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伊藤忠商事、社長交代!総合商社の未来は?【unistyle業界研究ニュース】
最終更新日:2022年03月29日
食料や情報・金融など、非資源セクターの強みを活かして好調な業績を維持する伊藤忠商事。
2015年に連結純利益ベースで総合商社トップの座を射止めたこともあり、近年は就活生からの人気も高まりを見せています。
▼伊藤忠商事の選考対策は以下の記事をお読みください。
2018年1月18日、そんな伊藤忠商事から「社長交代」というビッグ・ニュースがリリースされました。
本記事では、この社長交代劇を詳しく解説するとともに、総合商社・伊藤忠商事のこれからについても考察します。
伊藤忠、社長COOに鈴木氏。岡藤氏は会長CEOへ
伊藤忠商事は2018年4月1日付での人事異動をリリースしました。
鈴木 善久 氏(現・専務執行役員および情報・金融カンパニープレジデント)が社長COO(最高執行責任者)へと昇格することを発表しました。
これに伴い、現任の岡藤正広社長は会長CEO(最高経営責任者)へとポジションを移すことになります。
岡藤社長の8年間:伊藤忠の躍進
まず、実に8年間ものあいだ伊藤忠商事を率いてきた岡藤社長の成果を振り返ってみましょう。
2010年春に代表取締役社長の座についた岡藤氏は、「か・け・ふ(稼ぐ・削る・防ぐ)」の三原則を掲げて経営改革に着手。
具体的には、価格変動リスクの大きい資源ビジネスの比重を下げ、安定収益が見込める非資源ビジネスへと経営資源を集中させる戦略を実行しました。
この戦略に基づき、2012年にはバナナやパイナップルなど青果物事業を手がける米国Dole社の事業を買収、さらに2015年には総合商社史上最大の投資案件となるCITIC(中国中信集団)への約6,000億円の出資を決定しました。
また、岡藤氏は伊藤忠商事社員の働き方改革にも着手。
20時以降の残業を原則禁止したうえで早朝勤務を奨励する「朝型勤務」制度を導入したほか、毎週金曜日にカジュアルな服装での勤務を認める「脱スーツ・デー」を設定するなど、社員の生産性を高めるためのユニークな施策を次々と実行してきました。
こうした経営改革が功を奏し、伊藤忠商事は2015年度決算にて史上初の総合商社ナンバーワン(連結純利益ベース)を達成。
2017年3月期には史上最高益となる3,522億円の連結純利益(岡藤氏就任前の2010年3月期の約2.7倍に相当)を稼ぎ出すなど、伊藤忠商事を業界トップクラスの総合商社へと進化させました。
株式市場からの評価も高く、伊藤忠商事の株価は2018年1月15日に高値2,254.0円をつけて史上最高値を更新。
ほかの総合商社と比較しても、ここ数年の株価上昇率はトップとなっています。
また、2017年にはムーディーズから20年ぶりとなる「A3」の格付けを取得しています。
岡藤氏は、まさに伊藤忠商事躍進の殊勲者と言えるでしょう。
岡藤氏はなぜ社長を退任するのか
しかし、これまでの伊藤忠商事の社長の任期は、多くの場合で6年。
この慣例を考慮すると、岡藤氏は8年間も在任しているため、現時点ですでに2年間も任期を延期していることになります。
単純に「在任期間が長すぎる」ことが今回の退任の理由でしょう。
度を超えた長期政権化で「岡藤社長頼み」となってしまっては、同氏が退任したあとの伊藤忠商事に禍根が残るのは明白です。
また、コーポレート・ガバナンスの観点からも、ひとりの人物が社長職に長期間とどまることは好ましいとは言えません。
岡藤社長本人も、「さらに続投したら、辞めるときにえらい問題が出てくる。次の時代に向けて、経営陣が変わることを少しでも示さないと駄目だ。社長が変われば社員の意識改革も出てくる」と語っています。
新社長・鈴木善久氏とはどんな人物か
こうした背景もあって、岡藤氏から社長の座を引き継ぐことになった鈴木善久氏。
ここで、その人物像を確認しておきましょう。
鈴木氏は、1979年に東京大学工学部を卒業。
かつて航空機のエンジニアを目指していたこともあって、入社後は航空機ビジネスに注力してきたようです。
ロケットの打ち上げなど革新的な宇宙ビジネスを開拓したほか、2011年からは航空部品を扱う関連会社・ジャムコで社長を務め、同社の経営再建に成功しました。
その後は情報・金融カンパニーのプレジデントに就任し、AIやFinTechなど新規領域でのビジネス創造をリードしています。
また、「関西弁でまくし立てる熱血型の岡藤氏とは対照的に紳士的」とされる柔和な人柄のようですが、「事業は人」「答えは現場にある」との信条は岡藤氏と共通しています。
AIやFinTech、IoTなど、新しいテクノロジーの台頭によって総合商社の事業環境が変化しつつあるなか、伊藤忠商事も新しいビジネスモデルを模索していく必要に迫られています。
ITや金融の分野での知見と関連会社経営の実績を併せ持つ鈴木氏は、新しい伊藤忠商事をつくっていくうえで適任と判断されて社長に抜擢されたものと思います。
岡藤上皇?会長CEOの「院政」が続くか
しかし、社長職は退任したとはいえ、未だ「会長CEO」として全社の経営権を握り続けることになる岡藤氏。
今回の社長交代が今後の伊藤忠商事が進むべき変革の方向性を示唆したことは間違いありませんが、その肩書きが示しているように、当分のあいだは岡藤氏による「院政」経営が継続することになりそうです。
とりわけ、前述のCITIC(中国中信集団)との巨大提携プロジェクトにおいては、まだ現時点で思うような収益が確保できていないのが事実です。
岡藤氏本人が「中国人は肩書をとても重視する。トップが変わると今までの提携関係はナシ、となりがち」と語っていることからも分かるように、少なくともCITICとの提携が軌道に乗るまでは岡藤氏のミッションは終わらないでしょう。
最後に
本記事では、伊藤忠商事の社長交代、および同社の今後について考察しました。
AIやFinTechなど新しいテクノロジーが世界を席巻しつつあるなかで、世界経済の中心もGoogleやAppleなどのIT企業へと移りつつあります。
こうしたなかでは、日本の総合商社も既存の収益モデルに依存せず、果敢に新規ビジネスを創造していかなければならないでしょう。
▼伊藤忠商事の選考対策は以下の記事をご覧ください。
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