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銀行からヒトは消えるのか?AI、自動化、FinTech【unistyle業界ニュース】
最終更新日:2019年02月14日
投資銀行やメガバンクをはじめとする金融業界は、総合商社や外資系コンサルと並び、上位校の就活生からの注目度が最も高い業界のひとつです。
そんな金融業界に衝撃が走ったのは先月のこと。
日本最大のメガバンクグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ (三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行など) の平野信行CEOが、事務作業の自動化・デジタル化によって、約9,500人分 (三菱東京UFJ銀行の国内従業員の約30%に相当) の労働量を削減する方針を明らかにしました。
平野氏は、上記の自動化を進める一方、これまで比較的単純な作業を行ってきた従業員を「クリエーティブ」な仕事に振り向けるとし、「全行レベルで生産性を高めたい」と述べています。
これまで毎年1,000人の規模で新卒採用を行ってきたメガバンク。
しかし、上記の方針が実現される運びとなれば、この方針も変更を迫られることになるかもしれません。
FinTechやAI (人工知能) 、オートメーション化 (自動化) は、銀行からヒトの従業員を駆逐するのでしょうか。
本記事では、最新のテクノロジーが銀行業界の働き方にもたらす影響について、いくつかの実例を交えながら考察します。
AI (人工知能) とオートメーション化
まずは用語の定義を確認しておきましょう。
AI (Artificial Intelligence:人工知能) とは、人間の知能と同等、あるいはそれに近しいレベルの機能をシステム上で人工的に作り上げる試みのことを指します。
AIの技術発展にともなって、これまで人間が行ってきた作業や業務の一部、あるいは全部をAIに代行させることが可能になります。
また、AI等の技術を用いることで、ヒトの手で行われてきた作業を機械やシステムに任せていくこと=ヒトが関与せずとも自動的に作業が行われる状態にすることをオートメーション化 (自動化) と呼びます。
「FinTech」と「InsurTech」
金融業界におけるテクノロジーを考えるときには、「FinTech」=金融 (Finance) と科学技術 (Technology) の融合もキーワードのひとつになります。
AI等のテクノロジーを活用することによって、既存の金融取引の一部を簡便化したり、新しい金融取引の仕組みをつくり出したりする一連の取り組みのことを指します。
また、保険 (Insurance) の分野でテクノロジーを活用する「InsurTech」も注目すべき動きのひとつです。
保険契約を締結する際の審査のプロセス等を、テクノロジーの活用によって変革する試みです。
過渡期を迎えた金融業界
これまで長きにわたって金融業界をリードしてきたメガバンクや投資銀行。
現在、上記のようなテクノロジーの発展の影響を受け、変革の過渡期といえる環境に置かれています。
就活生にも人気の高い大企業でも、以下にあげるように、環境変化に適応するための動きが見られます。
ゴールドマン・サックス:600人のトレーダー部隊、たった2人に
トップキャリアのひとつとして挙げられる外資系投資銀行。
そのなかでもトップ・オブ・トップとして語られるゴールドマン・サックス証券では、すでに金融取引のオートメーション化が進められています。
ゴールドマン・サックスのニューヨーク本社、米国株取引部門。
2000年には600人のトレーダーが在籍していた同部門でしたが、現在この部門に残っているトレーダーはわずか2人になっているとのことです。
株式売買の取引を自動化するプログラムが導入されたことでトレーダーの役割はほとんど奪われ、現在は約200人のコンピュータ・エンジニアによって株式売買プログラムが運営されています。
こうしたゴールドマン・サックスの株式売買の実態は、金融業界の働き方の変革としてはもちろん、オートメーション化がヒトの職業を奪った実例としても話題を呼びました。
みずほ銀行:AIスコア・レンディング「J.Score」
2017年9月25日、みずほ銀行はソフトバンクとの合弁事業として日本初のAIスコア・レンディングサービス「J.Score (ジェイスコア)」をリリースしました。
AIスコア・レンディングとは、いわばAIとビッグデータによって貸付条件が決定される個人向け金融サービスです。
サイト上で自分の学歴や職業、年収、家族構成、スキル、性格などの個人情報を入力すると、その場でAIによってあなた自身が点数づけ (1000点満点) され、その点数に応じて金利や限度額が決定されます。
AIが判定したスコアが高ければ高いほど安い金利・高い限度額が提示される仕組みになっており、要するにAIによって「信用が高い」と判定された人には良い条件で融資するという消費者金融サービスです。
従来はヒトが行っていた融資条件の決定をAIに委ねたFinTechサービスであり、メガバンクの新規事業としては極めて革新的であるといえます。
なお、メガバンクのFinTech事業については、以下バックナンバーも参考にして下さい。
最後に
金融業界、とくに投資銀行やメガバンクは学生からの人気が高い業界のひとつです。
しかし、本記事で取り上げた三菱東京UFJ銀行の「9,500人分の労働量削減方針」、そしてゴールドマン・サックスのトレーダー人員削減、みずほ銀行のAIレンディング「J.Score」リリースにも見られるように、テクノロジーの発展によって銀行というビジネスモデルが変革を迫られていることは否定できません。
しかし、そんななかでも「採用人数が多いから」といった理由から ”なんとなく” 金融業界を志望する学生が多く見受けられるのも事実です。
本記事で紹介したような業界変革の動きをしっかりと考慮したうえで、自分なりの判断軸にもとづいてファーストキャリアを選択しましょう。
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