢献したい」といった事業内容に即した志望者や、「金融の中でもホワイトそう」といった「なんとなく受ける層」も含め、例年就活生から一定の人気を集めている企業だと思います。そんな安定性が高いイメージを持つ方が多い商工中金について、問題のニュースが発表されました。参考:商工中金広がる不正融資問題ニュースの経緯2016年11月商工中金鹿児島支店における複数行員の財務諸表改ざんの発覚・発表2017年5月金融庁が行政処分→本店へ立ち入り検査2017年9月商工中金から継続調査完了延期が発表ことの発端は2016年11月、商工中金鹿児島支店において複数の行員が、取引先が融資審査を通るように試算表(=融資の際に参考資料として用いられる企業の業績表)を改ざんした問題の発覚でした。この問題に対し商工中金は、第三者委員会を設置して調査に乗り出しました。結果、鹿児島支店の件のほかに複数の案件で改ざんが発覚し、徐々に問題の規模の大きさが浮き彫りになっていきました。その後、2017年5月には金融庁より行政処分がくだり、不正融資の調査を目的に本店へ立ち入り調査が実施されることになります。当初2017年9月を見込んでいた第三者委員会の調査は、10月現在でも完了されておらず、全国の支店規模で同様の不正が蔓延していたことまで発覚されています。(ここまで大規模になると、各支店内で実質黙認状態だったという可能性すら考えられます)「危機対応業務」とは?商工中金の危機対応業務とは、「自然災害・金融危機といった企業にとっての緊急事態が発生したときに貸付を行う業務のこと」を指します。商工中金の場合、その対象が普段からの支援先である中小企業ということになります。この「緊急事態」という状態の基準が外部に対して曖昧であり、融資基準を満たしていることを証明するために先述したような試算表の改ざんが行われたと言えます。またこの融資制度では、商工中金は国から「利子補給」という補助金が支給され、他の金融機関よりも低利子で貸付を行えるという形が取られていました。今回の件はこういった国の制度を悪用し、財源となる納税者・競合先となる民間金融機関をはじめとした多くの関係者の強い反感を買ったという点で問題性が高いと言えるでしょう。なぜ不正が行われたのか?不正に携わった関係者が多いため一概には言えませんが、一番の原因は営業担当者個々人に対して課せれたノルマにあると考えられます。目先のノルマに達成に目が行き過ぎ、業績を悪く見せかけ「緊急事態」であることにするという不正が日常化してしまっていたと考えられるでしょう。もちろん、それを実行した個々の担当者だけでなく、融資を決裁した上司など、問題とみなされる関係者は多く存在します。「政府系はメガバンクと違ってノルマの厳しさがなくホワイトそう」というようなイメージを抱いていた就活生にとって、この背景にはある程度衝撃を受けることになったかもしれません。上記のようなイメージ先行の思考が危険であることについて、本件を通して気づきを得ていただければと思います。最後に「」でも述べたように、就活生は企業の業績を中心とした世の中の動きに敏感であり、今回の商工中金のニュースも19卒の就職人気に影響があることが推測できます。直近では、企業から聞き取りをせずに「中小企業月次景状観測」という調査書をある支店が作成したというニュースも新たに取り上げられました。不正融資と同様、本件も全国の支店規模の問題として浮き彫りになっていくのかもしれません。本件では「無謀とも言える数値目標に対して精神論や不正で解決しようとした」という点に根幹原因があり、ノルマ=目標予算を追う営利企業であれば商工中金に関わらず起こりうる話だと思っています。(今話題の神戸製鋼所のデータ改ざん問題にも近しい背景があると考えています)いずれにせよ、本件を他人事とは思わず、自分の所属する集団・組織で不正が発覚した際に当事者としてどう振る舞うのか。仕事に限らず身近なコミュニティと照らし合わせながら考えるきっかけにして欲しいと考えています。photobySLRJester 8,644 views

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